著者
佐々木 祥 宮田 高道 稲積 泰宏 小林 亜樹 酒井 善則
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌データベース(TOD) (ISSN:18827799)
巻号頁・発行日
vol.48, no.20, pp.14-27, 2007-12-15
参考文献数
16
被引用文献数
4

近年急速に普及しているソーシャルブックマークは,ユーザ間でブックマークを共有できるサービスであり,新たな情報収集ツールとして注目されている.ソーシャルブックマークでは,ユーザはwebコンテンツにタグと呼ばれる自由記述のキーワードを付与できるため,既存研究においてタグの名称に着目したwebコンテンツ推薦システムが提案されている.しかしながら,ユーザの嗜好はタグの名称ではなく,タグを表象として関連付けられたwebコンテンツ群(以下,コンテンツクラスタ)として表出するものといえる.そこで本研究では,コンテンツクラスタ間の類似度を仮説検定問題として求め,得られた類似度に基づくwebコンテンツ推薦システムを提案する.また,提案手法の検証実験によって,付与するタグの名称が他のユーザと異なるユーザに対しても有効に推薦することが可能であるなどの有効性を確認することができた.The web-based bookmark management service called social bookmark has recently been in the spotlight and come to be recognized as a new information sharing tool.Social bookmark service allow users to tag keywords to each of their entries. These keywords are called 'tags'. There are some conventional studies of the web content recommendation system based on social bookmark which is focused to actual words of tags. However, the essential information of tags is not tag names, but classification of web contents by tags (we called the result of this classifications as contents cluster). Based on this assumption, we calculate similarities between contents clusters by using hypotheses test. By using calculated similarities, we proposed the web content recommendation system based on these similarities. It has been shown that our proposed method is working well, as the fact that appropriate recommendation can be offered to users, including who tagged different named tags to the same contents.
著者
多田 実加 大森 圭貢 佐々木 祥太郎 最上谷 拓磨 榊原 陽太郎 宮﨑 登美子
出版者
学校法人高知学園 高知リハビリテーション学院
雑誌
高知リハビリテーション学院紀要 (ISSN:13455648)
巻号頁・発行日
vol.19, no.2, pp.65-74, 2018-03-30 (Released:2019-08-07)
参考文献数
47

本邦におけるHand-held Dynamometer(以下,HHD) を用いた膝伸展筋力測定方法を文献検証した.医中誌のデータベースを用い,「Hand-held Dynamometer」,「ハンドヘルドダイナモメーター」,「徒手筋力計」のキーワードで文献検索を行った.抽出された文献のうち膝伸展筋力測定方法に関して再現性と妥当性が検討された32文献を対象とした.運動器疾患を有さない対象者において再現性を検討した報告は16文献あり,その内15文献はHHDにベルト固定を併用していた.端座位でベルト固定を併用した測定における級内相関係数は,検者内,検者間ともに1つの論文を除きすべて0.9を超えていた.一方,筋力水準が高い場合,ベルト固定なし条件での再現性は不良であった.同時的妥当性を検討した8文献では,7文献においてベルト固定が行われていた.いずれも等速性筋力測定装置などによって得られた値との間に強い相関関係を認めていた(0.73~0.98).運動器疾患を有する対象者で検討した8文献では,4文献においてベルト固定が併用されており,検者内級内相関係数は0.9を超えていた.ベルト固定を併用していない1文献でも,級内相関係数は0.9を超えていたが,測定された筋力は極めて低値であった.運動器疾患のない対象者においては,端座位でのベルト固定を併用したHHDによる測定方法が選択されるべきである.
著者
佐々木 洋子 佐々木 祥太郎 宮内 貴之
出版者
一般社団法人 日本作業療法士協会
雑誌
作業療法 (ISSN:02894920)
巻号頁・発行日
vol.42, no.4, pp.532-538, 2023-08-15 (Released:2023-08-15)
参考文献数
15

