著者
長橋 良隆 里口 保文 吉川 周作
出版者
一般社団法人 日本地質学会
雑誌
地質学雑誌 (ISSN:00167630)
巻号頁・発行日
vol.106, no.1, pp.51-69, 2000-01-15 (Released:2008-04-11)
参考文献数
71
被引用文献数
27 59

本州中央部の3層の鮮新-更新世火砕流堆積物と広域火山灰層の対比と噴出年代の推定は, それらの層位的関係, 層相, 古地磁気方位, 鉱物組成や火山ガラスおよび斜方輝石の屈折率・化学組成, 層序学的年代資料に基づいて行われた.穂高-Kd 39テフラは約1.76 Maに噴出し, 火砕流噴出に伴うco-ignimbrite ashを形成した.恵比須峠-福田テフラは約1.75 Maに噴出し, stage 1の水蒸気プリニー式噴火による降下火山灰の形成, stage 2(前期)の降下軽石・火砕流の噴出と降下火山灰の形成, stage 2(後期)の火砕流噴出に伴うco-ignimbrite ashの形成, stage 3の噴火活動終了後に再堆積した火山砕屑性堆積物に分けられる.大峰-SK 110テフラは約1.65 Maに噴出し, stage 1の火砕流噴出, stage 2の噴火活動の休止期, stage 3の火砕流噴出とその火砕流が新潟堆積盆に直接流入した火山砕屑性堆積物および火砕流噴出に伴うco-ignimbrite ashの形成に分けられる.
著者
吉川 周作 三田村 宗樹
出版者
日本地質学会
雑誌
地質學雜誌 (ISSN:00167630)
巻号頁・発行日
vol.105, no.5, pp.332-340, 1999-05-15
被引用文献数
30 45

大阪平野中央部のボーリングコアの岩相・火山灰層序に基づいて, 地下第四系を淡水成層の都島累層と海成・淡水成互層の田中累層に区分し, 田中累層には, 20層の海成粘土層(Ma-1・Ma 0…Ma 12層)が挟まれることを報告した.これらの岩相層序, 火山灰・古地磁気層序や花粉・ナンノ化石などの資料を総合的に検討し, 大阪平野第四系層序と深海底の酸素同位体比層序との対比を行った.その結果, 各海成粘土層(Ma-1〜Ma 12)の形成時期は酸素同位体の奇数ステージ(37〜5)に対比できること, 花粉・ナンノ化石資料からみて, 温暖な気候のもとで高海面を示す海進によって堆積したと考えられるMa 3・Ma 6・Ma 9・Ma 10・Ma 12・Ma 13層は, Shackleton(1997)などが酸素同位体比変化曲線から指摘した特に寒冷な氷期から温暖な間氷期への急変を示すターミネーション直後の間氷期とそれぞれ一致することを明らかにした.本研究の結果は, 大阪平野第四系で認められる海進現象が深海底の酸素同位体比変化曲線と密接に関連しており, 地球規模の気候変動と同調していることを示している.
著者
長橋 良隆 吉川 周作 宮川 ちひろ 内山 高 里口 保文
出版者
日本第四紀学会
雑誌
第四紀研究 (ISSN:04182642)
巻号頁・発行日
vol.43, no.5, pp.345-352, 2004-10-01 (Released:2009-08-21)
参考文献数
28
被引用文献数
2 7

