著者
吉澤 剛
出版者
北海道大学 高等教育推進機構 オープンエデュケーションセンター 科学技術コミュニケーション教育研究部門(CoSTEP)
雑誌
科学技術コミュニケーション (ISSN:18818390)
巻号頁・発行日
vol.27, pp.31-37, 2020-04

ノルウェーにおける新型コロナウイルスの感染拡大は4 月上旬にコントロール下に入ったとされ,社会的機能を少しずつ再開していく方針が発表された.政府の危機対策管理は分散的な構造となっており,省庁間の調整支援機関が機能を発揮している.ノルウェー公衆衛生研究所(NIPH)では,多様な市民に対するわかりやすい情報やアドバイスのほか,最新の学術研究の見取り図も提供するなど,俯瞰的で包括的な活動を展開する.ノルウェーの専門機関は,過去の危機において市民とのコミュニケーションにたびたび失敗しているものの,政府や専門家に対する市民の信頼は篤く,情報を通じて伝えられる専門家の知的謙虚さや個人的感情をもとに冷静に判断を下しているとみられる.この冷静さはコロナ以後における新たな日常の「奇妙さ」と対峙し,それを保持していく鍵でもある.
著者
村田 希久 山本 公子 池田 喜美子 田中 淑子
出版者
公益社団法人 日本栄養・食糧学会
雑誌
栄養と食糧 (ISSN:18838863)
巻号頁・発行日
vol.24, no.6, pp.355-360, 1971-09-20 (Released:2009-11-16)
参考文献数
5

米タンパク質と小麦タンパク質の栄養価を白ネズミの飼育実験によって比較するに当り, 両食品につき低タンパク質レベル (米タンパク質レベル), 中程度タンパク質レベル (小麦タンパク質レベル) と高タンパク質レベルの飼料を調製するため, 白米を細菌α-アミラーゼ処理により, でん粉の1部を除いて, タンパク質濃縮米粉 (凍結乾燥粉末タンパク質26.9-33.9%) を用意し, 小麦グルテン (タンパク質69.4%) と小麦でん粉, 米, 小麦粉などを配合して, 各タンパク質レベルの飼料を調製し, 幼白ネズミを20日間自由食で飼育し, タンパク質効率比 (PER), 生物価 (BV) などを求めた。その結果, 米のPER1.60と1.75平均1.67, 小麦のPER0, 62と0.96平均0.79で, 米の価を100とすると小麦では47 (文献値100: 79) で, BVは米63.1に対し小麦49.1でそのRatioは100: 78 (文献値100: 89) でいずれも文献にみられるよりも米タンパク質と小麦タンパク質の栄養価にかなり大きな開きがあり, 米タンパク質は小麦タンパク質に比し, 従来考えられていたより一層高い栄養価を有することを認めた。 また米, 小麦群とも摂取窒素量と体重増加量とはよく相関し, 体重増の傾斜は米群で体重増量10.24g/摂取Ng, 小麦群で6.74g/Ngでありその比は100: 66であった。
著者
千葉 宣孝 木下 浩作 佐藤 順 蘇我 孟群 磯部 英二 内ヶ崎 西作 丹正 勝久
出版者
一般社団法人 日本救急医学会
雑誌
日本救急医学会雑誌 (ISSN:0915924X)
巻号頁・発行日
vol.24, no.10, pp.871-876, 2013-10-15 (Released:2013-12-30)
参考文献数
12

シアン化カリウムによる中毒は,暴露後早期から出現する組織における酸素の利用障害のため死亡率の高い中毒のひとつであり,大量摂取時には数分で死に至ることが知られている。今回,自殺目的でシアン化カリウムを内服したが,症状の出現が緩徐であったため治療が可能で救命し得た症例を経験したので報告する。症例は30代の男性。シアン化カリウムを詰めたカプセルを3錠内服した。内服約15分後の救急隊到着時,意識清明,瞳孔径は左右とも6mm,血圧160/90mmHg,脈拍数132/分,呼吸数18/分と瞳孔散大と頻脈を認めた。内服約38分後の来院時,不穏状態であり,瞳孔径は左右とも8mm,血圧140/70mmHg,脈拍数126/分,呼吸数36/分と瞳孔散大,頻脈,頻呼吸を認めた。内服から約86分後に血圧78/40mmHg,脈拍56/分と循環不全を認め,動脈血ガス分析では,pH6.965,PaO2 528.4mmHg,PaCO2 30.7mmHg,HCO3- 6.8mEq/l,Base excess -24.1mEq/l,SaO2 99.6%と代謝性アシドーシスを認めた。解毒剤として3%亜硝酸ナトリウムと15%チオ硫酸ナトリウムを投与した。解毒剤投与後,代謝性アシドーシスの改善と循環動態の安定が得られた。来院時のシアン化カリウム血中濃度は全血で3.1μg/mlであったが,解毒剤投与により血中濃度の低下を認めた。結晶あるいは固体であるシアン化カリウムは,酸と接触すると急速にシアン化水素を発生し,粘膜から吸収され中毒症状を引き起こすと言われている。本症例は,カプセルで内服したことでカプセルの緩徐な崩壊とともに症状が出現した可能性が示唆された。薬物名や量だけではなく,毒物の形状や内服手段の聴取は症状の出現の予測や治療において重要な因子のひとつであると考えられた。
著者
矢久保 空遥 田内 隆利 久保 光徳 寺内 文雄
出版者
一般社団法人 日本デザイン学会
雑誌
デザイン学研究 (ISSN:09108173)
巻号頁・発行日
vol.62, no.2, pp.2_81-2_88, 2015-07-31 (Released:2015-10-25)
参考文献数
12

