著者
松田 外志朗
出版者
近畿大学原子力研究所
雑誌
近畿大学原子力研究所年報 = Annual Report of Kindai University Atomic Energy Research Institute (ISSN:03748715)
巻号頁・発行日
no.53, pp.13-18, 2017-03-24

2011年3月11日に発生した東北地方太平洋沖地震により東日本大震災が引き起こされ、地震と津波により東京電力福島第一原子力発電所事故が起こった。事故により環境に放出された放射性物質が人体に与える影響について懸念された。1986年のチェルノブイリ原子力発電所事故では、放射性ヨウ素の内部被ばくにより、事故後に小児の甲状腺がんの増加が認められたことから、福島県でも子供の健康を長期にわたって見守るため甲状腺検査が開始された。2011年10月より2014年3月までの先行調査が実施され、2014年4月からは本格調査が実施されている。当初の予想に反して、先行検査の段階から多数の甲状腺がんが発見された。この甲状腺がんの増加は、内部被ばくによる発がんではなく、主として超音波検査の質の向上によるものと考えられている。しかしながら、一部が被ばくによる甲状腺がんではないかという考えを否定することは現状では困難であり、今後診断される甲状腺がん症例が内部被ばくよるものか否かを判断する方法も現状ではない。甲状腺がんの発がんのメカニズムの解明や手術適応の確立は、取り組むべき大きな問題であることを認識する必要がある。
著者
若林 哲史 鶴岡 信治 木村 文隆 三宅 康二
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D-II, 情報・システム, II-情報処理 (ISSN:09151923)
巻号頁・発行日
vol.80, no.1, pp.73-80, 1997-01-25
参考文献数
19
被引用文献数
6

正準判別分析は分散比 (F比) を最大化する最も代表的な特徴選択手法であるが, クラス数以上の特徴が選択できないため,少クラスの分類問題に対する有効性に限界がある. この問題を解決するために, 新しい特徴選択手法 (FKL法) を提案し, 手書き数字認識実験によりその有効性を評価する. FKL法は, F比を最大化する正準判別分析と, 次元減少による平均2乗誤差を最小化する主成分分析 (K-L展開) を特殊な場合として含む, より一般的な特徴選択手法である. 正準判別分析, 主成分分析, 正規直交判別ベクトル法 (ODV法) などとの比較実験の結果, 少クラスの分類問題ではFKL法により選択された特徴量の識別力が最も高いことを示す.
著者
Shion Miyoshi Jin Takasaki Sohtaro Mine Masanori Kono Toru Igari Yuichiro Takeda Masayuki Hojo Haruhito Sugiyama
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
Internal Medicine (ISSN:09182918)
巻号頁・発行日
vol.56, no.9, pp.1079-1083, 2017-05-01 (Released:2017-05-01)
参考文献数
16
被引用文献数
3

Anti-tumor necrosis factor α (anti-TNFα) agents increase the risk of tuberculosis (TB), but cases are rarely fatal. This report concerns a patient who was undergoing treatment with infliximab and presented with acute respiratory distress syndrome due to miliary TB without a miliary shadow. The findings of a pathological autopsy revealed innumerable granulomas in the organs, and the miliary nodules in the lung consisted of more unstructured granulomas. Anti-TNFα agents are unusual in the presentation of TB. It is important, particularly for patients receiving anti-TNFα agents, to constantly consider the possibility of TB and to prepare for appropriate management.
著者
小林 卓也
出版者
京都産業大学
雑誌
京都産業大学論集. 人文科学系列 (ISSN:02879727)
巻号頁・発行日
no.46, pp.181-194, 2013-03

本稿の課題は,フランスの哲学者ジル・ドゥルーズと,精神分析を専門とするフェリックス・ガタリとの共著『千のプラトー』(1980)に見いだされる言語観の内実とその射程を明らかにすることである。彼らが端的に述べているように,「あらゆる言語(langue)は本質的に非等質的な,混合した現実である」。しかし,チョムスキーによる生成文法を念頭に置きながら,言語学はこうした言語現象の多様性に目を向けようとせず,文法規則や言語の等質的体系性を抽出することだけに終始しており,そこには,われわれの多様な言語活動を均質化し規格化することで,自らの科学性を担保する政治的関心しかないと彼らは批判する。ここには,言語を異質な要素からなる多様体とし,その多様性をいかに捉えるのかという彼らの企図が明瞭 に現れている。本稿は,こうした彼らの言語観がどのような問題意識と結びついているのかを 以下の手順で明らかにする。 まず,『千のプラトー』において彼らがジョン・L・オースティンの発話内行為に見出した論点を確認し(第一章),それが60年代のドゥルーズ哲学の延長上にあることを指摘する(第二章)。というのもドゥルーズこそ,言語の本質を,身体や行為といった物理的なものと,それによって表現される意味や出来事といった非物体的なものの二元性という論点から考察していたのであり,『千のプラトー』の主眼は,その言語の二元性の連接をいかに捉えるのかということにあるからだ。こうした論点からすると,注目されるべきは『千のプラトー』において ルイ・イェルムスレウが占める役割である。イェルムスレウ言語学における表現と内容の連帯性,および形式と実質という概念の導入は,言語における二元性への問いに一定の回答を与えている(第三章)。最後に,彼らの議論がいわゆる言語理論の枠内に留まることなく,とりわ け彼らがミシェル・フーコーと共有するある歴史認識と結びついていることを確認し,その理論的射程を特定したい。
著者
新原 俊樹
出版者
日本体操学会
雑誌
体操研究 (ISSN:18835872)
巻号頁・発行日
vol.14, pp.1-9, 2018 (Released:2018-02-06)
参考文献数
45

