- 著者
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高橋 伸彰
山本 紳朗
- 出版者
- 帯広畜産大学
- 雑誌
- 帯広畜産大学学術研究報告
- 巻号頁・発行日
- vol.28, pp.13-22, 2007-10
土壌pH と有機物施用が土壌有効態ミネラル濃度,トマトの生育,ミネラル濃度,食味に及ぼす影響について調べた。硫酸および水酸化カルシウムにより土壌pH を4~10 に調整し,化成肥料によりトマトを栽培した。また,これらのpH の土壌に堆肥とボカシ肥を合わせて施用し,トマトを栽培した。土壌の有効態ミネラル濃度は,酸性土壌においてはカリウム,カルシウム,マグネシウムは低下し,鉄,マンガンは高まった。また,アルカリ性土壌においてはマグネシウム,鉄,亜鉛,マンガンは低下した。トマトの地上部および地下部乾物重は,酸性およびアルカリ性土壌において大きく低下した。トマト体内のミネラル濃度は,酸性土壌ではカリウム,カルシウム,マグネシウムは低下し,マンガンは高まった。アルカリ性土壌では亜鉛,マンガンは低下した。トマトのミネラル吸収量は,酸性およびアルカリ性土壌においてこれら全てのミネラルが大きく低下した。果実の酸度および食味は酸性土壌では低く,pH の増加にともない高まった。有機物施用は,アルカリ性土壌において,トマトの乾物重とカリウム,カルシウム,マグネシウム,亜鉛吸収を改善した。しかし,土壌においてこれらのミネラルの有効態化は認められなかった。これより,有機物施用によるアルカリ性土壌でのトマトの生育改善は,土壌化学性への直接的な作用によるものではないと考えられる。