著者
長坂 和彦 土佐 寛順 巽 武司 嶋田 豊 伊藤 隆
出版者
社団法人日本東洋医学会
雑誌
日本東洋醫學雜誌 (ISSN:02874857)
巻号頁・発行日
vol.49, no.2, pp.273-280, 1998-09-20
参考文献数
13
被引用文献数
7 4

西洋医学的治療に抵抗した難治性の褥瘡に帰耆建中湯加附子が奏功した4症例を経験した。症例1は82歳, 女性。繰り返す褥瘡に帰耆建中湯加附子が有効であった。帰耆建中湯加附子の内服を継続することにより、新たな褥瘡の再発はない。症例2は59歳, 女性。直径2cmの褥瘡周囲の皮下に直径10cmにわたるポケット形成があり、同部の皮膚は紫色を呈していた。帰耆建中湯加附子内服後、皮膚の色は正常になり褥瘡は治癒した。症例3は85歳, 男性。過去2回、瘻孔を伴う褥瘡の手術を受けたが治癒しなかった。帰耆建中湯加附子内服後、体交時, おむつ交換時に看護婦を大声で怒る元気がでてきた。また、創部消毒時に強い痛みを訴えるようになった。痛みの自覚は血流が改善してきたことによると考え、同方を継続。褥瘡の治癒とともに全身状態も改善した。症例4は64歳, 女性。心筋梗塞後に心停止し、脳死状態になり、仙骨部に褥瘡を形成するに至った。褥瘡は大学付属病院,総合病院で治療を受けたが改善しなかった。帰耆建中湯加附子 (黄耆30.0g, 白河附子6.0g) で治癒した。帰耆建中湯加附子は、難治性の褥瘡には一度は試みてよい方剤と考えられた。
著者
伊藤 隆敏
出版者
岩波書店
雑誌
経済研究 (ISSN:00229733)
巻号頁・発行日
vol.54, no.2, pp.97-113, 2003-04

2001年7月に公表され,その後,定期的にアップデートされている為替介入のデータ(観察期間,1991年4月から2002年3月)を用いて,利益,介入効果などの側面について考察を加える.この期間,125円よりも円安(円ドルレートが,126円以上)の水準での円売り・ドル買いの介入実績はなく,125円よりも円高(円ドルレートが,125円以下)の水準での円買い・ドル売りの介入実績は無かった.日本の通貨当局は,ドルをドル価値が安いときに購入し,高いときに売却していた.介入による売買益,評価益,金利差益の利益合計は,11年間で10兆円近くに上る.介入直前の為替レートの変化に比較して,介入直後の為替レートの変化が,介入の意図した方向に動いていたかどうかの介入の効果を検討すると,おおむね,意図された効果が得られていたといえる.回帰分析によると,1990年代の後半は,介入が統計的有意に為替レートに意図したように影響していることがわかった.効果の大きさは,アメリカと日本の同時介入が,通常の日本の通貨当局による単独介入よりも,20-50倍の効果を持つ.日本の通貨当局による介入のうち,一週間以上の間を置いたあと最初の介入は,そうでない場合よりも有意に大きな効果を持つことが分かった.
著者
千々岩 武陽 伊藤 隆 菅生 昌高 仙田 晶子 大川原 健 海老澤 茂 王子 剛 島田 博文
出版者
一般社団法人 日本東洋医学会
雑誌
日本東洋医学雑誌 (ISSN:02874857)
巻号頁・発行日
vol.61, no.6, pp.840-846, 2010 (Released:2010-12-24)
参考文献数
15
被引用文献数
1

桂枝加桂湯が奏効した奔豚気病と思われる身体表現性障害の3症例を経験した。第1例は34歳男性。頭痛,動悸,「胸から頭に何かが突きあがってくる感じ」を奔豚気と捉えて桂枝加桂湯を開始したところ,内服1週間後に頭痛,4週間後には動悸や耳鳴りが著明に改善した。第2例は22歳男性,主訴は緊張感,全身倦怠感。下肢の冷え,発作的な頭痛のエピソードを奔豚気と解釈し,桂枝加桂湯を開始したところ,自覚症状と心理テストの大幅な改善を認めた。第3例は75歳女性。自宅のリフォームを契機に激しい頭痛と動悸が出現した。桂枝加桂湯開始により,内服3週間後には症状の消失を認めた。近年,奔豚気病はパニック障害と比較されることが多かったが,身体表現性障害と称される一群の中にも奔豚気病の症例が含まれている可能性がある。頭痛や動悸など身体愁訴の背景に奔豚気病の存在を疑うことが,桂枝加桂湯の処方選択に有用であると考えられた。
著者
柴原 直利 嶋田 豊 伊藤 隆 新谷 卓弘 喜多 敏明 後藤 博三 寺澤 捷年
出版者
The Japan Society for Oriental Medicine
雑誌
日本東洋医学雑誌 (ISSN:02874857)
巻号頁・発行日
vol.51, no.1, pp.43-50, 2000-07-20 (Released:2010-03-12)
参考文献数
20

