著者
村上 卓 塩野 淳子 石橋 奈保子 石川 伸行 阿部 正一 野間 美緒 坂 有希子 堀米 仁志
雑誌
第51回日本小児循環器学会総会・学術集会
巻号頁・発行日
2015-04-21

【目的】心房中隔欠損症の多くは思春期まで無症状である。心房中隔欠損症が小児期の身体発育に及ぼす影響について検討した。【対象と方法】2005年1月~2014年12月に15歳以下の心房中隔欠損症103例に延べ106件の心臓カテーテル検査を施行し、他の病態が身体発育に関与しうる25例(染色体異常、左右短絡疾患(心室中隔欠損, 動脈管開存)合併、超低出生体重児、側彎合併、肺動脈弁狭窄治療後、成長ホルモン分泌不全、経管栄養、精神運動発達遅滞)を除外した。1)カテーテル検査時の身長SD、体重SDにQp/Qs、Pp/Ps、Rpが及ぼす影響について検討した。2)心房中隔欠損閉鎖術を施行された症例における術前身長SD、体重SD(カテーテル検査時)と術後身長SD、体重SD(術後6~18か月時)を比較検討した。また、Δ体重SD、Δ身長SD(術前と術後の差)に手術時年齢、術前身長SD、術前体重SD、Qp/Qs、Pp/Ps、Rpが及ぼす影響について検討した。【結果】1)81件(80例)(男35:女46、年齢中央値5y3m(範囲5m~14y1m))の体重SD -0.25±1.09、身長SD -0.16±1.18(平均±SD)と身体発育の低下を認めた。体重SDとQp/Qs、身長SD とPp/Psに負の相関(r=-0.26, p=0.02、r=-0.29, p=0.01)を認めた。2)49例(男27:女22、手術時年齢平均5y5m(範囲9m~13y10m))に心房中隔欠損閉鎖術が施行された。術前体重SD -0.30±1.12 vs 術後体重SD 0.06±0.96(p<0.01)、術前身長SD -0.20±1.12 vs 術後身長SD 0.06±1.01(p<0.01)(平均±SD)と術後に体重と身長の増加を認めた。Δ体重SDは術前体重SD(r=-0.48, p<0.01)や手術時年齢(r=-0.40, p<0.01)と、Δ身長SDも術前身長SD(r=-0.43, p<0.01)や手術年齢(r=-0.58, p<0.01)と負の相関を認めた。【結論】心房中隔欠損症は短絡量や肺動脈圧が身体発育障害に影響している可能性があり、低年齢で身体発育障害が強い症例では閉鎖術により身体発育の改善が期待される。
著者
東京工業大学附属科学技術 高等学校
雑誌
日本地質学会第128年学術大会
巻号頁・発行日
2021-08-14

生徒氏名:人見あかり、佐藤諒弥、池田こころ、雄川綾太、冨岡りこ、山口歌音テトラポドフィスの化石から推定される姿をロボットとして復元する。本報告では脚に着目し、ヒレや筋肉といった化石には残されない部分を仮定して動作実験を行うことでテトラポドフィスの脚の役割を検討した。
著者
山崎 大 Pavelsky Tamlin
雑誌
JpGU-AGU Joint Meeting 2017
巻号頁・発行日
2017-03-10

