著者
海老名 敏明 鹿内 健吉 伊藤 隆 梅田 義彦
出版者
低温生物工学会
雑誌
凍結及び乾燥研究会記録 (ISSN:02888289)
巻号頁・発行日
vol.3, pp.16-24, 1960-07-17

現在我々の行つている乾燥BCGワクチン(以下乾ワクと略す)の製造では,箱型乾燥機内でアンプル中の液体ワクチンが一且凍結真空乾燥された後,空気を入れて真空を破つて取り出され再び多岐管式乾燥に取りつけて真空に熔封される。此の際真空下にあつた乾ワクは一時空気にふれ再び真空下に戻される事になる。この乾ワクにふれる空気の湿度や,空気と接触している時間の長さが乾ワクの生菌数及び保存性に如何に影響を及ぼすか検討した。1)箱型乾燥機内で乾燥が終つた時,真空下でアンプルにゴム栓を施し,一時的に封じ,之を箱外に取り出し最終的に熔封を行つた乾ワクと,従来の方法で短時間(10分以内)空気にふれさせた後,真空熔封されたものの生菌保性を氷室保存12ケ月比較観察したが,両者間に著差を認め得なかつた。2)箱型乾燥機からとり出されたアンプルを一部は直ちに真空熔封し,他は相対湿度約25.5%の容器中に貯え,2時間後に真空熔封した。この両者の製造直後の生菌数は,後者では明らかに滅少して居た。又15時間上記容器中に放置した群を加えこれら3種の乾ワクの生菌保存性を比較したが,氷室保存では製造直后の生菌をよく保持したが,37℃保存で空気とふれた時間に比例して生菌揖失の度が増した。3)硫酸処置により5.2%, 56.8%, 88.5%の含湿空気を作り,之らに乾ワクを2時間ふれさせた後,真空熔封し,各乾ワクの生薗保存性を比較したが,氷室保存で製造直後の生菌数をよく保持し得たが,37℃保存で高湿度の空気にふれたもの程生菌損失の度合は大きかつた。尚各乾ワクの含水度はふれた空気の湿度に比例して多くなつて居た。4)アンプル熔封時,空気,酸素,窒素等のガスをアンプル中に送入し,再び真空状態に戻した後アンプルを真空熔封した場合,その乾ワクの生菌保存性は窒素群が他群より多少優れて居た。
著者
土方 勝一郎 成川 匡文 増田 増田 今村 晃 岸野 泰章 伊藤 隆文 柳下 文雄 富井 隆 小山 桂介
出版者
日本建築学会
雑誌
日本建築学会構造系論文集 (ISSN:13404202)
巻号頁・発行日
vol.62, no.502, pp.39-46, 1997
参考文献数
21
被引用文献数
2 1 2

The buildings of a thermal power plant are generally supported by a large number of piles. When conducting a dynamic analysis of such buildings, the dynamic interaction system of a pile groupshould be evaluated. In this paper, the interaction system is proposed for the responses of the thermal power plant buildings subjected to earthquake excitation. The system is based on the simplified methods currently proposed by the authors, for the impedances of a pile group. The results of the analysis show that the interaction system is practical for the dynamic analysis of a building supported on a large number of piles.
著者
伊藤 隆敏
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2003

為替市場の研究について次の成果があった。(1)為替レートの変動に関して、超短期の観点から、取引の制度に根ざした(マイクロストラクチャー)、理論的・実証的研究をおこなった。為替レートの短期(日々から数ヶ月先)の予測可能性について学界の通説は否定的だが、民間の金融機関は巨額の費用を投じて為替レートの予測をしようとしているというパズルがある。為替レートがランダム・ウォーク過程に従っている、という仮説を否定できない、と理論的にも実証的にも信じられている。しかし、本研究の結果、民間の金融機関は市場にもたらされる新たな情報が発表されてから、為替レートが新しい均衡レベルに到達するまでの短い時間(数十分程度)にほかの投資家よりも早くポジションをとって、売り抜けるという行動をとっている仮説と整合的な結果が得られた。他の投資家の売買に触発されて売買するという投資家もいるために、ボラティリティーは継続性を持つ。(2)アジア通貨の危機の伝播について、理論的・実証的に新たな考え方を提示することができた。通貨危機が周辺の必ずしもマクロ経済が不健全とはいえないような国にも波及する(危機の伝播)ことが観察されているが、それがたんに投資家の心理的なものによるのか、経済的な理由があることなのかを検証した結果、貿易関係が強いほど、伝播がおきやすいことが実証的にわかった。(3)通貨当局による為替介入についての理論的・実証的な研究の進展がみられた。金融当局による為替介入の効果の測定である。学界の通説は、不胎化された介入は効果を持たない、というものであったが、本研究では、いくつかの条件がみたされるとき、たとえ、不胎化された介入でも為替レートに影響を与えることが示された。また、当局の介入の反応関数を計測した結果は、円が長期トレンドから大きく乖離して、その乖離がさらに加速するような状況でおきやすいことがしめされた。
著者
鈴木 喜裕 小川 伸郎 石和 直樹 伊藤 隆明
出版者
日本肺癌学会
雑誌
肺癌 (ISSN:03869628)
巻号頁・発行日
vol.42, no.4, pp.283-287, 2002-08-20
被引用文献数
8

