著者
安河内 朗
出版者
九州芸術工科大学
雑誌
萌芽的研究
巻号頁・発行日
1998

本研究は、日韓の民族服である和服と韓服(チョマチョゴリ)を両国の被験者それぞれに着衣させ、高温曝露中の生理的、心理的諸反応を比較することによって衣文化にともなう耐暑反応の違いを検討することを目的とした。被験者は、日本と韓国の健康な女子大学生各々6名で、身長、体重、体表面積、皮下脂肪厚にみられる身体的特徴はほぼ同じであった。使用した和服は浴衣、帯、下駄など、韓服はチョマ、チョゴリ、靴などで構成され、それぞれの全重量は1,232g,1,151gであった。また生地は和服が綿、韓服が絹であった。被験者は同国の2名ずつが1組となって和服か韓服のいずれかを着用し、前室26℃(RH50%)で30分安静後、35℃(RH50%)の高温環境へ立位に近い椅座位で90分間曝露された。測定項目は、直腸温、皮膚温(7点)、発汗率、心拍数、及び温冷感、快適感の主観評価であった。発汗率が和服では日韓両被験者でほぼ等しかったが、韓服においては日本人被験者の方が韓国人被験者よりも大きかった。平均皮膚温の上昇度は、和服で日本人被験者がより大きく、韓服では逆に韓国人被験者がやや大きい値を示した。直腸温の上昇度は、和服で日韓両被験者はほぼ等しく、韓服において韓国人被験者の方が小さかった。韓服では日本人被験者はより大きな発汗率を示したにもかかわらず直腸温の上昇度は大きくなることが示された。
著者
都甲 潔
出版者
公益社団法人 日本表面科学会
雑誌
表面科学 (ISSN:03885321)
巻号頁・発行日
vol.27, no.1, pp.34-38, 2006-01-10 (Released:2007-07-07)
参考文献数
12
被引用文献数
6 3

A taste sensor is composed of several kinds of lipid/polymer membranes for transforming information of taste substances into electric signal. The sensor output shows different patterns for chemical substances which have different taste qualities such as saltiness and sourness. Taste interactions such as suppression effect, which occurs between bitterness and sweetness, can be detected and quantified using the taste sensor. The taste and also smell of foodstuffs such as beer, coffee, tea, mineral water, soup and milk can be discussed quantitatively. The taste sensor provides the objective scale for the human sensory expression. We are now standing at the beginning of a new age of communication using digitized taste.
著者
南出 隆久 長谷川 明子 畑 明美
出版者
一般社団法人日本調理科学会
雑誌
調理科学 (ISSN:09105360)
巻号頁・発行日
vol.27, no.4, pp.271-276, 1994-11-20

抹茶を添加した豆腐を作り、その性状及び成分について調べるとともに、加熱による性状の変化についても検討した。1.豆腐の水分含有率は、抹茶の添加に伴い減少した。また、離水率は抹茶の添加により増大し、1.0%添加の場合に顕著であった。2.抹茶の添加量が増加するほどL^*値は低く、C_<ab^>*値は高い値となった。H_<ab^>^○値は1.0%の方が0.5%のものに比較して若干低い値となった。3.破断過重、破断歪は抹茶1.0%添加の豆腐で顕著に小さくなり、もろく柔らかくなった。4.抹茶の添加により鉄、マグネシウム、カルシウム、カリウムのいずれの成分も増加した。5.豆腐を加熱すると、経時的に色は悪くなるが抹茶添加量が多いほどその傾向が顕著であった。また、破断荷重、破断歪は経時的に増大した。
著者
中北 英一
出版者
京都大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2009

