著者
松村 秀幸 小林 卓也 河野 吉久
出版者
公益社団法人大気環境学会
雑誌
大気環境学会誌 (ISSN:13414178)
巻号頁・発行日
vol.33, no.1, pp.16-35, 1998-01-10
参考文献数
92
被引用文献数
10

針葉樹のスギとウラジロモミおよび落葉広葉樹のシラカンバとケヤキの苗木に, 4段階の濃度のオゾンと2段階のpHの人工酸性雨を複合で20週間にわたって暴露した。オゾンの暴露は, 自然光型環境制御ガラス室内において, 1991および1992年に観測した野外オゾン濃度の平均日パターンを基準(1.0倍)とした0.4,1.0,2.0および3.0倍の4段階の濃度で毎日行った。オゾン濃度の日中12時間値(日最高1時間値)の暴露期間中平均値は, それぞれ18(29), 37(56), 67(101)および98(149)ppbであった。人工酸性雨の暴露は, 開放型ガラス室内において, 夕方から, pH3.0の人工酸性雨(SO_4^<2-> : NO_3^<3-> : Cr=5 : 2 : 3,当量比)および純水(pH5.6)を, 1週間に3回の割合で, 1時間あたり2.0〜2.5mmの降雨強度で1回8〜10時間行った。シラカンバとケヤキでは, 2.0倍および3.0倍オゾン区において白色斑点や黄色化などの可視障害が発現し, 早期落葉も観察された。ケヤキでは, pH3.0の人工酸性雨区においても可視障害が発現したが, シラカンバでは人工酸性雨による可視障害は全く認められなかった。スギとウラジロモミでは, オゾンあるいは人工酸性雨の暴露による葉の可視障害は全く認められなかった。最終サンプリングにおけるスギ, シラカンバおよびケヤキでは, 葉, 幹, 根の各器官および個体の乾重量はオゾンレベルの上昇に伴って減少した。ウラジロモミでは, 根乾重量がオゾンレベルの上昇に伴って減少した。一方, pH3.0区におけるウラジロモミおよびケヤキの葉および個体の乾重量はpH5.6区に比べて減少した。また, スギ, シラカンバおよびケヤキの純光合成速度はオゾンレベルの上昇に伴って減少した。シラカンバおよびケヤキでは, 葉内CO_2濃度-光合成曲線の初期勾配である炭酸固定効率もオゾンレベルの上昇に伴って低下した。ウラジロモミではオゾン暴露によって暗呼吸速度が増加した。さらに, pH3.0区におけるウラジロモミおよびケヤキの暗呼吸速度もpH5.6区に比べて減少した。オゾンと人工酸性雨の交互作用は, 供試したいずれの4樹種の地上部と根の乾重量比(T/R)において認められ, オゾンレベルの上昇に伴うT/Rの上昇の程度がpH5.6区に比べてpH3.0区において高かった。
著者
上平 雄基 川村 英之 小林 卓也 内山 雄介
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集B2(海岸工学) (ISSN:18842399)
巻号頁・発行日
vol.72, no.2, pp.I_451-I_456, 2016 (Released:2016-11-15)
参考文献数
15
被引用文献数
1 1

日本原子力研究開発機構で開発された海洋拡散予測システムの沿岸海域での高精度化を図るため,気象研MOVEと多段ネストROMSを用いたダウンスケーリングに基づく高解像度海洋モデルを導入した.新システムを福島第一原発事故に適用することで,現行システムでは再現することが困難であったサブメソスケール渦の消長に伴う137Csの3次元的な混合と海洋中移行過程の解析精度検証を行った.高解像度モデルによる流速場・乱流強度等の再現性は良好であり,低解像度モデルと比較して137Cs濃度分布の再現性の向上が確認された.事故直後の福島県沖海域では,季節的な海面冷却などによって強いサブメソスケール渦が発達し,それに伴う強い鉛直流によって137Csが中深層へ活発に輸送されていた.
著者
大野 雅治 藤井 直樹 小林 卓郎 後藤 幾生
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.79, no.8, pp.1077-1078, 1990-08-10 (Released:2008-06-12)
参考文献数
9
被引用文献数
1

症例は51才男性で,亜急性に高度の深部覚障害を伴う感覚運動型のポリニューロパチーを発症した.既往として26才時に胃部分切除をうけ,その後,輸血後肝炎に罹患した.血中の脂溶性ビタミンは低値で,特にビタミンEが著明に低下していた.消化吸収試験で,ビタミンEの著明な吸収障害が認められた。腹部手術後に長期間経過して発症する神経障害の原因として,ビタミンE欠乏は注意を要するものと考えられる.
著者
松本 亜希子 中川 光弘 小林 卓也 石塚 吉浩
出版者
特定非営利活動法人 日本火山学会
雑誌
火山 (ISSN:04534360)
巻号頁・発行日
vol.66, no.4, pp.255-279, 2021-12-31 (Released:2022-02-22)
参考文献数
37

