著者
中蔵 伊知郎 木原 理絵 阿部 正樹 河合 実 関本 裕美 廣畑 和弘 山内 一恭 小森 勝也
出版者
一般社団法人 日本腎臓病薬物療法学会
雑誌
日本腎臓病薬物療法学会誌 (ISSN:21870411)
巻号頁・発行日
vol.2, no.1, pp.11-16, 2013 (Released:2018-04-02)
参考文献数
8

liposomal amphotericin Bは、低カリウム血症の発生が問題となる。L-AMB投与による低カリウム血症の発現頻度が腎機能の程度によって異なるか否かを明らかにすることを目的とし、我々は、L-AMBによる低カリウム血症の発現頻度を腎機能別で確認したので報告する。国立病院機構大阪医療センターにおいて、L-AMBを3日以上投与された成人の入院患者46名を対象とした。今回の検討では、腎機能の程度によらず、低カリウム血症の発現が認められた。また、腎代替療法を施行されている患者においても低カリウム血症が認められた。しかし、腎機能別での発症頻度に差はなかった。このため、L-AMBを使用する際には、腎機能の程度に関係なく、早期から血清カリウム値のモニタリングをすることが望ましい。
著者
甘崎 佳子 柿沼 志津子 古渡 礼恵 山内 一己 西村 まゆみ 今岡 達彦 有吉 健太郎 渡邊 正己 島田 義也
出版者
一般社団法人 日本放射線影響学会
雑誌
日本放射線影響学会大会講演要旨集 日本放射線影響学会第50回大会
巻号頁・発行日
pp.167, 2007 (Released:2007-10-20)

【目的】放射線照射によって生じる長寿命ラジカルは、培養細胞の系において遅延型の点突然変異を誘発し細胞をがん化させるが、放射線照射後にビタミンC(VC)を添加すると突然変異頻度が低下し、がん化が抑制されることが報告されている。しかし、放射線発がんにおける長寿命ラジカルの関与について、動物を用いて検証した報告は少ない。そこで本研究では、マウスの放射線誘発胸腺リンパ腫(TL)の系を用いて、放射線照射後にVCを投与した場合のTL発生率とがん関連遺伝子の変異パターンを解析し、放射線誘発TL発生における長寿命ラジカルの関与について明らかにすることを目的とした。 【材料と方法】4週齢B6C3F1マウス(雌)に、X線1.4 Gyを1週間間隔で4回照射しTLを誘発した。VCは生体内半減期の長い誘導体Sodium-L-ascorbyl-2 phosphate(共立薬科大学小林静子先生より供与)を100mg/kg腹空投与した。実験群は、1) X線単独(X線)、2) X線照射直後に毎回VC投与(X+VC)、3) X線照射直後に毎回VCを投与しさらに継続して毎週1回(3ヶ月間)VC投与(X+VC継続)の3群を設定し、各群における照射後生存日数とTLの発生率を調べた。また、放射線誘発TLにおいて変異パターンが明らかとなっているがん抑制遺伝子Ikarosの遺伝子発現、点突然変異およびタンパクの発現を解析した。 【結果】照射後の生存日数は、X線群と比較してX+ VC群ではやや短くなる傾向を示したが、X+VC継続群では長くなった。また生後400日におけるTLの発生率もX+VC継続群で若干低下した。さらに、Ikarosの変異解析の結果、X+VC継続群ではIkaros遺伝子の点突然変異が認められなかった。以上の結果から、マウスの放射線誘発TL発生に長寿命ラジカルが関与している可能性があることが示唆された。
著者
己斐 澄子 手島 英雄 南 敦子 片瀬 功芳 山脇 孝晴 星 利良 藤本 郁野 山内 一弘 荷見 勝彦 都竹 正文
出版者
公益社団法人 日本臨床細胞学会
雑誌
日本臨床細胞学会雑誌 (ISSN:03871193)
巻号頁・発行日
vol.33, no.6, pp.1048-1053, 1994 (Released:2011-11-08)
参考文献数
9

