著者
東原 和成
出版者
Japan Association on Odor Environment
雑誌
におい・かおり環境学会誌 (ISSN:13482904)
巻号頁・発行日
vol.36, no.3, pp.123-125, 2005

平成13年, 環境省は, 全国のなかから「かおり風景100選」を選定した. 豊かなかおりとその源となる自然や文化・生活を一体として, 将来に残し伝えていくためであるという. 興味深いことに, 特に「かおり」についての選定基準はなく, 自然的, 歴史的, 文化的な景観のなかにかおりの存在が浮かび上がるような風景であるということが選定のポイントとなっている.<br> 感性の歴史家アラン・コルバンは著書「風景と人間」 (小倉考誠訳, 藤原書店) でいう. 「風景の保護はある風景解釈を選択することである」. 自然環境・景観保護運動のありかたに対する問題提起のなかに, 周辺環境との調和のなかで地域が育んできた文脈を読み解くために, 人間が親しめる無意識下の記憶, すなわち, 嗅覚を含めた五感を重視する姿勢に共感できる. <br> かおりの風景とは, そこに住む人間達が創り出す表徴であり, 人間の存在意義にもつながる風景である. 畑の肥溜めも, 焼き魚も, 古本も, 社寺も, すべて, 人間の人間たるゆえんの風景であり, その存在を否定しては, 人間自体を否定することになる. ランドスケープとともに最近少しずつ注目されてきているスメルスケープといわれる景観は, 人間が「住める空間」なのである.<br> 人間以外の生物にとってもにおいの風景は生存に関わる必須なものだ. 多くの哺乳動物は, 自分のにおいと他人のにおいを正確に識別し, 自分達の生活空間・個体空間の大きさを作り出すだけでなく, 交尾時期を的確に把握して種の保存に努めている. 植物は動けないからこそ, 独自なにおい空間を設計し, 生存に必要な情報交換をしている (細川聡子の項参照) . もちろん陸棲生物だけでない. 魚は自分の生まれた川にもどるためにも嗅覚は必須であり, また, 放精誘起なども水溶性の「におい」物質によって引き起こされる (佐藤幸治の項参照). そこに居住する人間達が, 自然的, 歴史的, 文化的な「かおりの風景」を創成しているように, それぞれの生物のまわりには, 我々が見えない, 本能的, 進化的, 生態的なにおいの風景が構築されているのである.<br> におい物質とは, 分子量30~300の低分子揮発性物質である. ただし, 揮発性であれば必ずしもにおうというわけではない. 例えば, 二酸化炭素や一酸化窒素はわれわれ人間には感知できない. では, 二酸化炭素は「におい」ではないかというと, ショウジョウバエや蚊などの昆虫にとっては, 二酸化炭素も立派なにおいなのである. そういう意味では, 広義でいう「におい」とは, 「揮発性の分子で, 空間を飛んできて, 生物によって受容される物質」と定義できるかもしれない. 最近問題になっているVOCもその部類に入るかもしれない. 中世においては「にほひ」という言葉を光の意味でつかっている. 空間からの情報という共通の意味があったのだろう.<br> におい分子は嗅覚受容体によって認識される. 信号は脳に伝わるとともに, しばらくするとそのにおいに対しては順応して信号はオフになる. 近年, 分子レベルでのにおい認識とその後の受容体の脱感作・順応のメカニズムはかなり明らかになっている (堅田明子, 加藤綾の項参照). 一方, 受容体による認識という立体構造説に対峙するものとして, 「匂いの帝王」 (早川書房) で有名になったルカ・テューリンが主張する分子振動説がある. 分子振動説によると, 普通のにおい分子と重水素化されたにおい分子とでは同じ物質でもにおいの質が異なることになる. 最近, ヒトの官能試験では「No」という結果になった一方で, 犬は区別できると主張する研究者もいるのでまだ決着はみていない. 私個人的には, どっちかだけですべてを説明できるとは思わない.<br> 嗅覚における分子認識は, ある意味, 究極の識別センサーかもしれない. 複雑な混合臭は, 特有のにおいを呈し, その複雑さが, 芸術ともいえる香水の存在を可能にしている. 混合臭が織りなすにおいの創成メカニズムもそのベールがはがれつつある (岡勇輝の項参照). また, 嗅覚受容体は, 鼻のなかでにおいセンサーとして機能しているが, 鼻以外の組織でも機能していることが明らかになってきている (福田七穂の項参照). 広義でいえば, 嗅覚受容体は, 一般的な化学物質センサーと考えてもよいだろう. 将来, 嗅覚受容体の化学センサーとしての機能をいかして, バイオセンサーの開発も夢ではない. 特に, 昆虫の性フェロモン受容体の解析で明らかになった, 高感度・高選択性をうみだすメカニズムは, 応用面に期待がかかる知見である (仲川喬雄の項参照).<br>(以降全文はPDFをご覧ください)
著者
永守 重信 泉 恵理子
出版者
日経BP社 ; 2002-
雑誌
日経ビジネスassocie (ISSN:13472844)
巻号頁・発行日
vol.16, no.6, pp.4-9, 2017-05