ゲリラ豪雨を予測するために、レーダーで見えない赤ちゃん雲、ひいては卵の状態がどのようであったかを解析し、さらに豪雨発生の状態から元の卵の状態まで時間的に逆推定することで、何を新たに観測すれば予測が可能となるかを明らかにし、降雨予測手法の発展へと結びつけることを研究目的としている。平成22年度には、2010年7月より試験運用を開始した国土交通省のXバンドMPレーダネットワークを用いて以下の成果を得た。1)近畿地方で発生した22事例の積乱雲を対象にレーダー反射強度の3次元画像解析を行った結果、全ての事例において大気上空3-5km高度でその卵の発生を確認することができた。22事例を平均すると約3分ほど地上降水に先行して大気上空で卵が発生しており、レーダーによる3次元観測が極めて重要であることを示した。2)降水セルの3次元追跡手法を開発し、22事例中14事例(6割強)においては自動追跡が可能となった。3次元降水セル自動追跡結果から、エコートップ高度・降水セルの重心高度・降水セルの体積などの時間変化を解析できるようになり、将来的に豪雨をもたらす積乱雲の特徴付けとなりうる指標を作成した。3)発達する卵かどうかに関連して、ドップラー風速と発生高度に着目して解析した結果、積乱雲へと発生した事例においては、ドップラー風速に収束場や渦位を確認することができた。また、卵の発生高度に関して、偏波間相関係数を用いて融解層高度との関係性を調べたようとしたが、対流性雲では融解層高度の特定が困難であった。以上、3次元偏波レーダーデータを用いて、大気上空での卵の発生をとらえ、さらに自動追跡する手法を開発し、発達する事例においてはドップラー風速との関連陸を明らかにした。今後は解析事例を増やし、他の偏波レーダーパラメータやGPSによる水蒸気量などと卵の発達具合について解析を進めていく。
著者
山口 弘誠
出版者
京都大学
雑誌
研究活動スタート支援
巻号頁・発行日
2009

豪雨災害の軽減を目指して、様々な雲微物理量の推定による降雨予測精度の向上を目的に、偏波レーダーから推定される降水粒子種類情報、および水蒸気量をデータ同化することで、降雨予測手法の高度化を実現した。また、偏波レーダーを用いて降水粒子の形成過程を通して水蒸気量を推定できる可能性があるという概念を示した。
著者
前川 泰之
出版者
大阪電気通信大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2002

雨域分布に関連した降雨時の衛星通信回線のネットワーク動作特性については、まず本学(寝屋川)において方位角が約30°離れた3衛星間でのサテライトダイバシティ効果の検討をそれぞれの降雨減衰の測定値を用いて数値的に検討を行なった。降雨減衰値には、SCC、N-STAR、およびBSのKu帯あるいはKa帯電波を同時に測定したデータを用いた。一方、20〜50km距離が離れた数地点間におけるサイトダイバシティ効果についても、同様に測定値に基づく数値実験的な評価より総合的に検証を行った。測定地点としては、本学(寝屋川)と本学から北東に18km離れた京都大学宇治構内、および約42km東方の同信楽MUレーダーサイトを選び、SCC(スーパーバード)およびBS電波受信装置をそれぞれ設置した。そして降雨減衰同時の累積発生時間率分布について2003年から2004年のほぼ2年間にわたって蓄積された各測定点のデータからサイトダイバシティ効果の評価を行った。その結果、Ku帯において1地点では年間時間率0.1%程度発生する3〜4dB程度の減衰量は、2地点間でサイトダイバシティによる切替え受信を行うことにより、ほぼ0.01%以下に減少させることが可能であることが示された。また上記の3地点間での減衰発生の時間差から雨域の移動速度と移動方向の推定し、2003年から2004年の2年間に得られた約100例の降雨事象について、天気図での前線や低気圧等の移動速度や方向と比較を行った結果、両者の間に0.9を超える良い相関があり、数十km程度の距離では前線とほぼ垂直な方向へ雨域が全体的に移動していることが本測定により実証された。そしてサイトダイバシティ効果については、前線と垂直な通過方向に2局を配置するほどその効果が上がることが統計的に示された。また、サテライトダイバシティでの伝搬路の差による効果についても同様の傾向が認められた。
著者
中村 浩二
出版者
金沢大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1988

(2) 金沢市湯涌にあるハクサンアザミの群落とその周辺でアリ類の生態の基礎調査を行ったところ,2亜科9属16種が確認され,そのうち高密度であったのは,ムネアカオオアリ,トビイロケアリ3種,アシナガアリであった。(2) ハクサンアザミには,アザミヒゲナガアブラムシと他1種が5月後半から7月ごろまで高密度に発生するが,これにはアリ類はattend(随伴)しなかった。(3) アリ類に対するアザミ食葉性甲虫類の防衛行動をクロヤマアリの野外コロニ-とエゾアカヤマアリの室内飼育コロニ-を使って実験した。ヤマトアザミテントウ,アザミクビホソハムシ,アザミカミナリハムシには化学防衛が認められた。しかし,アザミクビホソハムシの防衛には背中にのせた糞の存在が重要であること,アザミカミナリハムシの化学防衛力はあまり強くないこと,ヤマトアザミテントウの化学防衛力は安定して強力であった。アオカメノコハムシは尾端に乗せた糞を巧みにあやつってアリの攻撃をかわすことができた。キベリトゲトゲは全く無防備であっが潜葉性であるためにアリには攻撃されにくいであろう(4) 渓流ぞいの谷間,道沿い,開けた場所など異なる環境にはえているハクサンアザミに対する各種甲虫類の分布を調べたところ,ヤマトアザミテントウは谷間に限って分布するが,アザミカミナリハムシ,アオカメノコハムシは様々なハビタ-トを利用できることがわかった。(5) ハクサンアザミの植物体上でのアリの密度は低かったこと,また甲虫類の化学防衛できるので,アリがギルド構造に及ぼす効果は少なかった
著者
白倉 一由
出版者
山梨英和大学
雑誌
山梨英和短期大学紀要 (ISSN:02862360)
巻号頁・発行日
vol.26, pp.23-34, 1992-12-10