今回,上位頚髄後索に多発性硬化症を再発し,利き手である右上肢の表在および深部感覚が脱失した症例を経験した.症例の感覚障害は免疫吸着療法で改善したが,治療経過において静的2点識別覚や立体覚の障害を認め,手指の巧緻動作が拙劣となるUseless hand syndromeを呈していた.作業療法では,手の機能を細分化した能動的な感覚再学習と,実生活に汎化を促す介入を実施した.治療効果に合わせて,感覚障害に対するアプローチを行うことで,免疫吸着療法開始3週間で,スムーズに実用的な右上肢機能を再獲得することができたと考えられた.
著者
宮内 貴之 佐々木 祥太郎 佐々木 洋子 最上谷 拓磨
出版者
一般社団法人 日本作業療法士協会
雑誌
作業療法 (ISSN:02894920)
巻号頁・発行日
vol.42, no.3, pp.263-269, 2023-06-15 (Released:2023-06-15)
参考文献数
27

本研究はBox and Block Test(以下,BBT)が,急性期脳損傷患者に対して評価可能な食事動作に関連する評価指標となりうるかを明らかにすることを目的とした.対象は78名(食事動作自立群:54名,非自立群:24名)であった.その結果,2群間でBBTに有意な差があり,その効果量も大きいことが確認された.また,BBTは食事動作の自立度と高い相関関係を示し,Receiver Operating Characteristic曲線のArea Under the Curveでは良好な判別能を示した.そのため,BBTは急性期脳損傷患者の食事動作の自立度に関連する上肢パフォーマンスの評価指標となることが示唆された.
著者
佐々木 祥 宮田 高道 稲積 泰宏 小林 亜樹 酒井 善則
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. DE, データ工学 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.106, no.150, pp.67-72, 2006-07-07
被引用文献数
2

近年急速に普及しているsocial bookmarkは,これまで利用者が個別に管理していたbookmarkをネットワーク上で他の利用者と共有するサービスである.これらのサービスでは多くの場合,利用者がbookmarkに対して「タグ」と呼ばれる自由記述のキーワードを付与することによって管理を行うFolksonomyと呼ばれる分類法を採用している.このようにして利用者が付与したタグ情報の集合は,多数の利用者によって成長を続けるメタデータであるとみなせるため,このタグ情報を利用することにより効率的なコンテンツの検索や推薦を行うことができると考えられる.しかしながら,利用者はあくまで自分自身の嗜好に基づいてタグ付けを行っているため,分類に使用したタグ名そのものは,必ずしも他の利用者とって適切なものであるとは限らない.そこで本研究では,タグの持つ本質的な情報を,タグ名ではなく,タグによるコンテンツの分類情報であると仮定し,分類間の類似度に基づいて利用者に対して望ましいコンテンツの推薦を行うシステムを提案する.
著者
福田 佳奈子 足立 厚子 指宿 千恵子 白井 成鎬 佐々木 祥人
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.751-755, 2016-09-01

要約 患者は味噌醸造家に育った兄弟である.症例1:32歳,男性(兄).中学時より麹吸入時呼吸困難を繰り返していた.症例2:22歳,男性(弟).小児期から手足の腫脹,腹痛,下痢,嘔吐を繰り返し,麹吸入時の呼吸困難に加え,成人後,摂食後2時間後に腹痛・嘔吐があった.2症例ともに自家製の麹,麹菌,味噌のプリックテストが強陽性であった.アスペルギルス特異IgE(Immuno-cap)は,症例1クラス1,症例2クラス0であった.症例2は血清補体価CH50およびC4が著明に低値であった.症例1は麹菌に対する即時型機序,症例2は補体が関与する機序を考えた.麹菌に対するアレルギーの報告は,味噌醸造を家業とする職業性が多い.麹菌(Aspergillus oryzae)特異IgEは通常測定できず,交叉性のあるAspergillus fumigatus特異IgEで代用診断される.麹菌が産生するαアミラーゼ特異IgEは自験2例では陰性であったが,病態への関与を否定するものではない.
著者
佐々木 祥 宮田 高道 稲積 泰宏 小林 亜樹 酒井 善則
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会研究報告データベースシステム(DBS) (ISSN:09196072)
巻号頁・発行日
vol.2006, no.78, pp.407-413, 2006-07-14

