著者
桐明 絢 太田 晶 岡山 桜子 松浦 啓一 石崎 松一郎 長島 裕二
出版者
公益社団法人 日本食品衛生学会
雑誌
食品衛生学雑誌 (ISSN:00156426)
巻号頁・発行日
vol.57, no.1, pp.13-18, 2016-02-25 (Released:2016-03-02)
参考文献数
14
被引用文献数
1 1

市販のしらす加工品にフグ稚魚が混入した事例が,2014年9月に多数報告され,商品の回収等が行われた.フグ稚魚の毒性に関する知見は少なく,フグ稚魚が混入したしらす加工品の安全性を評価するため,混入フグ稚魚の種と毒性を調べた.2014年7~9月に各地で製造されたしらす加工品17試料を用い,ミトコンドリアDNA 16S rRNA部分領域の塩基配列から種判別を行い,LC-MS/MS分析でテトロドトキシン(TTX)を測定した.遺伝子解析の結果,15試料はシロサバフグ,2試料がナシフグと判別された.シロサバフグ試料からTTXは検出されず(10 ng/g未満),ナシフグ試料ではTTXに相当するピークが検出されたが,定量下限値(30 ng/g)未満であった.
著者
松浦 啓一
出版者
日本動物分類学会
雑誌
タクサ:日本動物分類学会誌 (ISSN:13422367)
巻号頁・発行日
vol.31, pp.5-11, 2011-08-20 (Released:2018-03-30)
参考文献数
6

Taxonomy is recognized as an important infrastructure of biodiversity research and nature conservation. However, taxonomy itself has been declining in terms of number of taxonomists and expertise covering various taxonomic groups. The animal taxonomy in Japan is not an exception. How can animal taxonomists improve this situation? This paper provides several suggestions including basic assessments on animal taxonomy in Japan (e.g., number of taxonomists and number of specialists on various animal taxa), making a nation-wide list of animals in Japan, research projects by groups of different specialists covering different animal taxa, and using biodiversity databases to implement new researches on distribution and phylogeography.
著者
松浦 啓一 片山 英里 吉野 哲夫
出版者
日本魚類学会
雑誌
魚類学雑誌 (ISSN:00215090)
巻号頁・発行日
pp.18-013, (Released:2018-06-21)
参考文献数
15

Seven specimens of Tylerius spinosissimus (Regan, 1908) were washed up by a typhoon onto a beach at Nakagusuku in Okinawa-jima Island on 17 August 1997. This species has been rarely collected, being known from only a few localities in the tropical Indo-West Pacific. In addition to the seven specimens from Okinawa-jima Island, eight specimens collected off northwestern Borneo in the South China Sea by TV Oshoro-maru in November 1973 were found in the fish collection of the Hokkaido University Museum, Hakodate. Examination of the 15 specimens have revealed that the species is distinguished from other pufferfishes by the following characters: dorsal-fin rays 9–11, anal-fin rays 6–7, pectoral-fin rays 15–17, body somewhat squarish in cross-section, snout short with dorsal surface dropping abruptly anterior to eye, nasal organ a short papilla with two nostrils, eye dorsally adnate only, ventrolateral skin fold absent, body anterior to anal-fin base densely covered by small spinules, dorsal and ventral lateral lines running on lateral surface of body; frontals broad across interorbit, almost completely covering dorsal surface of ethmoid; prefrontal strongly down-curved. A juvenile of Tylerius spinosissimus ca. 10 mm in total length was photographed at 1 m depth in Suruga Bay, on the west coast of the Izu Peninsula, Honshu, Japan, in November 2008. This small specimen was similar in color to adults of T. spinosissimus: the dorsal half of the body being brown with a dark brown blotch just behind the dorsal corner of the eye, the ventral half of body white, and all fins pale.
著者
松浦 啓一
出版者
国立科学博物館
雑誌
Bulletin of the National Science Museum. Series A, Zoology (ISSN:03852423)
巻号頁・発行日
vol.16, no.1, pp.15-20, 1990-03

