著者
金 愛慶 Aekyoung KIM
雑誌
白梅学園大学・短期大学紀要
巻号頁・発行日
vol.42, pp.13-28, 2006-03-25

本研究は,日本の若者の「ピアッシング行為」と「自傷行為」に対するイメージを調べると共に,ピアッシング行為と自傷との関連性について検討した。短期大学生を中心とした285名を対象(女性256名・男性28名・不明1名)に,「ピアッシング実態」,「ピアス・イメージ」「自傷行為イメージ」「ピアッシングを自傷行為だと感じる程度」に関する独自に作成した質問紙を実施した。ピアス・イメージでは「Fac.1内面的高揚」,「Fac.2女性的」,「Fac.3否定的外見」,「Fac.4ファッション道具」の4因子が抽出され,自傷行為イメージでは,「Fac.1実存手段」,「Fac.2非共感」の2因子が抽出された。ピアス・イメージにおいて,ピアス「過剰群」は「Fac.2女性的イメージ」,「Fac.4ファッション道具」のイメージを最も強く持っており,「Fac.3否定的外見イメージ」は相対的に低かったが,ピアス「平均群」は「Fac.2女性的イメージ」,「Fac.4ファッション道具」のイメージ得点が低い反面,「Fac.3否定的外見イメージ」の得点が最も高かった。平均群と過剰群におけるピアス・イメージの質的違いがピアスのホール数の違いをもたらす鍵となり,平均群の過剰ピアッシングの抑制要因となっていることが示唆された。ピアッシングと自傷との関連性においては,「ピアッシングを自傷行為だと感じる程度」というより直接的質問に関しては平均群と過剰群間の有意差は見られなかったが,自傷行為イメージの「Fac.2非共感」では過剰群が平均群よりも有意に低く,過剰群は有意に自傷行為に共感的である結果であった。この結果から過剰なピアッシング行為は自傷と親和的であることが示唆された。
著者
榎本 浩司 Koji Enomoto
出版者
関西外国語大学・関西外国語大学短期大学部
雑誌
研究論集 = Journal of Inquiry and Research (ISSN:03881067)
巻号頁・発行日
vol.97, pp.199-218, 2013-03

グリム兄弟の『Kinder- und Hausmarchen(子供と家庭の童話集)』は世界各国で読み親しまれているメルヒェンであり、そこに登場する「魔女」はよく知られた存在である。しかし、グリム童話集には魔女以外にも魔法や魔術、超人的な力を持つ女性たちが登場する。「魔法使いの女」や「賢女」がそうである。彼女たちは魔女と一括りにされがちな存在だが、メルヒェンの中でそれぞれどのような役割を演じ、主人公や他の登場人物との関係性はいかなるものか、また彼女たちに差異はあるのか。本稿では、グリム童話に登場する魔法や超人的な力を行使する女性たちの特徴や行為、容姿を比較し分析することにより、彼女たちのメルヘンでの役割と位置づけを論じる。
著者
南場 芳文 藤井 瞬 大谷 啓尊 井上 由里 上杉 雅之 武政 誠一 宮本 重範 弘津 貴章 田中 日出樹
出版者
理学療法科学学会
雑誌
理学療法科学 (ISSN:13411667)
巻号頁・発行日
vol.29, no.5, pp.799-803, 2014 (Released:2014-10-30)
参考文献数
29

〔目的〕上肢挙上位におけるclosed kinetic chain(以下,CKC)運動が腱板筋の筋活動に及ぼす効果を明らかにし,腱板筋の機能回復に有効な徒手抵抗による運動方法を検証することである.〔対象〕健常な男女29名(平均年齢21.5 ± 4.7歳)の右29肩に対して行った.〔方法〕肩甲骨面上での拳上150°または,120°及び,外転位,下垂位にて棘下筋,三角筋(中部線維),僧帽筋(上部線維)の徒手抵抗に対する筋活動を積分筋電法(5秒間)にて計測した.〔結果〕肩甲骨面上での挙上150°,体重比5%の徒手的な負荷を用いたCKC運動は,棘下筋の随意最大収縮の約30%の筋活動を認めた.〔結語〕肩関節挙上位でのCKC運動は棘下筋の理学療法に有効である.

2 0 0 0 OA 寺子屋

著者
石川謙 [著]
出版者
東方書院
巻号頁・発行日
1935
著者
宮崎 あゆみ
出版者
社会言語科学会
雑誌
社会言語科学 (ISSN:13443909)
巻号頁・発行日
vol.19, no.1, pp.135-150, 2016