2015年に大阪府内の中学校で起きた組体操事故を契機に、各地で組体操を規制する動きが広がった。一連の議論や動きの前提となった「組体操が学習指導要領に位置付けられていない」という認識について、組体操の呼称の変遷と学習指導要領の改訂経緯を調査した。 戦前、運動会で披露されるピラミッド等の運動種目は「タンブリング」等と呼称されていたが、「タンブリング」は1980年代までに体操競技の用語に変化し、1990年代以降、この運動種目の呼称として「組体操」が辞書で紹介されるようになった。 組体操の学習指導要領への位置付けについては、学習指導要領が手引書であった年代には「タンブリング」等の語が明記されていた。1958年の改訂時、基本的事項に重点を置いて内容を精選する過程で明示されなくなったが、現行の学習指導要領は「体育的行事」の中で「規律ある集団行動の体得、責任感や連帯感の涵養、体力の向上」に資する活動を求めている。
著者
大橋 政仁 近藤 和貴
出版者
政治哲学研究会
雑誌
政治哲学 (ISSN:24324337)
巻号頁・発行日
vol.25, pp.61-77, 2019 (Released:2019-04-10)

本訳は、2017年4月にNew England Political Science Association Annual Meetingで報告された、Susan M. Shell教授(ボストン・カレッジ)“Gerhard Krüger and Leo Strauss: the Kant motif”の全訳である。翻訳を許可してくださった、シェル教授に感謝したい。また日本語訳にあたっては、近藤が前半部の下訳を担当し、それ以外の個所の訳出、さらに最終的な訳語・文体の統一は大橋が担当した。

5 0 0 0 OA 官報

著者
大蔵省印刷局 [編]
出版者
日本マイクロ写真
巻号頁・発行日
vol.1944年12月20日, 1944-12-20

5 0 0 0 OA 総合討論1

著者
尾方 隆幸
出版者
日本地球惑星科学連合
雑誌
日本地球惑星科学連合2019年大会
巻号頁・発行日
2019-03-14

ブラタモリに関するフロアからの質問を受け付けて議論する。
著者
川瀬 和也 Kazuya KAWASE
雑誌
宮崎公立大学人文学部紀要 = Bulletin of Miyazaki Municipal University Faculty of Humanities
巻号頁・発行日
vol.24, no.1, pp.1-15, 2017-03-10

本稿は、M.ブラットマンによって展開された、現代行為論における事前の意図に関する理論が抱える存在論的な問題を指摘するとともに、この問題を解決するための指針を、『精神現象学』におけるヘーゲルの行為論の中に探るものである。これにより、事前の意図を時空間的な連続性によって個別化可能な心的出来事の一種として理解する存在論への対案を提示するとともに、行為に関するヘーゲルの考案に新たな光を当てることを目指す。
著者
高橋 昭紀
出版者
一般社団法人 日本生態学会
雑誌
日本生態学会誌 (ISSN:00215007)
巻号頁・発行日
vol.64, no.1, pp.47-53, 2014-03-30 (Released:2017-05-19)
参考文献数
56
被引用文献数
3

白亜紀/古第三紀境界(K/Pg境界;約6,600万年前)で生じた、小惑星衝突を引き金とする大量絶滅について、動物の分類群ごとによる絶滅の選択性(絶滅したか、生き延びることができたか)の原因に関してレビューする。同境界において、陸上脊椎動物では非鳥型恐竜類と翼竜類などが絶滅して、鳥類・カメ・ワニ・トカゲ・ヘビや両生類・哺乳類などは絶滅しなかった。その選択性の原因として、(1)衝突後数分から数時間までに、木陰や洞穴、淡水環境に逃避できたか否かという生態や生活様式の違い、(2)生食連鎖か腐食連鎖のどちらに属するかという違い、および(3)体サイズにより必要となる餌やエネルギー量の違い、が挙げられる。これらの複合的な生態の相違によって、大量絶滅時の選択性が左右されたのである。また、アンモナイト類は絶滅したが、オウムガイ類はK/Pg境界を超えて生き延びることができた。この運命を分けた原因は、幼生期に海洋表層でプランクトン生活を送っていたか、それとも深海で棲息していたかという棲息場所の違いである。その結果、衝突後に大量に降ったと推定されている酸性雨からの被害が大きく異なり、両者の運命を分けたと考えられる。長年、白亜紀末の絶滅の生物選択性には多くの疑問が提示されてきたが、以上で挙げたような生態学的要因によって、その多くが説明できると考えられる。
著者
Kaizuka Hiroshi Siu Byron
出版者
公益社団法人 応用物理学会
雑誌
Japanese Journal of Applied Physics (ISSN:00214922)
巻号頁・発行日
vol.27, no.5, pp.L773-L776, 1988

We present a simple way to compensate for hysteresis and creep in piezoelectric actuators. By inserting a capacitor in series with the piezoelectric actuator, we find a reduction in the size of the hysteresis loop. For a suitable small capacity in series, creep is eliminated.