著者
久留間 健 クルマ ケン Ken Kuruma
雑誌
立教經濟學研究
巻号頁・発行日
vol.41, no.3, pp.i-iii, 1988
著者
佐藤 雅也
出版者
国立歴史民俗博物館
雑誌
国立歴史民俗博物館研究報告 = Bulletin of the National Museum of Japanese History (ISSN:02867400)
巻号頁・発行日
vol.147, pp.133-196, 2008-12-25

ここでの問題意識は、民衆・常民の視点、民衆・常民の側に立った史学、文化史が民間伝承の学(民俗学)の本質とするならば、語りの部分、語られた部分を基礎に、戦争をとらえていくこと。日本の民衆・常民にとって、近代の戦争体験とその後の人生を明らかにしたうえで、戦争体験の記録と語りを継承していくことを目的としている。このことをふまえて、本報告では、三つのテーマから構成されている。第一に、「軍都」仙台の戦争遺跡と記念碑では、現在の時点から見た近代仙台の旧軍事施設の史跡、旧軍関係及び戦時関係の記念施設・記念碑・慰霊碑などについて、その概要を報告している。また、旧「軍都」仙台の陸軍施設の変遷と、近代の戦争に関わる記録を概観している。そして、昭和十五年(一九四〇)以降の仙台第二師団における宮城県・福島県・栃木県関係の旧軍施設に関する原本資料である仙台師管区経理部「各部隊配置図・国有財産台帳附図」について、その概要を紹介している。第二に、戦死者祭祀と招魂祭では、記念碑、文献資料、新聞記事などから、戊辰戦争、西南戦争、甲申事変、日清戦争、日露戦争、満洲事変、日中戦争、アジア太平洋戦争などにおける戦死者の慰霊と招魂の問題を取り上げている。第三に、戦争の民俗~戦争体験とその後の人生をめぐる民衆・常民の心意とは~では、「聞き書き」資料を基礎に、実物資料、文献資料、写真資料なども付け加えている。ここでは、①徴兵検査の意義と役割、②徴兵検査と軍隊への入営、③内地での軍隊生活、④一兵士が見た軍隊と戦争(召集、家族、戦地、敗戦と捕虜生活)、⑤満洲開拓と満洲移民、⑥「戦争未亡人」の戦中・戦後などについて、報告している。実際の調査では、約五十人の話者の方々のご協力をいただいたが、その中から十八人のインタビューをもとに記述している。このように民俗学の手法を駆使して、戦争の民間伝承を各地で継承していくことは、常民・民衆のための文化史としての民俗学にとって、課題の一つだと考える。
著者
リップ フォルカー 野沢 紀雅
出版者
日本比較法研究所
雑誌
比較法雑誌 (ISSN:00104116)
巻号頁・発行日
vol.52, no.2, pp.55-82, 2018-09-30

本講演は,ドイツにおける扶養法の根拠を検討するものである。ここにいう根拠とは,扶養義務の社会・経済的あるいは倫理的な理由づけではなく,実定法における扶養義務の法解釈学的な根拠であり正当化を意味している。 本講演では,まず,実定扶養法の機能と意味,その歴史的生成過程,比較法的考察がなされ,その上で,現行扶養法の規律とその根拠が,子の扶養,親の扶養,その他の血族扶養および離婚後扶養の個別領域ごとに考察されている。 ドイツ民法制定当初は,婚姻と血族関係が扶養法の根拠であったが,現在では同性者間の生活パートナー関係と,婚外子の父母の共同の親性(gemeinsame Elternschaft)も扶養義務の根拠とされている。結論として,法律上の扶養義務は社会的関係や単なる生物学上の関係に直接的に基づくのではなく,基本的に,法律上の身分関係によって媒介された家族法上の責任であることが述べられている。
著者
梅津 顕一郎 Kenichiro UMEZU 宮崎公立大学人文学部 Miyazaki Municipal University Faculty of Humanities
雑誌
宮崎公立大学人文学部紀要 = Bulletin of Miyazaki Municipal University Faculty of Humanities (ISSN:13403613)
巻号頁・発行日
vol.29, no.1, pp.193-202, 2022-03-10

