著者
渡辺 英伸 味岡 洋一 太田 玉紀 本山 悌一 岩渕 三哉 本間 照
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.659-682, 1990-06-25

要旨 炎症性腸疾患を病理学的に鑑別するには,まず病変が肉眼的に,①縦走潰瘍型,②輪状潰瘍型,③円・卵円形潰瘍型,④玉石状所見・炎症性ポリポーシス型,⑤浮腫・充血・出血・びらん型,および⑥腫瘍様多発隆起型,の6基本肉眼型のどれに帰属するかを判定しなければならない.各基本肉眼型はいくつかの病変を含んでいる.次いで,基本肉眼型である基本病変の肉眼的特徴とその周辺粘膜の肉眼的特徴とを組み合わせることで,各疾患は肉眼的に診断できる.これに組織所見を加えることで,炎症性腸疾患の病理学的鑑別診断はより確実なものとなる.
著者
味岡 京子
出版者
お茶の水女子大学
雑誌
人間文化論叢 (ISSN:13448013)
巻号頁・発行日
vol.9, pp.1-11, 2006

The World's Columbian Exposition was held in Chicago, USA, in 1893. There was a pavilion in the exposition known as the Woman's Building, which was completely organized and managed by women. This writing discloses the background to how Japan became part of the Woman's Building and what the exhibition was like, and considers Japan's purpose at that time and how it interacted with Western trends. The Japanese government spent a large amount of money for taking part in The World's Columbian Exposition with the prime purpose of promoting trade and introducing Japanese art to the world. Since it was the preceding year to the Sino-Japanese War, it seems that they also had the intention to appeal for Japan's superiority as the only modernized country in Asia and justify its colonial orientation. Women's art-a subject to which scant attention had been paid in Japan-was redefined in the process of modernization by providing new meanings through exhibits at the Woman's Building. This article aims to emphasize the role of women in modernization through the relationship between art and women, by revealing the status of women artists and what was expected of them.
著者
小野 裕之 八尾 建史 藤城 光弘 小田 一郎 上堂 文也 二村 聡 矢作 直久 飯石 浩康 岡 政志 味岡 洋一 藤本 一眞
出版者
一般社団法人 日本消化器内視鏡学会
雑誌
日本消化器内視鏡学会雑誌 (ISSN:03871207)
巻号頁・発行日
vol.62, no.2, pp.273-290, 2020 (Released:2020-02-20)
参考文献数
138
被引用文献数
2

早期胃癌に対する内視鏡治療が急速な拡がりを見せている現況において,日本消化器内視鏡学会は,日本胃癌学会の協力を得て,新たに科学的な手法で作成した基本的な指針として,“胃癌に対するESD/EMRガイドライン”を2014年に作成した.この分野においてはエビデンスレベルが低いものが多く,コンセンサスに基づき推奨度を決定しなければならないものが多かったが,近年,よくデザインされた臨床研究が増加している.新しい知見を踏まえて,適応・術前診断・手技・根治性の評価・偶発症・術後長期経過・病理の7つのカテゴリーに関して,改訂第2版を刊行し,現時点での指針とした.
著者
橋本 哲 水野 研一 佐藤 裕樹 高綱 将史 横山 純二 市川 寛 渡邉 玄 味岡 洋一 寺井 崇二
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.295-299, 2020-03-25

疾患の概念 食道壁内偽憩室症は,1960年にMendlら1)によって初めて報告された,粘膜および粘膜下層の食道腺導管が囊状に拡張したまれな疾患である.多発する小さい憩室様の所見を呈するが,通常の仮性憩室とは異なり,固有筋層の外側に伸展することはない.明らかな発症原因は不明であるが,真菌や細菌感染,逆流性食道炎,アルコール多飲などに伴う慢性炎症により,食道腺や導管に炎症が波及し病的拡張を来すと推察されている.
著者
長内 宏之 村瀬 洋介 中島 義仁 浅野 博 味岡 正純 酒井 和好 鈴木 文男
出版者
公益財団法人 日本心臓財団
雑誌
心臓 (ISSN:05864488)
巻号頁・発行日
vol.45, no.SUPPL.3, pp.S3_92-S3_97, 2013 (Released:2015-01-09)
参考文献数
4

