著者
山下 清海
出版者
東洋大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1995

本研究では、アメリカ・東南アジア・日本におけるチャイナタウンを対象に、チャイナタウンの形成および変容について比較検討し、各地のチャイナタウンに共通する普遍的性格を明らかにするとともに、各地域のチャイナタウンの地域的性格を解明し、それらの背景について考察することを目的とした。まず、チャイナタウンに関する内外の関係文献を収集し、文献資料のデータベースの作成を行った。また、日本の三大中華街(横浜・神戸・長崎)の現地調査を行うとともに、東南アジアのシンガポール・クアラルンプール・ジャカルタのチャイナタウンの現地調査を実施した。アメリカのチャイナタウンに関しては、本研究開始前の平成6年〜7年にかけて実施した調査成果を整理するとともに、多数の文献から考察した。これらの結果、次のようなことが明らかになった。日本の三大中華街は、いずれも観光地としての性格が強く、近年ますますその傾向を強めている点に大きな特色がある。これに対して、サンフランシスコやニューヨークなどのアメリカのチャイナタウンの一部には、日本と同様に観光地になっている所もあるが、近年、中国大陸・香港・台湾・東南アジアなどからの新来の華人の増加に伴い、郊外にニューチャイナタウンが形成されつつある。東南アジアのチャイナタウンを全体的にみると、現地の華人社会に対して経済的、社会的、文化的サービスを提供する機能が強く、チャイナタウンが観光地化しているところは少ない。
著者
山下 清海 小木 裕文 松村 公明 張 貴民 杜 国慶
出版者
地理空間学会
雑誌
地理空間 (ISSN:18829872)
巻号頁・発行日
vol.3, no.1, pp.1-23, 2010

本研究の目的は,日本における老華僑にとっても,また新華僑にとっても代表的な僑郷である福建省の福清における現地調査に基づいて,僑郷としての福清の地域性,福清出身の新華僑の滞日生活の状況,そして新華僑の僑郷への影響について考察することである。1980 年代後半~ 1990 年代前半における福清出身の新華僑は,比較的容易に取得できた就学ビザによる集団かつ大量の出国が主体であった。来日後は,日本語学校に通いながらも,渡日費用,学費などの借金返済と生活費確保のために,しだいにアルバイト中心の生活に移行し,ビザの有効期限切れとともに不法残留,不法就労の状況に陥る例が多かった。帰国は,自ら入国管理局に出頭し,不法残留であることを告げ,帰国するのが一般的であった。1990 年代後半以降には,福建省出身者に対する日本側の審査が厳格化された結果,留学・就学ビザ取得が以前より難しくなり,福清からの新華僑の送出先としては,日本以外の欧米,オセアニアなどへも拡散している。在日の新華僑が僑郷に及ぼした影響としては,住宅の新改築,都市中心部への転居,農業労働力の流出に伴う農業の衰退と福清の外部からの労働人口の流入などが指摘できる。また,新華僑が日本で得た貯金は,彼らの子女がよりよい教育を受けるための資金や,さらには日本に限らず欧米など海外への留学資金に回される場合が多く,結果として,新華僑の再生産を促す結果となった。
著者
矢ケ崎 典隆 山下 清海 加賀美 雅弘 根田 克彦 山根 拓 石井 久生 浦部 浩之 大石 太郎
出版者
日本大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2011-04-01

多民族社会として知られるアメリカ合衆国では、移民集団はいつの時代にも異なる文化を持ち込み、それが蓄積されて基層(古いものが残存するアメリカ)を形成してきた。従来のアメリカ地誌は表層(新しいものを生み出すアメリカ)に注目した。しかし、1970年代以降、アメリカ社会が変化するにつれて、移民の文化を再認識し、保存し、再生し、発信する活動が各地で活発化している。多様な文化の残存、移民博物館、移民文化の観光資源化に焦点を当てることにより、現代のアメリカ地誌をグローバルな枠組みにおいて読み解き直すことができる。アメリカ合衆国はまさに「世界の博物館」である。
著者
山下 清海 小木 裕文 松村 公明 張 貴民 杜 国慶
出版者
地理空間学会
雑誌
地理空間 (ISSN:18829872)
巻号頁・発行日
vol.3, no.1, pp.1-23, 2010

