著者
但野 茂 GIRI Bijay
出版者
北海道大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2010

骨組織はナノサイズのミネラル粒子がコラーゲン構造に沈着した複合構造を有する。規則的な原子構造を有する材料にX線を照射すると、その規則性に応じて回折X線が発生する。骨組織においては、コラーゲン鎖の周期構造がX線の小角散乱を引きおこし、ミネラル結晶の格子構造からは広角へのX線回折現象が生じる。このX線の回折パターンを解析することで、結晶構造や分子構造といった微視組織の構造変形を検出することができる。そこで、本研究では牛皮質骨から力学実験用の試験片を作製し、試験片負荷時に発生する回折X線の2次元パターンから、ミネラル内部のひずみと結晶学的な構造特徴の変化を調査した。その結果、X線回折により骨組織負荷時にミネラル結晶に明確な構造変化が生じていることが検出された。また、結晶配向と負荷時の変化および除荷時の形態再現性が作用負荷の履歴に依存して変化することを示した。このX線回折結果が示したように、負荷による超微視形態的な変化は明確であるにもかかわらず、作用応力と弾性率の間にはこのような複雑な挙動が現れなかった。すなわち、マクロな特性観察から微視構造に生じる変化を判断することは難しいといえる。今回確認した微視構造レベルのミネラル粒子間および、ミネラル-コラーゲン間の組織の付着と剥離挙動に関する特性は、骨組織破壊の発生源として考えることができる。本結果を生体骨に適用することで、非破壊的に測定可能なナノレベルの構造情報を基にした骨強度診断の実現が期待される。特に、整形外科分野において、骨の加齢や疾患の進行を定量的に診断し、骨折リスクを予測する新しい臨床応用技術として利用される可能性が高い。
著者
鈴木 宣也 安田 浩
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会研究報告マルチメディア通信と分散処理(DPS) (ISSN:09196072)
巻号頁・発行日
vol.2006, no.96, pp.73-78, 2006-09-15
参考文献数
10

集団意思決定において、グループの構成人数は結果やプロセスに影響を及ぼす。しかし、これまで対面対話(FTF)に関する研究は心理学的な研究領域で研究されているが、コンピュータを介する対話(CMC)を対象とした研究は少なく、グループの構成人数に関した具体的な数値の言及にいたっていない。2~4人の少人数のグループを対象に、FTFとCMCの実験を行った。対話人数を検討するため、FTFとチャット、ネット会議を使い、それぞれ人数との比較を行い、ツールの違いと対話人数による差を抽出し、特徴についても分析した。In group decision making, the number of people in the group has an influence on the constitution of its processes and results. However, studies about FTF that have been conducted have been within the domain of psychological study. There are few studies for CMC and they do not reference a concrete number of people. We experimented on FTF and CMC with a small group of 2-4 participants. We implemented chat, net meetings and FTF to perform comparisons with various group sizes. To investigate the conversations of groups, we examined different interactive tools and group sizes, extracting differences and analyzing characteristics.
著者
田中 幹大
出版者
大阪市立大学
雑誌
經營研究 (ISSN:04515986)
巻号頁・発行日
vol.59, no.4, pp.43-78, 2009-02

This paper examines the production network of the small- and medium-sized enterprises (SMEs) and the relationship between wholesalers and SMEs with respect of Osaka's bicycle industry during the postwar reconstruction period. The production of bicycles increased rapidly against the background of enormous demand for consumer goods in the postwar period. The bicycle industry in Japan was characterized by a production system called the "assembly system," and many SMEs from the machine metal industry were engaged in bicycle production. Thus, the production network of SMEs and wholesalers played an important role in the revival of SMEs in Japan.
著者
深瀬 政秋 江川 隆輔 佐藤 友暁 伊東 俊輔 中村 維男
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. IE, 画像工学 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.101, no.388, pp.1-8, 2001-10-19
参考文献数
28

ワードに対する同期の取り方が現在主流のパイプラインとは全く異なるウェーブパイプラインは、高周波化、省スペース化、省電力化などの特徴を示すことが期待され、プロセッサの高性能化の有力な手段として研究開発が行われつつある。しかし、従来方式のパイプラインの設計手法とチューニング手法は今なお精力的に開発されていることと比べると、ウェーブパイプラインの本格的な研究はまだ端緒についたばかりなので、その評価は定まっていない。そこで本研究では、ウェーブパイプライン化された各種回路の性能評価を、論理合成、FPGAによるプロトタイプ、スタンダードセルチップの各段階で行う。従来方式のパイプラインを比較対象とし、クロック数、ゲート数、実行速度を評価指数とする。0.5μm CMOSテクノロジィの場合、ウェーブパイプライン化スカラプロセッシングユニットのゲート数は10%少ない。また、これを搭載するプロセッサは、同等レベルのテクノロジィで製造されたSUN UltraSPARC及びDEC Alpha 21164の3.3倍ないし5倍のクロック周波数で動作し、標準的なテストプログラムの実行時間を31%ないし66%短縮する。いずれの観点からも、ウェーブパイプラインの優位性が明らかとなる。
著者
小泉 仰
出版者
国際基督教大学
雑誌
アジア文化研究 (ISSN:04542150)
巻号頁・発行日
no.38, pp.61-74, 2012
著者
関 隆 有澤 正義 二河田 雅信 寺西 貴英 古谷 正敬 持丸 文雄
出版者
社団法人日本産科婦人科学会
雑誌
日本産科婦人科學會雜誌 (ISSN:03009165)
巻号頁・発行日
vol.51, no.1, pp.23-28, 1999-01-01
参考文献数
15

