著者
山田 周治 忽那 一代
出版者
大学図書館研究編集委員会
雑誌
大学図書館研究 (ISSN:03860507)
巻号頁・発行日
vol.53, pp.27-35, 1998-08

京都大学附属図書館では、平成8年度から世界へ向けて情報発信を目指した電子図書館システム(京都大学エンサイクロペディア)を計画し、平成10年3月より正式公開した。このシステムの主要な機能の1つである新しいデータベースとして、附属図書館の所蔵する貴重資料の画像テータを含んだマルチメディアデータベースがある。このデータベースの作成を電子図書館の公開に先行して平成8年度科学研究費で実施した経緯を報告する。併せて画像データ作成テスト結果の概要を報告する。
著者
山田 周二
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
地理学評論 Series A (ISSN:18834388)
巻号頁・発行日
vol.93, no.6, pp.443-463, 2020-11-01 (Released:2023-02-19)
参考文献数
18

本研究は,約30 mメッシュのDEMを用いて,北緯60度~南緯60度のすべての陸地にある山頂を抽出した.半径1 kmの円内の中心点が,その円内で最も標高が高い場合に,その中心点を山頂と定義し,その円内の起伏と平均傾斜を計測した.その結果,起伏が1,500 m以上で平均傾斜が45°以上と,きわめて険しい山頂のほとんどは,ヒマラヤ山脈に分布しており,それに次いで険しい,起伏が500 m以上で平均傾斜が35°以上の山頂は,アルプス・ヒマラヤ地域および環太平洋地域,中央アジア,アフリカ大地溝帯といった地殻変動や火山活動が活発な地域に分布することがあきらかになった.また,起伏が500 m以上で平均傾斜が35°未満の山頂は,上記の地域に加えて,大陸縁に分布すること,そして,起伏が500 m未満で平均傾斜が35°以上の山頂は,東アジア南部の塔状カルストに限られること,があきらかになった.
著者
櫻井 聖大 山田 周 北田 真己 橋本 聡 原田 正公 木村 文彦 高橋 毅
出版者
一般社団法人 日本救急医学会
雑誌
日本救急医学会雑誌 (ISSN:0915924X)
巻号頁・発行日
vol.24, no.6, pp.367-373, 2013-06-15 (Released:2013-10-16)
参考文献数
17

熱中症では様々な合併症を来すが,とくに肝機能障害や腎機能障害は頻度が高い。重症例になると意識障害を来し,横紋筋融解やショック,disseminated intravascular coagulation(DIC),多臓器不全などを来す。DICを来す機序は著明な血管内脱水による末梢循環不全や,高熱による直接的な組織障害・血管内皮障害,それらに引き起こされる高サイトカイン血症,腸管粘膜の透過性亢進からのbacterial translocation,また肝障害に伴う凝固因子の産生低下に伴う出血傾向などが原因と言われているが,選択される抗凝固療法については統一された治療法は確立されていない。今回,熱中症に伴うDICに対し,遺伝子組み換えトロンボモデュリン製剤(rTM)で抗凝固療法を行い,良好な成績を得た2症例を経験した。2例とも高齢女性で,非労作性熱射病であった。いずれも高度の意識障害を伴い,肝・腎機能障害を認め,日本救急医学会の急性期DIC診断基準では5点と7点であった。抗凝固療法として,前者ではrTM単剤で,後者ではメシル酸ガベキサートとの併用を行った。いずれも経過良好で,出血性合併症もなく第5病日と第14病日にDICを離脱でき,後遺症なく第57病日と第27病日に軽快転院となった。rTMは熱中症に伴うDICに対して有効な薬剤であると思われた。
著者
芥川 晃也 櫻井 聖大 深水 浩之 松尾 悠史 山田 周 渋沢 崇行 清水 千華子 北田 真己 原田 正公 高橋 毅
出版者
一般社団法人 日本臨床救急医学会
雑誌
日本臨床救急医学会雑誌 (ISSN:13450581)
巻号頁・発行日
vol.24, no.1, pp.76-80, 2021-02-28 (Released:2021-02-28)
参考文献数
10