背景 : WPW症候群の副伝導路 (AP) に対するアブレーション時に, いったん消失したAP伝導が再開するという現象が時として見られるが, 多くの場合APの不完全焼灼に起因する「単純再発」と考えられる. 一般に, アブレーションによるΔ波の消失はAPの離断を意味するものと考えられるが, ほかの可能性として, 例えば, 焼灼によってAPの不応期が延長しその値が患者の洞周期長よりも長くなった場合, 洞インパルスはAPを伝導することが不可能となり (機能的ブロック) , Δ波は消失し得るであろう. しかしながらこれまで, そのような状況は想定されてこなかったと思われる.  症例 : A型WPW症候群の患者 (31歳, 男性) に対しアブレーションを施行した. CS電極記録にて順伝導・逆伝導ともに最早期部位は僧帽弁輪側壁部であった. 経中隔弁上アプローチにより, 洞調律下で心室最早興奮部位にて通電を行い, 14秒後にAPの伝導ブロックをきたした. 60秒間の通電の後も伝導ブロックが維持され器質的ブロックと考えられたが, 右室のカテーテル刺激によると思われる心室性期外収縮を契機にΔ波が再出現した. 出現したΔ波が持続したため, 初回の通電部位に近接する前壁側部位にて追加通電を行ったところAP伝導は消失した. その後, Δ波の再発は見られなかった.  総括 : 高周波通電によりΔ波が消失したWPW症候群の 1例において, 心室性期外収縮を契機にΔ波が再出現した. Δ波再出現の機序として「房室結節を順伝導した洞インパルスが逆行性にAP内へ進入し, その逆行性不顕伝導の効果によりAPの順伝導が機能的にブロックされていた (linking現象の持続による機能的ブロック) . この状況下にて, 心室性期外収縮による“peeling-back効果”によりAPの不応期が左方へ移動し (不応期の短縮と同等) , AP順伝導が可能となってΔ波が出現した」という説明が可能であると考えられた.
著者
横田 樹広 中村 早耶香 味岡 ゆい 南 基泰 那須 守 米村 惣太郎
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集G(環境) (ISSN:21856648)
巻号頁・発行日
vol.67, no.6, pp.II_45-II_55, 2011 (Released:2012-03-16)
参考文献数
25

土岐川・庄内川流域圏を対象として,景観,生態系,ハビタットの3つのスケール間で生物多様性の特徴を評価した.小流域の類型化により流域圏の環境特性を把握したうえで,種多様性と固有種ヒメタイコウチの潜在的生息適地の分布予測を行い,それらの空間的関係性を把握した.その結果,流域圏中~上流域の里山地域において,流域の環境構造は植生条件よりも地史的な環境条件により特徴づけられ,とくにヒメタイコウチの生息適地の分布に影響する古い地層を伴った土岐砂礫層の分布が,種多様性と固有種生息適地の空間的な重複と不一致にも影響していることが明らかになった.これらをもとに,生態系の地域固有性に配慮した,流域圏の生物多様性マネージメントの空間指針について検討した.
著者
味岡 健二
出版者
一般社団法人日本建築学会
雑誌
建築雑誌 (ISSN:00038555)
巻号頁・発行日
vol.107, no.1334, pp.11-12, 1992-10-20
著者
味岡 洋一
出版者
一般財団法人 日本消化器病学会
雑誌
日本消化器病学会雑誌 (ISSN:04466586)
巻号頁・発行日
vol.117, no.11, pp.957-964, 2020-11-10 (Released:2020-11-10)
参考文献数
32

潰瘍性大腸炎におけるcolitis-associated cancer(炎症性発癌)早期病変は,通常の大腸に発生する腺腫や腺癌とは病理学的に異なる組織学的特徴,細胞増殖動態,p53免疫染色態度を示すものが多い.現在日本では,炎症性発癌早期病変の病理診断に際しては,①Riddellらのdysplasia分類,②日本の通常の病理診断分類,③厚労省分類,の3つの分類が用いられているが,いずれの分類も炎症性発癌早期病変の的確な病理診断には問題がある.同病変の病理学的特徴を十分把握した上で,再現性や標準化が担保される診断アルゴリズムの作成が必要である.
著者
長内 宏之 鈴木 文男 中川 貴史 中村 健太郎 瀬崎 和典 中島 義仁 浅野 博 味岡 正純 酒井 和好
出版者
公益財団法人 日本心臓財団
雑誌
心臓 (ISSN:05864488)
巻号頁・発行日
vol.46, no.SUPPL.3, pp.S3_54-S3_60, 2014 (Released:2015-10-26)
参考文献数
6

