著者
佐藤 紗都 伍井 啓恭 奥村 学
雑誌
2018年度人工知能学会全国大会(第32回)
巻号頁・発行日
2018-04-12

本研究では、製品マニュアル文から関連する質問回答対を自動的に生成するシステムを開発するための第一歩として、マニュアル文から質問文を自動的に生成する方法を提示する。 約1400文のデータセットを用いた実験の結果、生成された文章と人手で作成された質問文とを比較することにより、BLEUスコア62.11を得た。
著者
松尾 菜々 異島 優 池田 真由美 安藤 英紀 清水 太郎 石田 竜弘
雑誌
日本薬学会第141年会(広島)
巻号頁・発行日
2021-02-01

【背景・目的】活性イオウ分子種(RSS)は、チオール基やジスルフィド結合にS原子がさらに付加した分子であり、S原子放出能や高い抗酸化作用を有する。近年、過剰なS原子のがん細胞内への導入は、還元ストレスを与え、効率的に細胞死を誘導することが期待されているものの、既存のRSSは生体内での血中滞留性やがん細胞指向性に乏しいことが知られている。そこで、ヒト血清アルブミン(HSA)を過イオウ化させたPoly-Persulfide-HSAの作製を試みた。HSAは、高い血中滞留性とがん細胞指向性を有しており、生体内でRSSとして機能する報告もあることからキャリアとして有益と考えた。本研究では、作製したPoly-Persulfide-HSAの還元ストレスによる抗腫瘍効果を評価した。【方法】HSAにIminothiolaneを反応させ、Lys残基にSH基を導入した後、そのSH基をIsoamyl nitriteでS-ニトロソ化し、Na2S4と反応させることでPoly-Persulfide-HSAを作製した。In vitroの検討において、マウス結腸がん細胞Colon26細胞を用いて、Poly-Persulfide-HSAの細胞内取り込み及び細胞生存率を評価した。In vivoでは、Colon26担がんマウスを作成し、Poly-Persulfide-HSAを静脈内投与した際の抗腫瘍効果を評価した。【結果・考察】Poly-Persulfide-HSAはHSA 1分子あたり約7分子のS原子が付加していた。Poly-Persulfide-HSA処理Colon26細胞において、高い細胞毒性が見られ、その効果には活性イオウの取り込みが関与することが示唆された。In vivoの実験より、顕著な腫瘍体積増加の抑制が認められた。これらより、Poly-Persulfide-HSAは、がん細胞内にS原子を送達することで還元ストレスを惹起し、細胞死を誘導したと考えられる。以上より、作製したPoly-Persulfide-HSAは、還元ストレス誘導型抗がん剤として有用であると示唆された。
著者
田村 知也 菅谷 崚 興野 純
雑誌
日本地球惑星科学連合2018年大会
巻号頁・発行日
2018-03-14

Introduction: 1970年代, 中央海嶺の海底において, 化学合成生物を一次生産者とする特異な生態系を伴った海底熱水噴出孔の存在が報告され, 世界中を驚かせた(Lonsdale, 1977; Spiess et al., 1980). 海底熱水噴出孔は, 地殻中に浸透した海水がマグマの熱によって温められ, 周囲を構成する岩石との反応によりその組成が変化することで熱水となり, やがて上昇して海底面から噴出することで形成される. このような海底熱水噴出孔は, 中央海嶺や島弧, 背弧において発見されてきた. 2000年代に入ると, “Lost City型熱水噴出孔”とよばれる, 海水とカンラン岩や蛇紋岩の反応によって形成される新しい型の熱水噴出孔が報告された(Kelley et al., 2001). この熱水噴出孔は, それまで報告されてきた熱水噴出孔に比べて低温(~90℃)であり, アルカリ性かつ還元的な熱水を噴出する. Lost City型熱水噴出孔からは水素分子(H2)に富んだ熱水が噴出することが知られており(Kelley et al., 2001), 以下の反応式によって生成すると考えられている(Mayhew et al., 2013).2H2O + 2e- → H2 + 2OH- (1)また, Lost City型熱水噴出孔の周囲には, メタン(CH4)やH2を用いた化学合成によってエネルギーを獲得する生物が生息し, そのような生物から成る特異な生態系も存在している(Kelley et al., 2005). (1)式のようなH2発生反応が生じるためには, 電子を水分子に与える電子供与体の存在が必要である. これまでの研究から, 以下の反応式のように, カンラン岩や蛇紋岩に含まれるFe2+を含む鉱物が, 電子供与体として働くモデルが考えられている.Fe2+-bearing mineral → Fe3+-bearing mineral + e- (2)この反応はMayhew et al (2013)によって実験的に確かめられている. 