SWOT (Surface Water and Ocean Topography)は、米国NASAとフランスCNESが2021年に打上げを予定している次世代衛星高度計ミッションであり、海域および陸域の水面標高の詳細な時空間分布の計測を目的としている。Envisat RA2・Cryosat・Jason 1/2などの既往の衛星レーダー高度計は機体直下の水面標高をレーダーパルスで観測する「Nadir Altimeter」であったが、SWOTでは合成開口レーダー干渉計を用いて水面標高を高解像度で2次元的に計測する「Swath Altimeter」である。SWOT衛星は高度約890km太陽非同期の約21日周期軌道で、北緯78度〜南緯78度を観測範囲とする。観測幅(Swath width)は衛星軌道直下の約120kmで、観測範囲内の陸域と海域をほぼ欠損域なくカバーする。陸域においては河川や湖沼など小さな水体を捉えるため100m未満の高解像度で観測を行い、海域においては黒潮などの中規模渦を主要なターゲットとして約500m解像度で観測を行う。 とりわけ陸域に関しては、海洋と比較して河川や湖沼などの水体は空間スケールが非常に小さいため、SWOTによる高解像度の水面標高観測は地表水動態の理解を劇的に進めることが期待されている。幅100m以上の河川と面積5ha以上の湖沼湿地を鉛直誤差10cm未満で観測することで、地表水の空間分布および貯留量の時間変化の推定を目指す。また、直接的な河川水位の観測に加えて、水面勾配も導出できるため、衛星観測からの河川流量の推定も計画されている。SWOTによる観測は、補助的な地形データやモデルと組み合わせることによって、湖沼や貯水池の水量変化、洪水と渇水の発生、湿地や氾濫原の水動態などの、地球規模での解明を進めると期待される。 2021年の打上げに向けて、機体や観測機器の開発だけでなく、観測誤差の推定、アルゴリズム開発、補助的なデータ・モデルの準備が精力的に進められている。本発表では、SWOTミッションの概要について、主に発表者が関わっている水文研究に着目して俯瞰的に紹介する。
著者
北村 晃寿
雑誌
日本地球惑星科学連合2018年大会
巻号頁・発行日
2018-03-14

1771年八重山地震に伴う八重山津波は,石垣島を中心に先島諸島全域にわたり,1万2千人の犠牲者と甚大なる被害を与えた.その最大遡上高は30mと推定され,2011年の東北地方太平洋沖地震の津波の発生まで,日本の歴史上,最大の津波とされていた.この八重山津波とそれ以前の大津波の痕跡として,「サンゴからなる津波石」や「遺跡を覆う石灰質の砂質津波堆積物」が報告されていた.最近,静岡大学防災総合センター客員教授の安藤雅孝氏が,石垣島の丘陵地で,人為改変から免れた砂質津波堆積物の“埋蔵地”を発見した.そこのトレンチ調査では, 4つの津波堆積物(上位から津波堆積物I,II,III,IV)が識別され,それらの年代は,西暦1950年を基準として,248年前以降,920–620年前,1670–1250年前,2700–2280 から1670–1250 年前である(Ando et al., 2018, Tectonophysics, 722, 265-276).I,II,IVは石灰質砂からなり,陸側末端まで追跡できたので,末端高度(それぞれ9 m,6 m,8 m)を確定できた.津波堆積物Iは1771年八重山津波の津波堆積物で,末端高度(9 m)は古文書と一致する.津波堆積物I直下の土壌層には,複数の地割れが発見され,八重山地震では激しい地震動のあったことが裏付けられた.津波堆積物I,II,IVは貝化石を産し,それらの種組成から津波発生時にサンゴ礁の礁嶺が存在していたことが分かった(Kitamura et al., submitted).津波堆積物IIIは埋没津波石で標高1 mに見られる.津波堆積物IVの年代値の確定が不十分などの問題があり,追加の調査が望まれる.
著者
菊池 蘭 伊藤 創馬 太田 美鈴 日高 慎二 瀧沢 裕輔 栗田 拓朗 中島 孝則
雑誌
日本薬学会第140年会(京都)
巻号頁・発行日
2020-02-01