はじめに : 電気生理検査 (EPS) にて高度心房内ブロック (Ⅱ度~Ⅲ度ブロック) の出現を認めることは極めて稀である. 今回われわれは心房粗動 (AFL) 時に高度心房内ブロックの出現を認め, さらにブロックの出現に伴う心房波間隔の延長時に心房波高が著明に増大するという稀な所見を呈した症例を経験した. 症例 : 通常型AFL症例 (83歳男性) の電気生理検査時, 冠静脈洞 (CS) 入口部領域に3峰性電位 (a+b+c電位) の形成を認めた. AFL (周期220~230ms) に対し周期170~200msにてCS pacing (S1~S20刺激) を施行し, 3峰性電位の反応を検討した. 周期180msのentrainment刺激の際, 第Ⅱ度心房内ブロック (Wenckebach型及び2 : 1ブロック) が出現しS4・S6刺激にてc電位の脱落を見た (この所見よりc電位はAFL回路には含まれない “袋小路電位” と診断された). c波高は, c電位脱落に伴うc-c間隔の延長度合いに比例して増大し, 先行c-c間隔が最長となった際のS7刺激由来のc波が最大波高を示した. 考察 : 本症例においてCS入口部領域で観察されたc電位はAFL回路に接続するdead-end pathwayにて記録された “袋小路電位” である可能性が強く示唆された. c波高は “先行c-c間隔” の延長 (=徐拍化) に比例して増大したが, ①徐拍化に伴う同期的興奮の可能な心房筋容量の増加, ②異方向性伝導の関与, などの機序が推察された.
著者
原 昭壽 中島 義仁 浅野 博 味岡 正純 酒井 和好 長内 宏之 桑山 輔 石濱 総太 坂本 裕資 大高 直也 小川 隼人 坂口 輝洋 村瀬 洋介
出版者
公益財団法人 日本心臓財団
雑誌
心臓 (ISSN:05864488)
巻号頁・発行日
vol.46, no.4, pp.468-474, 2014

78歳男性. 2004年10月に洞不全症候群に対して左前胸部にAAIペースメーカを留置された. 2005年11月に植え込み部位の発赤を認めたため当院外来を受診した. ペースメーカ感染がまず考慮されたがバイタルサインや血液検査上は感染兆候認めず, 腕時計装着部の皮膚発赤から金属アレルギーを疑われた. ペースメーカ本体による接触テストを施行したところ接触部位の発赤が出現し, ペースメーカアレルギーと診断された. 対側への再植え込みに際し, 組織との接触防止のためリード・本体をpolytetrafluoroethylene (PTFE) シートで被覆して植え込みを行った. その後7年間発赤・腫脹などのトラブルなく経過した. バッテリー消耗により, 平成24年11月に電池交換を施行した. 術中所見としては, PTFE周囲は繊維性被膜に覆われおり, 滲出液などの感染やアレルギー反応を示す所見は認めなかった. 洗浄後にPTFE内に新規本体を収納し, 不足分を新規PTFEで被覆して閉創した. ペースメーカアレルギーへの対策として有効であったが, 感染リスクが今後の課題と考えられた.
著者
味岡 徹
出版者
聖心女子大学
雑誌
聖心女子大学論叢 = SEISHIN STUDIES (ISSN:00371084)
巻号頁・発行日
no.126, pp.121-158, 2015-12-25
著者
田中 信治 樫田 博史 斎藤 豊 矢作 直久 山野 泰穂 斎藤 彰一 久部 高司 八尾 隆史 渡邊 昌彦 吉田 雅博 斉藤 裕輔 鶴田 修 五十嵐 正広 豊永 高史 味岡 洋一 杉原 建一 楠 正人 小池 和彦 藤本 一眞 田尻 久雄
出版者
一般社団法人 日本消化器内視鏡学会
雑誌
日本消化器内視鏡学会雑誌 (ISSN:03871207)
巻号頁・発行日
vol.61, no.6, pp.1321-1344, 2019 (Released:2019-06-20)
参考文献数
203
被引用文献数
2

