著者
数土 直紀
出版者
Japanese Association For Mathematical Sociology
雑誌
理論と方法 (ISSN:09131442)
巻号頁・発行日
vol.27, no.2, pp.225-242, 2012

本論文の目的は,社会変動をつうじて地位が形成される過程を明らかにすることにある.本論文では,以下の条件が満足されるとき,ある個人属性は地位としてみなされるようになると仮定した: (1) その属性は個人の能力によって獲得されている,(2) その属性のばらつきが社会変動によって大きくなっている.この仮説を検証するために,本論文では婚姻状態に注目し,1985年SSM調査データ(N = 2,650) とSSP-I 2010データ(N = 1,502)をもちいて婚姻状態が階層帰属意識に及ぼす効果について分析をおこなった.分析結果は,結婚年齢に関するばらつきが相対的に大きい2010年では未婚であることが階層帰属意識に対してネガティブな効果をもっている一方で,結婚年齢に関するばらつきが相対的に小さい1985年では未婚であってもそれは階層帰属意識に対して何も効果をもっていないことを明らかにしている.しかしその一方で,分析結果は,未婚であることが階層帰属意識に対してもっている効果は社会階層間で異なっていることを明らかにしている.これらの事実は,本論文の仮説を限定的に支持するものといえるだろう.
著者
川部 裕幸
出版者
国際日本文化研究センター
雑誌
日本研究 : 国際日本文化研究センター紀要 (ISSN:09150900)
巻号頁・発行日
vol.21, pp.117-145, 2000-03-30

浮世絵の一つに「疱瘡絵」と称されるものがある。疱瘡絵はかなり特殊な浮世絵である。疱瘡(天然痘)にかかった病人への見舞い品として贈られたり、病人の部屋に貼られるという用途に限って用いられた浮世絵である。また、疱瘡絵は、全面、濃淡二種の赤色のみで摺刷されているという、際立った特徴を持つ。
著者
黄 宏軒 上亟 正樹 関 優樹 李 周浩 川越 恭二
出版者
一般社団法人 人工知能学会
雑誌
人工知能学会論文誌 (ISSN:13460714)
巻号頁・発行日
vol.28, no.2, pp.187-196, 2013 (Released:2013-02-01)
参考文献数
10
被引用文献数
2

The use of virtual conversational agents is awaited in the tutoring of physical skills such as sports or dances. This paper describes an ongoing project aiming to realize a virtual instructor for ballroom dance. First, a human-human experiment is conducted to collect the interaction corpus between a professional instructor and six learners. The verbal and non-verbal behaviors of the instructor is analyzed and served as the base of a state transition model for ballroom dance tutoring. In order to achieve natural and highly interactive instruction during the multi-modal interaction between the virtual instructor and the learner, it is necessary to divide the learner's motion into small but meaningful segments in real-time. In the case of ballroom dance, the smallest meaningful unit of dance steps is called count which should be synchronized with the beats of accompanied music. A method of automatic extraction from the learner's dance practice motion into count segments is proposed in this paper. This method is based on trajectory similarity comparison between the motion of the learner and the data collected from a professional dance instructor using Angular Matrix for Shape Similarity (AMSS). Another algorithm for identifying the worst performed portion and the corresponding improvement of the learner's motion is also proposed. Finally, a comparison experiment between the prototype system and a non-interactive self-training system was conducted and reported.
著者
土斐崎 龍一 飯場 咲紀 岡谷 貴之 坂本 真樹
出版者
一般社団法人 人工知能学会
雑誌
人工知能学会論文誌 (ISSN:13460714)
巻号頁・発行日
vol.30, no.1, pp.124-137, 2015-01-06 (Released:2015-01-06)
参考文献数
51
被引用文献数
1 1