本稿は、社会学的消費文化論の理論枠組みに関する一考察の試みである。かつて若者文化論、メディア文化論等に接点を持ち、ポスト・モダン化する現代社会を説明する有力な議論枠組みの一端を担ってきた所謂消費文化論は、今日、有効な理論的役割を果たしているとは言えない状況になっている。 これに対して本稿では、大塚英志が1989 年の『物語消費論』以来、幾度となく修正を試み展開してきたと思われる「物語消費」の概念を中心に、消費と物語性に関する従来の議論を再整理することで、消費文化論の社会的有効性を再生する足がかりを模索する。筆者は80 年代の消費文化論に対しては批判的な立場であり、その問題視座の根幹をマーケティングと80 年代の我国に於けるポスト・モダニズムの接点に置いていることを公言している大塚にとってその現代社会論的な貢献について筆者のような観点から議論することは、必ずしも本人の執筆意図に即したものであるとは言えないだろう。しかし筆者は大塚の議論が、益々グローバル化する情報社会の下での、消費を介した認識や社会観、あるいはアイデンティティの形成に対して批判的な議論を展開するための、有効な道具となりうる可能性を孕んでいると考える。彼の提示する「サーガ(saga)」としての大きな物語という概念は、J.F. リオタールが提起した「ナラティブ(narrative)」としての大きな物語とは本質的に異なるものである。しかしそれは決して概念的誤謬によるズレではなく、むしろ「物語」の変質を言い当てたものである。 ここでは、大塚の「サーガとしての物語」と、J.F. リオタールによる「大きな物語」の概念について比較検討を行い、それらを大澤真幸による3 つの時代区分に当てはめることにより、シミュラークルも含む記号的価値の消費と、それを通じた世界認識の概念地図を、試論的に構築していく。
著者
梶田 叡一
出版者
奈良学園大学
雑誌
奈良学園大学紀要 = Bulletin of Naragakuen University (ISSN:2188918X)
巻号頁・発行日
vol.6, pp.15-21, 2017-03-10

潜伏キリシタンの伝承物語『天地始之事』の基本性格や、この物語が発見された経緯などについては前稿で述べた(1)。本稿では、その内容の全体像について検討する。
著者
舩木 礼子
出版者
神戸女子大学国文学会
雑誌
神女大国文 (ISSN:09166068)
巻号頁・発行日
no.31, pp.61-43, 2020-03-10

著者別名: 橋本, 礼子
著者
山田 久
出版者
和光大学社会経済研究所
雑誌
和光経済 = Wako Keizai (ISSN:02865866)
巻号頁・発行日
vol.50, no.3, pp.1-12, 2018-03

This essay describes a personal experience of encountering to both monetarism and libertarianism.And also describes how the writer became a monetarist and a libertarian. While a monetarist claims that money does matter, he believes that free market economy is also important. The writer explaines about the Mont Pelerin Society which advocates libertarianism. Finally the writer analyzes some Japanese historical economic events as a monetarist.
著者
小嶋 洋介
出版者
中央大学人文科学研究所
雑誌
人文研紀要 (ISSN:02873877)
巻号頁・発行日
vol.86, pp.227-256, 2017-09-30

「東洋哲学」を思想視座として戦略的に提起し,西洋哲学を中心軸とするのではない,新たな哲学確立の必要を示唆した碩学,井筒俊彦の意思を,本論考は踏襲するものである。井筒は,主著『意識と本質』において,イスラーム哲学の用語を援用しつつ「普遍的本質」(マーヒーヤ)と「個別的本質」(フウィーヤ)の二相を提起している。しかし,この二相の本質を単に並行的に論述することに,井筒の「本質」論の要諦が存するわけではない。両者の差異を認識しつつ,両者の合一を探求する点にそれはある。本論考は,その理論的深化・進展のための試みの一つである。ここでは,インド哲学の主潮流をなすと言える「有」の問題を,ヴェーダーンタ哲学の論理からアプローチすることを課題とする。そのための探究の機軸となるのは,井筒の「マーヤー」に関する論考である。ブラフマンという絶対「有」を「普遍的本質」として立てるヴェーダーンタ哲学において,マーヤーは「幻影」として,究極的には排除されるものと見なされるが,井筒による創造的解釈を通じて,マーヤーの新たな意味を探究し,そこに「自己」の問題が介在していることに,我々は着目する。