著者
成田 博実 青木 洋子 出盛 允啓 緒方 克己 津守 伸一郎 金田 礼子 菊池 英維 菊池 武英 黒川 基樹 黒木 康博 田尻 明彦 中野 俊二 楢原 進一郎 西田 隆昭 古結 英樹
出版者
日本皮膚科学会西部支部
雑誌
西日本皮膚科 (ISSN:03869784)
巻号頁・発行日
vol.75, no.1, pp.58-64, 2013-02-01 (Released:2013-04-25)
参考文献数
11

2010 年 4 月 20 日に宮崎県児湯郡都農町で発生した口蹄疫が全県下に拡大蔓延 (発生農場 292カ所, 発生自治体 5 市 6 町) し, 約 29 万頭の家畜が犠牲になった。その防疫作業に伴う皮膚病変について宮崎県内の皮膚科医へのアンケート調査で 50 例を集計できた。年齢は 20~75 歳 (平均 42.0 歳), 男 45 例, 女 5 例であった。発生月は 5 月 17 例, 6 月 22 例, 7 月 7 例, 8 月 1 例と推移した。職種は県内公務員が 32 例と最多であった。疾患は化学熱傷 46 例, 急性結膜炎, 汗疹性湿疹, アトピー性皮膚炎の増悪, 注射針刺傷, 蜂窩織炎, 虫刺症, 毒蛾幼虫皮膚炎が各 1 例, 防疫作業後発症の帯状庖疹 1 例であり, このうち 3 例が 2 疾患, 1 例が 3 疾患を合併していた。46 例の化学熱傷の受傷状況は豚・牛舎の消毒作業 18 例, 作業場所不明の消毒作業 25 例, 埋却作業 2 例, 鶏舎の消毒作業 1 例であった。原因となる化学物質は消石灰 (水酸化カルシウム Ca(OH)2) 23 例, 炭酸ソーダ (炭酸ナトリウム Na2CO3) 4 例, 不明 19 例であった。受傷部位 (重複あり) は顔面 5 例, 上腕 3 例, 前腕 14 例, 手 6 例, 大腿 17 例, 膝 4 例, 下腿 51 例, 足 2 例で, deep dermal burn が多かった。発症機序は非耐水性防護服からの薬液のしみ込み, 袖口や破れからのしみ込み, 発汗による体表面への拡散, さらにはゴム長靴と皮膚との摩擦や股ずれ等による皮膚損傷部で, 薬液が皮膚に浸透し化学熱傷に至ったものと推察した。
著者
福島 卓矢 辻 哲也 中野 治郎 石井 瞬 杉原 進介 佐藤 弘 川上 寿一 加賀谷 斉 田沼 明 関根 龍一 盛 啓太 全田 貞幹 川井 章
出版者
日本緩和医療学会
雑誌
Palliative Care Research (ISSN:18805302)
巻号頁・発行日
vol.18, no.2, pp.143-152, 2023 (Released:2023-05-16)
参考文献数
24

【目的】がん診療連携拠点病院における入院がんリハビリテーション(リハ)治療の詳細を明らかにし,基礎データを確立することである.【方法】質問紙を用いた調査研究であり,リハ専門職種を対象に,施設概要,入院がんリハ実施の有無,Dietz分類,対象疾患,治療内容を調査した.【結果】Dietz分類の回復で最も関わりが多く,対象疾患は肺,大腸,血液,胃,肝・胆・膵がんの順に多かった.大腸や胃がんでは一般病院,血液がんでは大学病院,骨軟部腫瘍ではがん専門病院,口腔・咽頭・喉頭がんでは大学病院およびがん専門病院での実施割合が有意に高かった.治療内容は歩行練習が最も多く,次いで筋力増強練習,基本動作練習,日常生活動作練習,呼吸リハと続いた.呼吸リハにおいては,大学病院および一般病院での実施割合が有意に高かった.【結論】施設特性に応じて入院がんリハが実施されており,これらの効果検証と発展が課題である.
著者
藤原 進 波多野 雄治 中村 浩章
出版者
一般社団法人 日本物理学会
雑誌
日本物理学会誌 (ISSN:00290181)
巻号頁・発行日
vol.77, no.1, pp.35-41, 2022-01-05 (Released:2022-01-05)
参考文献数
44