『日本永代蔵』の主題についての論究は現在まで多くの先学によってなされている。作品の主題は作品の文芸性の追及でなければならない。『日本永代蔵』の主題は西鶴が『日本永代蔵』で書いている本質性の究明でなければならなく、文芸性を捉えなければならない。『日本永代蔵』六巻六冊各巻五章合計三十の短篇小説集であるが、各短篇の主題について文芸性の観点から追及し究明した。巻一から巻四までと巻五巻六とは一度に書かれたものではなく、二度に分けて執筆されている事は文献学的・書誌学的な観点からもいいえるが、文芸の成熟度、文芸性の観点からもいうことができる。巻一から巻四までの作品は文芸として昇華されているが、巻五巻六の作品は教訓的・素材的未熟の作品である。『日本永代蔵』の主題の第一は世の人心の究明であり、第二は才覚・始末等人間の行き方、人生如何に生きるかの問題であり、第三は人間の力の限界、神の認識であり、第四は算用その他の町人生活の方法であり、第五は商業資本主義の社会構造の把握である。
著者
森 耕一
出版者
園田学園女子大学
雑誌
園田国文 (ISSN:02881454)
巻号頁・発行日
vol.21, pp.57-72, 2000-03-15
著者
山内 正人 砂原 秀樹
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. IA, インターネットアーキテクチャ (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.109, no.438, pp.97-100, 2010-02-22
参考文献数
18

センサの低価格化や高性能化が進み、様々なセンサの設置が進んできている。また設置されたセンサをネットワークで繋ぐことでセンサ単体では困難なことが可能となった。例えば気象センサネットワークでは高密度な気象データを集めることで、低密度なセンサデータでは困難であったゲリラ豪雨などの高精度な予測が実現可能となる。しかし、センサデータを応用するためには、データの信頼性も重要となる。従来では人手によってセンサデータの信頼性を確保していたが、本稿ではMicro blogを用いることで、自動でセンサデータの信頼性が向上できることの可能性について示した。これにより、今後規模が爆発的に増大するセンサネットワークへも対応が可能となる。
著者
古屋 秀隆
出版者
大阪大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2002

(1)分類日本海産アオリイカから1種(Dicyema koshidai)、土佐湾産スナダコから3種(Dicyema irinoense, Dicyema tosaense, Dicyema sphaerocephalum)、瀬戸内海産イイダコから3種(Dicyema akashiense, Dicyema awajiense, Dicyema helocephalum)、土佐湾産ヨツメダコから2種(Dicyemas balanocephalum, Dicyema leiocephalum)およびの沖縄産コブシメから1種(Dicyemennea ryukyuense)、10新種を発見し記載した。(2)系統と進化ニハイチュウ類の系統と進化について、次のことを明らかにした。1)ニハイチュウの極帽形態が宿主の頭足類間で収斂していることが示唆された。2)ニハイチュウの生活史戦略を明らかにした。3)2科6属のニハイチュウ類の滴虫型幼生の細胞数と細胞構成を明らかにした。3)頭足類の腎臓の構造とニハイチュウ類の寄生状況を比較検討した。4)ニハイチュウと頭足類との関係(宿主特異性や共進化)を明らかにする前段階として、まずミトコンドリア遺伝子(16S rRNA,12S rRNA,COI)を用いて日本沿岸産の頭足類33種の系統関係を明らかにした。ニハイチュウの系統関係に関しては、現在までにアオリイカ、マダコ、イイダコ、アマダコ、スナダコ、コウイカ、カミナリイカ、シリヤケイカに寄生する16種のニハイチュウについて、ミトコンドリアCOI遺伝子の塩基配列を明らかにした。現段階で、ニハイチュウ類の系統に関しては、同じ宿主の頭足類にみられる種どうしは、異なる宿主の間の種よりも近縁であり、ニハイチュウ類は頭足類と共進化してきたことが示唆された。
著者
前川 泰之
出版者
大阪電気通信大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2000