With the widespread use of online shopping in recent years, consumer search requests for products have become more diverse. Previous web search methods have used adjectives as input by consumers. However, given that the number of adjectives that can be used to express textures is limited, it is debatable whether adjectives are capable of richly expressing variations of product textures. In Japanese, tactile and visual textures are easily and frequently expressed by onomatopoeia, such as ``fuwa-fuwa'' for a soft and light sensation and ``kira-kira'' for a glossy texture. Onomatopoeia are useful for understanding not only material textures but also a user's intuitive, sensitive, and even ambiguous feelings evoked by materials. In this study, we propose a system to rank FMD images corresponding to texture associated with Japanese onomatopoeia based on their symbolic sound associations between the onomatopoeia phonemes and the texture sensations. Our system quantitatively estimates the texture sensations of input onomatopoeia, and calculates the similarities between the users' impressions of the onomatopoeia and those of the images. Our system also suggests the images which best match the input onomatopoeia. An evaluation of our method revealed that the best performance was achieved when the SIFT features, the colors of the images, and text describing impressions of the images were used.
著者
神野 恵
出版者
独立行政法人国立文化財機構奈良文化財研究所
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2015-04-01

律令制下の土器生産は、国家主導のもとで行われ、諸国で作られた土器は、一定の規格で製作され、都城への貢納品として運ばれた。一定規格が要求されるため、製作技法や形態から、土器の生産地を特定することが難しい場合もあり、当該時期の土器生産の生産と消費の実態把握を難しくしている。一定規格で生産とはいえ、都城に集まる土器は、生産地に起因するであろう胎土、形態、法量に微妙に差異が認められ、生産地ごとの分類が必須条件となるとの研究視座から、生産地を念頭においた群別分類をおこなってきた。本研究では、とくに広域に流通する須恵器の群別分類を見直し、より正確にするための化学分析データの蓄積と分析を進めてきた。平城京への須恵器供給が確実な、和泉陶邑窯、奈良山の諸窯、生駒東麓の諸窯の窯出土資料あるいは表採資料について、蛍光X線分析のデータを蓄積するとともに、「延喜式」において須恵器の調納が義務付けられている備前寒風窯をはじめ、考古学的観察によって一定量、消費されていることが明らかな尾張猿投窯、遠江湖西窯などの須恵器についても化学分析のデータを蓄積してきた。このデータは、胎土の粘土成分を削って粉末にしたうえで、エネルギー分散型の蛍光エックス線を用いる方法で測定をおこなってきた。昨年度より、これらデータの再現性、信頼性を確認するため、JIS規格にのった方法であるガラスビード法を波長分散型蛍光X線で測定したデータを追加し、分析値の偏りや信頼性の確認を進め、既発表のデータについても、精度を検証するとともに、データを追加し、7~8世紀の須恵器生産地ごとの基礎的データを網羅的にまとめることを目指す。さらに、考古学的手法による観察結果とこれらデータを対象させながら、律令期における土器の群別分類を再構築する。
著者
皆川 達夫
出版者
美学会
雑誌
美學 (ISSN:05200962)
巻号頁・発行日
vol.20, no.2, pp.54-74, 1969-09-30

In this article formation and chronology of the Cyclic Mass are discussed : according to the present writer's terminology of a Cyclic Mass, the five sections of Ordinarium Missae are unified by the use of same Cantus Firmus and the Motto (Kopfmotiv). The writer tries to conclude that the Cyclic Mass-form can be one of the criteria of the Renaissance music, that the groping of the Cyclic Mass-form on the 14th century can be regarded as the "proto-Renaissance, " the end of the Medieval music, the formation of the form on the middle of the 15th century as the commencent of the Renaissance music, and the decline of the form on the middle of the 16th century as the fall of the Renaissance music and that the Masses after that period, including the works of Lassus, Palestrina and Victoria should be rather classified as the works of Manierism.
著者
瀬村 雄一 吉田 則裕 崔 恩瀞 井上 克郎
出版者
The Institute of Electronics, Information and Communication Engineers
雑誌
電子情報通信学会論文誌 D (ISSN:18804535)
巻号頁・発行日
vol.J103-D, no.4, pp.215-227, 2020-04-01