彼らはカンラン岩や蛇紋岩に普遍的に含まれるmagnetite(Fe2+Fe3+2O4)を100℃の熱水に浸し, その表面をXANESで分析したところmagnetiteの表面にのみFe3+が濃集することを確認した. しかしながら, (1)式のH2発生反応に必要な(2)式の反応の具体的なプロセスについては明らかになっていない. 本実験では, magnetiteの熱水反応実験と, 実験後の試料の透過電子顕微鏡(TEM)観察によって, magnetiteによるH2発生メカニズムを解明することを目的とした.Methods: Magnetiteの合成は,Sato et al. (2014)にならい, 水熱合成法で行った. 合成したmagnetiteは真空中で1200°C, 3日間加熱し, 最終的に粒径50-100 µm の単結晶magnetiteを得た. この単結晶magnetiteと超純水をテフロン容器に入れ, 窒素雰囲気下で封入後, 電気炉で100°C, 1ヶ月間加熱することで, 熱水反応実験を行った. 実験後, 試料を溶媒から抽出し, 自然乾燥させた. また, メチレンブルー比色法により反応前後の溶媒中のH2濃度変化を分析した. 実験後の試料は走査電子顕微鏡(SEM, JEOL: JSM-6330F)に供試し, 試料表面の観察と集束イオンビーム(FIB)装置による試料作製部位の決定を行った. その後, FIB装置(JEOL: JIB-4000, JEM-9320FIB)に供試し, 透過電子顕微鏡(TEM)用試料を作成した. TEMは物質材料研究機構(NIMS)の電子顕微鏡(JEOL: JEM-2100F)を用いた.Results and Discussion: メチレンブルー比色法の結果, 熱水反応実験による溶媒中のH2濃度の増加が確認された. これは, 熱水反応実験において(1)式の反応が進行したことを示唆する. 熱水反応実験後の結晶表面をSEMで観察したところ, (111)面では結晶面の縁からステップ状に溶解が進んでいる様子がみられ, 表面には約300 nm径で2種類(円盤状, 紡錘状)の形状を示す析出物が認められた. 一方, (100)面では, 紡錘状の析出物のみみられたがその量は(111)面と比較して少量であった. これら熱水反応実験後のmagnetite結晶の(111)面と(100)面について, それぞれの断面の薄膜試料をFIB装置により作成し, TEM観察した. (111)面上にみられた円盤状および紡錘状の析出物は, それぞれgoethiteおよびhematiteであった. 一方, (100)面に析出していた紡錘状の物質はすべてhematiteであった. (111)面の表面から深さ500 nmまでの範囲における制限視野電子回折(SAED)パターンは, magnetiteの晶帯軸[1 -2 1]の電子回折パターンに対応した. 一方, (100)面の表面から深さ500 nmまでの範囲のSAEDパターンは, magnetiteの晶帯軸[1 1 4]の電子回折パターンとよく一致したスポットを示したが, magnetiteの空間群Fd-3mでは消滅則により強度が0となるはずの位置にもスポットが小さく現れた. これらのスポットはmagnetiteの格子型に一部変化があったことを示す. Magnetiteと同じスピネル構造を持つmaghemite(γ-Fe2O3)は, magnetiteが酸化することで生成し, magnetiteとは異なり八面体席に空隙を伴った構造を有する. Tang et al. (2003) によると, magnetiteはFe2+が選択的に外部へ分散していくことでmaghemiteへと酸化される. また, Skomurski et al. (2010)のシミュレーションによるとmagnetiteの(100)面の表面では, 八面体席にFe2+が多く分布しているという結果が得られており,Fe2+が溶出しやすい状態であると考えられる. したがって, 上述の結果は, 主に(100)面で溶解が進み, Fe2+が主として溶出し空隙が生じたことで, 部分的にmaghemite化し格子型が変化したことを示唆する. 以上の結果から, 熱水反応実験によって, magnetiteの(100)面からFe2+が溶出し, Fe2+が(1)式の反応に対する電子供与体として働いたことでFe3+が生じ, その後結晶表面にhematiteやgoethiteの析出物が生成したと考えられる.
