著者
原田 浩二 小泉 昭夫 Steinhauser Georg 新添 多聞
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2014-04-01

福島第一原子力発電所におけるがれき撤去作業に伴う原子炉3号機建屋からの放射性物質放出量を基にした大気拡散シミュレーションを行い、2013年8月に南相馬市で実測された大気中濃度、降下量を再現した。粉じんが降下したとされる南相馬市原町区10地点で、撹乱されていない箇所での土壌試料21検体について放射性ストロンチウム、プルトニウム分析を実施し、放射性ストロンチウムは比較的高い地点が見られるなど挙動、拡散は異なる可能性が示唆された。これらの結果から、二次拡散における粗大粒子の拡散は降下物量に有意な影響を与え、コメをはじめとする農産物汚染を引き起こしうることが示された。
著者
周東 寛 野口 久 西片 光 滝沢 健司 周東 千鶴 永田 眞 寺師 義典 山口 道也 滝沢 敬夫 渡辺 建介 登坂 薫 岡野 昌彦 小泉 昭
出版者
一般社団法人 日本アレルギー学会
雑誌
アレルギー (ISSN:00214884)
巻号頁・発行日
vol.56, no.7, pp.714-720, 2007
被引用文献数
1

吸入ステロイドの副作用の一つとして,口腔・食道カンジダ症の報告がある.点鼻ステロイド長期投与により出現した「嚥下による口腔・食道通過時に不快感」の症状を呈した症例に口腔・食道カンジダ症を発見した.そして点鼻ステロイドを中止したことにより著明に改善した症例を経験したので報告する.症例は69歳女性.嚥下時上胸部に通過障害の違和感を主訴にて来院した.数年前より通年性アレルギー性鼻炎と診断され, 2年前より点鼻用BDPを毎日睡眠前に点鼻していたことを内視鏡検査後の問診でわかった.患者は睡眠中の鼻閉鼻汁の強い症状が, BDP点鼻により改善することで,使用し続けていた.経過:上部消化管内視鏡検査により下咽頭炎及び食道カンジダ症「吸入ステロイドによる食道カンジダ症の分類」のhigh grade(Grade III)を認めた.治療対策として,点鼻BDPを中止し抗真菌剤は使用せずに,毎日うがい・鼻洗を実施, 2週間後に主訴が改善, 1ヵ月半後の内視鏡再検査にてmild grade(Grade I)に改善していた.睡眠前の吸入ステロイド使用と同様に,睡眠前の点鼻も経鼻腔的に食道にステロイドが嚥下され滞留し, 1年以上長期に点鼻ステロイドを使用した結果,食道カンジダ症が発症したと思われた.
著者
小泉 昭夫
出版者
Japanese Electrophoresis Society
雑誌
生物物理化学 (ISSN:00319082)
巻号頁・発行日
vol.41, no.3, pp.145-148, 1997-06-15 (Released:2009-03-31)
参考文献数
22

遺伝的に肥満を発症するob/obとdb/dbマウスの発見は, 肥満の分子生物学的検討を可能にし, レプチンとその受容体の発見へと導いた. レプチンと, レプチン受容体, および関連するシグナル介在物質は, ネットワークを形成し, 体脂肪量をある先見的に決められたセットポイントに保つように協調している. レプチンはシグナルとして脂肪組織から大脳へ情報を伝達し, エネルギーの摂取と消費のバランスを取っている. エネルギー摂取の制御は食欲を介し, 消費の制御は熱産生を制御することで行っている. レプチンにより肥満が解消できるのはほんのわずかの人々であると予想されるが, この発見は抗肥満薬として多くの人々に希望を与えており, この驚異のやせ薬は, 近年現実のものになりつつある.
著者
原田 浩二 小泉 昭夫
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2013-04-01