C型慢性肝炎は高率に肝硬変症へと進展し, 自然治癒の可能性は非常に低いとされている。筆者らは, 和漢薬治療によりC型肝炎ウイルスが消失したC型慢性肝炎の一例を経験した。症例は37歳の女性。1982年の第一子出産時に輸血を受けた。1983年1月頃に全身倦怠感を自覚し, 慢性肝炎と診断され治療を受けていた。1988年に肝生検により慢性活動性肝炎と診断され, 同年5月に当科を受診した。初診時より補中益気湯・桂枝茯苓丸を併用投与し, 自覚症状は改善したが, ALT値は不変であった。しかし, 柴胡桂枝湯合当帰芍薬散投与後より徐々にALT値に改善が得られ, 加味逍遥散料に転方した1996年5月以降は正常化した。ウイルス学的検査においては, 柴胡桂枝湯合当帰芍薬散投与中である1995年3月に測定したHCV RNA定量では104 Kcopies/mlを示したが, 1998年4月以降は検出感度以下となった。
著者
伊藤 隆司
出版者
日本香粧品学会
雑誌
日本香粧品学会誌 (ISSN:18802532)
巻号頁・発行日
vol.43, no.3, pp.199-208, 2019-09-30 (Released:2020-09-30)
参考文献数
24

Hair care products include shampoo, conditioner, treatment, hairstyling product, perm agent, coloring agent, and hair growing agent. The products other than shampoo and hair growing agent are used for scalp hair shaft, which is a dead part. Therefore, unlike skin care products, it is characteristic for hair care products that some of them act with a chemical reaction, like permanent wave lotions and oxidation hair dyes. In this article, I explain hair care products except in-bath products (shampoo, conditioner, and treatment) with a focus on their functions, product types, purposes, ingredients, and usages. Hairstyling can be performed by rearranging hydrogen bonds in hair. In other cases, hairstyles are made by fixing hair fibers with fixative ingredients. Hairstyling products assisting hairstyling or fixing hairstyles include hair sprays, hair water or lotions, hair foams, hair creams or milks, gels, liquids, tonics, oils, waxes, etc. The characteristics of their forms and components are explained. Perm agent is intended to change hair shape permanently by cleavage and recombination of disulfide bonds in the hair. In addition to the perm agent of quasi-drug from the past, there has been extending recently curling agents of the cosmetic category, of which curling mechanism is based on the reduction and oxidation of disulfide bonds, same as quasi-drugs. As for hair coloring agent, there are also quasi-drugs and cosmetic products. In the quasi-drug category, there are oxidation hair dyes and bleaching agents. There are semi-permanent hair color and temporary hair color in cosmetic products. Their coloring mechanisms and including components are described. As for hair growing agents, many effective ingredients have been proposed in accordance with the mechanism of thinning hair. I explain briefly products in the categories of medicine and quasi-drug.
著者
坂本 浩子 山崎 勝利 加賀 千文 山本 幸子 伊藤 隆二 黒澤 康之
出版者
社団法人 日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.43, no.5, pp.598-602, 1996-05-15 (Released:2009-05-26)
参考文献数
18
被引用文献数
1 21