The pufferfish genus Fugu ABE, 1952,which has long been used by many authors, is a junior subjective synonym of Takifugu ABE, 1949. Higanfugu ABE, 1949 is similarly included in the synonymy of Takifugu ABE, whereas Shippofugu ABE, 1949 is more correctly included in the synonymy of Torquigener WHITLEY, 1930. Comments are also made on the status of the type species of all of the remaining generic and subgeneric categories erected by ABE in 1939,1949,1950,1952 and 1954.
著者
瀬能 宏 松浦 啓一 篠原 現人
出版者
国立科学博物館
雑誌
国立科学博物館専報 (ISSN:00824755)
巻号頁・発行日
vol.41, pp.389-542, 2006
被引用文献数
10

相模灘産魚類の研究は,1900年代初頭にアメリカのジョルダンとその弟子たちによって本格化し,分類群ごとに論文がまとめられ,同時に多数の新種が記載された.その後,田中茂穂とその弟子の冨山一郎や阿部宗明など,日本人研究者によって多くの魚類が相模灘から報告され,研究材料の一部に相模灘産魚類が使用された.近年では相模灘の各地で地域魚類相の研究も盛んに行われているが,長い研究史とは裏腹に,相模灘の魚類が包括的に目録化されたことは一度もなかった.そこで本研究では,主要文献と標本に魚類写真資料データベース(KPM-NR)に登録された画像資料も加え,相模灘産魚類の全体像の把握を試みた.その結果,出現した魚類の総数は45目249科1517種に達した.科別種数の構成比をみると,ハゼ科(7.1%)が最も多く,ベラ科(5.7%)ハタ科(4.5%),フサカサゴ科(3.5%)スズメダイ科(2.8%),チョウチョウウオ科(2.3%),アジ科(2.1%),テンジクダイ科(2.1%)と続くが,その他の241科はすべて2%未満であった.魚類相の分析は,種多様性が高く,相互に同じ質での比較が可能な沿岸性魚類について行った.比較を行った地点は相模灘や屋久島,八丈島を含む南日本の6地点,琉球列島の5地点,および小笠原諸島の12地点である: 1)相模灘, 2)大瀬崎(駿河湾), 3)串本(紀伊半島), 4)神集島(四国), 5)屋久島, 6)沖縄島, 7)伊江島, 8)宮古諸島, 9)石垣島, 10)西表島11)八丈島,および12)小笠原諸島.これらの地点全体で記録された沿岸性魚類について,地点ごとに出現すれば1,出現しなければ0としてコード化し,クラスター分析を行った.その際,生物の分散を妨げる障壁の存在は非出現という共通性にも意味を持たせるとの観点から,距離尺度には単純一致係数を用い,要約手法としてはUPGMAを採用した.その結果,上記12地点の沿岸魚類相は琉球列島とその他の地域に大別され,相模灘は大瀬崎のものと高い類似性を示した.また,串本,柏島,屋久島および八丈島も互いに高い類似性を示した.相模灘と大瀬崎,串本ほか3地点は,西村三郎によって提案された暖温帯区と亜熱帯区にそれぞれ一致し,西村の仮説を支持したが,小笠原諸島については同じ熱帯区の琉球列島ではなく,南日本との類似性を示した.琉球列島とその他地域の非類似性は,トカラ海峡を安定して横断する黒潮が障壁として機能し,南日本から琉球列島への温帯性魚類の分散を妨げていることが原因と考えられた.また,小笠原諸島と南日本の類似性は,伊豆諸島を横断する黒潮の位置が南北に振れることにより,両地域間でファウナの交換が起こりやすくなっていることが原因と推察された.黒潮は生物の分散に寄与すると同時に,障壁として機能する可能性があることが本研究により示された.
著者
松浦 啓一 戸田 実
出版者
The Ichthyological Society of Japan
雑誌
魚類学雑誌 (ISSN:00215090)
巻号頁・発行日
vol.28, no.1, pp.91-93, 1981