症例は63歳,男性。1年前より食事時の咽せを自覚していた。誤嚥性肺炎と横紋筋融解症に伴う急性腎障害の加療目的に当院入院となった。抗菌薬投与と連日の透析治療を行い,入院8日目に嚥下内視鏡検査を行ったところ,咽頭後壁の膨隆があり,声門部が視認困難であった。頸椎CTではとくにC2-C4レベルで椎体前面の骨棘形成が顕著で,びまん性特発性骨増殖症(diffuse idiopathic skeletal hyperostosis;DISH)の診断となった。入院時より睡眠時のいびきがあったが,気道狭窄音が目立つようになったため,入院13日目に気管挿管を行い,のちに気管切開を施行した。最終的に頸椎骨搔爬術を行ったことで,上気道の狭窄が解除され気管孔を閉鎖でき,嚥下障害も改善した。DISHはまれな疾患ではなく,頸椎病変を伴うDISHは,嚥下障害や誤嚥性肺炎,上気道狭窄の鑑別疾患として重要である。
著者
深川 智恵 古土井 春吾 高橋 英哲 山田 周子 渋谷 恭之 古森 孝英
出版者
社団法人 日本口腔外科学会
雑誌
日本口腔外科学会雑誌 (ISSN:00215163)
巻号頁・発行日
vol.56, no.10, pp.605-608, 2010-10-20 (Released:2013-10-31)
参考文献数
9
被引用文献数
1

Lemierre syndrome is a potentially life-threatening disease caused by an acute oropharyngeal infection with secondary septic thrombophlebitis of the internal jugular vein, frequently associated with abscess formation in distant organs.We report the case of a 78-year-old woman who received surgical therapy, chemotherapy, and radiation therapy for malignant lymphoma in 2001. She visited our hospital because of a swelling and pain of the left submandibular region in August 2009. The patient was immediately hospitalized to control the pain and infection. PET images showed tracer uptake in the lung. Bilateral multiple septic emboli of the thorax were detected on CT. On the basis of these findings, Lemierre syndrome was diagnosed. The patient was treated with antibiotics intravenously, and surgical drainage was performed. All symptoms improved, and she was discharged after 32 days.
著者
山田 周二
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
地理学評論 Ser. A (ISSN:00167444)
巻号頁・発行日
vol.74, no.11, pp.643-657, 2001-11-01 (Released:2008-12-25)
参考文献数
7
被引用文献数
1

人工的に改変された山地・丘陵地の地形の自然さを定量的に評価するために,大都市(東京,大阪,名古屋)近郊の宅地およびゴルフ場として改変された山地・丘陵地を対象として地形計測を行った.まず,地形改変前および後に作成された2万5千分の1地形図を用いて,起伏E(比高と面積の平方根との比),相対起伏R (垂直方向の凹凸の程度を表す指標),輪郭の等高線のフラクタル次元D (水平方向の凹凸の程度を表す指標)を計測した.地形改変前の,三つの地形量の間には有意な相関があり (r=0.79,n=69, p<0.0001), LogE=-0.31D-0.58LogR-0.56で回帰平面が表された.この回帰式および実際のRおよびDの値から, LogEの計算値を求め,これと実際のLogEとの差を地形自然度と定義した.改変前の山地の地形自然度はゼロに近い値をとり,平均値はゼロ,標準偏差が0.15になった.一方,改変後の山地では,マイナスの値が多くなり,宅地およびゴルフ場では,平均値がそれぞれ-0.20および-0.05になった.このような結果は,地形自然度という尺度が人工的に改変された地形を有効に評価し得ることを示す.
著者
山田 周二
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
日本地理学会発表要旨集 2010年度日本地理学会秋季学術大会
巻号頁・発行日
pp.119, 2010 (Released:2010-11-22)