準強力粉を主原料として中華麺を調製し,麺の物性に対するMTGaseの添加効果を調べた.(1) かんすいの添加量を調整し生麺調製時のpHを約6~10と変化させ,ゆで麺,酸処理麺の破断強度に及ぼす影響を調べた結果,MTGase無添加麺ではpHが高いほど破断強度が高かったが,MTGase添加系ではpH 6~8で破断強度増加効果が得られた.(2) pH 8.0で生麺を調製し, MTGaseの添加量が破断強度に及ぼす影響を調べた結果,MTGase 0~7U/gproteinで酵素濃度の増加とともにゆで麺の破断強度が増加した.ゆで麺を酸処理またはレトルト処理した場合,調べた0~10U/g proteinの範囲内で酵素濃度の増加とともに破断強度が増加した.(3) 生麺の断面を走査型電子顕微鏡により観察した結果から,これらMTGaseによる効果はG-L架橋形成によりグルテンのネットワーク構造が補強されたためと推定された.(4) 以上より,MTGaseを使用するとゆで麺の破断強度が増加すること,さらに酸処理やレトルト処理をしても破断強度の低下が抑制されることが判明した.
著者
伊藤 隆 仙田 晶子 井上 博喜 斉藤 康栄 鏡味 勝 松原 史典 青柳 晴彦
出版者
社団法人日本東洋医学会
雑誌
日本東洋醫學雜誌 (ISSN:02874857)
巻号頁・発行日
vol.56, no.6, pp.933-939, 2005-11-20
参考文献数
9
被引用文献数
1 6

外来を受診した肥満患者127例に―律に防風通聖散 (Bo) を投与し, 6ヵ月以上服薬できた33例についてエキス剤の体重減量効果を検討した。対象例の腹力は5段階で (4) 以上の強が多かったが, これは腹痛下痢などの副作用で長期投与ができなかった9例で中間 (3) が多かったのに比較して, 腹力の強さの点で有意に高かった。服薬後の食欲低下は16例に認められた。食欲低下例と食欲不変例の投与前の体重はそれぞれ67.1±2.5kg, 75.9±2.4kgであり, 推計学的有意差を認めた。食欲低下例の体重の変化は-4.8±1.0kgで, 食欲不変例の-1.4±0.7kgに比較して明らかな差がみられた。血中中性脂肪値はBo投与後有意に低下した。作用機序として麻黄, 荊芥, 大黄, 連翹, 甘草による Adrenalin β<sub>3</sub> receptor の活性化だけでなく, 大黄と山梔子による向精神作用が推測された。近年本薬に関する重篤な副作用報告がなされている。本剤の投与対象は腹力が強 (4) 以上が望ましく, 長期投与は食欲低下が認められる例によいと思われた。
著者
伊藤 隆 田中 哲朗 胡振江 武市 正人
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.43, no.10, pp.3012-3020, 2002-10-15

``しりとり''を完全情報ゲームとして数学的に定義した``しりとりゲーム''を考えると,グラフ上のゲームとしてモデル化することができる.これは完全情報ゲームであるため理論上は解けることになるが,問題のサイズが大きくなるにつれ全探索は困難となる.本論文では,しりとりゲームに関する解析を行い,ゲームを効率的に探索する手法を提案する.この手法は数理的解析,探索の効率化の2つの部分から成っており,数理的解析としてグラフのより簡単な形への変形を行っている.加えて,しりとりゲームにおける先手の勝率に関して実験,考察を行う.
著者
山﨑 麻由子 木村 容子 佐藤 弘 許田 瑞樹 神山 貴弘 能木場 宏彦 雨宮 伸幸 杉浦 秀和 荒川 洋 細川 俊彦 岩谷 周一 伊藤 隆
出版者
一般社団法人 日本透析医学会
雑誌
日本透析医学会雑誌 (ISSN:13403451)
巻号頁・発行日
vol.49, no.10, pp.677-682, 2016 (Released:2016-10-28)
参考文献数
26

胃もたれ, むかつきなどの上部消化管症状を伴う体重維持の困難な血液透析患者に六君子湯を投与したところ上部消化管症状, 食欲が改善しドライウエイト (DW) が増加した2症例を経験した. 症例1 : 79歳男性. 5か月前より胃もたれ, 食欲不振が出現しDW減量が必要であった. 胃酸分泌抑制薬内服にても症状は持続していた. 六君子湯の投与にて胃もたれや食欲は徐々に改善し1年間でDWは約7kg増加した. 症例2 : 54歳女性. 透析導入前は毎年夏に胃もたれ, むかつきを伴う食思不振が生じ体重が約3kg減少した. 透析導入後DWは27kgと低体重で胃酸分泌抑制薬を内服するも胃もたれを訴えた. 六君子湯の投与にて胃もたれやむかつきのほか, 食欲も改善した. 夏場の体重減少も消失しDWは2年間で約5kg増加した. 血液透析患者の上部消化管症状, 食欲不振を伴う体重減少に対して六君子湯は有用な治療であると考えられる.
著者
伊藤 隆司 丹保 健一 余 健 鈴木 幹夫
出版者
立命館大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2006

