- 著者
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加藤 昭
松原 聰
- 出版者
- 国立科学博物館
- 雑誌
- 国立科学博物館専報 (ISSN:00824755)
- 巻号頁・発行日
- vol.14, pp.19-24, 1981
静岡県下田市河津鉱山大沢坑の廃石中に, 本邦第二の銀星石の存在を確認した。本鉱は, 黄銅鉱あるいは斑銅鉱の小粒を含む石英脈の空隙中に, せんい状結晶の放射状あるいは準平行集合体をなして産し, 鉱脈生成の最終産物である。せんいの最大長 1 mm 内外, 鉄を含んだ物質で汚染されている。同定は, 光学的・X線粉末廻折法によって行われ, 浸液法による屈折率は, N_X=1.524,N_Y=1.534,N_Z=1.550,二転性正70°, r>v 極弱, 直消光伸長性正。X線粉末廻折値から計算した格子恒数は, α=9.624 (4), b=17.340 (8), c=6.968 (4) Åで, 既知の値とよく一致する。本邦最初の産地北海道鴻ノ舞鉱山においては, 石英・カオリン鉱物に伴って, 銀星石・バリシア石があり, この場合と比較すると, この組み合わせにカリウムイオンが参加した場合, このイオンは燐酸塩基より珪酸塩基により親和性を示すことが明らかにされた。