著者
森田 愛子 藤井 真衣
出版者
広島大学大学院教育学研究科心理学講座
雑誌
広島大学心理学研究 (ISSN:13471619)
巻号頁・発行日
no.12, pp.269-277, 2012

本研究の目的は,どのような領域の子どもの発達に保護者が気づきやすいかを調べること,保育者を基準としたときの,保護者の気づきやすさについて検討すること,様々な種類の行動の発達に育児がどの程度影響すると保護者が思うかを検討することであった。6 領域20 項目の発達チェック項目に関し,保育園・幼稚園の3 歳児クラスの保護者72 名と保育者7 名,4 歳児クラスの保護者114 名と保育者3 名から質問紙で回答を得た。主な結果は以下のとおりである。保護者は生活技術の発達に最も気づきやすかった。3 歳児クラスの保護者は,言語理解の発達に比較的気づきにくいことがわかった。また4 歳児クラスの保護者は対人技術の発達について他の領域より比較的気づきやすいこともわかった。保育者の気づきやすさと比較しても,保護者の気づきやすさの得点は高いケースが多かった。ただし社会性の発達については,保育者のほうが気づきやすい傾向がみられる。育児の影響については,3 歳児・4 歳児クラスのいずれの保護者も,生活技術については,育児の影響が大きく,粗大運動の発達については育児の影響が小さいとみなしていた。
著者
岡本 和典 石田 弓
出版者
広島大学大学院教育学研究科心理学講座
雑誌
広島大学心理学研究 (ISSN:13471619)
巻号頁・発行日
no.12, pp.249-262, 2012

本研究では,岡本・石田(2009)が考案した「夢の自己分析サポートシート」 を名島(2003)の「能動的夢分析」の介入技法を援用して改良し,その臨床的有用性について検討した。研究1 では,改良を行ったサポートシートの実施難易度と得られた気づき,およびサポートシートへの記述にクライエント理解に役立つ情報が含まれるかについて検討した。そして,サポートシートは夢と現実との関連づけを容易にし,対人関係に関する気づきが得られやすいことと,クライエント理解に役立つ情報が得られるものであることが示された。研究2 では,サポートシートを用いることで,夢に対する「わけがわからない」という自我違和的な印象が軽減されることが示唆された。さらに,事例をもとにサポートシートを用いた夢の自己分析過程について検討したところ,サポートシートは夢の中の要素の中の連想を深め,夢と現実での体験とを関連づけた意味を見出すことを促すことが示唆された。
著者
井村 文音 石田 弓
出版者
広島大学大学院教育学研究科心理学講座
雑誌
広島大学心理学研究 (ISSN:13471619)
巻号頁・発行日
no.12, pp.217-234, 2012

家族成員との交流の中で,自身の同一性の発達よりも家族全体の安定性を優先し,表面的に強く調和する関係性を偽相互性という。現代青年には,友人との間で自己開示を求めながらも,円滑な人間関係の維持に重点を置き,発言を抑制する傾向がある。この傾向は,偽相互性に見られる相手を優先するために自己を抑制し,不十分にしか自身の思いを表現できないノン・アサーティブな自己表現の特徴と類似する。本研究は,家族機能状態に着目して偽相互性の特徴を想定し,家族成員間の相互作用の状態と青年の発言抑制傾向との関連性を検討することを目的とした。研究1 では,家族の偽相互性を想定した家族機能状態と青年の発言抑制傾向との関連性は明らかにされなかったが,家族機能の凝集性,及び適応性のそれぞれの側面と発言抑制傾向との関連性が示唆された。研究2 では,シンボル配置技法の1 つである家族イメージ法を用いた調査を行い,青年がイメージする家族機能状態や家族成員間の相互作用の状態と青年の発言抑制傾向との関連性を明らかにした。
著者
川本 智映子 岡本 祐子
出版者
広島大学大学院教育学研究科心理学講座
雑誌
広島大学心理学研究 (ISSN:13471619)
巻号頁・発行日
no.12, pp.235-248, 2012