(1) 熊野市市街地、飛鳥町、紀和町における方言調査をふまえ、熊野らしさを体現している「タバル」(いただく)関係の語彙に焦点を当て、小学校の授業で活用可能なビデオ教材を2編作成した。(2) 小学校5・6年生を対象としてビデオ教材を用いた実験授業を行った。(3) 熊野市立飛鳥小学校の学校文集を中心として、教材化にむけた分析作業をすすめた。(4) 以上の成果を報告集(A4判65頁)にまとめ、当該地域の小中学校に還元した。
著者
伊藤 隆
出版者
錦正社
雑誌
軍事史学 (ISSN:03868877)
巻号頁・発行日
vol.12, no.2, pp.p2-14, 1976-09
著者
田原 英一 伊藤 隆 林 克美 三瀦 忠道 寺澤 捷年
出版者
社団法人日本東洋医学会
雑誌
日本東洋醫學雜誌 (ISSN:02874857)
巻号頁・発行日
vol.48, no.4, pp.459-466, 1998-01-20
参考文献数
26
被引用文献数
3 1

大黄甘遂湯により変形性関節症に伴う膝関節痛の軽減とともに, バセドウ病の改善を認めた1症例を経験した。症例は61歳女性。主訴は両膝関節痛と下腿浮腫。1995年5月当科に入院。この時, バセドウ病と診断し, 抗甲状腺剤を6ヶ月使用した。退院後, 膝関節痛と下腿浮腫増悪のため, 1996年5月20日当科再入院。下腹部の膨満と抵抗圧痛に着目し, 大黄甘遂湯を投与した。両膝関節痛と下腿浮腫は著明に改善し, 6月15日退院となった。再入院時に再燃していた甲状腺機能亢進状態についても, 抗甲状腺剤を使用することなく, 約5ヶ月後に正常化した。同方剤は峻下剤といわれている甘遂が配剤されているが, 本例では長期投与にもかかわらず下痢などの副作用は認めなかった。本方剤の治験例は明治以降では2例のみ報告されているに過ぎない。そこで本証に特有とされる「小腹満して敦状の如き」腹候に関して文献的検討を行い, 使用目標について考察した。
著者
槇田 仁 伊藤 隆一
出版者
慶應義塾大学産業研究所
雑誌
組織行動研究
巻号頁・発行日
no.25, pp.73-95, 1993-03

慶應義塾大学産業研究所社会心理学班研究モノグラフ ; No. 37精研式文章完成法テスト(SCT)を開発してから30年近くの年月が経過した。永年,SCTによるパーソナリティ診断や, 診断法の教育訓練を続けていると, 訓練効果が高いことも分かるが, それと同時に, 評価と評価者のパーソナリティ属性との間に興味ある関係のあることが経験的に分かるようになってきた。
著者
宮川 美知子 伊藤 隆一 林 泉彦 辻 祐一郎 津田 隆 神川 晃 佐藤 德枝 沼口 俊介 野間 清司 宮下 理夫 三澤 正弘 泉 裕之 松裏 裕行 塙 佳生
出版者
公益社団法人 日本小児科医会
雑誌
日本小児科医会会報 (ISSN:09121781)
巻号頁・発行日
vol.62, pp.230-234, 2021 (Released:2021-12-07)
参考文献数
9

いくつかの自治体で救急受診に際しての電話相談事業が活用され,軽症児(者)の救急外来受診や不急の救急車出動の抑制に効果を挙げている。代表的な事業は「#7119救急安心センター事業」と「#8000子ども医療電話相談事業」であるが,前者は総務省の所管,後者は厚生労働省の所管と異なる。運用状況も自治体によって違うことから,東京小児科医会小児救急部では,「日本小児科医会#8000情報収集分析事業ワーキンググループ」と相談・協力して,本会が#7119事業もしくは別番号で同様の事業を行っていると把握している19の自治体の小児科医会にアンケートを実施,運用実態を調査した。アンケートの回収率は100%で,集計の結果,消防庁などの行政が直接職員を雇用して運用している自治体は少なく,多くはその自治体以外に拠点がある民間業者に委託していることがわかった。また,1つの業者が複数の自治体から受託している場合もみられた。アンケート結果を検討し,各自治体内で抱える本事業運用上の問題点や課題,#8000との関係などを考察した。現在同様の事業を実施している地域や,今後#7119が行われる予定の地域への情報提供になると考えた。