The Tokachidake volcano group, central Hokkaido, is one of the most active volcanoes in Japan; three magmatic eruptions occurred from the crater area on the northwestern flank of Tokachidake in the 20th century. The Sandan-yama, Kamihorokamettokuyama, and Sampōzan edifices are on the southern flank of the volcano, and the first two bound the west-facing Nukkakushi crater. Although fumarolic activity and hydrothermal alteration are ongoing at Nukkakushi crater, its eruptive history remains unknown. Therefore, we performed a geological investigation of the Nukkakushi crater area. Based on topographical features, we inferred the following eruptive history. Sampōzan and Kamihorokamettokuyama formed during ca. 70-60 ka, after which the northern flank of Sampōzan collapsed and a new edifice (Nukkakushi volcano) was built within the collapse scarp. Finally, the collapse of the western flank of Nukkakushi formed Nukkakushi crater—perhaps during the Holocene, according to previous work. We identified eight Holocene eruptive products generated from the Nukkakushi crater area, the most recent of which was generated from a crater on the western flank of Sandan-yama sometime since the early 18th century. We also recognized three debris avalanche/landslide deposits that were generated within the last 750 years. Comparing the eruptive products of the northwestern crater area of Tokachidake with those of the Nukkakushi crater area revealed that magmatic eruptions from the two craters alternated until 1.8 ka. Their distinct magmatic compositions suggest the simultaneous existence of two isolated magma systems beneath Tokachidake and Nukkakushi, at least until that time. Since 1.8 ka, magmatic eruptions at the northwestern crater area of Tokachidake and phreatic eruptions at the Nukkakushi crater area have occurred in parallel. Moreover, around Nukkakushi crater, small-scale collapses/landslides have occurred. Previous studies recognized hydrothermal changes at Nukkakushi crater area, originating from the northwestern crater area of Tokachidake around the last two magmatic eruptions; it is therefore presumed that the Nukkakushi crater area was hydrothermally altered, even during periods of little eruptive activity. Such continuous and pervasive hydrothermal alteration explains the frequent collapses of edifices. The parallel yet contrasting eruptive activities in these adjacent areas are important for forecasting future eruptive activities and mitigating volcanic hazards.
著者
小林 卓矢 石原 諭
出版者
一般社団法人 日本科学教育学会
雑誌
日本科学教育学会研究会研究報告
巻号頁・発行日
vol.33, no.7, pp.25-28, 2019

<p>「物理は公式を覚えてそれに値を代入する科目」といった誤解が,特に物理を苦手とする生徒たちの間に蔓延しているように思われる.その状況を少しでも改善させるため,世界的に評価の高い教材である「ファインマン物理学」のⅠ章9節にある「逐次計算手法」を高校物理に導入することを提案したい.この手法を導入するメリットは,先に述べた物理を苦手とする生徒への物理の概念形成を促すという効果だけではなく,発展的なことを求める生徒にも効果が期待される.それは逐次計算手法が,公式が通用しない,理想的でない状況における物理現象の説明(加速度が位置や速度により変化する,一般に微分方程式を用いなければ運動解析ができないもののグラフ化)に役立つからである.逐次計算手法の教育的効果について,高校3年生に補習授業「単振動の様子を逐次計算で追う」を実施し,補習前後のアンケート調査(MPEXメリーランド大学物理期待観調査)を分析することで,その有効性を確かめた.</p>
著者
小林 卓也 川村 英之 印 貞治 島 茂樹
出版者
一般社団法人 日本原子力学会
雑誌
日本原子力学会 年会・大会予稿集
巻号頁・発行日
vol.2010, pp.965, 2010

海洋中における放射性物質等の移行過程を詳細にモデル化するため、海水中放射性核種移行予測コードに排水拡散過程を追加し、青森県六ヶ所村沖における流動場の再解析値と、再処理施設からの放出情報を用いて適用計算を実施した。
著者
韓 霽珂 西 紳之介 高田 賢治 村松 眞由 大宮 正毅 小川 賢介 生出 佳 小林 卓哉 村田 真伸 森口 周二 寺田 賢二郎
出版者
一般社団法人 日本計算工学会
雑誌
日本計算工学会論文集 (ISSN:13478826)
巻号頁・発行日
vol.2020, pp.20200005, 2020-04-15 (Released:2020-04-15)
参考文献数
36