本研究の目的は,日本における老華僑にとっても,また新華僑にとっても代表的な僑郷である福建省の福清における現地調査に基づいて,僑郷としての福清の地域性,福清出身の新華僑の滞日生活の状況,そして新華僑の僑郷への影響について考察することである。 1980年代後半~1990年代前半における福清出身の新華僑は,比較的容易に取得できた就学ビザによる集団かつ大量の出国が主体であった。来日後は,日本語学校に通いながらも,渡日費用,学費などの借金返済と生活費確保のために,しだいにアルバイト中心の生活に移行し,ビザの有効期限切れとともに不法残留,不法就労の状況に陥る例が多かった。帰国は,自ら入国管理局に出頭し,不法残留であることを告げ,帰国するのが一般的であった。 1990 年代後半以降には,福建省出身者に対する日本側の審査が厳格化された結果,留学・就学ビザ取得が以前より難しくなり,福清からの新華僑の送出先としては,日本以外の欧米,オセアニアなどへも拡散している。 在日の新華僑が僑郷に及ぼした影響としては,住宅の新改築,都市中心部への転居,農業労働力の流出に伴う農業の衰退と福清の外部からの労働人口の流入などが指摘できる。また,新華僑が日本で得た貯金は,彼らの子女がよりよい教育を受けるための資金や,さらには日本に限らず欧米など海外への留学資金に回される場合が多く,結果として,新華僑の再生産を促す結果となった。
著者
山下 清海
出版者
地理空間学会
雑誌
地理空間 (ISSN:18829872)
巻号頁・発行日
vol.2, no.1, pp.32-50, 2009

本研究は,インドの華人社会の地域的特色について考察するとともに,コルカタのチャイナタウンの現状を記述・分析することを目的とした。インドの華人は,イギリス植民地時代の首都であったコルカタに集中してきた。広東省籍が最も多く,特に客家人が最大多数を占め,彼らの経済活動は皮革業と靴製造業に特化してきた。1962 年に発生した中印国境紛争に伴う両国の関係悪化により,海外へ「再移民」する華人が増加し,華人社会は衰退し,今日に至っている。インドにおいてチャイナタウンが唯一存在するコルカタには2つのチャイナタウンがある。ティレッタ・バザール地区は衰退しているが,中印国境紛争までは繁栄し,その名残として,会館,廟,華文学校などの華人の伝統的な施設が集中している。一方,タングラ地区は,近年の皮革業の衰退により,皮革工場から中国料理店への転換が著しく,今日では中国料理店集中地区となっている。
著者
千葉 泰介 武川 直樹 望月 俊男 山下 清美
出版者
専修大学ネットワーク情報学会
雑誌
専修ネットワーク&インフォメーション (ISSN:13471449)
巻号頁・発行日
no.16, pp.1-8, 2010-01

In this paper, the authors make a hypothesis of a factor model to stimulate student group work and examine the model by conducting questionnaire surveys of undergraduate students who participated in a year-long project-based learning at the Scool of Network and Information, Senshu University. 511 students answered two surveys on their experience and feelings in the middle of and in the end of their project-based learning. Our findings are as follows: (a) some portions of our initial model are supported, (b) positive atmosphere in a group and good task management stimulate group learning activities. The results indicate that students should make opportunities to have convivial meetings and share recreational activities at astage in the formation of their groups. Furthermore, task management is an important element to stimulate their group work in the period of promoting their learning activities.
著者
藤巻 正己 江口 信清 生田 真人 平戸 幹夫 山下 清海 田和 正孝 祖田 亮次 ルスラン ライニス タールミジー マスロン
出版者
立命館大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2006

本研究では、(1) 人口・社会経済地図による俯瞰的分析、(2) クアラルンプル大都市地域やパハン州などの農山漁村、サラワク州内陸部の先住民族居住地域における虫瞰的現地調査を通じて、マレーシアにおける貧困問題の表出状況とその差異や要因について、地域的・民族集団的多様性という観点から探究した。その成果については、公開セミナーの開催、他の研究組織との国際シンポジウムの共催、そして研究報告書(180頁)の刊行をもって公開された。
著者
村山 祐司 山下 清海 森本 健弘 兼子 純 呉羽 正昭 松井 圭介 仁平 尊明 山下 亜紀郎 田林 明 手塚 章
出版者
筑波大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2010-04-01

本プロジェクトでは,人文地理学者が培ってきた豊富なフィールドワークの経験や蓄積にもとづき,暗黙知とされてきたフィールドワークを体系的に考察することにより,方法論の「ホワイトボックス」化に挑んだ.研究そのものを遂行するノウハウや研究論文の論旨を組み立てる方法などに注意を払いつつ,データを系統的に取得・蓄積・管理・分析・可視化・伝達する汎用的な方法を探究した.さらに,GISデータ解析のポータルサイトを立ち上げ,時空間データベースの活用実験を行うとともに,空間解析を主体としたフィールドサイエンスの確立に向けて議論を重ねた.本研究の成果はウェブで公開した.