著者
江本 賢太郎 佐藤 春夫
雑誌
JpGU-AGU Joint Meeting 2017
巻号頁・発行日
2017-03-10

短周期地震波は,地球内部の短波長不均質構造による散乱により複雑な波形を示す.例えば,エンベロープ拡大現象や,最大振幅の散乱減衰,コーダ波の励起などが挙げられる.これらを説明するには,ランダムな不均質媒質中での波動伝播を統計的に記述し,波形エンベロープを直接導出する方法が有効であり,ボルン近似を用いた輻射伝達理論や放物近似に基づくマルコフ近似理論が用いられてきた.手法の妥当性の検証には波動方程式の差分法計算との比較が必要であるが,3次元では計算コストの問題からこれまでほとんど行われていない.本研究では,地球シミュレータを用いた3次元差分法計算によりランダム媒質中のスカラー波伝播を再現し,その特徴を調べ統計的手法と比較する.ランダムな速度ゆらぎは指数関数型自己相関関数で特徴づけられるとし,ゆらぎの強さは5%,相関距離 a は1kmと5kmとした.差分法での解析対象周波数は1.5Hzとし,空間刻み0.08km,平均伝播速度4km/sとすると,1波長あたり33グリッドとなり数値分散の影響は無視できる.差分計算は空間4次・時間2次精度とする.計算領域は1辺307kmの立方体とし,中心からRicker波を等方に輻射する.観測点は伝播距離25, 50, 75, 100kmに各距離に20個配置する.この大きさのランダム不均質媒質を一度に作成するのは困難であるため,異なるシードで作成した小さなランダム媒質をなめらかにつなげて全体を構成する.同様に作成した計6個のランダム不均質媒質における計算結果をアンサンブルとして用いる.まず,差分トレースをスタックした平均2乗エンベロープを統計的手法と比較する.相関距離1kmの場合,ボルン近似を用いた輻射伝達理論は,立ち上がりからコーダまで差分エンベロープをよく再現することができた(計算にはモンテカルロ法を用いた).一方,相関距離5kmの場合,ピーク付近のエンベロープは改良マルコフ近似(Sato, 2016)でよく再現でき,コーダ部分はボルン近似を用いた輻射伝達理論で再現できることを確認した.中心波数をkcとすると,前者はakc=2.3,後者はakc=12であり,後者はボルン近似よりもマルコフ近似が適している領域である.次に,エンベロープを構成する差分トレースの2乗振幅分布を調べる.直達波到達直後は対数正規分布を示すのに対し,コーダ部分は指数分布に従うことが分かった.これは,エンベロープを構成する散乱波が,前方散乱波からランダムな分布へと変化していくことを示している.また,相関距離が小さいほど,指数分布へと変化するまでの時間が早くなり,相関距離1km,伝播距離100kmではエンベロープのピーク付近も指数分布となった.また,各観測点の周りに小さな3つの正12面体の頂点となるようにアレイを設置し,各時刻においてFK解析から散乱波の到来方向を調べた.震源方向を基準とした散乱波の入射角は,初動到達後から単調増加した.差分計算は経過時間50秒まで行ったが,この範囲内では,入射角のピーク値の平均は60°程度まで増加したが,等方的にはならなかった.つまり,エネルギーフラックスが等方的になる前から,2乗振幅は指数分布に従うことがわかった.相関距離が1kmの方が5kmと比べてコーダ振幅の励起量が多いが,入射角分布は両者に顕著な違いは見られなかった.