──日本電産の永守重信社長と言えば、「誰よりも長く働く」ことを誇りとし、組織の強みとして走り続けてきた経営者として知られています。その永守社長が2016年秋、「2020年度までに残業ゼロ企業を目指す」と発表された。きっかけは何だったのでしょう。
著者
Fujitani Takashi
出版者
岩波書店
雑誌
世界 (ISSN:05824532)
巻号頁・発行日
no.672, pp.137-146, 2000-03
著者
能勢 伸之
出版者
海人社
雑誌
世界の艦船
巻号頁・発行日
no.844, pp.100-103, 2016-09
著者
麻野 雅子
出版者
三重大学
雑誌
三重大学法経論叢 (ISSN:02897156)
巻号頁・発行日
vol.21, no.1, pp.33-57, 2003-08-31

論説 / Article
著者
櫛引 素夫
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
日本地理学会発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.2015, 2015

1)はじめに<br> 整備新幹線は2002年に東北新幹線が八戸開業、2010年に新青森開業を迎えるなど、2015年1月までに5路線中、3路線が営業を開始した。2015年3月には北陸新幹線が金沢開業、2016年3月には北海道新幹線が新函館北斗開業を迎える。<br> 整備新幹線の開業に際しては経済的な効果の研究が多数なされているが、地域社会総体や住民生活の変化、さらに沿線住民の評価に関する研究例は非常に少ない。<br> 発表者は2014年8~9月、青森県内の青森、弘前、八戸の3市で、住民896人を対象に郵送で新幹線の評価に関する調査を実施し、計313人から回答を得た(回収率35%)。本研究では、この調査結果に基づき、地域社会の変化を住民の視点から分析するとともに、新幹線開業の意義や地域政策としての可能性、および課題について検討する。<br><br>2)新幹線の利用動向<br> 新幹線の利用経験は、「11回以上」と答えた住民が八戸市では70%を超えたのに対し、青森、弘前両市では30%台だった。利用頻度でも、八戸市では「年に1~2回」以上と答えた人が70%を超えたが、青森、弘前両市では40%台にとどまった。新幹線開業に伴い鉄道の利用頻度が「大きく増えた」「少し増えた」と答えた人は、八戸市で半数を超えたのに対し、青森、弘前両市では30%前後だった。<br> 他方、青森市では、回答者の50%が、新幹線開業に伴い「新幹線で出かけたい気持ちが強くなった」と答え、八戸市の42%、弘前市の36%を大きく上回った。このことから、青森市でも今後、新幹線の利用が活発化し、定着していく可能性を指摘できる。<br><br>3)鉄道や地元の変化に対する評価<br> 3市とも、新幹線がもたらした変化で最も評価が高いのは「東京や仙台、盛岡との行き来が活発になったこと」である。この項目を除くと、3市の回答にそれぞれ大きな特徴がみられる。<br> 八戸市では、回答者の9割近くが「盛岡や仙台、東京への所要時間が短くなった」と評価しており、青森市の66%、弘前市の68%を大きく上回った。八戸駅は新幹線駅が在来線駅に併設されたのに対し、青森市は新駅にターミナルが移転したこと、弘前市は奥羽線で乗り継ぎが必要なことが影響しているとみられる。<br> また、八戸市では新幹線開業に伴い「市の知名度が上がった」と評価している人が48%に達し、交通面での利便性向上とは直接、関係のない「存在効果」への評価が高い。半面、「新幹線駅一帯が代わり映えしない」ことを心配する人も44%あり、2002年の開業後、駅一帯の整備や開発が大きく進展しないことへの不満や不安も大きい。<br> 青森市では、知名度の向上や観光客の増加を歓迎する回答が多い一方で、22%が「駅の利便性が低下した」と回答し、ターミナル移転への不満が強い。加えて、新青森駅前の開発が進まない現状に対し、回答者の54%が、開業をめぐって「心配なこと」に挙げ、新青森駅の景観や機能への不満はさらに強い。<br> 弘前市は、観光客の増加を評価する回答が34%と高いが、市内に活気が出ていないこと、新青森駅前の開発が進まないことへの不満が強い。<br> これらの変化に対する評価を総合して、「自分の暮らし」「自分が住んでいる市」「青森県全体」の3項目について、新幹線がもたらした変化を「良い効果をもたらした」「悪い影響をもたらした」「何とも言えない」から選択してもらった結果、同一の市でも項目ごとに評価の傾向が異なる上、市によっても評価傾向が異なった。<br> 全体的に肯定的な評価が目立ったのは八戸市で、3項目いずれも「良い効果をもたらした」という回答が40%を超えた。一方、青森市では、「自分が住んでいる市」について「良い結果をもたらした」が34%、弘前市では31%だった。<br><br>4)北海道新幹線開業への予測<br> 北海道新幹線が及ぼす変化の予測については、「自分の暮らしに良い効果をもたらす」と答えた人は3市とも20%台、「悪い影響をもたらす」と答えた人が4~6%で、7割前後が「何とも言えない」と答えた。青森県全体に及ぼす変化については、回答傾向がやや異なり、「良い効果をもたらす」が八戸市で39%だったのに対して、青森市では28%止まりだった。また、「悪い影響をもたらす」と答えた人が3市とも1割を超えた。<br> 具体的な懸念材料としては「道南・函館に観光客を吸い取られる」ことを挙げた人が3市とも最多で、青森市では63%、他の2市でも48%に達した。<br><br>5)考察<br> 新幹線開業がもたらす変化について、住民は「自分の暮らし」「自分の市」「県全体」とで異なる評価の視点を持つことを確認できた。また、「知名度の向上」など、いわゆる「存在効果」への評価も重視していること、さらには新幹線駅周辺の機能や景観が整わない「負の存在効果」にも敏感であることが確認できた。
著者
永松 裕希 松川 南海子 大井 真美子
出版者
日本教育心理学会
雑誌
教育心理学年報 (ISSN:04529650)
巻号頁・発行日
vol.43, pp.166-175, 2004
被引用文献数
1