本研究は,飲料自動販売機と地蔵堂とをとりあげ,小・中学校の社会科で行われる身近な地域学習において,児童・生徒が飲料自動販売機や地蔵堂の分布を調べることによって,どのようなことが学習できるのか,そしてそのような学習はどのような地域で効果的であるか,をあきらかにすることを目的とした. 大阪府のほぼ中心部に位置する大阪市天王寺区と,奈良県との府県境である郊外に位置する柏原市,それらの中間に位置する大阪市平野区の3市区を対象として,路上にみられるすべての飲料自動販売機と地蔵堂を地図化した. 飲料自動販売機は,調査対象とした3市区に合計3932台あり,1小学校区あたり平均96台あった.いずれの市区においても,駅の周辺を中心とした商業・業務用地に多くみられる傾向があり,小学校区ごとにみた自動販売機の密度と商業・業務用地の割合との間には有意な相関がみられた(n=41,r=0.85,p<0.001).市区単位でみると,分布の偏りが明瞭にみられるものの,校区内といった狭い範囲では,明瞭な分布の傾向が読み取れる場合とそうでない場合とがあった.商業・業務用地と住宅地が余り混在することなく分かれて分布する地域では,分布の集中を容易に読み取れることが分かった.このような地域では,校区全体で野外調査を行い,自動販売機の分布図を作成することで,分布の特徴を読み取るといった地理的技能を養うだけでなく,商業・業務用地のような人が集まるところには自動販売機が設置されていることや,校区の地理的な特徴を学習することができる.一方,商業・業務用地が校区全体に広がっていたり,点在したりしている場合には,分布の傾向が容易には読み取れないため,自動販売機の分布からは効果的な学習は望めないだろう. 地蔵堂の分布は,過去の市街地と密接に関係しており,1948年以前の市街地とその周辺に多くみられることが分かった.地蔵堂は,3市区合計で185みられたが,そのうちの59%が1908年以前に市街地であった地域にあり,1948年までに市街化した地域のものも含めると79%に達する.したがって,戦前から市街化していた地域を含む小学校区においては,地蔵堂の分布を調べ,その分布とかつての市街地の分布を表す地図とを重ねることによって,分布の一致を読み取るといった地理的技能を養うことができ,また,その地域の土地利用の変化を学習することができる.ただし,かつての市街地の範囲と小学校区とは必ずしも一致しないため,校区の境界にとらわれずに,かつての市街地を包含する範囲に調査地域を設定した方が効果的な学習ができるであろう
著者
柴田 知世 山田 周歩 山田 哲男 井上 全人
出版者
一般社団法人 日本機械学会
雑誌
日本機械学会論文集 (ISSN:21879761)
巻号頁・発行日
vol.83, no.851, pp.17-00082-17-00082, 2017 (Released:2017-07-25)
参考文献数
16
被引用文献数
1

To make sustainable society come true, product design is required to consider environmental issues such as reduction of resource usage, product disposal, and environmental loads. Many approaches for resolving these issues such as reuse, remanufacturing, and upgradable designs are studied and implemented. To apply these design approaches to product appropriately, a designer has to understand their characteristics and evaluate the product's adaptability for these design options. Hence, this paper evaluates the advantage of these design approaches. The ultimate purpose of this study is proposal of an adaptability evaluation method of product reusability, remanufacturability, and upgradability to support designer's decision making of product or component life cycle options at the early phase of design process. Thus, this paper speculates the appropriate perspectives of these evaluations and proposes conceptual evaluation method based on the viewpoints of society (low environmental load emission), manufacturer (low production cost and high profit), and consumer (low life cycle cost and high performance). Proposed evaluation method evaluates laptop's adaptabilities of aforementioned life cycle options quantitatively and shows that upgrading can satisfy the intents of environmental load emission, production cost, and life cycle cost. In addition, the agendas of this study are emerged. Particularly, evaluation perspectives with respect to product disassemblability, reliability, and pleasurability should be added. Additionally, improving evaluation method that can evaluate multiple perspectives comprehensively is also this study's agenda.
著者
山田 周二
出版者
Tokyo Geographical Society
雑誌
地學雜誌 (ISSN:0022135X)
巻号頁・発行日
vol.110, no.1, pp.79-93, 2001-02-25
被引用文献数
1 1

This study classified Japanese mountains based on mountain ordering using 1 : 500000 topographic maps, and examined the relationships of relief, relative relief and perimeter fractal dimension for the classified mountains. Mountain order was defined in terms of closed contour lines on the topographic map. A set of closed, concentric contour lines defines a first-order mountain. Higher-order mountains can be defined as a set of closed contour lines that contain lower-order mountains and that have only one closed contour line for each elevation. Relief, relative relief and fractal dimension were measured for ordered mountains using personal computer, and were defined as follows : relief <I>E = H/A</I><SUP>1/2</SUP>, where <I>H</I> and <I>A</I> are the height and area of each ordered mountain, respectively; relative relief <I>R</I>= ∑ <I>h<SUB>i</SUB>/H</I>, where <I>h<SUB>i</SUB></I> is the height of the enclosed, lower-order mountains, and represents the degree of vertical roughness of the ordered mountain; fractal dimension was measured for perimeter contour line by the pixel dilation method, and represents the degree of horizontal roughness of the ordered mountain. Japanese mountains were classified into 74 third order mountains and 11 fourth order mountains. The area of a third order mountain varies from 50 to 4712 km<SUP>2</SUP>, and that of a fourth order mountain is 2498 to 15563 km<SUP>2</SUP>. A significant relationship was found among relief <I>E</I>, relative relief <I>R</I>, and fractal dimension <I>D</I> for the ordered mountains (r=0.91, n=85), and can be defined by the expression : <BR>Log<I>E</I>=-a<I>D</I>-bLog<I>R</I>-c<BR>This relationship shows that Japanese mountains have the following morphological characteristics : a high relief mountain has low vertical and horizontal roughness, and a low relief mountain has high vertical and horizontal roughness. These characteristics suggest that slope angle of Japanese mountains converges within a certain range.
著者
櫻井 聖大 山田 周 北田 真己 橋本 聡 原田 正公 木村 文彦 高橋 毅
出版者
一般社団法人 日本救急医学会
雑誌
日本救急医学会雑誌 (ISSN:0915924X)
巻号頁・発行日
vol.24, no.3, pp.132-140, 2013-03-15 (Released:2013-05-29)
参考文献数
22
被引用文献数
1 2

