著者
山内 一也
出版者
日本獸医師会
雑誌
日本獣医師会雑誌 = Journal of the Japan Veterinary Medical Association (ISSN:04466454)
巻号頁・発行日
vol.63, no.9, pp.649-654, 2010-09-20
参考文献数
1

牛疫の原因である牛疫ウイルスは1902年、パスツール研究所のMaurice Nicolleがコンスタンチノープル(現在のイスタンブール)の研究所で分離したもので、パラミクソウイルス科、モービリウイルス属に分類されている。同じグループには麻疹ウイルスが含まれているが、これは人間が農耕牧畜の生活を始めて家畜と生活をともにするようになったのち、牛から牛疫ウイルスに感染し、それが集団生活を始めた人々の間で広がって進化したものと考えられている。牛疫は獣医学領域ではよく知られている病気であるが、これが世界史に大きな影響を与えてきていたこと、現在の家畜伝染病対策を初め、近代獣医学の出発点になっていたこと、しかもその牛疫に対して間もなく根絶宣言が出される予定であることはあまり知られていない。本稿では壮大な牛疫の歴史を簡単に紹介し、牛疫根絶にいたった道のり、とくにそこにいたるには日本人科学者が大きな貢献を果たしてきたことを述べる。
著者
横田 充弘 山内 一信 谷村 英彦 渡辺 佳彦 外畑 巌 安井 昭二
出版者
公益財団法人 日本心臓財団
雑誌
心臓 (ISSN:05864488)
巻号頁・発行日
vol.7, no.3, pp.315-324, 1975-03-01 (Released:2013-05-24)
参考文献数
20

20歳から49歳にわたる日本人正常男性164名,女性137名を対象として,小型電子計算機を用いた8心拍加算法により,S/N比の良いFrank誘導ベクトル心電図P環を描出した.これらのP環について17項目の諸量を自動計測し,性別,年代別(20-29歳,30-39歳,40-49歳)に平均値および標準偏差を求め,統計学的手法を用いて性差,年齢差の解明を試みた.計測17項目中20歳代の群で5項目,30歳代の群で3項目,40 歳代の群では7項目に有意な性差が存在した.また,男性では5項目に,女性では13項目に加齢に伴う変化を認めた,これらの成績よりP環について適切なベクトル心電図診断を行なうには性別,年齢別診断基準が必要であることが示唆された
著者
高須 俊明 高島 郁夫 上村 清 橋本 信夫 高橋 三雄 土井 陸雄 五十嵐 章 ANWAR Wagar 石井 慶蔵 磯村 思〓 吉川 泰弘 山内 一也 近藤 喜代太郎 YASMEEN Akba MUBINA Agbor AKRAM D.S. SHAISTA Rauf AKHTAR Ahmed AKBANI Yasmeen AGBOATWALLA Mubina AHMED Akhtar RAUF Shaista WAQAR Anwar
出版者
日本大学
雑誌
国際学術研究
巻号頁・発行日
1988