【目的】ベルソムラ錠の有効成分であるスボレキサントは、覚醒物質オレキシン受容体を可逆的に阻害する新しい作用機序の睡眠薬である。従来の睡眠薬に耐性ができた患者など広く使用されているが、服用直前にPTPシートから取り出すこととされており、一包化調剤は避けられてきた。そこで、ベルソムラ錠分包品の保存安定性について検討を行った。【方法】ベルソムラ錠をセロポリ製分包紙に分包し、シリカゲル入アルミ袋またはアルミ袋に入れ、25℃60%RHまたは40℃75%RHの条件下で保存した。また冷蔵庫での保存も試みた。4週間後、錠剤の質量、直径と厚みを測定すると共に溶出試験を行った。また各条件下で保存後のスボレキサント含量についてHPLCにて定量を行った。【結果】25℃60%RHならびに40℃75%RHの条件下において、分包後4週間でシリカゲル入アルミ袋に保存したものは錠剤の質量、直径と厚みが減少し、溶出速度の低下が認められた。これに対しアルミ袋中で4週間保存したものでは、やや質量の増加が認められたものの、溶出速度の変化は認められなかった。冷蔵庫内での保存においては、分包したまま保存したもの、アルミ袋中で保存したもの共に質量や溶出速度の変化は認められなかった。加えて、全ての保存条件においてスボレキサント含量の変化は認められなかった。【考察】ベルソムラ錠分包品はアルミ袋中に保存するか、冷蔵庫内で保存することにより安定であり、長期保存が可能であると考えられる。
著者
松尾 諒 堀之内 龍一 酒井 敏
雑誌
日本地球惑星科学連合2016年大会
巻号頁・発行日
2016-03-10

森という場所は涼しい。都会の中にある木々に囲まれた公園でさえもそれは同じである。ではなぜ涼しいのかということについては突き詰められていない。漠然と、街と森とでは森のほうが気温が低く、相対湿度が高いということがわかっているだけだった。また植物が蒸散を行うということから、植物の蒸散量を計測することは植物の生態への興味や都市緑化のためなどの多角的な方向から盛んに行われてきた。そこで「蒸散量」という「観える」値は水蒸気という言葉と関連付けられ「観える」値として認識されていった。故に「植物が蒸散を行うから森や公園は涼しい」という意見は一般に広まっているように思える。しかし、もっと単純に気温と水蒸気量を眺めてみるとどうだろうか。これまででも街と森の気温と相対湿度を観測し、その差を見るということについては試みられてきたはずである。しかし、少し前までの相対湿度のセンサーというのは、誤差が±5%と大きいものが多く、気象庁のJMA-10型地上気象観測装置の湿度計でやっと誤差±1%という観測精度であった。もし街と森とで湿度を比較しようとしても、この誤差の大きさでは森のほうが相対湿度が高いという大まかな差は分かるものの、大気中の水蒸気量を比べるといった細かな差を測ることはできなかった。しかし、昨今のIT化や産業の自動化、モバイル端末の普及などによりセンサー市場の需要が高まる中で、センサーの精度も飛躍的な向上が見られた。そして相対湿度センサーについても誤差±0.2%とするものが現れたのだ。これにより今まで「観えなかった」ものが観えるようになってきたのだ。すなわち、街と森での大気中の水蒸気量の差が有効なデータとして観測できるようになったのである。すると街と森での気温と水蒸気量について見えてきたものがある。まず、街と森の気温差と水蒸気量差の変化は連動しないということだ。もし、水の蒸発によって街と森で気温差がつくのであれば気温差と水蒸気量の差は比例するはずである。しかし実際には午前中のうちに気温差は最大となり、水蒸気量の差は殆ど変化しない。水蒸気量の差が大きくなるのはその後である。次に森は街よりも常に気温が低いということだ。常にというのは季節に関係なく、昼夜を問わず、まさに常にである。これは森に常に気温を冷やす要因があるということを示している。そうでなければ、放射冷却の影響を考えると、少なくとも夜は森のほうが気温が高くなるはずだからである。更に飽差(ある温度と湿度の空気に、あとどれだけ水蒸気の入る余地があるか)と街と森の水蒸気量の差の間には非常に高い相関があることが分かった。これはすなわち街と森の水蒸気量の差について、植物の生物的な作用による説明ではなく、大気の混合過程のみで説明できる可能性を示している。現在はこのことを検証するために、街と森における気温と相対湿度を一年を通して観測しようとしており、今回はその経過を発表するものである。