大腸腫瘍の内視鏡治療の適応病変としては,早期大腸癌のみでなく前癌病変としての腺腫性病変も多く存在し,大腸EMRとESDの棲み分け,そのための術前診断,実際の内視鏡治療の有効性と安全性を第一線の臨床現場で確保するための指針が重要である.そこで,日本消化器内視鏡学会では,大腸癌研究会,日本大腸肛門病学会,日本消化器病学会の協力を得て,新たに科学的な手法で作成した基本的な指針として「大腸ESD/EMRガイドライン」を2014年に作成した.本ガイドラインでは,手技の具体的な手順や機器,デバイス,薬剤の種類や使用法など実臨床的な部分については,すでに日本消化器内視鏡学会卒後教育委員会編「消化器内視鏡ハンドブック」が2012年5月に刊行(2017年5月に改訂)されているので,技術的内容に関しては可能な限り重複を避けた.大腸ESDは2012年4月に保険適用となったが,2018年4月には保険適用範囲と診療報酬点数が改訂された.「大腸ESD/EMRガイドライン」発刊後,SSA/Pの病態解明やESD症例のさらなる集積もなされており,ガイドライン初版発刊から5年目の2019年に最新情報を盛り込んだ改訂版を発刊するに至った.
著者
味岡 均 鬼原 英道 大平 千之
出版者
岩手医科大学歯学会
雑誌
岩手医科大学歯学雑誌 (ISSN:03851311)
巻号頁・発行日
vol.40, no.1, pp.1-13, 2015-04-23 (Released:2017-03-05)
参考文献数
33

本研究の目的は,デジタルスキャニングデバイスである口腔内スキャナーと歯科技工用スキャナーを用いてインプラントアバットメント間の距離の真度と精度を比較し,その有用性を評価検討することである.インプラント実習用顎歯模型に外側性六角構造を有する2本のインプラント体を埋入した.それぞれのインプラント体にボールアバットメントを装着し,ボールの中心間の距離の測定を行った.接触式三次元座標測定機による測定値と,口腔内スキャナーであるLava COSとTRIOS,歯科技工用スキャナーであるARCTICAの測定値を比較し,それぞれの距離の真度と精度を評価した.真度に関して,Lava COSはTRIOS,ARCTICAと比較して有意な差(p<0.05)を認めた.また精度に関しては,Lava COSとARCTICAの間に有意な差(p<0.05)を認めた,真度と精度の偏差はARCTICAが最も小さく,Lava COSが最も大きかった.さらに,口腔内スキャナーによる測定誤差は,術者によっても有意な差(p<0.05)が認められることがあった.本研究の結果より,歯科技工用スキャナーは一度に広範囲の撮影が可能なため,安定した真度と精度を有すると考えられる.一方,口腔内スキャナーは小さな三次元画像をつなぎ合わせることでデータの結合を行なうので誤差が蓄積しやすいと考えられる.そのため口腔内スキャナーは長い区間の撮影において誤差が増大する傾向がみられたが,口腔内スキャナーの中には歯科技工用スキャナーと同等の真度と精度を有するものも存在した.口腔内スキャナーは印象材の歪みや石膏膨張の影響を受けないという特徴より真の値に近い寸法再現性が期待されたが,上記結果から,口腔内スキャナーは従来の印象法に比較して,真度の点でわずかに劣る可能性が示唆された.
著者
味岡 直己 横山 明弘 横澤 勉
出版者
公益社団法人 高分子学会
雑誌
高分子論文集 (ISSN:03862186)
巻号頁・発行日
vol.64, no.12, pp.907-921, 2007

本報では置換基効果を利用した連鎖縮合重合法によって合成できる分子量分布の狭い縮合系高分子を含むさまざまな高分子アーキテクチャーの合成およびその自己集積化について述べる.芳香族ポリアミドまたは芳香族ポリエーテルを一成分とする一次構造の制御された AB, ABA, BAB, ABC ブロック共重合体やスターポリマー,スターブロック共重合体,ミクトアームスター共重合体をポリマーどうしのカップリング反応,リビング重合末端を利用した方法,末端修飾を行うマクロ開始剤法,オルソゴナル開始剤を用いたマクロ開始剤法で合成した.それらの自己集積では特異的な集積構造が形成された.<br>
著者
山本 潤二 村上 斉 砥出 勝雄 味岡 廣房 三宅 秀和
出版者
公益社団法人 日本化学療法学会
雑誌
CHEMOTHERAPY (ISSN:00093165)
巻号頁・発行日
vol.36, no.Supplement5, pp.149-158, 1988-10-10 (Released:2011-08-04)
参考文献数
12