研究代表者らは、昭和57年度以後の調査研究で、カラチでは亜急性硬化性全脳炎(SSPE)の発生頻度が日本や欧米の大多数国に比べ数十倍以上高く、また血清学的にみて日本脳炎(JE)が疑われる患者が発生していることを知った。この事実に立脚して、今回SSPE多発の要因解析とJE様脳炎の病原研究に取り組んだ。成果の概況としては亜急性硬化性全脳炎(SSPE)については著しい進展があり、特にSSPEおよび麻疹の疫学やウイルス学での成果が目立っている。しかし、日本脳炎(JE)様脳炎については目立った進展は得られなかった。1.パキスタンにおけるSSPE多発の要因解析SSPEは麻疹ウイルスが個体に持続感染している間に生じた変異株が遅発性に脳を侵して起こる疾患である。今回の研究で、パキスタンにおけるその多発の要因は、以下の点でかなり明らかになった。(1)疫学的成果:SSPE患者の麻疹罹患年齢がパキスタンでは日本や欧米の大多数国と異なりearly measles(EM;2歳未満罹患麻疹)0.353、late measles(LM;2歳以上罹患麻疹)のうち5歳未満罹患麻疹(LM5>)0.340、5歳以上罹患麻疹(LM5≦)0.307(いずれも全measlesに対する比率)とLMが大多数を占めているという事実が判明した。これに基づき麻疹罹患年齢層別に計算されたパキスタンにおける麻疹罹患者からのSSPEの発生率は、EMからは308.1×10^<-6>、LM5>からは197.4×10^<-6>、LM5≦からは585.2×10^<-6>、麻疹罹患者全体からは280.2×10^<-6>と推定され、いずれも日本におけるそれぞれの数値に比べ高く、特にLM5>は46倍、LM5≦は296倍と著しく高いことがわかった。一般人口からの麻疹発生率のパキスタン対日本比は麻疹罹患年齢で層別しても高々2倍に留まる。したがって、パキスタンにおけるSSPE多発の最大の理由は、麻疹罹患者からのSSPEの多発、特にlate measlesからの多発にあると考えられた。[高須]第2に、SSPEのcase control studyの結果、患児は対照に比べて生下時体重が低く、出生後頭部外傷やけいれんに罹患している頻度が高い傾向がみられたことから、麻疹罹患前および後の環境因子がSSPEの発生に何らかの役割を果たしている可能性が示唆された
著者
甲斐 知恵子 落久保 文子 沖田 賢冶 飯沼 哲夫 見上 彪 小船 富美夫 山内 一世
出版者
社団法人日本獣医学会
雑誌
日本獣医学雑誌 (ISSN:09167250)
巻号頁・発行日
vol.55, no.6, pp.1067-1070, 1993-12-15
被引用文献数
16

臨床的にイヌジステンパーウイルス(CDV)感染症と診断された犬の脳, 脳脊髄液細胞, 脾臓, 末梢血細胞から, マーモセットBリンパ球由来のB95a細胞株を用いてウイルス分離を試みた. ウイルスは高率に分離され, また分離ウイルスのCPEの型や大きさに違いがあり, 野外流行株に異なる性状のウイルス群が存在することが示唆された. このようにB95a細胞株による分離は, 野外CDVの生態学的研究に有用と考えられた.
著者
福井 敏樹 山内 一裕 丸山 美江 佐藤 真美 高橋 英孝 山門 實
出版者
公益社団法人 日本人間ドック学会
雑誌
人間ドック (Ningen Dock) (ISSN:18801021)
巻号頁・発行日
vol.27, no.1, pp.29-35, 2012 (Released:2012-10-03)
参考文献数
13

目的:人間ドック健診は,生活習慣病の発症予防と早期治療,がんの早期発見と早期治療を大きな目的としている.しかしながら人間ドック健診と一般健診受診者の医療費について比較検討した報告はこれまでほとんどない.したがって今回我々は,通常の健診を毎年受けている集団(一般健診群)と毎年人間ドックを受け続けている集団(ドック健診群)における医療費の経年変化を比較検討し,毎年人間ドック健診を受け続けていれば,本当に一般健診以上の医療費削減効果があるのかを検討した.方法:対象は四国エリアの40歳代および50歳代のNTTグループ社員.平成15年度から17年度までの3年間連続での一般健診群と3年間連続でのドック健診群における年間医療費を,平成18年度から22年度まで5年間前向きに追跡した.結果:男性については,40歳代および50歳代の一般健診群では経年的に年間医療費が増加する傾向が見られた.5年間の累積医療費の両群の差は,40歳代は,男性約14.3万円,女性約-6.9万円であった.50歳代は,男性約33.0万円,女性約4.0万円であった.男性においては40歳代,50歳代共に両群の差が年々大きくなっていった.結論:50歳代男性では,人間ドック健診と一般健診との費用差額を考慮しても,毎年人間ドック健診を受けることに医療費削減効果があることが示された.
著者
真野俊樹 小柳秀彦 山内一信
出版者
多摩大学
雑誌
経営・情報研究 : 多摩大学研究紀要 (ISSN:13429507)
巻号頁・発行日
vol.11, pp.27-34, 2007