羊水細胞より抽出したDNAを用いて胎児RhD血液型の診断を試みた. RhD陰性(RhD(-))妊婦12例およびRhD陽性(RhD(+))妊婦30例より超音波ガイド下に羊水5mlを採取した. また妊婦血液5mlを採取し, それぞれ核酸抽出剤SepaGeneを用いてDNA抽出を行った. PCRを行うにあたり次の四つのプライマーを作成した. RhCE遺伝子とRhD遺伝子に共通した136 base pair(bp)のPCR産物を得るためA1(5'-TGTGTTGTAACCGAGT-3'), A2(5'-ACATGCCATTGCCG-3')を合成し, またRhD遺伝子に特異的な186bpのPCR産物を得るためA3(5'-TAAGCAAAAGCATCCAA-3'), A4(5'-ATGGTGAGATTCTCCT-3')を合成した. PCRは25μlの反応系で35回のサイクルを行った. PCR産物は3%アガロースゲルで電気泳動を行い解析した. RhD(+)血液試料では136bpと186bpの複バンドが検出され, RhD(-)血液試料では136bpのみの単バンドが検出された. 羊水細胞による分析では136bpと186bpの両者が検出された症例をRhD(+)胎児, 一方136bpのみが検出された症例をRhD(-)胎児と判定した. その結果40例がRhD(+)胎児, 2例がRhD(-)胎児で判定不能な症例はなかった. またすべての症例において, 羊水細胞によるDNA判定は臍帯血による血清学的判定と完全に一致した. 以上より羊水細胞による胎児RhD血液型のDNA診断は信頼性が高く臨床応用への道が開かれた.
著者
関沢 明彦 市塚 清健 松岡 隆
出版者
昭和大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2003

正常妊娠の末梢血を採取し、胎児由来の遺伝子としてY染色体特異的なマーカーであるDYS14遺伝子を標的にして、その妊娠経過に伴う変化を標準化した。この結果を元に、胎児DNA濃度をMultiples of Median (MoM)値に変換し、妊娠週数による違いを補正した上で各種病態における胎児DNA濃度の変化について比較できるようなシステムが整った。RhD血液型診断に関し、研究期間中にRhD陰性の症例は合計で25例に過ぎなかった。RhD遺伝子exon7を標的とする遺伝子診断を行い、25例全例で正確な胎児診断が可能であった。このことから、この方法は、既に確立された方法であり、精度向上を図る必要性がない思われた。超音波診断で極端な下肢の短縮を認めた症例が9例あり、その症例の妊婦血漿を採取した。また、同時に分娩時の膀帯血も採取した。その症例にFGF-R3の遺伝子についてAchondroplasia、Thanatophoric Dysplasiaなどの原因遺伝子を直接シークエンス法で検討した。しかし、9例全例で遺伝子異常は検出されず、新しい診断には結びつかなかった。次に、妊娠高血圧症候群での胎児DNA濃度の変化及びそれを用いた妊娠高血圧症候群の予知についてであるが、妊娠中毒症(妊娠高血圧症候群)では、胎児DNA濃度が上昇することが分った。また、蛋白尿と高血圧の臨床症状の程度と胎児DNA濃度を比較検討した結果、胎児DNA濃度は、蛋白尿及び高血圧とは独立した因子であり、蛋白尿に比較し、高血圧により強く相関していることが分った。また、それらの症状の重症化に伴ってその濃度も上昇することが示され、妊娠合併症の病態把握にも優れたマーカーになると考えられた。
著者
岩本 理
出版者
東京農工大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2009