本研究は,高齢者にとって死を考える上で重要となる他者との関係における死のイメージについて検討を行った。その結果,重要な他者が子どもの場合には,子どもに対して「役割を託す」「繋がりを感じる」関係性,死のイメージとして次の生への視点が見出され,子どもの中に自分の存在が内在化され,死を迎えた後にも重要な他者と繋がる感覚を有していることが示唆された。重要な他者が配偶者の場合には,「生きがい」「支えあう」関係性,死のイメージとして次の生への視点がみられた。重要な他者が親の場合には,親から託された「役割を引き受ける」関係性,肯定的な来世のイメージがみられた。重要な他者によって異なる関係性と死のイメージが存在することが示された。
著者
藤岡 美紀 石田 弓
出版者
広島大学大学院教育学研究科心理学講座
雑誌
広島大学心理学研究 (ISSN:13471619)
巻号頁・発行日
no.12, pp.197-216, 2012

これまでに箱庭制作後の言語的やりとりについて言及されてこず,箱庭制作後の作品についてどのように取り扱うかが課題であると指摘されてきた。青年期では,自己理解教育が必要であるといわれていることから,本研究では自己理解を促進させるために箱庭制作後の言語的やりとりにおいてどのような質問ができるかについて明らかにすることを目的とした。まず大学生を対象に収集した箱庭制作後の語りから,クライエント用箱庭療法面接のための体験過程スケールをもとに新たな評定基準を作成した。次に,自己理解を促進すると想定した質問によって表出された語りを新たな基準を用いて分類し,各質問の特徴を明らかにした。その結果,自己像に関する質問では自己像のイメージが生じた時の違いによって自己理解の促進の程度に差が見られることが明らかになった。また一番印象的な玩具に関する質問では,個人的体験が語りに反映されやすく,自己理解が促進されやすいことが明らかになった。
著者
松下 優衣 石田 弓
出版者
広島大学大学院教育学研究科心理学講座
雑誌
広島大学心理学研究 (ISSN:13471619)
巻号頁・発行日
no.12, pp.179-196, 2012

アレキシサイミア傾向とは,『体感・感情の認識表現不全』と『空想・内省の不全』という大きく分けて2 つの構成概念からなるパーソナリティ特性を指す。先行研究ではアレキシサイミア傾向が身体に対する志向性,意味づけなど,身体の捉え方,体験のされ方における何らかの逸脱と関連することが示唆されているが,実証研究は少ない。そこで,本研究では身体をどのように捉えているのかという観点からアレキシサイミア傾向者の困難について検討することを目的とした。研究1 では大学生を対象に質問紙調査を行い,身体をどのように捉えているかを身体感覚の測定を通して捉え,アレキシサイミア傾向との関連を見ることを目的とした。研究2 では身体をどのように捉えているかを,バウムテストを用いて無意識的な側面から捉え,その特徴とアレキシサイミア傾向との関連を検討した。その結果,アレキシサイミア傾向と身体の捉え方,体験のされ方にある程度の関連が見られた。そして,アレキシサイミア傾向の下位概念である『体感・感情の認識表現不全』と『空想・内省の不全』で身体の捉え方の質が異なる可能性も示唆された。
著者
森田 修平 岡本 祐子
出版者
広島大学大学院教育学研究科心理学講座
雑誌
広島大学心理学研究 (ISSN:13471619)
巻号頁・発行日
no.12, pp.169-177, 2012

精神分析学においては自我はさまざまな機能を持つとされ,今日までBellak らをはじめ,多くの研究がなされてきた。また,その測定法は,質問紙,ロールシャッハ・テストなどの投映法と多様である。しかし,自我機能の測定は,自我という概念の扱いの難しさから困難さを指摘されてきた。大山による一連の自我境界研究から,各種自我機能が異なる自我境界領域で働くことが推察された。本研究において,各々の自我機能がどの自我境界領域で機能するのか,それぞれの測定法がどの自我領域を対象にしているかを検討することにより,より妥当性の高い自我機能研究の可能性が示唆された。
著者
高橋 参吉 松永 公廣
出版者
日本教育工学会
雑誌
日本教育工学雑誌 (ISSN:03855236)
巻号頁・発行日
vol.23, no.3, pp.155-165, 1999-12-20
被引用文献数
12
著者
中岡 美華 手塚 太郎 田中 克己
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. DE, データ工学 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.106, no.149, pp.47-52, 2006-07-06
参考文献数
9