従来は競争が少なかった病院には患者に選ばれる病院になるあるいはなりたい動機は少なかったと思われる。こういった状況下にあったためか、病院におけるマーケティング・コミュニケーションについての研究は少ない。 今回の調査は、日本病院会の会員病院(2621施設)院長とし,調査方法は無記名式郵送質問紙調査,送付は平成13年10月18日,対象は2621病院におこなった。回答者は,病院長(代理を含む)が541名,無記名が16名であった。 本調査は、病院によるマーケティング・コミュニケーション活動の重要な実態調査といえよう。
著者
森脇 和郎 早川 純一郎 山内 一也 藤原 公策 山田 淳三 西塚 泰章
出版者
国立遺伝学研究所
雑誌
がん特別研究
巻号頁・発行日
1986

癌研究者に株分与を行うため19系統のマウス基準系統を指定維持し、40施設に26系統合計371匹のマウスを分譲した。これらの基準系統については定期的に遺伝的モニタリングを行い、基準系統としての維持体制を確立した。また7施設から延46系統のマウスについて遺伝的モニタリングの依頼を受けた。近交系ラットについては委員の確立した近交系ラットを4機関で18系統維持している。これらのラット系統については10施設から8系統315匹の分譲依頼があった。この他にも無アルブミンラットを11施設に875匹供給した。また詳細なラットの遺伝的モニタリングについては生化学的マーカーを中心にパネルを完成し11施設の依頼により11系統について検討を行った。近交系モルモットについては予研の14系統の内13系統177匹を15施設に分与した。これらの違伝的モニタリングのための標識遺伝子の検索を進めほぼ完成に近づき系統別に生物学的特性を明らかにした。癌研究にしばしば用いられるコンジェニック系マウスとしてB10系9系統、A系6系統、C3H系5系統、BALB1C系2系統その他細胞表面抗原に関するもの7系統を定めて維持担当者を決め育成維持を行っている。これらのコンジェニック系統については37施設に53系統595匹の分譲を行った。ヌードマウス系統は遺伝的背景の異る3系を25機関に1707匹を供給した。また、新しく育成した遺伝的背景に特色のあるヌードマウス8系統については20件126匹の株の分与を行った。ヌードラットは遺伝的背景の異る3系を育成中であり6件83匹の試験的な分与も行った。受精卵凍結保存については技術的な改良を続けており、系統差による難易の差異の問題を解決しなければならない。微生物モニタリングについては4種の動物について11種の感染因子の検査を行い、10施設から46件2578検体の依頼を受けた。本委員会の活動を癌特ニュースに掲載し、また実験動物のリストを作成し配布した。
著者
平井 康夫 郭 宗正 清水 敬生 中山 一武 手島 英雄 陳 瑞東 浜田 哲郎 藤本 郁野 山内 一弘 荷見 勝彦 増淵 一正 佐野 裕作 平田 守男
出版者
社団法人日本産科婦人科学会
雑誌
日本産科婦人科學會雜誌 (ISSN:03009165)
巻号頁・発行日
vol.40, no.11, pp.1707-1710, 1988-11-01

1971年より1985年の間に, 癌研婦人科で初回治療として開腹手術を施行した子宮体癌連続235症例について, 術中腹水細胞診を施行し, 進行期別に再発や生存率との関連を検討し以下の成績を得た. 1. 腹水細胞診の陽性率は, 全体で18.7% (235例中44例), I期 14.5% (173例中25例), II期 21.2% (33例中7例), III期 32.0% (25例中8例)であつた. 2. I期体癌の腹水細胞診陽性例のうち, 術中に腹膜転移を認めないのに腹水細胞診が陽性であつた20例の5年および10年累積生存率は, それぞれ94.7%, 94.7%であり, 陰性例の92.7%, 90.9%とくらべ, 有意差を認めなかつた. また, この期の再発率は, 細胞診陽性例で12.0%, 陰性例で9.5%であり, 両者に有意差を認めなかつた. 3. II期およびIII期体癌のうち, 術中に腹膜転移を認めないのに腹水細胞診が陽性であつた9例の生存率と, 同期の腹水細胞陰性例47例の生存率との間にも有意差を認めなかつた. 4. 子宮体癌においては, 術中に肉眼的腹膜転移を認めない場合は, 術中腹水への悪性細胞の出現の有無は, 予後と関連しなかつた.
著者
山内 一郎
出版者
関西学院大学
雑誌
神學研究 (ISSN:05598478)
巻号頁・発行日
vol.32, pp.57-85, 1984-03-31
被引用文献数
2
著者
平田 勝哉 清水 康介 福原 憲典 山内 一樹 川口 大輔 舟木 治郎
出版者
一般社団法人日本機械学会
雑誌
日本機械学會論文集. B編 (ISSN:03875016)
巻号頁・発行日
vol.75, no.749, pp.28-39, 2009-01-25