著者
後藤 明日香
雑誌
日本地球惑星科学連合2016年大会
巻号頁・発行日
2016-05-06

1、研究目的 私は空の観察をしている際、空の濃淡が日によって異なっていることに気が付いた。そこで、空の青色の濃淡に影響する要素は何かに興味を持ち、研究を始めた。空の濃淡に関係する要素としては、空気中の塵や埃などが知られているが、私は観測がしやすい水蒸気に着目して研究を進めた。2、研究方法、研究結果、考察 まず、東西北方向の空を地上にてデジタルカメラ(CASIO EXLIM EX-10)を用いて撮影した。撮影は、2015年1月19日~1月29日の晴れている日に行った。撮影した写真を上空方向から地上に向かって高層、中層、低層に分け、ペイントソフト(ペイント.ink)を用いて、各層から適当に三か所選び色を抽出し、RGBの平均値を求めた。本校地学講義室にて使用している装置(DAVIS Vantage Pro2)を用いて、気温、湿度、気圧、風力、風向の5つのデータを採集し、水蒸気量と水蒸気圧を求め、空の色の濃淡と気象の関係性を調べた。その結果、青空の色が濃い日は、水蒸気量が少ない日であったことがわかった。つまり、空の色の濃淡には水蒸気量が関係しており、水蒸気量が多い日は青空の色が濃いと考えられる。さらに、撮影地点、色の抽出方法の改善を行った。撮影の場所を地上から空全体を撮影できる屋上に変更し(2015年9月28日~10月15日)、撮影方向も東西南北の4方向に増やした。RGBのデータもより詳しく抽出するため、写真の画素を475ピクセルに設定し、上空方向から地上に向かって3行ごとに高層、中層、低層の三層に分けた。ソフトは解析ソフト(Adobe photoshop CS5(64bit))を用いて、各行から一番色が濃いピクセルの色を無作為に抽出し、そこからRGBの値を求めた。その結果、青空の色が濃くなっていた日は水蒸気量が少ない日であった。逆に、青空の色が薄い日は水蒸気量が多い日であった。よって、1月に行った実験の結果と同じ結果が得られた。また、10月5日と8日は同程度の水蒸気量であったので、両日の青空の色の濃淡の比較を行ったところ、空の色の濃淡が異なっていた。このことから、水蒸気量以外にも空の色の濃淡に関係している要素があることが予想される。 そこで、水蒸気量以外で採集していた気圧、風力に着目した。比較した2つの日の天気図を見てみると、青空の色が濃かった日は、発達した低気圧が日本付近を通過していた。このことより、気圧も著しく低くなり、風力も大きくなっていた。このことより、発達した低気圧が日本列島付近に通過したことにより、大気中の塵やほこりが風に飛ばされるなどして減少する。それによって、青色の光を反射しやすい、大気分子の割合が大きくなり、青色の光が多く散乱される。逆に、緑や赤の光を反射しやすい塵やほこりの割合が減少してしまったため、緑や赤の光は散乱されにくくなってしまい、青色の割合が大きくなり、青空の色が濃くなったと考えられる。よって、気圧、風力も空の色の濃淡に関係している。 また、季節によって空の色はどのように変化するのかについても考察を行った(秋:2015年9月28日~10月15日、冬:2016年2月17日~2月24日)。水蒸気量については、秋のほうが冬に比べて水蒸気量が多くなっていた。空の色の濃淡については、秋のほうが冬に比べて青空の色が濃くなっていた。この結果から、両季節の一番青空の色が濃くなっていた日は、秋は水蒸気量、気圧ともに低く、これまでと同じ結果が出た。一方で、冬は気圧は低いものの水蒸気量は観測した日の中で最も高い値であり、これまでとは異なる結果が出た。このことより、気圧による空の濃淡の変化は、季節が変わっても共通しているが、水蒸気量による空の濃淡の変化は季節によって異なると考えられる。3、まとめ青空の色の濃淡の変化には、水蒸気量が関係しており、水蒸気量が少ないほど青空の色は濃くなる。また、水蒸気量のほかに、気圧、風力も空の色の濃淡に関係している。 秋と冬で気象や青空の濃淡について比較すると、秋のほうが水蒸気量が多かった。また、青空の濃淡おいて、秋のほうが青空の色が濃かった。 両季節で青空の色が濃くなっていた日、冬は水蒸気量が最も多かった日に青空の色が濃くなっていたことより、気圧の変化は季節が変わっても共通するが、水蒸気量による濃淡の変化は季節によって異なると考えられる。