近年急速に普及しているsocial bookmark は,これまで利用者が個別に管理していたbookmarkをネットワーク上で他の利用者と共有するサービスである.これらのサービスでは多くの場合,利用者がbookmarkに対して「タグ」と呼ばれる自由記述のキーワードを付与することによって管理を行うFolksonomyと呼ばれる分類法を採用している.このようにして利用者が付与したタグ情報の集合は,多数の利用者によって成長を続けるメタデータであるとみなせるため,このタグ情報を利用することにより効率的なコンテンツの検索や推薦を行うことができると考えられる.しかしながら,利用者はあくまで自分自身の嗜好に基づいてタグ付けを行っているため,分類に使用したタグ名そのものは,必ずしも他の利用者とって適切なものであるとは限らない.そこで本研究では,タグの持つ本質的な情報を,タグ名ではなく,タグによるコンテンツの分類情報であると仮定し,分類間の類似度に基づいて利用者に対して望ましいコンテンツの推薦を行うシステムを提案する.The web-based bookmark management service called social bookmark has recently come to be widely used. In the social bookmark, a user can add one or more keywords called `tags' to their own bookmark for future use. The tag information gathering from a lot of users allows us to classify the web contents including database of social bookmark. This classification method is known as Folksonomy. Furthermore, we can qualify the tag information as the effective meta-data for search and recommendation use. However, a user hardly adds tags considering other user's convenience. Because of this behavior, a user will be not satisfied with the way to classify web contents by the name of tags. In this paper, we assume that the essential information of tags are not tag names, but classifications of web contents by tags. Based on this assumption, we have proposed the content recommendation system based on the similarities between the classifications.
著者
宮内 貴之 佐々木 祥太郎 佐々木 洋子 最上谷 拓磨 白濱 勲二
出版者
一般社団法人 日本高次脳機能障害学会
雑誌
高次脳機能研究 (旧 失語症研究) (ISSN:13484818)
巻号頁・発行日
vol.41, no.3, pp.335-344, 2021-09-30 (Released:2022-07-04)
参考文献数
21

脳卒中後は, 高い頻度で注意障害が生じる。注意障害は Activities of Daily Living (ADL) に影響を与えるが, 机上検査を用いた検討が多く, 行動観察評価である Moss Attention Rating Scale 日本語版 (MARS-J) を用いた検討はされていない。本研究の目的は急性期脳卒中患者における行動観察評価と ADL の関連を明らかにすることとした。対象は急性期脳卒中患者 64 名とし, 行動観察評価と机上検査および ADL を退院前 1 週間以内に評価した。評価指標は, 行動観察評価は MARS-J, 机上検査は Clinical Assessment for Attention (CAT) , ADL は Functional Independence Measure (FIM) を用い, 各指標の関連を検討した。Spearman の順位相関係数の結果, FIM と MARS-J は高い相関関係があった。また, FIM と CAT の Visual Cancellation Task (VCT) の所要時間, Symbol Digit Modalities Test (SDMT) の達成率も相関があった。一方, FIM と VCT の正答率と的中率は低い相関を示した。これらのことから, 急性期脳卒中患者では注意機能の行動観察評価と ADL は関連があり, ADL 上の注意障害を捉える上で MARS-J が有用である可能性が考えられた。
著者
宮内 貴之 佐々木 祥太郎 佐々木 洋子 最上谷 拓磨 榊原 陽太郎
出版者
一般社団法人 日本作業療法士協会
雑誌
作業療法 (ISSN:02894920)
巻号頁・発行日
vol.41, no.4, pp.487-493, 2022-08-15 (Released:2022-08-15)
参考文献数
21

本研究の目的は,Bálint症候群を呈した患者1名を対象に日常生活活動(ADL)で用いられる代償手段を明らかにすることとした.事例は左後頭葉出血で急性期病院に入院中の80歳代女性とした.急性期病院入院中に事例のBálint症候群の重症度に変化はなかったが,ADLは向上し,セルフケアが発症から4週間で自立した.向上したADLでは非利き手を用いた視覚的な手がかりと体性感覚による代償手段を用いていた.このことから,Bálint症候群を呈した患者のADLの再獲得には非利き手を用いた視覚的な手がかりと体性感覚を活用した代償手段の練習が有効であると示唆された.
著者
佐々木 洋子 高橋 香代子 佐々木 祥太郎 宮内 貴之 榊原 陽太郎
出版者
一般社団法人 日本作業療法士協会
雑誌
作業療法 (ISSN:02894920)
巻号頁・発行日
vol.38, no.6, pp.683-690, 2019-12-15 (Released:2019-12-15)
参考文献数
25

