著者
高松 寿夫 新川 登亀男 吉原 浩人 陣野 英則 河野 貴美子 後藤 昭雄 波戸岡 旭 仁平 道明
出版者
早稲田大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

平安時代前期の漢詩文集、とりわけ『菅家文草』の諸本調査を行い、本文の異同、諸本の系統についての検討を行い、新たな見識を得た。2種版本(寛文版本・元禄版本)の本文異同については、漢詩部分(前半6巻)については、一覧にした冊子も作成した。渤海使関係詩の注釈作業を行ったが、その際にも、『菅家文草』諸本調査の成果が役立った。渤海使関係詩の注釈成果は、『早稲田大学日本古典籍研究所年報』誌上に公表した。
著者
橋本 慎吾
出版者
岐阜大学
雑誌
岐阜大学留学生センター紀要
巻号頁・発行日
vol.2004, pp.3-9, 2005-03

パラ言語情報は、言語情報に比べ、一回性が強い(再現性が弱い)と言われている。このパラ言語情報を定量的に分析するために、「3番テーブルの客」というテレビドラマを分析した。このドラマは、毎回同じ脚本を、異なる演者、異なる演出でドラマ化するというもので、異なる演者、異なる状況で発せられる同じセリフを数多く抽出することができる。本稿ではその中の「俺は遊びじゃ歌わない」というセリフを取り上げ、全長持続時間、基本周波数(以下F_0)最大値、F_0平均値、F_0最大値の位置を計測し、共分散分析を行った結果、持続時間とF_0の間に相関は見られなかったが、F_0最大値とF_0平均値の間に強い相関が見られることがわかった。
著者
澤田 有司
出版者
日本大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2003

1.イソフラボノイド骨格合成酵素(CYP93C)の反応機構と分子進化マメ科のCYP93Cは,P450に典型的なヒドロキシル化反応に加え,特異なアリール基転位を触媒し,イソフラボノイド生合成の初発物質2-ヒドロキシイソフラバノンを生成する。この反応機構の解明を目指し,マメ科カンゾウのCYP93C2の推定3次構造上で基質の近傍に存在したアミノ酸残基を改変した。特に,3箇所の変異を組み合わせたS310T-L371V-K375Tは,植物に広く分布するCYP93Bと同じフラボン合成反応(FNS)のみ検出された。従って,これらのアミノ酸残基が反応特異性を規定していることがわかった。さらに,先祖型CYP93はFNSであり,CYP93Bの起源となる一方,反応特異性が変化したCYP93Cが生じた分子進化の過程が推定された[論文1]。2.CYP93C2の可溶化タンパクの大量調製法の確立CYP93C2の活性中心構造に基づく反応機構の解明を目指し,X線結晶構造に必要な大量タンパクの調製を試みた。膜結合部位を削除したCYP93C2を導入した大腸菌の培養条件(シャペロンタンパクの共発現,培養温度,誘導時間,培地成分)およびタンパク質抽出方法(超音波処理,可溶化剤処理,超遠心)を検討した結果,40mg/培養Lの発現系が確立された。さらに,カラム精製(陰イオン交換樹脂,ヒスチジンタグ精製レジン)を行った結果,SDS-PAGE解析で単一バンドを示す精製タンパク(収率45%)が得られた。3.CYP93D1の機能解析機能未同定のCYP93D-Gは,フラボノイド生合成に関わるCYP93A-Cとのアミノ酸配列の相同性が約40%であり,新しい機能が予想された。そこで,シロイヌナズナのCYP93D1の機能解析を目指し,T-DNAタグラインのスクリーニングとflower dip法による遺伝子導入によって,機能喪失株候補および過剰発現株候補を得た。しかし,野生型と比較し形態および成分に顕著な変化は見られなかった。
著者
山上 俊彦
出版者
日本福祉大学
雑誌
日本福祉大学経済論集 (ISSN:09156011)
巻号頁・発行日
no.41, pp.173-200, 2010-09-30