In this study, we deal with the tumbling, which is rotating motion with the axis perpendicular to the falling direction. Our purpose is to reveal the fundamental aerodynamic characteristics of the tumbling, experimentally. Regarding a test plate, we consider a prism with a rectangular cross section with a depth-to-width ratio λ of 0.3. The results are as follows. The reduced terminal rotating rate Ω^*, the lift coefficient C_L, the drag coefficient C_D and the lift-to-drag ratio C_L/C_D are independent of the aspect ratio AR, when AR is greater than 10. As the inertia momen ratio I^* increases from zero to 50, Ω^*, C_L and C_D increase. However, Ω^*, C_L and C_D become almost constant, at I^* greater than 50. We propose the empirical formulae to predict them. At low I^*, the tumbling shows a dominant periodicity of 360deg.
著者
山内 一男
出版者
一般社団法人中国研究所
雑誌
アジア經濟旬報
巻号頁・発行日
no.1019, pp.4-10, 1976-09-11
著者
山脇 孝晴 手島 英雄 竹島 信宏 山内 一弘 荷見 勝彦
出版者
社団法人日本産科婦人科学会
雑誌
日本産科婦人科學會雜誌 (ISSN:03009165)
巻号頁・発行日
vol.48, no.5, pp.328-334, 1996-05-01
被引用文献数
6

子宮体部明細胞腺癌 (以下明癌) 症例および一部に明細胞腺癌成分を含む内膜型腺癌 (以下一部明癌) 症例の臨床病理学的検討を行い, 以下の成績を得た。1. 癌研究会附属病院婦人科にて, 1950〜1994年に初回治療を行った子宮体癌1,152例中, 明癌は16例 (1.4%), 一部明癌は21例 (1.8%) であった。2. 累積生存率の算定にKaplan-Meier法を用いると, 明癌, 一部明癌は, それぞれ, 子宮体癌全体に比し, 有意に予後不良であった (p<0.001) 。3. 明癌のsubtypeは, papillary 5例 (31%), solid 9例 (56%), tubulocystic 2例 (13%) であった。4. 明癌において, hyaline body 8例 (50%), bizzare nucleus 7例 (44%), psammoma body 5例 (31%), 壊死6例 (38%), リンパ球を主体とした細胞浸潤8例 (50%), リンパ管侵襲5例 (36%), 血管侵襲4例 (29%) および異型内膜増殖症1例 (7%) に認められた。5. 明癌において, 病理組織学所見と予後とを比較すると, 癌病巣周囲のリンパ球を主体とした細胞浸潤の有無が最も予後と関係した。すなわち, 細胞浸潤がみられなかった8症例では, 癌が粘膜に限局していた1例を除けば, 7例中6例 (86%) が1カ月から1年7カ月で癌死したのに対し, 浸潤がみられた8症例では, 6例が無病生存, 1例が坦癌生存, 1例は2年7カ月で癌死であった。6. 一部明癌の中で, 転移, 再発を来した6症例中5例 (83%) は, 原発巣では明癌成分がわずかであったにもかかわらず, 化学療法, 放射線治療前の転移, 再発巣では, 明癌成分が著明に増加していた。以上, 子宮体部明癌の予後には, リンパ球を主体とした反応性細胞浸潤が関係している可能性が示され, その欠如は危険因子の一つになりうると考えられた。また, 一部明癌では, 転移, 再発巣において, 明癌成分が優位に増殖する傾向が明らかになり, 今後, 明癌のみならず, 一部明癌症例に対しても, 新たな積極的な治療が必要と考えられた。