トリチウム(三重水素,3HあるいはTと表記)は,極めて低いエネルギーのβ線と反ニュートリノを放出する放射性の水素同位体である.自然界では地球に降り注ぐ宇宙線と大気との核反応により生成される.また原子炉でも生成される.生体試験用のトレーサーや蛍光物質を用いたライトなどにも利用されており,高純度のトリチウムは,核融合反応の燃料にもなる.福島第一原子力発電所の処理水中にも存在しており,社会的関心を集めている.トリチウム由来のβ線の飛程は水中や細胞中で数ミクロン程度と短い.そのため,外部被ばくが問題となることはなく,内部被ばくに対する防護が重要となる.我々は,トリチウムが生体分子へ与える影響を計算機シミュレーションで解き明かすことにより,生体分子の損傷機構を明らかにすることを目指している.そこで,計算手法およびシミュレーション精度の確認のため,単純な系で生体分子の損傷速度を定量的に評価する実験技術の開発を進めている.実験では,蛍光顕微鏡を用いたDNA一分子観察法により,トリチウム水中に浮遊するDNAの二本鎖切断メカニズムを定量的に明らかにしつつある.具体的には,滅菌環境下でトリチウム水およびトリチウムを含まない注射用水中におけるDNAの平均長さの経時変化を,蛍光顕微鏡で観察した.その結果,注射用水と比べて高濃度トリチウム水中では,DNA二本鎖切断が速やかに起こることがわかった.一方で,1 kBq/cm3程度のトリチウム濃度では有意な照射効果が見られないことを確認した.トリチウムを含む化合物が生体内に取り込まれると,化合物中のトリチウムがDNA分子中の軽水素と置き換わることがある.このことは,メダカや大腸菌を使った実験で確かめられている.トリチウムに特有の壊変効果として,DNA分子中の軽水素に置換したトリチウムが3Heにβ壊変することによる化学結合の切断が挙げられる.法令による排水中の濃度限度(60 Bq/cm3)におけるトリチウムと軽水素の比はT/H=5×10-13と極めて小さく,置換トリチウムの影響が現れるとは考えにくい.一方で,「どの程度の濃度以上であれば置換トリチウムの影響が顕著になるのか?」という問いに対して,現時点では必ずしも明確な答えはない.そこで我々はトリチウムの壊変効果に着目し,DNAから置換トリチウムが除去されることに伴うDNA部分構造の変化を,分子動力学シミュレーションにより明らかにする.我々の戦略として,まずDNAよりも分子構造の単純な高分子の計算から始め,続いてDNAの計算を行った.高分子の分子動力学シミュレーションの結果,除去される水素の割合が大きいほど,高分子の熱安定性と構造安定性が低下することがわかった.また,二重結合や共役結合の生成など,化学結合の変化を確認することもできた.さらに,テロメア二重らせんDNAの分子動力学シミュレーションの結果,グアニンのアミノ基中の水素が除去されることにより,水素結合が消失し二重らせん構造が崩れる様子を明らかにすることができた.今後は,反応力場を用いた分子動力学シミュレーションにより,β壊変によるDNA二本鎖切断のメカニズムの解明といった展開が期待される.本記事の長さは通常の「最近の研究から」欄記事の規定を超過しておりますが,編集委員会の判断によりこのまま掲載しています.
著者
西原 進吉 荒木 敦子 宮下 ちひろ 山﨑 圭子 岸 玲子
出版者
北海道公衆衛生学会
雑誌
北海道公衆衛生学雑誌 (ISSN:09142630)
巻号頁・発行日
vol.30, no.2, pp.27-40, 2017-03-31

我が国では神経発達障害の子どもが増加傾向にある.近年,殺虫用途等で使用される農薬への曝露がその一因であるとも考えられている.そこで,本稿では,胎児期,乳幼児期,学童期における農薬曝露と,注意欠如/多動性障害を中心とした神経発達への影響に関する近年の研究動向について検討を行うことを目的とした.医学文献データベースPubMedを用いて,有機塩素系,有機リン系,ピレスロイド系,カーバメイト系,ネオニコチノイド系農薬と,注意欠如・多動性障害,不注意,多動,神経発達,行動発達を検索用語として,文献検索を行った.得られた176編の論文から,農薬と神経発達に直接関係する疫学論文40編に焦点をあてて検討した.その結果,有機リン系農薬については,胎児期曝露の影響がみられること,生後曝露の影響は一貫しないこと,有機塩素系農薬についても,胎児期曝露の影響を示す報告が多いことが示された.一方,ピレスロイド系農薬では,胎児期よりも出生後の影響が強い可能性が示唆された.カーバメイト系農薬については,胎児期曝露の影響が示唆されたが,論文数は2編のみであった.ネオニコチノイド系農薬については報告が1編のみであった.精神発達においては,検索内容に関する評価項目が多岐にわたり,また,影響が表出する年齢も異なる可能性があることから,農薬曝露と精神発達の関連についての研究報告数は,現状では不十分であり,さらなる研究の蓄積が望まれる.
著者
原 進 満倉 靖恵 上出 寛子
出版者
Japan UAS Industrial Development Association
雑誌
次世代移動体技術誌 (ISSN:24355453)
巻号頁・発行日
vol.3, no.6, pp.81-90, 2022 (Released:2022-09-07)
参考文献数
8