現在の日本において貧困は深刻な社会問題となっている. 1990 年代後半以降, 格差問題が活発に議論されていたが, 焦点は貧困問題へと移行している. 先進諸国において, 従来の社会保障制度は働く貧困層 (ワーキング・プア) の増加に対応できない状況となっている. 貧困問題に真摯に対応することは社会の基盤を構築する上で重要であり, 最低所得を保証するものとして負の所得税やベーシック・インカムが提起されてきた. 欧米の先進諸国では, ワークフェアの一環として, これらを基礎とした税額控除制度が実施されているところである. 福祉国家という概念は, リベラリズムや自然権のみならず, 自由主義思想の影響も受けている. 日本においても社会保障制度を再構築するために制度の哲学的基盤を整備する必要性がある.
著者
小林 成隆 西川 義明
出版者
名古屋文理大学
雑誌
名古屋文理大学紀要 (ISSN:13461982)
巻号頁・発行日
vol.10, pp.23-33, 2010-03-31

貧困はいつの時代でも,どこの国でもみられる.わが国での貧困が,とりわけ注目を集めたのは戦後の混乱期である.その後の高度経済成長の過程で貧困は解消したとされ,話題にならなくなったが,バブル崩壊後の1990年代後半,貧困層の増加と所得格差の拡大がみられるとして,改めて低所得者問題が取り上げられた.貧困や低所得というものは相対的であるが故,その概念や定義は一様ではない.そうした中で厚生労働省は,低所得者の定義として税制上の「市町村民税非課税者等」を示しており,この行政基準が厚生行政上の諸施策の適用基準に用いられ,事実上,今日の低所得者対策を左右している.
著者
高橋 祐介
出版者
有斐閣
雑誌
民商法雑誌 (ISSN:13425056)
巻号頁・発行日
vol.142, no.3, pp.259-313, 2010-06
著者
加藤 雪枝 橋本 令子 雨宮 勇
出版者
椙山女学園大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1999

現代の社会生活においては、毎日の生活の中に人間が本来求めている方向性を見極め、安らぎのある生活空間を特に必要としている。本研究は最も身近な環境すなわち、生活環境の色、室空間容積と照明や音環境などを整え、日々のストレスを解消していく環境とは何かについて研究するものである。生理学的には刺激に対する人体反応の評価方法として有効な中枢神経活動や自律神経活動の測定方法を用いた。中枢神経活動の測定には脳波計を用い、自律神経活動の測定では心電計を用いた。心理学的にはSD法を実施し、因子分析などの解析法を用いた。生活環境下の光色刺激、室内空間や被服の色などの身近な生活環境の色彩について心理的・生理的影響を調べ、比較検討した。対象が異なっても、心理評価の活動性の因子は刺激の高い色において高まり、その結果、α波含有率が抑制され、HF成分は小値となり、評価性の因子が低下することが確認された。音刺激を受けるとα波含有量が増加する環境音は、小鳥のさえずりと風鈴であり、リラックス状態を示した。また花火は、情景を連想して興奮状態となるが、快適な気分となることが確認できた。ヒーリング音楽は、音楽開始後にα波含有量が増加し、音楽を聴取した場合の影響がわかった。そしてヒーリング音楽は、単調で落ち着く音楽が生理評価と心理的評価においてよい影響を与えることが明らかとなった。好みの音楽は、快適感を得る音楽と明るく元気のでる音楽が生理的、心理的評価によい影響を与えた。空間容積、内装色、照度の違いによる快適感の実験である。空間容積では、天井高が2.3〜2.7mで見ると4種の面積のうち6、12畳の長方形空間が快適感が高く、天井高2.3mに限定すると4,5畳が最も高いことがわかった。照度では、270Lx近辺で快適性の高い範囲があり、これは被験者の自室の大きさに近いことが影響を与えていると考えられる。照度を5Lx〜1500Lxに広げると照度が増す毎にα波出現率が下がることが示唆された。