近年実務に使用されるプログラミング言語は多様化し,ある一つのプログラミング言語においてもその文法はバージョンごとに差異をもつ.字句単位のコードクローン検出ツールCCFinderXは,多様な言語に対応するためのシンプルな仕組みをもたない.提案ツールとして,構文解析器生成系の一つであるANTLRの構文定義記述を入力として与えることで,新たな言語の字句解析が可能になるコードクローン検出ツールCCFinderSWを開発した.評価実験では,42言語の構文定義記述からコメントや予約語,文字列リテラルの情報を抽出し,81%の言語でこれら3種類の情報が抽出可能であることを示した.また,C++で記述されたソースコードに対するコードクローン検出においてCCFinderXと出力を比較し,ほぼ同等の検出能力をもつことを示した.

3 0 0 0 OA 怪異草紙

著者
畑耕一 著
出版者
大阪屋号書店
巻号頁・発行日
1925
著者
野田 優希 古川 裕之 松本 晋太朗 小松 稔 内田 智也 石田 美弥 佃 美智留 藤田 健司
出版者
日本ヘルスプロモーション理学療法学会
雑誌
ヘルスプロモーション理学療法研究 (ISSN:21863741)
巻号頁・発行日
vol.6, no.4, pp.197-200, 2017
被引用文献数
1

<p>バレーボールの傷害調査を行い,男女間の傷害発生の傾向を分析した。対象は469名1046件(男性142名332件,女性327名714件)であった。部位別傷害発生率は男女ともに膝関節と足関節が上位を占めた。疾患別傷害発生率は足部,腰部,肩関節,下腿において男女間で有意な差がみられた(P<0.01)。足部では,女性において中足骨疲労骨折の発生率が高かった。腰部では,男女共に筋筋膜性腰痛が多くを占めた。また男性において椎間板性腰痛症の発生率が高かったことが特徴的であった。肩関節では,男性で肩関節インピンジメント症候群,女性では動揺肩が多かった。下腿では,女性においてシンスプリントの発生率が高かった。バレーボールでは足部,腰部,肩関節,下腿において発生する傷害が男女で異なっており,コンディショニング指導の際は性差による傷害発生の特徴を考慮する必要性が示された。</p>
著者
水野広徳 著
出版者
海洋社
巻号頁・発行日
1930
著者
河岡英男 著
出版者
潮風閣
巻号頁・発行日
1911
著者
高谷 邦彦
出版者
北海道大学
巻号頁・発行日
2016-03-24