本研究の目的は,急性期脳卒中片麻痺患者の日常生活における麻痺側上肢の使用頻度に影響を及ぼす要因について,基本特性や身体機能,麻痺側上肢の使用方法に対する理解度の観点から,明らかにすることである.対象は発症から1週間以内の急性期脳卒中患者56名とした.多変量ロジスティック回帰分析の結果,麻痺側上肢の日常生活における使用頻度には,上肢麻痺の程度と理解度が影響することが明らかになった.この結果から,急性期の作業療法では,麻痺側上肢の機能改善を図ることに加え,麻痺側上肢の使用方法に対する理解度を評価し,日常生活での使用を促す介入が必要であると考えられた.
著者
渡邉 誠 奥山 夕子 登立 奈美 川原 由紀奈 木下 恵子 佐々木 祥 辻 有佳子 園田 茂
出版者
一般社団法人 日本脳卒中学会
雑誌
脳卒中 (ISSN:09120726)
巻号頁・発行日
vol.34, no.6, pp.383-390, 2012 (Released:2012-11-23)
参考文献数
14
被引用文献数
3 4

【目的】診療報酬改定により可能となった訓練量増加がADL改善に及ぼす影響を年齢別に検証した.【方法】当院回復期リハビリ病棟に入退棟した脳卒中患者で,一日の訓練単位上限が6単位(2時間)の時期に5~6単位の訓練を行った106名(6単位群)と訓練単位上限が9単位の時期に7~9単位の訓練を行った130名(9単位群)を対象とし,入退棟時のFIM運動項目(FIM-M),FIM-M利得,FIM-M効率を比較した.年齢別に3群,入院時FIM-M得点層別に2群に層別化し分析も行った.【結果】FIM-M利得,FIM-M効率は9単位群で有意に高かった.FIM-M低得点層で70歳以上と60~69歳のFIM-M利得,FIM-M効率,高得点層で70歳以上のFIM-M利得が9単位群で有意に高かった.【結論】訓練量の増加はADLをより改善させ,その程度は60歳代のFIM-M低得点層と70歳以上の高齢者で顕著であった.
著者
佐々木 祥 渡邉 誠 奥山 夕子 登立 奈美 木下 恵子 寺西 利生 園田 茂
出版者
JAPANESE PHYSICAL THERAPY ASSOCIATION
雑誌
日本理学療法学術大会
巻号頁・発行日
vol.2011, pp.Bb0533-Bb0533, 2012