知的能力や言語に遅れがなく,また主要な感覚の障害あるいは麻痺などの運動機能に関わる疾患がないにも関わらず,運動技能に困難さを示す子どもたちがいる。このような障害は発達性協調運動障害(DCD)と呼ばれ,子どもの学習や日常生活において問題を生じさせている。従来から「不器用」という言葉で認識されていたこの障害が,公式の国際的な分類体系の中で,独立した障害として認識されるようになったのは,ごく最近になってからである。本稿では,特に,DCDの学習への影響として,眼球の協調運動の問題と読み能力について言及し,読みに問題がある子どもの半数以上に眼球の協調運動の問題が確認されたという調査結果を紹介した。さらに,このような協調運動における問題が2次的に自己認知や社会的有能感の低下を生じさせるという報告もあり,一人ひとりに応じた心理教育的援助の必要性が大きいと考える。
著者
円城寺 しづか 川崎 千里 福田 雅文 辻 芳郎
出版者
日本小児保健協会
雑誌
小児保健研究 (ISSN:00374113)
巻号頁・発行日
vol.55, no.5, pp.627-631, 1996-08-30
参考文献数
23
被引用文献数
5

当科未熟児室を退院した4~11歳の超低出生体重児のうち,重篤な後障害のないと思われる10名(男3名・女7名)に対し,21項目よりなる神経心理学的検査および神経学的微徴侯検査を行った。1名が脳性まひ十軽度精神遅滞の神経学的後遺症を有し,7名に微細な脳機能不全が疑われ,2名が正革と診断された。これらの結果を2歳時の短期予後と比較すると,2歳時に発達遅滞が認められていた症例には神経発達学上の問題が持続し,2歳時正常と診断されていた5名のうち3名に微細な神経発達上の問題が認められていた。超低出生体重児の追跡は少なくとも微細神経障害が明らかになる学齢期までは行う必要があると思われた。
著者
早瀬 久美
出版者
日本薬学図書館協議会
雑誌
薬学図書館 (ISSN:03862062)
巻号頁・発行日
vol.47, no.1, pp.90-92, 2002
著者
香田 洋二
出版者
海人社
雑誌
世界の艦船
巻号頁・発行日
no.760, pp.92-99, 2012-05