重症感染症ではしばしばdisseminated intravascular coagulation(DIC)を合併することで虚血性の多臓器障害を惹起し,その予後は不良となる。感染症自体のコントロールと適切な抗DIC療法を併せて行うことが重要である。わが国において現在,感染性DICにおいて最も推奨される抗DIC薬はアンチトロンビン(AT)製剤であるが,最近リコンビナントトロンボモデュリン(rTM)製剤の有効性が相次いで報告されている。当院で治療を行った感染性DIC症例に対して後ろ向きに調査し,rTM単独投与群と,rTMとAT併用投与群での臨床効果の比較検討を行った。両群間で患者背景や治療開始時の重症度には有意差はなく,DIC離脱率,7日以内のDIC離脱率,28日後生存率といった予後にも有意差を認めなかった。また血液検査での炎症系マーカー,凝固・線溶系マーカー,日本救急医学会の急性期DIC診断基準のスコア(以下,急性期DICスコア)は,rTM投与により有意に改善したが,rTM単独群とAT併用群の両群間では,その改善の程度に有意差を認めなかった。以上のことから,rTMにATを併用しても必ずしも予後の改善に結びつくとは限らず,rTM単剤でも臨床効果が期待できる可能性があると思われた。
著者
櫻井 聖大 山田 周 北田 真己 橋本 聡 橋本 章子 木村 文彦 原田 正公 高橋 毅
出版者
一般社団法人 日本集中治療医学会
雑誌
日本集中治療医学会雑誌 (ISSN:13407988)
巻号頁・発行日
vol.21, no.6, pp.635-638, 2014-11-01 (Released:2014-11-14)
参考文献数
9
被引用文献数
3

臭化ジスチグミン(ウブレチド®,鳥居薬品)は排尿困難に使用されるコリンエステラーゼ阻害薬である。重篤な副作用としてコリン作動性クリーゼを起こすことが報告され,その使用量は制限されるようになった。ただ,その後もコリン作動性クリーゼの報告は散見される。我々は,重症肺炎とそれに伴う麻痺性イレウスからショックに至った症例を経験した。当初は敗血症性ショックを疑ったが,臭化ジスチグミンを内服していたことと,コリンエステラーゼ活性の著明な低下を伴っていたことから,コリン作動性クリーゼによるショックが考えられた。臭化ジスチグミンはその大半が便中に排泄されることから,麻痺性イレウスのように消化管蠕動が低下している場合には血中濃度が上昇し,コリン作動性クリーゼを起こす可能性があり注意が必要と思われた。
著者
鎮野 宏幸 渡邉 章乃 山田 周平 本橋 慶一 矢口 行雄
出版者
東京農業大学
雑誌
東京農業大学農学集報 (ISSN:03759202)
巻号頁・発行日
vol.53, no.3, pp.233-237, 2008-12-10

2004年6月,東京都世田谷区の街路樹に植栽されていたハナミズキ(Cornus florida L.)の葉に,淡褐色,不整形の病斑を生じ,その上に炭疽病菌と思われる分生子粘塊が観察される病害が発生した。病斑は,はじめ葉の周縁部および中央部が褐色となり,それぞれ不定形に拡大,融合し,その後,葉の全体が褐変後,早期に落葉した。病斑部の分生子層には,無色,単胞,紡錘形で,大きさ11〜14×3.1〜4.2μm(平均13.4×3.8μm)の分生子が形成されていた。分生子は発芽時に褐色,厚膜,棍棒状,大きさ7.7〜11.5×5.1〜7.7μm(平均8.8×5.6μm)の付着器を形成した。また,分離菌を健全なハナミズキに接種した結果,自然発生と同様な病徴が再現された。これらの結果から,本病はColletotrichum acutatum Simmonds ex Simmondsによって引き起こされる病害であることが確認された。本菌によるハナミズキの病害はわが国では未報告であることから,本病をハナミズキ炭疽病と呼称することを提案した。