本邦初記録のケショウフグ (新称) <I>Arothron mappa</I>とワモンフグ (新称) <I>A.reticularis</I>が沖縄本島から採集された.<BR>ケショウフグは, 腹側面に一大黒斑を有すること, 体の背方に虫食い状の暗褐色模様を有することで他のモヨウフグ属の種類と容易に識別できる.ワモンフグは, サザナミフグ<I>A.hispidus</I>に似ているが, 眼の周囲に環状の白色線があること, 体の背面と側面に多数の白色縦線をもつことで識別される.<BR>Beaufort in Beaufort and Briggs (1962) は, ワモンフグの尾柄長が尾柄高より小さく, サザナミフグでは逆に尾柄長が尾柄高より大きいと報告している.しかし翁今回得られたワモンフグの尾柄長は明らかに尾柄高より大きく, これらの部位の関係には種内変異があることを示唆した.
著者
松浦 啓一
出版者
日本動物分類学会
雑誌
動物分類学会誌 (ISSN:02870223)
巻号頁・発行日
no.23, pp.80-89, 1982-06-25

文部省科学研究費補助金による海外学術調査が,昭和55年6月8日から7月20日まで,パラオ諸島とヤップ諸島で行われた.筆者は魚類相の調査を担当した。得られた魚類は,34科85属148種に分類された.このうちガーデンイールの1種チンアナゴが,当該海域から初めて発見された.また,モンガラカワハギ科のキヘリモンガラの産卵床と卵が,バベルダオブ島の西岸で発見され,親が卵を保護することが確認された.
著者
松浦 啓一
出版者
The Ichthyological Society of Japan
雑誌
魚類学雑誌 (ISSN:00215090)
巻号頁・発行日
vol.41, no.1, pp.29-33, 1994

モヨウフグ属の新種<I>Arothron caeruleopunctatus</I>アラレフグ (新称) を4個体の標本に基づいて記載した.本種はケショウフグ<I>Arothron mappa</I>とモヨウフグ<I>A. stellatus</I>に似ているが, 頭部と体に多数の淡青色点があること, 眼の周囲に同心円状の淡青色値と褐色線があることによって識別される.本種は西部インド洋のレユニオン, 中部インド洋のモルジブ, 西部太平洋のインドネシア, パプアニューギニア, 日本, マーシャル諸島およびサンゴ海に分布する.
著者
松浦 啓一 後藤 孝信 川口 恭輔 水野 征一 山本 直之
出版者
日本酪農科学会
雑誌
ミルクサイエンス (ISSN:13430289)
巻号頁・発行日
vol.66, no.2, pp.97-106, 2017

