著者
平野 千枝子
出版者
山梨大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2012-04-01

ゴードン・マッタ=クラークは都市のなかに放置された建物に入り込み、かつて住人をとり囲んでいた床や壁を切り取って新しい空間に変える行為を行った。こうした行為は、既存の建物から思いがけない新しい構造を生み出すとともに、人々がどのような空間に生きていたのか、それはなぜ廃墟となったのかを考えさせるものだった。マッタ=クラークはこのような活動を始める前に、樹木を用いた作品を制作し、合わせて植物を大量に描いていたが、これらの建築に関する作品との関係は不明だった。本研究では、マッタ=クラークが、環境によって変化し、環境を変化させる樹木を、我々を取り囲む建築を考え直すときのモデルとした可能性を提起した。
著者
志賀 剛
出版者
一般社団法人 日本不整脈心電学会
雑誌
心電図 (ISSN:02851660)
巻号頁・発行日
vol.31, no.4, pp.365-375, 2011 (Released:2012-02-10)
参考文献数
52

心臓突然死は心不全患者の死因の1/3を占め,そのほとんどが心室頻拍・心室細動(VT/VF)を原因とする.これら心室不整脈は有効な心室収縮を破綻することで循環血液の駆出を妨げ,心静止や無脈性電気活動に至る.心不全治療を行ううえで,心室不整脈に対する対策が必要である.VFおよび血行動態が破綻する持続性VTには,電気的除細動が最も有効である.電気的除細動抵抗性のVT/VFに対しては,リドカインに比し,アミオダロンあるいはニフェカラントの有用性が示されている.一方,予防薬としてはβ遮断薬が心不全患者の生命予後を改善するのみならず,心臓突然死をも予防することが示されている.心不全を対象とした大規模臨床試験から明らかになった心臓突然死を減少させるβ遮断薬は,メトプロロール,ビソプロロールおよびカルベジロールである.一方,アンジオテンシン変換酵素阻害薬やアンジオテンシン受容体拮抗薬の心臓突然死予防効果については,一定の見解がない.抗不整脈薬では,アミオダロンが数々の大規模臨床試験から突然死予防薬として位置付けされている.しかし,その効果には限界があり,ハイリスク例に対する心臓突然死予防としては植込み型除細動器(ICD)が有効とされる.ただし,ICDには不整脈予防効果がないため,アミオダロンにはICDへの付加治療としての役割もある.心室不整脈の抑制,VT周期の延長,上室不整脈の予防,房室伝導の抑制からICDショック作動の抑制,抗頻拍ペーシング成功率の改善,頻回作動の抑制ならびに不適切作動の回避が考えられる.近年,アミオダロンの心外性副作用の欠点を補う新しいIII群抗不整脈薬が開発され,その臨床応用が待たれている.
著者
一ノ瀬 俊明
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
E-journal GEO (ISSN:18808107)
巻号頁・発行日
vol.13, no.1, pp.229-235, 2018 (Released:2018-05-31)
参考文献数
16

地理学の成果を政策立案に生かすための行政支援の事例として,世界的に高い評価を得たヒートアイランド対策の体系化,および国連環境計画の地球版環境白書など,従前より筆者が関わってきた地理学のアウトリーチ活動を振り返り,アウトリーチ活動への提言をまとめた.研究活動が少なからぬ公的資金で支えられている今日,アウトリーチ活動は単なる社会奉仕にとどまらない.研究活動を見直し,強めていくプロセスでもある.とりわけ,アウトリーチ活動を通じて得られた各種ステイクホルダーからのリアクションを,自身の研究活動にフィードバックしていくことが重要である.
著者
丹治 将貴
出版者
電気通信大学
巻号頁・発行日
2017-03-24

プログラミング言語Rubyは,広く使用されている動的型付け言語である. Rubyは実行時に型チェックを行うため,プログラムを実行し型エラーを含む部分に実行が及ばなければ型エラーは報告されない. このことは,プログラム中に型エラーによるバグが潜在的に残り,バグの発見が遅れたり,バグを見逃したりする要因となっている. このような動的型付けの欠点を補う方法として,Gradual typingが提案されている. Gradual typingとは,型注釈の有無により型付けの手法が異なるような型システムである. 型注釈がある部分については静的に型付けをし,実行前に型チェックを行う. 型注釈がない部分については動的型として型付けをし,実行時に型チェックを行う. 本研究の目的は,Rubyの動的型付けによる柔軟性を残しつつ,プログラムの型エラーによるバグの発見を容易にすることである. その方針として,RubyにGradual typingを導入することで,静的型エラーの検出と,Rubyの柔軟性を両立させることを目指す. 本論文では,Gradual typingに基づく動的型と型注釈の構文を加えたRubyのサブセットを考え,そのサブセットについて型付け規則と評価規則を与え,実装に向けての基本的な考え方を示す. さらにその正当性を,進行定理と保存定理を証明することで示す.