近年,亀裂・進展の解析手法の一つとして,phase-field破壊モデルが注目を集めている.phase-field脆性破壊モデルは既に多くの実績が報告されている一方で,延性材料を適切に表現するphase-field破壊モデルは発展途上である.phase-field破壊モデルにおいて,拡散き裂の幅を表す正則化パラメータは破壊開始の制御に用いられ,これが大きいほど破壊開始が早くなる.これは正則化パラメータが大きい場合には,その分だけき裂近似領域も大きくなるため,1に近いphase-fieldパラメータの分布も拡大し,それに応じて荷重--変位関係のピーク値が小さくなることが原因として考えられる.本研究では,正則化パラメータの性質を考慮し,通常は定数として扱われる正則化パラメータの代わりに,蓄積塑性ひずみの大きさに応じて変化する可変正則化パラメータを提案する.これにより,塑性域と正則化パラメータによって規定されるき裂周辺の損傷域が関連づけられ,塑性変形の影響を考慮した損傷の計算が可能となる.提案モデルの表現性能を調査するためにいくつかの解析を行った.可変正則化パラメータの導入により,塑性変形の進行とともにき裂周辺の損傷域が大きくなる傾向が捉えられ,弾性域から塑性域を経てき裂に発展するといった遷移過程に特徴づけられる延性破壊を表現できることを確認した.ベンチマーク問題の解析等の数値解析を通して,き裂の進展方向を適切に予測できること,および可変正則化パラメータを介して延性の制御が可能になることを例示した.また,金属供試体を用いた実験の再現解析では,実験結果と整合する結果が得られることも確認した.
著者
小林 卓哉 三原 康子 西脇 剛史 藤井 文夫
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集A2(応用力学) (ISSN:21854661)
巻号頁・発行日
vol.70, no.2, pp.I_419-I_428, 2014 (Released:2015-02-20)
参考文献数
13

局所的な構造不安定の問題,たとえば薄肉構造の局所座屈に代表されるような問題では,部分的な変形が隣接する部分の変形を促し,それらの間でひずみエネルギの授受を伴いながら構造全体の不安定性が増大したり,あるいは解消する挙動が現れる.構造全体の挙動を一つのパラメータによって制御する手法,例えば弧長法によってこの種の問題を安定に解くことは難しく,慣性力あるいは粘性力の効果を導入し,ひずみエネルギの局所的な消散を適正に表現する必要がある.これまで適用例が多い動的陽解法は,その一つの便法である.本研究では最近の汎用FEMを使用し,人工的な粘性を与えることによって局所的な構造不安定に起因する解析の困難を克服した.圧縮を受ける完全円筒に近い弾性円筒シェルを手始めに,材料に起因する不安定現象を含め,全自動かつシームレスの解析によって深い後座屈の領域までをトレースすることが可能になったので報告する.
著者
川崎 良孝 吉田 右子 小林 卓 三浦 太郎 呑海 沙織 安里 のり子 久野 和子
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2012-04-01

本研究は19世紀中葉から21世紀にいたる図書館の歴史的展開を、新たな視点で解明している。「サービスの提供」という基本的価値に、1960年代から「資料や情報へのアクセスの保障」と「図書館記録の秘密性の保護」という価値が加わり、これらの3つの価値は思想的、実践的に20世紀末に向けて深められていった。しかし21世紀に入り、「アクセスの保障」と「秘密性の保護」という価値は、社会や技術の変化を受けて揺らぐとともに、それらを意識した図書館の理論や実践が生まれている。本研究は広範な一次資料の発掘や実践の研究を通じて、こうした歴史的展開を実証的に解明し、一般図式を提供した。
著者
藤川 正毅 三上 貴央 小林 卓哉 隆 雅久
出版者
日本実験力学会
雑誌
実験力学 (ISSN:13464930)
巻号頁・発行日
vol.7, no.4, pp.387-392, 2007 (Released:2008-06-25)
参考文献数
12

The authors have developed a new automatic technique of drawing the master curve from the experimental data measured by the Dynamic Measurement Tester. In this paper, the experimental conditions recommended by Japanese Industrial Standards are considered and modified from the perspective of drawing the master curve. To verify the effectiveness of the proposed technique and the experimental conditions, the storage and loss moduli of epoxy resins and rubber materials are measured, and the proposed technique is applied to the experimental data. From the results, it is confirmed that the master curves are obtained automatically and expeditiously.