著者
都留 俊太郎
出版者
史学研究会 (京都大学大学院文学研究科内)
雑誌
史林 (ISSN:03869369)
巻号頁・発行日
vol.97, no.3, pp.405-445, 2014-05

本稿の目的は、一九三〇年代前半の台中州北斗郡における製糖会社の甘蔗作経営と台湾人篤農家による電動ポンプ導入の過程を検討することにより、農業生産の場において技術を軸として深刻化した統治の問題と、その統治の中で生き延びる可能性を考察することである。製糖会社による甘蔗生産の合理化が蔗作農家を窮迫せしめる中で、台湾電力が利用を勧誘していた電動ポンプは高額な経済的負担という難点を含みながらも甘蔗作から稲作への転換を可能にし、惨状から脱却する可能性を農家へと示した。それまで甘蔗作に尽力していた台湾人篤農家はいかなる葛藤をへてポンプ導入を決断するに至ったのか。以上を、台湾電力資料(東京大学経済学部資料室所蔵) を主に利用して明らかにする。従来の植民地研究において近代性論はその対象を社会史・文化史に集中させてきたが、本論文はそれを経済史へと拡張しつつ、近代性論の深化を試みる。
著者
隋 藝
出版者
一般社団法人中国研究所
雑誌
中国研究月報 (ISSN:09104348)
巻号頁・発行日
vol.69, no.11, pp.1-21, 2015-11-25

1948年11月から1950年10月にかけて,遼寧省における反共産党勢力の取り締まりなどの大衆工作は,従来の階級闘争の形では展開せず,中国共産党の公安部門がリードし,反対勢力を排除したのちに民衆に対する宣伝を行う構造となった。こうした従来の共産革命と離れた大衆工作は,闘争による社会の混乱を避けたが,革命原理に基づいた大衆運動からのエネルギーの獲得や,古い社会関係の打破と新たな階級関係の再編も容易にはできなくなり,民衆に対する中共のイデオロギー操作も一層難しくなった。本稿では,遼寧省の瀋陽市を中心に大衆工作を検討して,中共による平時建設のための都市社会の再編と革命原理の矛盾を浮き彫りにする。
著者
浜口 允子
出版者
一般社団法人中国研究所
雑誌
中国研究月報 (ISSN:09104348)
巻号頁・発行日
vol.69, no.9, pp.1-18, 2015-09-25

本稿は,日中戦争期に,華北政権がいかなる地方統治を行ったか,それは基層社会にどのような影響をもたらしたかを主たる課題として問うなかで,とくに物流と交易の仕組みに着目し,河北省で1941年から始められた交易場制度について考察したものである。そしてそれが,旧来の包税制度を廃止し,取引税を直接徴収するための措置と関わるものであったことを明らかにした。それは,政権による財政基盤の強化策が物流の場に及んだものであり,その過程では統治の末端を担う新たな人材をも生みだしたのであった。この変化はその後の社会にも影響を与えたと考えられる。
著者
小林 善文
出版者
神戸女子大学史学会
雑誌
神女大史学 (ISSN:09127658)
巻号頁・発行日
no.32, pp.22-41, 2015-11
著者
小林 善文
出版者
神戸女子大学史学会
雑誌
神女大史学 (ISSN:09127658)
巻号頁・発行日
no.32, pp.22-41, 2015-11