<p> <i>Lactobacillus helveticus</i>発酵乳から最初に単離された血圧降下ペプチド,Val-Pro-Pro (VPP)とIle-Pro-Pro (IPP)に関して様々なチーズについて分析した。15種類のヨーロッパタイプのチーズを選び,これら2種類の血圧降下ペプチドをLC-MSを用いて分析した。オランダチーズのライペナーとオールドアムステルダムには高含量のVPP/IPPを,100g当たりに19.9/0.9と10.5/0.9mgづつ含んでいた。スイスチーズのエメンタールとグリュイエールには同様にVPP/IPPをそれぞれ100g当たりに8.0/1.1と5.2/1.2mgづつ含んでいた。注目すべき点として,<i>Penicillium roqueforti</i>で製造される幾つかのフランスチーズ(ブルー・ド・オーベルニュとブルー・ド・カース)にも,高濃度の両ペプチドが,100g当たりにそれぞれ,13.1/31.0と9.9/19.2mgづつ含んでいた。VPPに対するIPPの比はドイツやスイスチーズにおいて,ブルーチーズのものに比べて低かった。ブルーチーズにおける両ペプチドの産生の理由を理解するために,以前, <i>Aspergillus oryzae</i>内のIPPの加工に重要な蛋白質分解酵素であるニュートラルプロテアーゼI(NPI)とロイシンアミノペプチダーゼ(LAP)について <i>Penicillium</i>属での存在をBLAST検索した。その結果,<i>A. oryzae</i>のNPIに36%の相同性をもつホモログが<i>Penicillium subrubescens</i>の菌体外金属プロテアーゼ-4に確認された。さらに,<i>A. oryzae</i>のLAPは<i>P. roqueforti</i>の未同定の蛋白質と同一であった。これらのことから, <i>A. oryzae</i>のNPIとLAPに相同性を持つ<i>Penicillium</i>のプロテアーゼがブルーチーズの熟成中の血圧降下ペプチドの生成に関与することが示唆された。</p>
著者
松浦 啓一
出版者
The Ichthyological Society of Japan
雑誌
魚類学雑誌
巻号頁・発行日
vol.23, no.3, pp.171-174, 1976

琉球諸島の石垣島から採集した71個体のクマドリの成魚とラバウルから得た1徊体の幼魚の外部形態および生殖巣を調査した.これらの個体は, (1) 体側および吻部にオレンジ色の波状の色帯を持ち, 吻部の背部外郭線が, やや凹状のもの, (2) 体側のみに色帯を持ち吻部は茶褐色で背部外郭線が, 直線的かやや凸状のものに分けられた. (1) には, すべての雌, 小形の雄および幼魚が含まれ, (2) には大形の雄が含まれた.また (1) の小形の雄の体長に対する眼径の割合は, 大形の雄と雌のそれの中間の値を示した.これらのことからクマドリの斑紋と体形は, 性と成長に関連して変化する事が明らかになった.即ち, 雄では成長にともなって吻部の色帯が消失して茶褐色を呈し背部外郭線は, 直線的かやや凸状となり, 雌では幼魚の吻部の特徴は, 成魚まで保持される.
著者
松浦 啓一
出版者
国立科学博物館
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1996

1.インド太平洋に出現するモンガラカワハギ科魚類には11属が含まれている.これらの仔稚魚は背鰭条数,臀鰭条数,胸鰭条数,縦列鱗数,頬部鱗列数などの計数的形質や頭部や鰓孔上部の鱗の配列状態,色彩などの組み合わせによって属レベルの分類が可能であることが明らかになった.アカモンガラカ属とソロイモンガラ属は背鰭条数が31本以上あるのに対して他の属では30本以下である.さらにアカモンガラ属とソロイモンガラ属は縦列鱗数の差によって識別できる.(2)上記2属以外の9属においては,ツバサモンガラ属は胸鰭下方に大きな突起をもつので容易に識別できる.なお,この突起は成長によって退縮し,成魚になると目だたなくなる.(3)他の8属においては眼の前方にある溝の有無,鰓孔上部の肥大鱗の有無,頬の鱗の配列状態,尾柄の形,色彩などを組み合わせることによって各属を識別できることが明らかになった.(4)他方,属内の種レベルの分類は仔魚では困難であった.2.これら外部形態及び内部形態を検討した結果,11属の系統関係について以下の結論を得た.ツバサモンガラ属は他のすべての属と姉妹群関係にある.他の10属の中では,アミモンガラ属が最初に分岐し,次にナメモンガラ属が分岐したと考えられる.さらにムラサメモンガラ属,クマドリ属がこれに続いて分岐し,残りの6属と姉妹群関係を形成する.6属の中ではソロイモンガラ属とキヘリモンガラ属が他の5属と姉妹群関係を形成する.そして,ツマジロモンガラ属とモンガラカワハギ属が分岐し,次にアカモンガラ属,そして最後にオキハギ属が分岐したと考えられる.