<p>本稿では,日本の中学校における長期のエスノグラフィを基に,どのように生徒たちが,ジェンダーの境界を越えた一人称を使用し,どのように非伝統的一人称実践についてのメタ語用的解釈を繰り広げていたのかについて分析する.生徒たちのメタ語用的解釈の分析からは,支配的なジェンダー言語イデオロギーから距離を置く創造的なジェンダーの指標性が浮かび上がった.その三つの例は以下の通りである.1)女性性に対する低い評価に伴い,「アタシ」よりも,中性的でカジュアルとされる「ウチ」が好まれる,2)女子が男性一人称「オレ」「ボク」を使用することが正当化される,3)一方,男性語であるはずの「ボク」を男子が使用する場合,望ましくない男性性を指標する.このようなジェンダー言語実践へのメタ語用的解釈は,社会的ジェンダー・イデオロギーの変化と結びついて,ジェンダー言語イデオロギーの変容に繋がった.ジェンダーを巡る「メタ・コミュニケーション」は,このように,言語と社会,ミクロとマクロ,言語とアイデンティティの関係を読み解く貴重な研究材料である.</p>
著者
福井 陸夫
出版者
日本きのこ学会
雑誌
日本きのこ学会誌 (ISSN:13487388)
巻号頁・発行日
vol.26, no.3, pp.99-111, 2018 (Released:2019-12-16)
参考文献数
16

きのこに関する知的財産権としての育成者権(種苗法に基づく品種登録によって発生する権利)は,種菌メーカーや大手きのこ産業,そして生産者の一部を除き,周知されてこなかった経緯がある.そこで,我が国のきのこ産業の一層の発展と充実を目的として,以下の事項を解説した. ・ 種苗法について ・ 種苗法の改正経過 ・ 育成者権侵害物品の水際取締り(海賊版取締り)に対す る技術的課題 ・ 品種登録制度の概要 ・ 農業者の自家増殖について ・ 侵害時の立証・反証方法について ・ UPOV (Union internationale pour la Protection des Obtentions Végétales) とUPOV 条約 ・ 植物品種等海外流出防止緊急対策における中国,韓国 への品種登録の推進 ・ 中国における品種保護出願マニュアル(概要) ・ 韓国における品種保護出願マニュアル(概要) ・ 種苗法と種子法について
著者
水島 治郎
出版者
千葉大学法学会
雑誌
千葉大学法学論集 = Chiba journal of law and politics (ISSN:09127208)
巻号頁・発行日
vol.29, no.4, pp.1-25, 2015-03

第二次世界大戦が終結して七〇年目となる二〇一五年。「戦後」の平和と繁栄を長期にわたって謳歌してきたはずの西ヨーロッパでは、一月初旬からイスラム過激派に関わる事件が相次ぎ、騒然とする年明けとなった。まずフランスでは、預言者ムハンマドの風刺画を掲載したシャルリー・エブド紙が襲撃されて一二人が死亡する悲劇的な事件をはじめ、イスラム過激派による事件が相次いで発生した。次にベルギーでは、大規模なテロを計画していたとされるイスラム過激派を警察が一斉に摘発したが、そのさい銃撃戦が発生し、二人が死亡した。二月にはデンマークで、「表現の自由」をめぐる会合が襲撃されて二人が死亡するなどの事件が続いた。他のヨーロッパ各国も同様のテロを強く警戒しており、ヨーロッパが新たな「戦い」の渦中に入りつつあるようにさえ見党である。近年「イスラムの脅威」を強調し、イスラム系移民の排除を訴えてきたポピュリズム政党は、これらの事件によって自らの主張の正しさが立証されたとしたうえで、既成政党の無策を批判するとともに、イスラム批判を一層声高に唱えている。この事件以後、イタリアの北部同盟の党首はイスラムを「危険な宗教」と批判し、デンマーク国民党の議員は急進的とされるモスクの閉鎖を要求した。フランス国民戦線の幹部であるド・サン=ジュスト(Wallerand deSaint-Just)は、イスラムは「宗教法と市民法を混同」し、フランス国家の世俗的性格を認めない宗教であるとしたうえで、「他のいかなる宗教よりも狂信者を生み出す傾向がある」と断言した(Al Jazeera America, 2015)。オランダ自由党のウィルデルスは、
著者
當野 能之 梅谷 綾 南澤 佑樹 芝田 思郎 Tohno Takayuki Umetani Aya Minamisawa Yuki Shibata Shiro トウノ タカユキ ウメタニ アヤ ミナミサワ ユウキ シバタ シロウ
出版者
大阪大学大学院言語文化研究科
雑誌
外国語教育のフロンティア (ISSN:24339636)
巻号頁・発行日
no.3, pp.291-300, 2020-03-30

研究ノート本稿では、スウェーデン語学習者にとって必要な不変化詞および不変化詞動詞のリストの作成に向けて、見出し語となる不変化詞動詞の選定について考察した。不変化詞動詞は「動詞+不変化詞」から成り、複数の単語で1つの意味を表す「複単語表現(Multi-Word Expression)」に相当する。したがって、単一の単語に比べて、その頻度を出すことは容易ではない。そこで本稿では、不変化詞動詞の学習書やリストなどとコーパスデータを併用し、必要な不変化詞動詞の選定を行い、暫定的な不変化詞と不変化詞動詞のリストを掲載した。