【はじめに、目的】 2006年度診療報酬改定により、回復期リハビリテーション病棟における訓練単位数の1日上限が9単位に引き上げられた。我々は回復期リハビリテーション病棟の脳卒中患者において、診療報酬改定前の2005年度より、改定後の2008年度の方がADL改善効果が高いことを示してきた。これらの報告はFunctional Independence Measure運動項目(FIM-M)の総得点での比較であるが、FIM-Mは項目毎に難易度が異なることが報告されており、それによる訓練効果も一様でないことが予測される。そこで、今回我々は脳卒中片麻痺患者の訓練量増加がFIM-M各項目に与える影響について検討したので報告する。【方法】 対象は当院回復期リハビリ病棟に入・退棟した60歳以上の初発脳卒中片麻痺患者のうち保険診療上の訓練量が1日上限6単位であった2005年4月1日から2006年3月31日までの211例と、1日上限9単位であった2008年4月1日から2009年8月31日までの304例である。入棟期間中の1日平均訓練単位数を算出し、STを除くPTとOTの単位数が5から6単位であった1日上限6単位の症例を6単位群、7から9単位であった1日上限9単位の症例を9単位群とした。発症から当院入棟までの期間が60日以内、訓練に支障をきたす重篤な併存症がなく入棟中に急変増悪しなかった患者に限定し、最終的な対象者は6単位群73例、9単位群76例であった。性別は6単位群で男性46名、女性27名、9単位群で男性38名、9女性38名であった。原疾患は6単位群で脳梗塞39名、脳出血34名、9単位群で脳梗塞41名、脳出血27名であった。年齢、発症後期間、在棟日数、FIM-M項目毎の入・退棟時得点、FIM-M項目毎の退棟時得点から入棟時得点を引いた値(FIM-M利得)を2群間で比較した。統計は年齢、発症後期間、在棟日数にはt検定を、各項目の入・退棟時FIM-M得点とFIM-M利得にはマン・ホイットニーU検定を、性別、原疾患にはカイ2乗検定を使用した。有意水準はp<0.05とした。【倫理的配慮、説明と同意】 患者情報の学術的使用に関する同意は入院時に書面で確認した。【結果】 6単位群、9単位群の順に年齢71.7±6.3歳、70.6±6.5歳、発症後期間33.5±12.1日、31.9±13.0日、在棟日数60.9±26.8日、61.2±26.6日であり、2群間の差は認めなかった。各項目の入棟時得点は移乗(浴槽・シャワー)で9単位群の方が有意に高かったが、他の項目では差がみられなかった。退棟時得点は食事と階段で差がみられなかったが、他の項目では9単位群の方が有意に高かった。各項目のFIM-M利得は排尿・排便コントロールでは差はみられなかったが、その他の項目では9単位群の方が有意に高かった。【考察】 本研究では、脳卒中片麻痺患者の訓練量増加によるFIM-M項目別の改善効果を検討した。川原ら(2011)は訓練量を増加することでFIM-Mを改善させると報告している。今回のFIM-M項目別検討においても、訓練量を増加した方が全体的にFIM-Mは改善する傾向を示しており、特に4項目以外(食事、排尿・排便コントロール、階段)の項目で高い改善を示した。辻ら(1996)は脳卒中障害者のFIM-Mの自立度は排尿・排便コントロール、食事で高く、階段で低いと報告している。今回、食事の退棟時得点、排尿・排便コントロールのFIM-M利得で有意差がみられなかった理由として、FIM-M項目の中では比較的低難易度で自立しやすい項目であり天井効果が働いたことが挙げられる。階段の退棟時得点で有意差がみられなかった理由として、階段は入院時から平均得点が低く、FIM-M項目の中で高難易度であることから、床効果が働いたのであろう。以上より、訓練量増加はFIM-M各項目を全体的に改善させることが示唆された。【理学療法学研究としての意義】 今回の研究により、理学・作業療法の訓練量増加がどのADL項目に影響を及ぼすか検証することができた。今後はどの訓練内容が効果的であったかなど、質的な検討が必要である。
著者
新里 忠史 佐々木 祥人 三田地 勝昭
出版者
日本地球惑星科学連合
雑誌
JpGU-AGU Joint Meeting 2017
巻号頁・発行日
2017-03-10