大阪電気通信大学(寝屋川市)構内の衛星通信実験局で過去15年間以上にわたり連続測定を行ったCS-2、CS-3、およびN-StarのKa帯ビーコン波(19.45GHz、右旋偏波、仰角49.5°)を用いて、各種前線通過時の降雨減衰の累積時間と継続時間特性を詳しく調べた。その結果、4dB以下のしきい値では、温暖・寒冷・閉塞前線、5dB以上のしきい値では、停滞前線や夕立・台風による降雨時に発生する減衰がより大きな累積時間率を占めることが分った。また、継続時間分布は3〜10dB程度のしきい値に対し、寒冷前線、停滞前線、夕立・台風の順に大きくなり、しきい値が低い場合には温暖前線が占める時間率が大きくなり、しきい値が高くなると停滞前線南側の影響が大きくなることが示された。同様に過去13年間にわたって連続測定されたKu帯放送衛星電波(11.84GHz、右旋偏波、仰角41.4°)を用い、各種前線通過時におけるKa、Ku両周波数帯間の降雨減衰特性の比較検討を行なった。その結果、減衰比の年変化については、梅雨期に停滞前線上を低気圧が通過する際に発生する降雨では減衰比が大きいのに対し、秋雨期の停滞前線の南側で発生する降雨では夏季の夕立と同様減衰比が小さいことが分った。この変化は主として雨滴粒径分布の差異で生じ、前者は霧雨型、後者は雷雨型との対応が示された。さらに、過去4年間(1995-1998)測定されたKu帯JCSATの上下回線(14/12GHz)の降雨減衰量を用い、軌道位置110°(BS)、132°(N-Star)、および150°(JCSAT)の各衛星間でサテライトダイバシティを行なった際に期待される不稼働率の改善度について数値的に検討を行なった。計算は降雨事象毎の雨滴粒径分布に応じて減衰係数を変換し、衛星間の測定値をKa帯(19.45GHz)あるいはKu帯(11.84GHz)に換算することにより行なった。その結果、Ka帯では10〜20dB(Ku帯では3〜10dB)程度の減衰量に対し、約20〜50%の不稼動率の改善が見込めることが分った。
著者
蒲生 重男
出版者
横浜国立大学
雑誌
横浜国立大学理科紀要. 第二類, 生物学・地学 (ISSN:05135613)
巻号頁・発行日
vol.38, pp.1-21, 1991-10-31

Eleven specimens of serolids (Crustacea, Isopoda, Flabellifera, Se-rolidae) were collected by the Japanese Antarctic Research Expedition (JARE) from the Antarctic Sea during 1973-85. Examination of the materials has resulted in the finding of four known species, Serolis polita PFEFFER, S. pagenstecheri PFEFFER, S. (Ceratoserolis) trilobitoides EIGHTS, and S. (C.) meridionalis VANHOFFEN, Some brief notes and illustrations are given for the species.
著者
高野 陸男
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会研究報告オーディオビジュアル複合情報処理(AVM)
巻号頁・発行日
vol.1993, no.53, pp.3-10, 1993-06-18

マルチメディア通信の実現に向けて将来ビジョンと技術課題を述べる。まず、メディア符号化とネットワーク性能との関係を示し、高圧縮符号化技術とメディア構造化技術が、経済化の観点から重要であることを述べる。構造化の例として、ISDNカラオケ、キャッチビジョンについて説明する。次に、シームレス化技術が人間の生産活動支援の観点から重要であることを述べる。例として、クリアボード、多視線一致撮像表示システム、音像定位通信システムについて説明する。最後に、マルチメディア通信により変革がもたらされることが期待される実作業として、協調作業、遠隔モニタリング、情報提供サービスについて考察する。This paper discusses future vision and technology toward multimedia communication. First, the relation between media coding and network is shown. High efficiency coding techniques and structure techniques are important for economical multimedia communication systems. As the examples of systems using structured media, the Karaoke system through ISDN and the event driven visual communication system are shown. Next, seamless multimedia communication systems such as the ClearBoard, the multiple-eye-contact teleconference system and the stereophonic sound image localization system are shown. Finally, cooperative work, monitoring and information providing are discussed as the fields innovated by the multimedia communication systems.