閉経後の患者で, 細胞診で老人性変化が主体で一部にHPV感染を疑う所見を認めたが, 十分なHPV感染細胞所見を示さなかった8症例にエストロゲン (プレマリン) 負荷を施行した. 抱合型エストロゲン, プレマリン1.25mgを2週間経口投与した. 投与前は少数のkoilocyteやparakeratocyteを認めただけであったが, 投与後は, 炎症性背景が消失し, parakeratosis 100%(8/8), koilocytosis 75%(6/8), smudged様濃染核75%(6/8), giant cell 50%(4/8), multinucleation62.5%(5/8) の率でHPV感染に特徴的な細胞所見が出現した.HPV-DNAは, Southern blot法で5例を検索し, 100%(5/5) 陽性であった. ISH (in situ hybridization) 法で他の3例を検索し, 33%(1/3) がHPV-DNA陽性であった.エストロゲン投与は, 老人性膣炎と悪性細胞を鑑別するだけでなく, 老人性膣炎でのHPV感染診断に有用であった. 老人性変化, 老人性膣炎症例でHPV感染を示唆する細胞が出現している場合, エストロゲン (プレマリン) 投与により, さらにHPV感染細胞所見が明瞭となることがわかった.
著者
甘崎 佳子 平野 しのぶ 中田 章史 高畠 貴志 山内 一己 西村 まゆみ 吉田 光明 島田 義也 柿沼 志津子
出版者
Journal of Radiation Research 編集委員会
雑誌
日本放射線影響学会大会講演要旨集
巻号頁・発行日
vol.2010, pp.274, 2010

【目的】CTやPETなど放射線技術の進歩は子どもの医療に大きく貢献してきた。その一方で、子どもは放射線の感受性が高く被ばく後の人生も長いなど、将来の発がんリスクが心配されている。しかし、胎児・子ども期における放射線被ばくと発がんリスクに関する詳細な情報は少ない。本研究では、子ども期被ばくによる発がんメカニズムの特徴を明らかにするため、異なる年齢でX線照射して誘発したマウス胸腺リンパ腫において、がん抑制遺伝子<i>Ikaros</i>の変異解析を中心に発がんメカニズムの相違を解析した。<br>【材料と方法】1週齢、4週齢、8週齢のB6C3F1雌マウス(各群50匹)に、X線(0.4, 0.8, 1.0, 1.2Gy)を1週間間隔で4回照射して胸腺リンパ腫を誘発した。さらに、得られた胸腺リンパ腫について染色体異常解析、がん関連遺伝子の変異解析を行った。<br>【結果】(1) 胸腺リンパ腫の発生率は1週齢照射群で高頻度に増加すると予想したが、1.2Gy4回照射で 1週齢は28%、4週齢は36%、8週齢は24%で有意差は認められなかった。(2)染色体異常は、1週齢照射群では12番染色体の介在欠失と不均衡型転座による欠失型異常(<i>Bcl11b</i>領域を含む)が、一方4週齢照射群では11番染色体の介在欠失と12番染色体の不均衡型による欠失型異常がそれぞれ認められた。また、15番染色体のトリソミーは両群に観察された。 (3) 1週齢照射群における11番染色体のLOH頻度(25%)は、4週齢(43%)・8週齢(36%)と比べて低く、逆に19番染色体では高かった(1週齢52%、4週齢17%、8週齢11%)。また、11番染色体にマップされている<i>Ikaros</i>の変異頻度は、1週齢照射群(25%)では4週齢(33%)・8週齢照射群(57%)と比較して低かった。<br>【考察】1週齢照射群では11番染色体の染色体異常やLOH、<i>Ikaros</i>変異は少なく、逆に19番染色体のLOHは高頻度に観察され、4週齢・8週齢照射群とは異なる特徴を示した。すなわち、被ばく時年齢によって胸腺リンパ腫の発がんメカニズムが異なる可能性が示唆された。
著者
山内 一彦 白石 健一郎 檀原 徹
出版者
公益社団法人 東京地学協会
雑誌
地学雑誌 (ISSN:0022135X)
巻号頁・発行日
vol.123, no.5, pp.643-670, 2014-10-25 (Released:2014-11-13)
参考文献数
50