新しいセフェム系抗生物質であるTHR-221の中枢神経系への影響をマウス, ラット, ウサギ, ネコおよびイヌを用いて検討した。THR-221 1500mg/kg, i. v. までの投与において, マウスの自発運動量, hexobarbital睡眠, 電撃・pentylenetetrazolけいれん, 協調運動, 酢酸stretchingおよびラットの正常体温, 条件回避反応に対して影響は認められなかった。また同用量の投与において, ウサギの自発脳波, 音・光刺激反応およびネコの脊髄反射に対しても影響は認められず, イヌにおいて1500mg/kg, i. v. でのみ軽度の嘔吐が観察されただけであった。以上の結果から, THR-221の中枢作用は弱いことが分り, THR-221は中枢神経系への影響が少ない抗生物質であると考えられる。
著者
石澤 祐介 イシザワ ユウスケ Ishizawa Yusuke 白子 智康 シラコ トモヤス Shirako Tomoyasu 味岡 ゆい アジオカ ユイ Ajioka Yui 上野 薫 ウエノ カオル Ueno Kaoru Do Tan Hoa Tran Van Thanh 山田 祐彰 ヤマダ マサアキ Yamada Masaaki 南 基泰 ミナミ モトヤス Minami Motoyasu
出版者
中部大学生物機能開発研究所
雑誌
生物機能開発研究所紀要 (ISSN:13464205)
巻号頁・発行日
vol.12, pp.33-54, 2012-03

ヴェトナム国内最大級の熱帯雨林を保有するカッティエン国立公園において,2011年3月8日から16日の間,国立公園内の17箇所でネズミ科の生息及び餌資源について予備調査を行った.ネズミ科2属3種(4個体)(シナシロハラネズミNiviventer confucianus,ヒマラヤクリゲネズミN.fulvescens,クマネズミ属Rattus sp.)を捕獲することができた.特に,種同定のためにミトコンドリアDNA のD-loop 及びCOI を利用したDNA バーコーディング法は,従来の外部形態及び頭骨形態による種同定に比べ,熟練した鑑定技術を必要としない技術であることが確認できた.このことから,種特異的な形態的特徴の判定が困難なネズミ科の種同定のためのツールとしてDNA バーコーディング法は有効であると考えられた.また,餌資源推定についても胃腸内容物より全DNA を抽出し,DNA バーコーディング法を用いて植物性(rbcL)及び動物性(COI)被食物共にBLSAT 検索を行い,植物由来被食物ではツルアカメガシワ(Mallotus repandus)(Euphorbiaceae トウダイグサ科),キデナンツス属一種(Chydenanthus excelsus)(Lecythidaceae サガリバナ科),ハマビワ属一種(Litsea timoriana)(Lauraceae クスノキ科),アメリカハマグルマ(Sphagneticola trilobata)(Compositae キク科)の4 種が,動物由来被食物としてシロアリ科 (Termitidae シロアリ科),ミドリゼミ属(Dundubia nagarasingna)(Cicadidae セミ科),ウデムシ目(Amblypygida)の3 種が推定され,今後餌資源推定のためには有益なツールであることが確認できた.また,罠捕獲地点の植生データと照合することによって,餌資源となる植物や動物性餌資源に寄与する植生などの推定が可能となるので,今後の哺乳類相保全のための熱帯林保全指針として活用できると期待された.A preliminary field survey of Muridae species and their food resources in Cat Tien National Park, Vietnam was conducted between March 8 and 16, 2011, during which three species of mice were collected and identified. Species were identified through both DNA barcoding using polymorphic DNA within the mitochondrial D-loop and COI sequences as well as examination of external morphological features such as body and skull shape. Three species of mice, Niviventer confucianus, N.fulvescens and Rattus sp., were identified using the methods outlined above. In order to estimate plant and animal food resources available to Muridae species within the study area, total DNA was extracted from the gastric contents of each mouse specimen collected. Chloroplastic rbcL and mitochondrial COI within extracted gastric contents were amplified by PCR and used to identify plant and animal food resources, respectively. Homology search using BLAST was also conducted in order to identify food resources within extracted gastric contents. Results indicated that genetic material from four plant species, Mallotus repandus (Euphorbiaceae), Chydenanthus excelsus (Lecythidaceae), Litsea timoriana (Lauraceae), and Sphagneticola trilobata (Compositae), as well as genetic material from three animal species, an unidentified species from the Termitidae family, Dundubia nagarasingna (Cicadidae), and Amblypygida sp., were present. DNA barcoding methods were able to provide valuable information that assisted in the identification of Muridae specimens as well as their food resources, both plant and animal. The methodology used in the present study could be applied to the management of sustainable use of mammalian food resources within tropical forest environments.

1 0 0 0 OA 戊辰私記

著者
味岡礼質 編
出版者
関内米三郎
巻号頁・発行日
1903