はじめに東京電力福島第一原子力発電所事故に由来する放射性物質のうち,Cs-137は半減期が約30年と長く,今後長期にわたり分布状況をモニタリングし,その影響を注視していく必要がある.福島県の約7割を占める森林域については,住居等の近隣の森林や森林内で日常的に人が立ち入る場所での除染等とともに,森林整備と放射性物質対策の総合的な取組みが進められている[1].本論では,山地森林におけるCs-137の流出特性に林床状況が及ぼす影響について,福島県の阿武隈山地に分布するアカマツ-コナラ林での調査結果を報告する. 調査地と手法森林域に降下した放射性セシウムは,降雨を起点とする林内雨や樹幹流及びリターフォールにより林床へ移動し,林床から土壌流出及び表面流に伴い林外へ移動すると考えられる.土壌流出によるCs-137流出は表面流の100倍程度[2]であり,前者に伴う流出がより重要と考えられる.本論では,土壌流出の最初の段階である降雨による土壌粒子の飛散(雨滴侵食)を対象として,斜面下方への放射性セシウム流出量と林床状況の関連を考察する.観測領域は阿武隈山地に分布するアカマツ-コナラ林の西向き斜面であり,面積は約10 m四方である.観測領域にアカマツはなく,平均樹高8 mのミズナラを主体とした落葉広葉樹が分布する.観測領域の斜面上部は下草が繁茂し落葉落枝等のリターが堆積する.斜面下部は,下草が除去されリターの堆積した北側及びリターが除去され裸地状態の南側に分けられる.斜面の傾斜は27~28度の範囲にある.林床状況が異なる以上の3領域において,雨滴侵食で飛散する土壌粒子を回収するためのスプラッシュカップを各領域に5台ずつ設置し,約1ヶ月間の観測を実施した.スプラッシュカップは直径30 cmあり,カップ内側の中央に林床表面が露出した直径10 cmの孔(内部孔)があけられている.内部孔の林床に雨滴があたり土壌粒子が飛散すると,内部孔を円形に取り囲み配置された高さ10 cmのトレイに土壌粒子が回収される.回収トレイは,内部の仕切り板により斜面上方と下方へ飛散する土壌粒子を取り分けられる.スプラッシュカップ外側の林床から土壌粒子が混入することを防ぐため,同カップの周囲約1 m四方に麻布を敷く対策を施した.落葉落枝等のリターによる林床の被覆率は,スプラッシュカップの内部孔における林床表面で計測した.土壌粒子の粒径はレーザー回折式粒径分布測定器により測定した.同カップで回収した土壌は105℃で24時間の乾燥後,Cs-137濃度を測定した.Cs-137流出量は,スプラッシュカップ内部孔の面積,斜面下方へ移動した土壌の重量とCs-137濃度から算出した.Cs-137流出率は,観測領域の近傍における深度20 cmまでの土壌試料の分析値から単位面積あたりのCs-137蓄積量を算出し,その蓄積量に対するCs-137流出量の百分率とした. 結果各観測領域における落葉落枝等のリターによる被覆率は,斜面上部で95.4%,斜面下部の北側で48.2%,斜面下部の南側で5.1%であった.これに伴い1 m2あたりの斜面下方への土壌移動量も異なり,斜面上部で8.5 g,斜面下部の北側で11.3 g,斜面下部の南側で21.2 gであった.移動土壌の粒径分布は,観測領域における林床0-1 cmの土壌粒子と比較し,淘汰が非常に悪くほぼ対称の歪度を示し,粒径に依存した選択的な土壌粒子の移動は確認できなかった.また,土壌のCs-137濃度から求めた1 m2あたりのCs-137流出量は,斜面上部で523 Bq,斜面下部の北側で295 Bq,斜面下部の南側で710 Bqとなった.ここで,斜面上部と斜面下部における1m2あたりのCs-137蓄積量(上部33 kBq,下部101 kBq)との比較からCs-137流出率を算出すると,下草が繁茂しリターが堆積する斜面上部では0.5%,下草がなくリターの堆積した斜面下部の北側で0.9%,下草とリターがなく裸地状態である斜面下部の南側では2.1%となった.以上の結果は,林床の被覆状況が森林域の放射性セシウム流出に関して重要な環境条件であることを示している.また,林床の下草や落葉落枝等のリター除去を行うような森林域での除染活動においては,除染後に下草が繁茂し落葉落枝等が堆積するような環境整備を合わせて実施することが,放射性セシウム移動抑制対策につながることを示すと考えられる. [1]環境省,森林の除染等について.http://josen.env.go.jp/about/efforts/forest.html[2]Niizato et al., 2016, J. Environ. Radiact. 161, 11-21.
著者
牧之段 恵里 佐々木 祥人 倉田 晴子 田中 将貴 堀 啓一郎
出版者
日本皮膚科学会大阪地方会・日本皮膚科学会京滋地方会
雑誌
皮膚の科学 (ISSN:13471813)
巻号頁・発行日
vol.3, no.6, pp.567-571, 2004 (Released:2011-11-07)
参考文献数
22

81歳,女性。1947年から1年間美白のために,砒素(詳細不明)を1年間内服していた。1990年頃より鱗屑を伴う紅褐色皮疹の増加を認めていた。2001年8月1日,当科紹介受診となった。計30ヵ所切除行い、組織学的に,右手掌の砒素性角化症以外は,すべてBowen病と診断した。また,過去10年間の砒素が誘因と考えられる多発性Bowen病の13症例の発病までの期間は,平均39年であった。