This paper examines changes to the river system and faulting in the Ikachi Basin and surrounding area in the southwestern part of the Chugoku Mountains since the Middle Pleistocene, based of an investigation of the fluvial terrace and tectonic landforms. Fluvial terrace surfaces in the study area are classified into five levels: H, M1, M2, L1, and L2, in descending order. The M1 terrace surface is widely observed in the Ikachi Basin, and there is a narrow band of Sanbe-Kisuki tephra on the top layer of the terrace deposit, suggesting that the surface was formed around 110-115 ka. Aira-Tn tephra is observed in the L2 terrace deposit, indicating that it was formed around 30 ka. The distribution of terrace and deposit indicates the existence of the Paleo-Shiwari River, which differed from the river system existing today. The Paleo-Shiwari River flowed northwestward from the southeastern margin of the Ikachi Basin, and from near Hizumi, westward through the basin. There is a possibility that the upper reaches of the Paleo-Shiwari River reached Yashiro Island. The Paleo-Shiwari River lost its upper reaches as a result of river capture around the current Obatake-Seto in Middle Pleistocene. Furthermore, as a result of continued large-scale uplifting in the downstream area of the Paleo-Shiwari River basin, accompanied by activities of the Hizumi and Oguni faults since the Middle Pleistocene, the height of the riverbed of the Paleo-Shiwari River increased and its riverbed slope became gentle. At the same time, continued large-scale subsidence with faulting from the downstream basin of the Yuu River to Aki-Nada led to a gradual steepening of the riverbed of the Yuu River, and the valley head of the Yuu River along the fracture zone expanded due to erosion. Subsequently, the Paleo-Shiwari River was captured by the Yuu River at the Hizumi depression around 110-115 ka during the formation period of the M1 surface. It is concluded that river capture between the Yuu River and the Shiwari River occurred due to the influence of crustal movements.
著者
甲斐 知恵子 間 陽子 小船 富美夫 斉藤 泉 山内 一也 宮沢 孝幸
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
1997

本研究の目的は、組み換えアデノウイルスを用いることにより、多くの高等動物で汎用できるウイルス感染における自然宿主での細胞性免疫機構の解析法を開発することである。各種動物において以下の様な知見を得た。(1)本研究では、イヌジステンパーウイルス(CDV)膜蛋白(H)遺伝子の組み換えアデノウイルスを作製した。また、CDV-H組み換えアデノウイルスを用いて細胞障害試験を樹立するため、標的となる自己細胞の確立するを試み、皮膚からの細胞株樹立に成功した。その結果、複数のイヌからの樹立に成功し、標的細胞の作製法はほぼ確立した。さらに、その他の条件を決定し、細胞障害試験の確立を試みている。また、組み換えアデノウイルスの発現効率の改良も試みている、(2)細胞障害活性及び液性免疫能を誘導するエピトープが牛疫ウイルスのN蛋白に存在することが明らかとなった。H蛋白の免疫により長期に免疫賦与される事も明らかになった。また、immune-stimulating complex(ISCOM)の利用により、組み換えH蛋白でも細胞性免疫賦与が可能であることが明らかとなった。(3)牛白血病ウイルス(BLV)の主要組織適合性遺伝子複合体(BoLA)クラスII分子には白血病に抵抗性を示すBoLA-DR3アリルが存在することが明らかとなった。羊を用いた接種実験で、これを確認したため、現在BLVの組み換えアデノウイルスを作製して、さらに詳細な解析を試みている。
著者
山内 一也 原田 亮介
出版者
日経BP社
雑誌
日経ビジネス (ISSN:00290491)
巻号頁・発行日
no.1235, pp.124-127, 2004-03-29

答 鳥インフルエンザのウイルスは、本来は野生のカモが持っているウイルスです。ウイルスは腸管の中で増えるため、糞便を介して感染します。インフルエンザのウイルス自体はカモにほとんど病原性を起こさないため、野生のカモとウイルスは共存していると言えるのです。 ところが、カモがニワトリの飼育されている所に飛んできて糞をすると、ウイルスがニワトリに感染してしまう。
著者
真野 俊樹 小林 慎 井田 浩正 山内 一信
出版者
特定非営利活動法人 日本医療マネジメント学会
雑誌
医療マネジメント学会雑誌 (ISSN:13456903)
巻号頁・発行日
vol.4, no.2, pp.329-334, 2003-09-01 (Released:2011-03-14)
参考文献数
16