南アジアの島国・スリランカでは1990年代より、セイロン島中東部、中北部および周辺地域において、慢性腎不全が急増している。これまでに続いて遺伝的素因を検討し、SLC13A3、KCNJ10、LAMB2の候補遺伝子を示した。バルカン半島腎症の原因とされる腎毒性を有するウマノスズクサ、また農薬曝露の関与について検討するため、尿中アリストロキア酸、ネオニコチノイドの分析方法を検討した。また症例対照研究を行った。結果として、検出できる量のアリストロキア酸は見出されなかった。病理組織の検討も行い、電子顕微鏡観察を行った。腎組織の電子顕微鏡観察は、CKDuの病因における重金属毒性を支持する証拠はなかった。
著者
原田 浩二 小泉 昭夫 皆田 睦子
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

環境汚染物質ペルフルオロオクタン酸(PFOA)はヒト体内に蓄積しやすい。成人の血清中濃度はPFOAより炭素鎖の長い化合物が急速な増加が認められた。動態パラメータを算出し、一般集団での曝露量を与えて、血中濃度シミュレーションを行った。動物実験ではリン脂質輸送分子MDR2の発現量とPFOA胆汁濃度が相関する。MDR1欠損マウスでは腎臓からのPFOA排出量が低下し、MDR1分子がPFOAの排出に関与することを示した。マイクロアレイの結果MDR1が誘導されていることが分かった。
著者
若田 哲史 高木 幸夫 小泉 昭夫
出版者
一般社団法人日本衛生学会
雑誌
日本衛生学雑誌 (ISSN:00215082)
巻号頁・発行日
vol.75, pp.19015, 2020 (Released:2020-03-05)
参考文献数
35
被引用文献数
3

Objectives: We investigated the quality of life (QOL) of patients using the Free/Low-Cost Medical Care Program, which is a system that enables people in financial difficulities to receive treatment free of charge or at a low cost. We also investigated the background charateristics and lifestyle of the patients.Methods: The subjects were 226 outpatients who used the Free/Low-Cost Medical Care Program (use group) and 226 outpatients who did not use the program (non-use group). The method was an anonymous cross-sectional servey by mail. The survey items included basic attributes, health-related QOL (HRQOL), feeling of being poor, lifestyle diseases, lifestyle, and connection with the community.Results: The number of respondants with valid responses was 97 in the use group and 85 in the non-use group. Among the basic attributes, there were a significant differense between the use group and the non-use group in the family structure, type of work, household income, and educational background. The HRQOL scores of the physical and social summary components were significantly lower in the use group than in the non-use group. The HRQOL scores of mental summary component were higher than the national standard HRQOL score in both the use and non-use groups.Conclusions: In this study, it was considered that old age affected the HRQOL scores of the physical and social components. It was considered from the HRQOL scores of the mental aspect that the use of the Free/Low-Cost Medical Care Program might have contributed to mental stability a certain to extent.
著者
塩谷 隆信 佐竹 將宏 佐々木 昌博 小泉 昭夫
出版者
秋田大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2004