本論文では,ロシア連邦サハ共和国で演奏されている伝統的な口琴であるKhomusとイタリア共和国シチリア島で演奏されているMarranzanuと呼ばれる口琴の2つをサンプルとして,これらの形態的な特徴,音響的な特徴,社会的な特徴の3つの側面から比較を行った. 形態的な特徴において両者を比較すると,Khomusの弁には均一な角度でエッジ加工が施されており,Marranzanuの弁にはエッジができるような加工は施されていないことが確認された. 音響的な特徴の比較では,自己相関関数の違いからそれぞれの周波数構造に着目し,一方が奇数倍音を多く含む矩形波に近い構造,他方が整数倍音を多く含むノコギリ波に近い構造をしていることを明らかにした. これは,音による印象そのものに影響を与えうるファクターであり,音に対する印象評価を行った先の研究と照らし合わせて考えると,特に「活発性因子」において大きな差があることわかった. 社会的な扱われ方の違いについては,それぞれの国での演奏されるシーンや,催事などの有無といった点から民族的な意味合いを強く持ったKhomusと民俗的な意味合いを強く持ったMarranzanuであると解釈することができた.

5 0 0 0 維新日誌

著者
橋本博 編
出版者
静岡郷土研究会
巻号頁・発行日
vol.第2期 第1巻, 1935
著者
藤井 亮輔 矢野 忠 近藤 宏 福島 正也
出版者
一般社団法人 日本東洋医学系物理療法学会
雑誌
日本東洋医学系物理療法学会誌 (ISSN:21875316)
巻号頁・発行日
vol.42, no.2, pp.87-95, 2017 (Released:2020-07-07)
参考文献数
8

【目的】あん摩マッサ-ジ指圧業の実態を需給の現状と業者の年収を中心に考察し当該行政の政策 検討の基礎資料に資する。 【対象】全国から収集した鍼灸マッサージ業者102,831件から抽出した20,000件を調査の客体とし た。 【方法】収集した業者名簿102,831件(施術所76,505件、出張専門業者26,326件)から層化二段 無作為法で抽出した施術所17,000件、出張専門業者3,000件に無記名式質問紙調査票を2016年10 月末に送付し同年11月18日までの回答を依頼した。 【結果】未着票(21.0%)を除く 15,793 通が有効に着信し 4,605 人(29.2%)から回答を得たが、 うち769人(16.7%)は休業中か廃業していた。この未着率、 休業廃業率や取扱患者数等の結果から、 営業中のあん摩マッサージ指圧(以下、あマ指という)業者は44,040件、同業者が2016年10月 に扱った延べ患者総数は3,822,000人(雇用者を含む)、実働あマ指師総数は88,900人が算出され、 同月にあマ指師1人が扱った延べ患者数は43人(営業24日/月換算で1日1.8人)と推計された。 また、前年分年収(中央値)は視覚障害者の128万円に対し晴眼者は400万円で、前者の42%が 100万円以下の階層に集中していた。 【考察】国民一世帯当たりの所得額の中央値を標準とすると2015年の同所得額(4,270,000円)は 月間90~120人分の施術料収入に相当する。この人数を充たすには概算で1日4~5人分の売り 上げが必要となるが、この格差(1.8人との差)は実働あマ指師の供給力余力の大きさを示す目安 と考えられる。一方、接骨院等の急増であマ指市場は供給超過にあり生活難に陥る視覚障害者が 急増している。よって、あん摩マッサージ指圧師、はり師、きゆう師等に関する法律(以下、あ はき師法という)の第19条1項による職業選択の自由の制限は必要かつ合理的範囲内であり需給 の現状からも許容されると考える。 【結論】本研究により、あマ指師の供給力の余力幅が十分な規模にある実態と、晴眼者と比べて生 活難に陥る視覚障害業者が急速に増えつつある現状が明らかとなった。

5 0 0 0 OA 訂正康煕字典

著者
渡部温 編
出版者
渡辺温
巻号頁・発行日
vol.1, 1887
出版者
刀江書院
巻号頁・発行日
vol.第2 (主として芸術の形式に関する特輯), 1931
著者
尾崎翠 著
出版者
啓松堂
巻号頁・発行日
1933
著者
浅田 泰幸 下里 剛史 齋藤 翔太 町田 好聡 渡邊 裕加 山本 学
出版者
社団法人 日本口腔外科学会
雑誌
日本口腔外科学会雑誌 (ISSN:00215163)
巻号頁・発行日
vol.64, no.5, pp.302-306, 2018-05-20 (Released:2018-07-20)
参考文献数
21

Human myiasis is a parasitic infestation caused by fly larvae. There are many case reports of parasitic infestations in the digestive tract, ears, and sites of traumatic injury, but few reports of infestation inside the oral cavity. We report a case of human myiasis arising in the anterior maxillary gingiva. A 91-year-old woman was admitted to our hospital in October 2016 because of pneumonia. She started to receive antimicrobials after being hospitalized and her pneumonia symptoms were resolving, when five larvae were observed in the maxillary gingiva during oral care on hospital day 19. The larvae were extracted and sent to Japan’s National Institute of Infectious Diseases (Ministry of Health, Labour, and Welfare) for identification. They were identified as the third instar larvae of Sarcophaga similis. Based on the growth cycle of Sarcophaga similis, our patient is believed to have contracted the infestation after hospitalization. Regular, strict oral care was provided, and no insect larvae were found thereafter. Her pneumonia and oral health status improved, and she was transferred to another hospital on hospital day 35.
著者
尾崎行雄 著
出版者
モナス
巻号頁・発行日
vol.下巻, 1938