医療改革についての方向性のひとつは医療機関からの情報公開である。患者と医師間における情報の非対称性の問題は、一般に患者側に発生し、その大きさによって患者が不利益を被る可能性があるが故に問題とされる。一方医療という財においては、例えば年代別、職業別などに、罹患しやすい病気を統計的に知りえても、各個人がいっ、どのような病気にかかるかは予測できないという不確実性がある。平成11年の受療行動調査によると、消費者は入院や外来など医療機関受診の際に「家庭・友人・知人」からの情報を重視しているという。われわれが健常人に行った調査では「友人」による情報を信頼している。ブランドは情報の非対称下でのシグナリング機能を果たし、評判によって無駄な探索を止め、取引費用を削減する効果がある。またブランドは、非排他性、非競合性をもち、外部性も持っために公共財であるという考え方もある。この視点から、医療機関が消費者の選択基準になりえるブランド形成の努力をおこなうことも重要ではないか。
著者
山内一宏
出版者
参議院
雑誌
立法と調査
巻号頁・発行日
no.300, 2010-01-15
著者
山内 一功 太田 勲
出版者
札幌医科大学医学部
雑誌
札幌医学雑誌 = The Sapporo medical journal = The Sapporo medical journal (ISSN:0036472X)
巻号頁・発行日
vol.47, no.6, pp.582-591, 1978-12-01

Changes of mechanical and electrical responses in frog whole sartorius muscle surviving at a constant temperature (20±1℃) in normal Ringer solution, Ringer solution which was supplemented with antibiotics or modified Medium 199 were examined and the following results were obtained. 1. The peak tensions of both twitch and potassium contracture (K-contracture) decreased gradually with the lapse of time after immersion of whole sartorius muscles in normal Ringer solution. Twelve hours after the immersion, the peak tensions of twitch and K-contracture decreased to about 55% and 67% of the control, respectively. Sixteen hours after the immersion, the respective peak tensions decreased to about 10% of the control. However, the peak tension of caffeine contracture did not change up to 12 hours after immersion, whereas it decreased to about 20% of the control 16 hours after immersion. Whole sartorius muscles surviving more than 12 hours in normal Ringer solution assumed a milky color and contained fibers which had a granular appearence. Proliferation of bacteria was observed in normal Ringer solution in which muscle preparations survived more than 12 hours. 2. In whole muscle surviving in Ringer solution with antibiotics (penicillin 50U/ml plus streptomycin 10 μg/ml), the twitch tension decreased gradually with the lapse of time after the immersion and it decreased to about 10% at 24 hours after immersion. On the other hand, the time course of the inhibition of the magnitude of K-contracture tension showed two distinct phases ; the first phase in which the tension was inhibited very slowly and slightly (up to 36 hours after immersion), and the second phase in which tension was inhibited rapidly and completely. In addition, peak tension of caffeine contracture showed no changes up to 24 hours after the immersion whereas it decreased to about 23% of the control 48 hours after the immersion. 3. The magnitude of resting potential and the amplitude of action potential of fibers immersed in Ringer solution with antibiotics for 24 hours were quite similar to those of the control. Fourty-eight hours after the immersion, overshoot of action potential was not observed, although the magnitude of resting potential showed no changes. 4. Twitch was abolished 6 days after immersion of whole muscle in modified Medium 199, whereas K-contracture and caffeine contracture were observed even after 18 days of the immersion. On the basis of these results, the mechanism of inhibition of mechanical responses in surviving whole muscle was discussed.
著者
真野 俊樹 小柳 秀彦 山内 一信
出版者
多摩大学経営情報学部
雑誌
経営・情報研究 多摩大学研究紀要 = Tama University Journal of Management and Information Sciences (ISSN:13429507)
巻号頁・発行日
vol.11, pp.27-34, 2007-03-01

従来は競争が少なかった病院には患者に選ばれる病院になるあるいはなりたい動機は少なかったと思われる。こういった状況下にあったためか、病院におけるマーケティング・コミュニケーションについての研究は少ない。 今回の調査は、日本病院会の会員病院(2621施設)院長とし、調査方法は無記名式郵送質問紙調査、送付は平成13年10月18日、対象は2621病院におこなった。回答者は、病院長(代理を含む)が541名、無記名が16 名であった。 本調査は、病院によるマーケティング・コミュニケーション活動の重要な実態調査といえよう。 In the former days, hospitals were not interested in the marketing communication activities because of shortage of the competition. Then, there are few papers researching about marketing communication activities in Japanese hospitals, This paper has shown some interesting findings
著者
山内 一晃 阿部 浩和
出版者
図学研究
雑誌
図学研究 (ISSN:03875512)
巻号頁・発行日
vol.38, no.2, pp.35-40, 2004