遺伝性出血性末梢血管拡張症(オスラー病:hereditary hemorrhagic telangiectasia ; HHT)は,1)遺伝的発生,2)皮膚・粘膜,内臓の多発性末梢血管拡張,3)各部位からの反復する出血を3主徴とする疾患である.本症は,末梢血管拡張,その部位からの出血が種々の臓器に出現する多臓器疾患であるために臨床症状が極めて多岐にわたり,患者は内科のみならず,外科,耳鼻咽喉科,皮膚科,歯科など極めて多くの科を初診する.さらに,合併する脳動静脈奇形あるいは,肺動静脈奇形の破綻により致死的となることも希ではない.本研究は,日本におけるHHTの発生頻度・罹病率について遺伝疫学的に検討を行い,本疾患による合併症の予防,治療を呼吸リハビリテーション(リハビリ)という観点から考案し,さらに将来的には遺伝子治療の足がかりを探ろうとするものである.日本におけるオスラー病の遺伝子異常は下記のごとくであった.A G to C transvertion at the splicing donor site of intron 3 (Inv3+1G>C) in one family, one base pair insertion (A) at nucleotide 828 (exon 7) of the endoglin cDNA in two large families (C.828-829 insA), and a four base pair deletion (AAAG) beginning with nucleotide 1120 (exon 8) of the endoglin cDNA (c.1120-1123 delAAAG) in one family. The insertion of A in exon 11 (c.1470-1471 insA) mutation found in one familyHHTに合併した肺動静脈奇形に対する呼吸リハビリは,そのプログラムがないことより実際には行われていない現況にある.また,肺動静脈奇形に対して肺動脈塞栓術が施行された後の呼吸リハビリ・プログラムも示されていない.佐竹は,高齢COPD患者に対する運動療法プログラムを考案した(佐竹他,COPD FRONTIER, 2006).上述の55歳男性HHT症例に対して佐竹の呼吸リハビリ・プログラムを施行したところ非常に有用で患者は通常の日常生活に復帰した.この呼吸リハビリ・プログラムはHHTに合併した肺動静脈奇形に対して応用可能であると考えられた.
著者
竹中 勝信 依藤 純子 山田 茂樹 山川 弘保 阿部 雅光 田渕 和雄 小泉 昭夫
出版者
日本脳神経外科コングレス
雑誌
脳神経外科ジャーナル = Japanese journal of neurosurgery (ISSN:0917950X)
巻号頁・発行日
vol.13, no.12, pp.837-845, 2004-12-20

家族性脳動静脈奇形の8家系による遺伝疫学調査と遺伝子解析を試みた.代表症例:家系7(兄妹例):II. 1) I. M.:51歳,男性.意識消失発作にて発症.右前頭葉に約5cmのnidusを認めた.Spetzler-Martin score(S-M score):III. 2) K.M.:58歳,女性.右運動障害にて発症.左頭頂葉皮質下に血腫を認め,脳血管撮影にて2.5cm大のnidusと右前大脳動脈に3mmの未破裂嚢状脳動脈瘤を認めた.S-M score:家系8(従兄弟例):1) K.I.:67歳,男性.頭痛にて発症.左前頭頭頂葉に血腫を認め,脳血管撮影では2.5cm大のnidusを認めた.S-M score :II .2) Y.M.:37歳,男性.歩行障害と左顔麻痺にて発症.CTで左小脳出血を認め.MRIにて海綿状血管腫(孤発)を認め,同側小脳半球に静脈性血管腫を合併.遺伝子解析方法:京都大学の医の倫理委員会,および高山赤十字病院の倫理委員会の承認を得た.兄弟,姉妹,従兄妹発症脳動静脈奇形である5家系の発病者10人について,全血由来ゲノムDNAを分離後,遺伝子解析に使用した.遺伝子タイピングは,常染色体382個とX染色体18個のmicrosatellite marker(ABI Prism Linkage Mapping Set Version 2)を用いて行った.連鎖解析には.Merlin softwareを用いて行った.遺伝子Ephrin B2について塩基配列決定で変異の存在を検索した.発症者以外の家族を対象として希望者全員にMRIおよびMRAを用いた画像診断を行った.結果:(1)6q24-6q27, 7p22-7p15, 13q21-13q31, 16p11.2-16p11.1, 20q12-20q13.1の5ヵ所の染色体の部位にて統計学的な優位(p<0.05)に連鎖部位を認めた,(2)13番染色体長腕に存在するEphB2遺伝子のexonl〜exon5の全シークエンスを行ったが,突然変異やSNP(single nucleotide polymorphism)は同定されなかった.(3)MRIおよびMRA検査を行った結果,今回の発病者以外には頭蓋内病変はみられなかった.結論:米国,チェコ共和国,本邦に存在する家族性脳動静脈奇形家系(8家族)のうち,5家系の末梢血ゲノムを用いた連鎖解析を行った.家族性脳動静脈奇形はなんらかのgenetic factorの存在が示唆された.5つの染色体で疾患連鎖遺伝子座が浮かび上がり,このうち第6染色体と第7染色体は最も疑わしい可能性を疑う連鎖解析結果を得た.