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著者
辰野九紫 著
出版者
博文館
巻号頁・発行日
1929
著者
八木 柊一朗 鈴木 善晴 横山 一博
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集B1(水工学) (ISSN:2185467X)
巻号頁・発行日
vol.73, no.4, pp.I_259-I_264, 2017 (Released:2018-02-28)
参考文献数
9

本研究では,強冷法シーディングによる豪雨に対する降水抑制の有効性および信頼性を評価するため,積雲発生初期における面的・離散的・動的シーディングに関する実験的な数値シミュレーションを行い,条件や手法の違いによる抑制効果と促進リスクの有無や大小について検討を行った.その結果,従来の面的シーディングによる氷晶核数濃度の操作倍率が大きい大規模なシーディングではなく,操作倍率が小さく実施領域が限定された比較的小規模な(離散的・動的)シーディングであっても一定の降水抑制効果が得られる可能性があることが示唆された.また,抑制メカニズムの解析を行った結果,線状降水系の事例ではシーディングによって鉛直風速の弱化が降水抑制に繋がることや,降水促進リスクが他の事例より小さい傾向にあることが確認された.
著者
神尾 達夫
出版者
国立研究開発法人 科学技術振興機構
雑誌
情報管理 (ISSN:00217298)
巻号頁・発行日
vol.27, no.3, pp.215-223, 1984

日本経済新聞社はこのほど, オフィスのパーソナルコンピュータを対象にした情報サービス「NIKKEI TELECOM」を開発, 4月からサービスを開始している。電話回線を通じて, 数値や文章の経済情報を提供, パーソナルコンピュータの機能を活かして, 数表やグラフなどを作成する新機軸のオンラインサービスである。提供情報は, 景気情報, 投資情報の2本立てとなっているが, 従来のデータベースサービスに加え, わが国では初のオンラインによるニュース速報を行うのが大きな特色。本稿では, パーソナルコンピュータ向けの情報サービスの意義を述べるとともに, 「NIKKEI TELECOM」のサービス概要, システム構成, 提供情報等について詳述する。
著者
杉原 尚示
出版者
一般社団法人映像情報メディア学会
雑誌
テレビジョン学会誌 (ISSN:03866831)
巻号頁・発行日
vol.45, no.8, pp.964-965, 1991-08-20

報道記者が簡単に操作できる, 報道速報システムと, LAN接続されたパソコンによる電子テロップを開発し, ニュース報道における速報性やニュース項目の柔軟性に効果をあげている.
著者
尾本 正 四津 良平 申 範圭 又吉 徹 三丸 敦洋 井上 仁人 長 泰則 茂呂 勝美 加島 一郎 中尾 佳永 堤 浩二 前原 正明 古梶 清和 川田 志明
出版者
JAPANESE SOCIETY FOR ARTIFICIAL ORGANS
雑誌
人工臓器 (ISSN:03000818)
巻号頁・発行日
vol.27, no.1, pp.56-58, 1998-02-15
被引用文献数
1

当施設で施行した高齢者(65歳以上)に対するMICSの手術成績について検討を行った。対象は96年12月より97年8月までに施行した65歳以上のMICS症例5例で内訳は、僧房弁置換術2例、僧房弁形成術1例、左房粘液腫腫瘍摘出術1例、大動脈弁置換術1例であった。全例に対し術前に自己貯血を行った。胸部切開線は7~10cmであった。大動脈遮断時間は127±29分で人工心肺灌流時間は240±49分であった。輸血は2名に対して行い、術後合併症、手術死亡、遠隔期死亡を認めず、平均術後在院日数は20±7日であった。手術に際しては、MICS用開胸器、MICS用人工心肺回路、IVC用デシャン、体外式除細動パッド、胸骨リトラクター、経食道エコー等工学的支援を必要とした。高齢化社会をむかえた現在、MICSの導入によって、術後疼痛からくる肉体的精神的負担の軽減、入院期間の短期化による経済的負担の軽減等が期待される。
著者
宮川 祐輔 楊 夢龍 長尾 確
雑誌
第80回全国大会講演論文集
巻号頁・発行日
vol.2018, no.1, pp.263-264, 2018-03-13

VRを用いることで災害等の様々なシミュレーションが可能となる。しかし、多くのVRコンテンツは単独での体験が多く、災害時の避難に関するシミュレーション等の複数人の動きが必要なものに関してシミュレーションを行うことは困難である。本研究では、Photonを用いた位置共有をすることにより、マルチユーザでのVRシミュレーションを可能にし、Viveトラッカーを使用した膝の位置のトラッキングを行うことで、より正確な下半身の動きを表現する。また、同一プレイエリア内でのマルチユーザーシミュレーションを想定するため、RGB-D画像を使用したディープラーニングによる回帰により姿勢推定を行い、プレイエリアの拡張を行う。
出版者
内務省
巻号頁・発行日
vol.第6回, 1911
著者
松山 貴 本田 勝也 三井 斌友
出版者
一般社団法人 日本応用数理学会
雑誌
日本応用数理学会論文誌 (ISSN:09172246)
巻号頁・発行日
vol.11, no.2, pp.87-102, 2001
参考文献数
11

The Edwards-Wilkinson (EW) equation is a stochastic partial differential equation which mathematically models the growing rough surfaces. It has been pointed out that the variance of the solution of the EW equation diverges in spatial dimensions equal to or larger than 2. Based on mathematical and numerical analyses for the EW equation, we give two means to avoid the divergence. The first one is the smoothing of the EW equation by introducing a fourth order derivative. The second is to replace the Gaussian white noise with a less singularly correlated noise. These are confirmed by numerical calculations, and suggest a more reasonable modelling for the growing rough surface phenomenon.