近年,たくさんの小学校で,幼少者みずからが自らの判断でWorld Wide Webの情報を収集し,利活用する授業が始まった.これまでの情報検索システムでは,利用可能な情報を検索できるキーワードを注意深く選別しなければならず,負荷が高い.幼少者は,抽象化の概念が未発達なため,適切なキーワードを想起すること,また,検索したいものを明確に定義する事が難しい.それゆえに,たくさんの意図しない検索結果が出現する.これらの改善を目指すため,我々は,幼少者がやさしくWorld Wide Webにアクセスし情報を検索できるような手法を開発すること,それにより現在の小学校における総合的な学習の時間で設けられている「調べ学習」が,さらに効果的になるための支援が実現することを目的とし,幼少者の行動特性や思考特性を考慮する方法でWorld Wide Webにアクセスし情報を検索できるような,3次元型ブラウザを開発した.このブラウザは,難解なWorld Wide Web上のページ構造を自動的に3次元空間にレンダリングし,その3次元空間をゲーム感覚で走り抜けるといった負荷の少ない感覚で利用することを実現した.このブラウザの利用により,幼少者はWorld Wide Web上のページ構造を体感的に習得しながら,自らの課題を発見することができる.
著者
瀬下 仁志 野田 隆広 丸山 美奈 田中 明通 高橋 時市郎
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. ET, 教育工学 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.102, no.388, pp.7-12, 2002-10-11
被引用文献数
3

World-Wide Web(WWW)上の豊富な情報は、調べ学習における調査・探索の対象として有用である。その一方で、情報の膨大さやHypertextに特有なナビゲーションの困難さなどから、何の支援もなくそのまま授業に導入することは難しかった。そこで我々は、WWWを活用した調べ学習を支援するための仕組みとして、高機能なProxyサーバとして構成される学習支援システム「WebAngel」を開発した。「WebAngel」は、インターネット上に散在する既存のWebリソースを選択的に組み合わせ、教師の授業意図、学習スタイルに沿ったかたちに教材化して利用することを可能にする。本稿では、「WebAngel」の概要とその学習事例などについて述べる。
著者
加藤 尚吾 古屋 雅康 赤堀 侃司
出版者
日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
vol.28, no.1, pp.1-14, 2004
参考文献数
25
被引用文献数
8

不登校児童生徒11名を対象に,電子メールカウンセリングを実施し,実施前と後で不登校状態を比較したところ,ほぼすべての児童生徒に改善がみられた.そこで,電子メールカウンセリングが不登校状態の改善に果たした役割を検討した.児童生徒が送信した電子メール文の内容分析の結果,改善の大きかった児童生徒の電子メール文中の「学校・学習関連」,「友達関連」語が,改善の小さかった児童生徒よりも多かった.また,それらは前半に送信した電子メールに比べ,後半に送信した電子メール文中により多かった.保護者へのアンケート及びカウンセラーヘのインタビューから,電子メールカウンセリングのための家庭へのパソコンの導入が家族の共通の話題を生み,家庭内のコミュニケーションが増加したことが分かった.また,インターネットを使って興味の対象を深く調べたり,パソコンを使って自己表現をしたりと,児童生徒の活動方法が広かったことが分かった.
著者
陸 艶
出版者
佛教大学
雑誌
佛教大学大学院紀要. 文学研究科篇 (ISSN:18833985)
巻号頁・発行日
vol.40, pp.203-212, 2012-03-01

私は主に日本近代文学の蘇州との関わりを研究している。蘇州と係わった著名な文学者には、芥川龍之介や司馬遼太郎などが居るが、本論では昭和一三年に従軍記者として中国に渡った小林秀雄の紀行文「蘇州」について考察する。当該作品は戦時下の検閲によりその一部が削除されている。記事にした蘇州の状況と、その一部が削除されたことが小林秀雄に対して、どのような影響を与えたのかを探ってみた。

1 0 0 0 OA 警視庁職員録

出版者
警視庁
巻号頁・発行日
vol.昭和4年12月1日現在, 1935

1 0 0 0 OA 警視庁職員録

出版者
警視庁
巻号頁・発行日
vol.昭和3年12月, 1935

1 0 0 0 OA 時憲書

著者
中央観象台 編
出版者
国務院
巻号頁・発行日
vol.康徳12年 歳次乙酉, 1945

1 0 0 0 OA 警視庁職員録

出版者
警視庁
巻号頁・発行日
vol.昭和8年12月5日現在, 1935