著者
小池 淳一
出版者
国立歴史民俗博物館
雑誌
国立歴史民俗博物館研究報告 = Bulletin of the National Museum of Japanese History (ISSN:02867400)
巻号頁・発行日
vol.199, pp.55-66, 2015-12-25

1970年代から80年代にかけて盛んに論じられた都市民俗学はどのように形成され,どういった可能性と限界とを持っていたのだろうか。本稿はそうした問題について,都市民俗学の模索段階,形成期について検討し,その様相について論述を試みる。さらに都市民俗学を表面的には標榜しなくても,都市をとらえた民俗研究を検討し,その可能性を指摘する。ここでは特に世間話や個人に関する着目が重要であったことを確認する。全体として,都市民俗学は現代社会や民俗変化を対象化するムラを超える民俗学へと民俗研究が発展的に解体する過程と位置づけることができ,そこでの問いや模索された対象や概念化の取り組みは,現代における民俗的諸事象との対峙を志向する研究へと分節化されたということができるのである。
著者
松野 良一
出版者
中央大学総合政策学部
雑誌
総合政策研究(JJPC) = Journal of Policy and Culture (JJPC) (ISSN:13417827)
巻号頁・発行日
vol.24, pp.47-70, 2016-03-03

The Taipei 228 Memorial Museum was originally a radio station called the “ Taipei Broadcasting Corporation” in prewar times. During the 228 Incident, civilians occupied this building and used it to broadcast rallying cries around Taiwan. I visited this museum in September 2012 on unrelated research. There, I noticed a Chuo University cap on display. What relationship did Chuo University have with the 228 Incident? Actually, among those who were executed or went missing during the 228 Incident, there were many Taiwanese elites who had studied at Japanese universities. People who had studied at not only Chuo University but also the University of Tokyo,Waseda University, Nihon University, and other universities, and became lawyers and doctors on their return to Taiwan, were executed as dissidents who were deemed to have been poisoned by Japanese imperialistic education. After seeing the cap, me and my students started the project, the “228 Incident in Taiwan and the Chuo Graduates”; we gathered testimonies from eight victims’ families. This article outlines the testimonies and shows the attitudinal changes of students who engaged in the project. Almost all of the students acquired new perspectives on Japanese–Taiwanese historical issues and meanings and agree that there is a good reason why most Taiwanese are pro-Japanese.
著者
寺田努 岡崎辰彦 塚本昌彦
雑誌
マルチメディア、分散協調とモバイルシンポジウム2014論文集
巻号頁・発行日
vol.2014, pp.1386-1393, 2014-07-02

現在,着ぐるみはテーマパークや様々なイベントで頻繁に利用されている.着ぐるみは仮想キャラクタを現実世界に登場させる役割をもつため,着ぐるみ装着者は扮したキャラクタらしく振る舞うことが重要となる.しかし,着ぐるみは体の大きさが人間と異なっていることが多いため,着ぐるみ装着者が周囲にある障害物を避ける際に装着者自身と着ぐるみの大きさの違いを意識しなければならず,直観的に障害物を避けることが困難である.そこで本研究では,着ぐるみ装着者のための拡張現実感を用いたオブジェクト拡大提示に基づく障害物回避手法を提案する.この手法を用いることで,装着者は装着者自身と着ぐるみの大きさの違いを意識せずに周囲にある障害物を自然に回避できる.評価実験の結果から着ぐるみ装着者が障害物を避ける際に提案システムは有効であると確認できた.
著者
AI R
雑誌
情報処理
巻号頁・発行日
vol.57, no.11, pp.1078-1083, 2016-10-15

異分野協同研究グループAcceptable Intelligence with Responsibility(AIR)がロボットホテル「変なホテル」の視察とインタビューを行った.インタビューからは,(1)「生産性を上げる」や「干渉しないサービス」というホテル経営の価値再定義,(2)現場コンテキストの環境・技術・スキルに求められる創意工夫,そして(3)それに対する従業員や宿泊客とロボットとのインタラクションの適応・不適応から,「ロボットメインモデル」とでもいうべき近未来の人間-ロボットが協同する「変わり続ける」労働現場が浮かび上がってきた.異分野協同研究ならではの多様な視点からの解釈や分析を紹介する.
著者
伊藤 大河 伊藤 基晴
出版者
共栄大学
雑誌
共栄大学研究論集 = The Journal of Kyoei University (ISSN:13480596)
巻号頁・発行日
no.20, pp.43-58, 2022-03-31

通常学級に「知的発達に遅れはないものの,学習面または行動面で著しい困難を示す児童生徒」が 6.5%程度在籍していると考えられる。これらの児童生徒に対して,学級全体の集団力や仲間意識,個々の集団適応力を高めることを目的に,通常学級において通級指導教室で実施しているトレーニングを活用することを検討した。教員研修における学級担任の意見をもとに特別活動の内容を抽出した結果,紙風船づくり,スティック運動,計算フラッシュ,黒板を写そう,お話ししよう,ペンシルドライブの学習プログラムが通常学級でも役に立つと評価された。その中でも特に,紙風船づくりとスティック運動を特別活動で実施することが望ましいことが示された。
著者
長崎 巌 Iwao Nagasaki
雑誌
共立女子大学博物館 年報/紀要 = Kyoritsu Women's University Museum annual report & bulletin
巻号頁・発行日
no.1, pp.21-33, 2018-03

In the wedding costume, it is presumed that in the first half of the 18th century, a format was established in which uchikake (outer garment) of white ground, red ground and black ground were sequentially changed on white aigi (inner garment). Although these kinds of uchikake were given auspicious pattern regardless of the ground color, there is a blue uchikake which represents a pattern very similar to these, as a group. This article attempts to verify that such work is a wedding costume worn the fourth after the black one.In Japan, the word "Ao"(blue) has etymologically been closely related to "Kuro"(black) , "Aka"(red) and "Shiro"(white), but on the other hand "Ao"(blue) is in an incidental position for these three colors, so even in wedding costumes.It seems that the wedding costume of the blue which started its use around the middle of the Edo period had gradually been forgotten as the Japanese tradition was lost along with the progress of westernization since the Meiji Period.
著者
建部 正義
出版者
中央大学商学研究会
雑誌
商学論纂 (ISSN:02867702)
巻号頁・発行日
vol.55, no.4, pp.601-641, 2014-03-01
著者
齋藤 真人 渡邊 隆夫
出版者
東北文化学園大学医療福祉学部看護学科
雑誌
東北文化学園大学看護学科紀要 = Archives of Tohoku Bunka Gakuen University Nursing (ISSN:21866546)
巻号頁・発行日
vol.7, no.1, pp.3-10, 2018-03-31

超音波検査は非侵襲的かつリアルタイムに患者の身体情報を収集できるアセスメント機器である。フィジカルアセスメントや看護ケアを行う際のツールとして超音波検査は画像で評価をおこなうことから情報の客観性が高く、患者に対して無侵襲かつ経時的に評価が可能である。さらには必要な情報を可視化できる点で非常に有用である。患者に接する時間の多い看護師にとって超音波検査は聴診器とならび臨床業務の補助器具として有用性が高い機器である。大学院教育で超音波検査について系統的に学習する診療看護師が看護学領域での超音波検査の活用をリードしていくことで臨床看護にとって超音波検査が身近な存在となりえる可能性が示唆された