火山ガラスの屈折率は,その主要成分化学組成に依存している.そのことを火山ガラスの主要成分含有量と屈折率(n)から,各成分ごとに屈折度(n-1)を算出することにより例示した.また,近畿地方および八ヶ岳山麓に産するテフラ(102試料)のEDS分析結果を用いて,主成分元素の酸化物含有量と屈折率との関係について検討した.SiO2はその含有量が多いことから,屈折率に寄与する割合が大きい.またSiO2量が増加すると,屈折率は低下する.SiO2と負の相関にある成分(TiO2・Al2O3・FeO*・MgO・CaO)は,含有量が増加するにつれて屈折率が高くなる.SiO2と相関のないNa2Oは,含有量と屈折率に相関がない.K2Oは,SiO2-K2O図でK2Oレベルの異なる複数のトレンドがあるが,含有量と屈折率には一続きの相関はない.火山ガラスの屈折率はテフラ同定・対比の際の重要な指標であるが,屈折率が近似する火山ガラスでも,主要成分化学組成は異なる場合がある.
著者
長橋 良隆 吉川 周作 宮川 ちひろ 内山 高 井内 美郎
出版者
日本第四紀学会
雑誌
第四紀研究 (ISSN:04182642)
巻号頁・発行日
vol.43, no.1, pp.15-35, 2004-02-01 (Released:2009-08-21)
参考文献数
59
被引用文献数
43 77

Energy dispersive Xray Spectrometry (EDS) was applied to measure the major element composition of volcanic glass shards. One hundred three analytical tephra samples were collected from the Takashima-oki drilling core sample on Lake Biwa, as well as some representative drilling core samples in the Osaka coastal area and Middle Pleistocene tephra layers at the foot of the Yatsugatake Mountains. The ages of the principal tephra layers were estimated from the correlation between the biostratigraphic horizons from the core samples and the oxygen isotope stratigraphy. The estimated ages of the Kg, K-Ah, U-Oki, AT, Aso-4, K-Tz, Aso-3, BT44, BT51, Ata-Th, Aso-1, Ng-1, Kkt and BT72 tephra layers are 3.1ka, 7.3ka, 10.7ka, 29ka, 87ka, 91ka, 133ka, 203ka, 216ka, 238ka, 249ka, 294ka, 334ka, and 349ka, respectively. These principal tephra ages provide the estimated ages of other tephra layers using the sediment accumulation rates in the Takashima-oki core. Consequently, this study has reconstructed the tephrostratigraphy and chronology during the past 430ky. Furthermore, it is pointed out that caldera forming eruptions have occurred at low sea level periods just before the maximum high sea level.
著者
吉川 周作
出版者
日本地質学会
雑誌
地質學雜誌 (ISSN:00167630)
巻号頁・発行日
vol.84, no.3, pp.131-140, 1978-03-15
被引用文献数
1 2
著者
岡橋 久世 吉川 周作 三田村 宗樹 兵頭 政幸 内山 高 内山 美恵子 原口 強
出版者
日本第四紀学会
雑誌
第四紀研究 (ISSN:04182642)
巻号頁・発行日
vol.40, no.3, pp.193-202, 2001-06-01 (Released:2009-08-21)
参考文献数
32
被引用文献数
3 4

三重県鳥羽市相差宇塚の湿地において,地層抜き取り装置を用いて定方位柱状堆積物試料を採取し,肉眼と実体顕微鏡による岩相観察および堆積物の古地磁気測定を行った.その結果,淡水成泥質堆積物中に2枚の不淘汰な砂層を見いだした.この砂層には,貝殻・有孔虫など海生化石が含まれる.古地磁気永年変化の磁気層序対比および歴史津波史料に基づくと,これら2枚の砂層は1707年宝永地震と1605年慶長地震の津波堆積物である可能性が高い.
著者
山崎 秀夫 吉川 周作 南 武志 長岡 信治 國分 陽子 井上 淳 藤木 利之 辻本 彰 村上 晶子
出版者
近畿大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2007

研究成果の概要:明治維新以降のわが国の産業近代化と環境汚染の歴史的変遷を,古くから造船業などの重工業が盛んで,原爆にも被災した長崎市をフィールドにして検討した.人為的に環境に排出された汚染物質は海洋や湖沼などの底質に蓄積されるので,本研究では水圏底質コアに記録された汚染の歴史トレンドを時系列解析した.わが国の代表的な工業地域である京阪神や首都圏と長崎市の環境汚染の歴史トレンドは大きく異なり,また長崎市では原爆による汚染物質の飛散の影響も残存していることが明らかになった.
著者
染川 治実 吉川 周作
出版者
地学団体研究会
雑誌
地球科學 (ISSN:03666611)
巻号頁・発行日
vol.37, no.2, pp.98-109, 1983-03-25
被引用文献数
1