「インターネットは、印刷術以来の最も重要なメディア」(ギルモア, 2004[2005], p.381)であることを否定する者は今やいないだろう。インターネットは個人のライフスタイルを大きく変えただけでなく、20 世紀には想像すらできなかったビジネスモデルを生み出し、さらに、2011 年にアフリカ諸国で起きた政変のように、革命の武器として国家を揺るがすほどの力すら備えていることが証明された。私たちは今、メディアの革命期に生きている。1990 年代後半に広く社会に普及したインターネットと呼ばれるコンピューター・ネットワークと、そのネットワークを利用した電子メールやウェブ(World Wide Web)などの各種サービスが、私たちの生活スタイルや社会、ビジネス、考え方、行動などをすっかり変えてしまった。ポケットに入る小さなウェブ端末のスマートフォンがあれば、どこにいてもプライベートから仕事までたいていの用事を済ませることができる。私たちのコミュニケーションのスタイルも大きく変化した。20 世紀までの手紙や電話を主体としていたパーソナルなコミュニケーションがインターネットを介した電子メールや各種メッセージサービスによって強化され多様化しただけでなく、個人レベルでもマス・コミュニケーションを実現することが容易となり、世界中の不特定多数の人々と様々なスタイルでコミュニケーションを取ることが可能となった。 インターネット、特にウェブが、この10 数年間で世界と私たちを一変させたのである。私たちは情報の発信者となった。1999 年9 月に米国パイララボ社(Pyra Labs)がBlogger.com というブログ作成サイトを開設したのを契機として、誰でも気軽に利用できるブログ(Weblog:ウェブログ)サービスが日本を含む世界各国に普及するようになり、以降、プロフェッショナルの書き手ではない一般の生活者による文章がウェブに溢れることになった。2000 年代後半になってブログ・ブームが一段落してからも、短文投稿サービスのTwitter や、動画共有サイトのYouTube、日記や近況を時系列で管理するブログ的な要素を持つSNS が人々の生活に定着し、日々の出来事や何気ないつぶやきを投稿したり、自ら撮影した写真やビデオを公開したりするなど、日々のプライベートな生活の様子をウェブという公開の場に記録し発信するという行為がごく日常的なものとなっている。ウェブには多数の個人のプライベートな行動の記録がマルチメディアなデジタルデータとして集積され始めた。特に日本人が運営するブログは「ウェブ日記」的な内容が多いと言われる。『ソーシャルメディア白書2012』(トライバルメディアハウス&amp; クロス・マーケティング, 2012)によると、ブログの利用目的では「自分の個人的な雑感などを発信するため」が最も多い(26.9%)。日記というのは「その個人が生きた時代と社会的背景を共有して生きた人びとの生活を紐解くための資料」(水越, 2002, p.37)であり、学術的に貴重な資料である。しかし日記というものは公開を前提としたものではないため、著名人や作家など一部の例外はあっても、不特定多数の生活者の日記を自由に閲覧することは困難であった。したがって一般人の日記を資料とした研究はなかなか発展してこなかったわけであるが、2000 年代になって日記がウェブという公開の場で書かれるようになり、個人的な生活の記録(ライフログ)を分析することで、2000 年代に生きる人々の生活や行動を紐解くことが可能になった。 多数の人々が個人的な生活の記録を公開して、いわゆる「ビッグデータ」が入手可能になった。それを分析することで、2000 年代の人々の生活や行動を紐解くことが可能になろうとしている。現在、情報ネットワーク分野の研究では、アンケート調査、各種ログの収集解析、テキストマイニングなどによる定量的な分析手法が主流となり、さまざまな成果を上げている。一方で、グローバリゼーションとパーソナライゼーションの2極化が進んだ現代の多様化した個人の特性は、数値化した膨大なデータの定量的分析では見落とされてしまうのではないかという疑問もある。「マスの時代」から「多様な個の時代」へと変容を遂げた社会背景のなか、マス・データを扱うのではなく、生活者個々人の日常的なコンテキストに注目することによって初めて見えてくる事実もあるのではないか。本研究の最大の関心はそこにあり、ミクロ的視点で個人ユーザのライフログを観察・分析することにより、現代の人々のウェブにおける行動原理の一端を明らかにしようとするものである。
著者
Hiroshi TAKAYANAGI
出版者
The Japan Academy
雑誌
Proceedings of the Japan Academy, Series B (ISSN:03862208)
巻号頁・発行日
vol.96, no.4, pp.159-169, 2020-04-10 (Released:2020-04-10)
参考文献数
49
被引用文献数
9

Bone is a critically important part of the skeletal system that is essential for body support and locomotion. The immune system protects against pathogens and is active in host defense. These two seemingly distinct systems in fact interact with each other, share molecules and create a collaborative regulatory system called the “osteoimmune system”. The most representative osteoimmune molecule is receptor activator of NF-κB ligand (RANKL), which plays multiple roles in the osteoimmune system under both physiological and pathological conditions such as rheumatoid arthritis and cancer metastasis to bone. Based on accumulating evidence for such mutual dependence, it is concluded that the relationship between bone and the immune system did not develop by accident but as a necessary consequence of evolution. Here I describe the history of and recent advances in osteoimmunology, providing a perspective in the contexts of both science and medicine.

3 0 0 0 OA 南洋の油田

著者
大村一蔵 著
出版者
古今書院
巻号頁・発行日
1942