近年、電位依存性ナトリウムチャネルは抗疼痛や鎮痛作用の分子標的として注目されている。本研究ではサキシトキシン骨格を基盤とすることで電位依存性ナトリウムチャネルのサブタイプ選択的リガンドの創製を志向した、柔軟な合成手法によるサキシトキシン類の全合成について検討を行った。これまでの研究において、サキシトキシン骨格の構築に成功している。しかしこれらの手法は依然、本研究の目的である「多様な構造展開が可能な柔軟な合成手法」を満足できなかったため、依然として残っていた問題点を解決しつつ新たな反応と方法論を開発した。まず、炭素骨格形成時における工程数を短縮させるために、応用例の全くないニトロン-ニトロオレフィン型1,3-双極子付加環化反応と続く化学種選択的な変換反応をワンポット法と組み合わせる手法を開発した。そして従来法では理論上、(-)-デカルバモイルオキシサキシトキシンよりも工程数が必要な(+)-β-サキシトキシノールをより短段階で合成し、(+)-サキシトキシンの形式全合成を達成した。さらに、サキシトキシン骨格形成時における脱保護の必要性に関する問題を、立体配座を制御し、不安定構造を安定化する手法を用いて克服した。これにより12段階25%で得られるサキシトキシノール保護体をサキシトキシン構造活性相関の共通物質として供給可能となった。また、本化合物の有用性を示すべく各官能基の変換について検討を行いα-,およびβ-サキシトキシノールと13位アジド体の合成、そして(+)-デカルバモイルサキシトキシンおよび(+)-ゴニオトキシン3の全合成に成功した。
著者
西 弘嗣 高嶋 礼詩
出版者
石油技術協会(The Japanese Association for Petroleum Technology)JAPT
雑誌
石油技術協会誌=Journal of the Japanese Association for Petroleum Technology (ISSN:03709868)
巻号頁・発行日
vol.70, no.1, pp.6-14, 2005-01-01

The Indian subcontinent and Asian continent first contacted in the late Cretaceous (about 65Ma) and strongly collided after 52Ma because northward motion of the Indian Subcontinent slowed from 18-20cm/yr to 4.5cm/yr. Although the first record of uplift in Himalayan regions has been recorded during the Eocene. Major uplifts of the Himalayan Range and Tibetan Plateau and following sediment supply started from Oligocene through Miocene. Particularly, the rapid uplift stages of Himalayan-Tibetan regions have been recognized, at least. Around 8Ma and the last 1Ma based on sedimentological studies of marine terrestrial sequences. The micropaleontological studies in marine sequences revealed that the increased elevations in the Himalayan-Tibetan regions forced monsoonal circulation about 8Ma, which produced intense upwelling around the Arabian Sea and more seasonal climate changes of terrestrial sequences around the southern Asia. The hypothesis that uplift of plateaus and mountains caused large-scale climate changes during the Cenozoic is still unknown. However, an enhanced chemical weathering due to tectonic uplift in the Himalayan-Tibetan regions may be explained as the active driving force of the Cenozoic global cooling at the beginning of 50Ma.
著者
半田 宏 落合 孝広 青木 伊知男
出版者
東京工業大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2009

SV40外殻タンパク質VP1の自己集合化能を利用して、試験管内でナノカプセルを形成し、ナノカプセルの中へ生理活性物質を導入し、さらにナノカプセル表面を修飾・改変する技術を開発した。また、形状や性状やサイズの異なる構造体をVP1五量体で被覆する技術を開発したので、VP1五量体被覆により形成されるナノカプセルの応用展開される分野を大幅に拡大することが可能になり、新規DDS用キャリアとして極めて有用な高機能性ナノカプセルの基盤となる技術開発に成功した。
著者
青木 和昭 工藤 峰一
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. PRMU, パターン認識・メディア理解 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.101, no.362, pp.17-24, 2001-10-11
参考文献数
15

パターン認識においては、測定コストの削減、および識別子の性能向上を目的として、特徴選択を行う。特に、識別情報を持たない特徴の除去は、有限のサンプルから識別子のパラメータを推定する際にパラメータの推定精度を向上させ、結果的に識別子の性能向上につながる。通常、特徴選択は全クラスの識別に有効な特徴を選択する。しかし、一般には、特定のクラス集合を他から区別するのに有効な特徴集合は異なる。本研究では、クラスの部分集合に対して異なる特徴集合を選択し、それらを利用して決定木として識別子を構成する方法の有効性について検討を行う。
著者
河原 吉伸 津田 宏治 鷲尾 隆 武田 朗子 湊 真一
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. IBISML, 情報論的学習理論と機械学習 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.110, no.476, pp.63-68, 2011-03-21
参考文献数
14

特徴選択は,所与の特徴(パラメータや属性,関数などの集合)の中から問題解決に有効なその一部を取り出すタスクであり,機械学習や統計科学,データマイニングなどにおける最も重要な課題の一つである.この問題は近年,解釈性や計算効率の有用性から,疎な解を誘導しやすいノルムを用いた正則化損失関数最小化の枠組みで議論される場合が多い.損失関数の多くは集合関数として見た場合,劣モジュラ性を有するため,本稿では,特徴選択を劣モジュラ関数最適化として定式化する.これは,最も疎な解を誘導しやすいl_0ノルムを用いた正則化損失関数最小化を直接扱っている事に相当する.著者らは,2分決定図(Binary Decision Diagram; BDD)を用いた解空間の表現,及び,特徴を選択する評価関数の劣モジュラ性を用いた効率的な探索により,厳密解を含む最適性の高い解を列挙する方法を提案する.さらに,提案手法の有用性に関する検証例を示す.