The detailed tephrostratigraphical study in the Tanabe Hills revealed the following facts. 1) The Plio-Pliestocene Osaka Group in the Tanabe Hills attains more than 200 m thick and is composed of unconsolidated gravel, sand, silt and clay of limnic, fluvial and marine origin. The succession of these sediments is divided into 4 members, namely the Higashibata alternations, Mizudori gravels, Zakuro alternations and Inuidani alternations, in the ascending order. Among more than 12 volcanic ash layers found in these members, 3 are available as key beds. They are named the Higashibata, Fugenji and Zakuro volcanic ash layers (Fig. 2, 3 and 5). 2) On the basis of the tephrostratigraphic and petrographic data of volcanic ash layers, the Higashibata and Zakuro volcanic ash layers can be correlated with the Fukuda and Pink volcanic ash lavers in the southern part of Osaka (Fig. 8).
著者
吉川 周作 三田村 宗樹 前島 渉 兵頭 政幸
出版者
大阪市立大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2001

三重県志摩半島の鳥羽市相差町,南勢町,大王町,南島町,志摩町,さらに尾鷲市須賀利町に分布する各沿岸湿地において,数mの連続柱状試料を数本採取し,各柱状試料について肉眼での岩相記載や剥ぎ取り試料の実体顕微鏡岩相観察を行った.このうち,相差では有機質泥からなる湿地堆積物中に多くのイベント砂層を見出した.この相差で発見した各イベント堆積物の分布・特徴を詳細に解析するため,合計9本の柱状堆積物試料を採取するとともに,岩相記載のほかに,古地磁気・帯磁率測定,AMS^<14>C年代測定,珪藻・有孔虫・貝形虫の微化石分析を行った.主に岩相観察、有孔虫・貝形虫分析によって,相差の湿地堆積物に挟まれる12枚の砂層(OS-1…SO-12と呼ぶ)は,それぞれ級化構造など津波堆積物の特徴を有し,比較的広域によく連続することから,津波によって海から突発的に運搬されたイベント堆積物である可能性を指摘した.そして,このうち5枚の砂層は,比較的深い中部浅海帯の海底に生息する底生有孔虫を産出することを明らかにした.また、珪藻分析および^<14>C年代測定によって,7千年前までは内湾,7千〜3千年前は淡水湿地,3千〜千年前は海水の影響を強く受けた湿地,千年前以降は淡水湿地と堆積環境が変化したこと,12枚のイベント砂層は,7千年前以降の湿地堆積物に300〜500年周期で挟まれることを示した.以上の結果,鳥羽市相差では、東海・東南海地震によって来襲した津波は300〜500年周期で津波堆積物を残したものと判断した.
著者
安原 盛明 入月 俊明 吉川 周作 七山 太
出版者
日本地質学会
雑誌
地質學雜誌 (ISSN:00167630)
巻号頁・発行日
vol.108, no.10, pp.633-643, 2002-10-15
被引用文献数
5 23

大阪平野南部の堺市で掘削されたボーリングコアから採取した33試料中から少なくとも72種群の貝形虫化石が産出した.クラスター分析の結果これらの試料は大きく6個のbiofaciesに区分された(PS,SBm,LS,PL,CL,LC).本研究では完新世における堆積環境と相対的海水準の変化を貝形虫群集に基づいて復元した.大阪平野南部では,約9,000-6,000年前(暦年)に急激に海水準が上昇し,その後,現在の海水準まで下降した.最高海水準期は約6,000-5,600年前(暦年)であった.この海水準変動の傾向は大阪平野中央部や大阪湾海域での海水準変動によく類似しているため,これらの傾向は大阪堆積盆地で高い普遍性を持つと考えられる.また,塩分濃度,海岸線からの距離,沿岸流や波浪による影響は相対的海水準変動と良く対応して変化する.