- 著者
-
加我 君孝
- 出版者
- 医学書院
- 巻号頁・発行日
- pp.872-874, 2014-09-20
ベルリンにあるフンボルト大学の附属病院Charitéの近くに自然科学博物館(Museum für Naturkunde)があり,沢山の恐竜コレクションの巨大な骨格が展示されている。そのため展示室は体育館のように大きい(図1)。恐竜の名はブラキオザウルスで高さが13mもある。その頭部だけでも大きいのでびっくりさせられた(図2)。このような大きな体格を維持するには,どれだけの量を食べていたのであろうか。
爬虫類である恐竜の眼は発達しており,聴覚よりも視覚優位の巨大動物である。体のバランスや回転運動を感じる三半規管は魚類や両棲類,爬虫類,鳥でもよく発達している。私は小動物の進化の各段階に沿って三半規管や耳石器を,連続切片の標本にしてよく観察したものであるが,恐竜のものは見たことがなかった。ベルリンのフンボルト大学での耳鼻咽喉科の学会で,会長のScherer教授がその鋳型を見せてくれた(図3,4)。手のひらに置いて見せてくれたが,サイズが大きいのには驚かされた。各三半規管の輪はヒトの親指ほどもある。ヒトの三半規管の輪の曲率直径は約6.4mmと小さい1)。体の大きい動物,例えば,ゾウの三半規管はもっと大きいのであろう。私はそっと近寄って写真に撮らせてもらった。爬虫類のため蝸牛は形成されず三半規管と耳石器だけである。哺乳類の内耳を見慣れていると妙な印象を与えるが,貴重な写真となった。三半規管の曲率直径は,Scherer教授の親指ほどもあるので,恐らく18mmほどはあると考えられる。ヒトの三半規管の3倍近くの大きさである。