背景.われわれは肺門リンパ節癌にて,リンパ節切除後に原発巣を切除した稀な症例を経験したので報告する.症例.症例は41歳男性.右肺門部リンパ節未分化癌の術後経過観察中,7年目のCTにて右S^6に小結節を認めたため右肺癌疑いにて2000年1月7日手術を施行した.結節は大きさ約10mmでS^6に存在し,迅速診断で腺癌と診断され,下葉切除とリンパ節郭清を行った.病理組織学的には中分化腺癌で一部低分化像を示し,前回のリンパ節組織像と類似していた.また免疫染色で,surfactant apoprotein(SA-P)はいずれの腫瘍も陰性,p53蛋白はいずれの腫瘍も過剰発現が認められた.また肺癌の組織診断マーカーとして有用とされているthyroid transcription factor-1(TTF-1)はいずれの腫瘍も陽性であった.組織像や免疫染色の結果から臨床所見および経過を考慮すると,今回の病変を原発巣とする肺癌のリンパ節転移と考えられ,病期はpT1N1M0 stage IIA と診断した.肺切除後2年になるが無再発生存中である.結論.原発不明肺門リンパ節癌に対しての治療としては,積極的にリンパ節切除およびリンパ節郭清を行い,長期にわたる厳重な経過観察を行い原発巣が認められたならば,原発巣の切除を行うことが良いと思われる.
著者
浅子 和美 伊藤 秀史 伊藤 隆敏 加納 悟 宮川 努 渡部 敏明
出版者
一橋大学
雑誌
基盤研究(S)
巻号頁・発行日
2006

本研究では、日本経済の適切な政策運営に役立てるために、日本経済の現状をより早く、より的確に把握する体制の確立を目指した。具体的には、景気循環の局面判断の観点からの日本経済の現状分析を行うとともに、経済制度面での歴史的変遷を踏まえた上で、1990年代以降の経済成長率や生産性上昇率の鈍化の原因を解明し、技術革新の活性化や産業構造の転換による日本経済の中長期的パフォーマンスの向上の可能性を探った。景気循環メカニズムの理論的研究や統計学・計量経済学的分析手法の研究も進めた。
著者
伊藤 隆康
出版者
明治大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010-04-01

包括緩和政策において、政策導入直後から日銀幹部が積極的に市場との対話を行い、導入3カ月後においては、社債スプレッドの低下や株価上昇という形で効果が見られた。量的・質的緩和政策においては、導入3カ月後に緩和効果が認められたのが、短期金利と株価、ドル円為替レートであった。一方、中長期ゾーンのイールドカーブ低下効果は認められず、中長期金利は上昇した。この点は市場との対話の限界を示した。東日本大震災後における日銀の市場との対話や流動性供給、金融緩和策の強化などが、短期金融市場と国債市場に与えた影響を検証し、こうした一連の政策対応が功を奏して、金融市場は混乱なく安定的に推移したことが分かった。
著者
伊藤 隆史 川原 幸一 橋口 照人 丸山 征郎
出版者
The Japanese Society on Thrombosis and Hemostasis
雑誌
日本血栓止血学会誌 = The Journal of Japanese Society on Thrombosis and Hemostasis (ISSN:09157441)
巻号頁・発行日
vol.20, no.4, pp.418-421, 2009-08-01

急性炎症とは,生体にとっての非常事態体制である.感染を察知した免疫細胞や,損傷に伴って壊死した細胞は,High mobility group box 1 protein (HMGB1) を放出することによって周囲に非常事態宣言をする.これを受けた周囲の細胞は,炎症,免疫,組織修復のプログラムを立ち上げ,非常事態に対応しようとする.このように,HMGB1は生体防御的役割を担っているが,その一方で,大量に産生されて全身を循環するHMGB1は,全身性炎症反応症候群(SIRS)や播種性血管内凝固症候群(DIC)を引き起こし,致死的に働く.このHMGB1の全身化を防ぐ役割を担っていると考えられるのが,抗凝固タンパク質として知られるトロンボモジュリン(TM)である.TMはトロンビンと結合するとともにHMGB1とも結合し,トロンビン-TM複合体がHMGB1を分解して不活化する.TM は凝固反応や炎症反応を多面的に制御していると考えられる.
著者
伊藤 隆二
出版者
日本作物学会
雑誌
日本作物学会関東支部会報 (ISSN:13416359)
巻号頁・発行日
no.4, pp.5-8, 1989-12-07

ある特定のイネ品種の細胞を培養して植物体を再生させた場合、その植物体は原品種と同じものになると考えるのが常識であろう。ところがプロトプラストから植物体を再生させる過程において、おそらく突然変異が起こったのであろう、原品種と異なる変異体が生じ、その中から良いものを選び、悪いものを捨てるという、従来の育種の操作を進めることによって原品種と性質の異なる新品種を生むことができたのである。植工研では、わずか3年間でコシヒカリのプロトプラスト培養から新品種を作出し、平成元年2月3日「初夢」の名で農林水産省に品種登録の申請を行った。そこで、この奇妙な方法で新品種を作出した経緯、新品種「初夢」の特性、細胞培養利用のイネ育種の特徴等について述べることとする。