大学は社会で期待される能力を備えた学生育成を教育目的の一とするが、期待される能力の内容や大学での教育成果がどの程度企業で生かされるのか十分把握できているとはいえない。そこで大学教育と企業教育の接点を模索する第1段階として、大手総合建設会社T社の建築設計に関する新社員教育の概要を記録・分析し以下の結果を得た。T社の社員教育は全社的社員教育を推進する「教育研修体系」として整備され、新社員教育はその内の社員や管理職等の階層別教育の一として位置付けられ昭和43年から毎年実施されていること、新社員は1年間大阪で全寮生活を送り、入社後7日間の導入教育を受けたあと3回の配置転換を経験すること、技術系新社員は設計部、見積部、作業所の3部署を経験すること、設計部配属の新社員は配属先の指導担当者からマンツーマン教育を受け、設計部独自のカリキュラムに基づく品質、環境、防災、CG, CAD等の新社員教育を受講し、設計部配属終了時にはそれまでの設計教育の総集編ともいうべきONEDAY EXERCISEなる設計演習を行い、教育成果と設計能力の評価を受けること、この間上長と指導担当者は「新社員教育計画・指導記録表」の作成とフォローを行い次部署に引き継ぐこと、設計部配属の新社員は各種の新社員教育や寮会に出席のため、現業の実務時間は一般社員の約75%程度であること、などが判明した。
著者
山内 一輝 阿萬 裕久 川原 稔
雑誌
ウィンターワークショップ2016・イン・逗子 論文集
巻号頁・発行日
vol.2016, pp.41-42, 2016-01-28

本稿は,オープンソース開発における "開発者" に注目し,各開発者の各ソースファイルに対する貢献度を定量化する基準について提案を行っている.
著者
古渡 礼恵 柿沼 志津子 甘崎 佳子 平野 しのぶ 山内 一己 西村 まゆみ 今岡 達彦 島田 義也
出版者
Journal of Radiation Research 編集委員会
雑誌
日本放射線影響学会大会講演要旨集
巻号頁・発行日
vol.2008, pp.186, 2008

【目的】放射線と化学発がん物質が複合曝露された時に発生するがんにおいて、がん関連遺伝子の変異の蓄積がどのように変化するかについての情報は未だ少ない。そこで、放射線とエチルニトロソウレア(ENU)の複合曝露により胸腺リンパ腫(TL)を誘発し、その<i>Kras</i>の点突然変異の頻度とスペクトラムが単独曝露とどのように異なるか、また、その変化が<i>Ikaros</i>の点突然変異とどのように異なるか比較した。<br>【材料と方法】B6C3F1マウスにX線0.8~1.0Gyを1週間間隔で4週間全身照射、もしくは、ENUを飲料水として100~200ppmを4週間投与した。処理は1)4週齢または8週齢からX線照射、2)4週齢または8週齢からENU投与、3)4週齢からX線照射した後8週齢からENU投与(X to ENU)、4)4週齢からENU投与した後8週齢からX線照射(ENU to X)、5)4週齢からX線照射とENU投与を同時曝露(X+ENU)の条件で行った。<i>Kras</i>ならびに<i>Ikaros</i>の変異は、cDNAのダイレクトシークエンスにより調べた。<br>【結果】TLの発生頻度はX線単独またはENU単独での発生頻度と比較して、(X to ENU)群でも(X+ENU)群でも相乗的に、(ENU to X)群では亜相加的に増加した。<i>Kras</i>の点突然変異はX線単独でもENU単独でも、4週齢から処理したものに比べ、8週齢から処理したもので減少していた。<i>Ikaros</i>では週齢による点突然変異の現れる割合に変化はほとんどなかった。次に(X to ENU)群では、<i>Kras</i>と<i>Ikaros</i>のそれぞれで、点突然変異が(超)相加的に増加した。しかし、(ENU to X)群では、<i>Kras</i>の点突然変異は相加的な増加が見られたが、<i>Ikaros</i>では見られなかった。また、(X+ENU)群では、(X to ENU)群と比較して、<i>Kras</i>の点突然変異は著しく減少したのに対し、<i>Ikaros</i>は増加することがわかった。<br>これらの結果から、発がんの複合曝露効果は、曝露の順番などの曝露様式に依存し、それは、がん関連遺伝子の点突然変異の誘発頻度によって一部説明できると考えられた。