近年,空飛ぶクルマに関する技術が国内外で盛んに研究されている。しかし,空飛ぶクルマやドローンなどの社会受容性については,まだ十分に研究されていない。社会受容性に関する十分な検討を行っていないと,今後ドローンの産業利用や空飛ぶクルマの普及により到来する「空の産業革命」が健全に浸透せず,新たな社会問題が発生することも予想される。そこで,社会受容性評価の方法として二つのアプローチを組み合わせた方法を提案する。一つはアンケートによる社会心理学的評価である。もう一つは感性アナライザを用いた脳波計測によるリアルタイム評価である。著者らは前報において騒音に対するストレスの有無を判定するために感性アナライザが適用可能であることを,ロータが発生する定常音や金属がキンキンと発生する非定常音など,複数の種類の音源を用いた実験により明らかにした。本研究では,前報と異なり音源を頭上通過する産業用ドローンの飛行音に限定し,その音量を変えながら何度も聞くことにより発生する,アンケート評価と脳波計測によるストレス評価の違いについて明らかにして,将来の社会受容性調査方法の策定に有用な知見を与える。
著者
土田 陽平 齋藤 誠紀 中村 浩章 米谷 佳晃 藤原 進
出版者
日本シミュレーション学会
雑誌
日本シミュレーション学会論文誌 (ISSN:18835031)
巻号頁・発行日
vol.13, no.1, pp.32-36, 2021 (Released:2021-06-15)
参考文献数
12

福島第一原子力発電所の廃炉に伴いトリチウム水の海洋放出が検討されている.また,将来の発電技術として期待されている核融合発電では,トリチウムを燃料として用いる.そのため,トリチウムの生体への影響を詳細に解明することが求められている.我々は,ヒトDNA中の軽水素がトリチウムに置換した際に生じる壊変効果がDNAを損傷するメカニズムを,分子動力学法を用いて解明することを目指している.壊変効果の影響を理解するためには,まずDNA中の各々の軽水素について,トリチウム置換のしやすさを評価する必要がある.そこで本研究では,ヒトDNAテロメア構造のバックボーン中に存在する水素原子を対象に,トリチウム置換のしやすさの指標を得るために分子動力学計算を実施し,各水素の溶媒接触表面積を計算した.計算結果から,バックボーン中の水素原子の中ではH5の水素の溶媒接触表面積が大きいことが判明した.
著者
藤原 進 中村 浩章 阿蘇 司 米谷 佳晃
出版者
京都工芸繊維大学
雑誌
挑戦的研究(萌芽)
巻号頁・発行日
2021-07-09

福島での原発事故において、トリチウム汚染水の処理が社会的関心を集めている。トリチウム被曝では、従来の研究で考慮されてきた直接作用と間接作用に加えて壊変効果が存在するにも関わらず、これまで見落とされてきた。本研究では、トリチウム被曝の第三要素「壊変効果」に着目し、置換トリチウムのβ壊変によるDNA損傷の分子機構を分子シミュレーションにより解明する。具体的には、トリチウムの置換部位を特定するための分子動力学(MD)計算とDNAの壊変効果を解析するための反応力場MD計算の組合せにより、置換トリチウムの壊変効果を解き明かす。さらに、置換トリチウムの壊変効果も含めたGeant4-DNAの開発を進める。
著者
塚原 進 森永 昭
出版者
Japan Human Factors and Ergonomics Society
雑誌
人間工学 (ISSN:05494974)
巻号頁・発行日
vol.5, no.5, pp.340-348, 1969-10-15 (Released:2010-03-11)
参考文献数
4

室温に長時間おいた水と油に同時に手を入れてみると水の方がつめたい. 温度計では同じ温度を示している. 著者らは高感度の輻射温度計を用いて測定した結果, 伝導形の温度計では見られなかった著しい差のあることを見出した. もちろん水の方が低く, 伝導形のもので0℃のとき約8℃の差がみとめられた。このことから手ざわりで温度差のある物質とくに衣料について比較してみると, 輻射量に相当の差があって, ほぼ感覚量に比例しているように判断された. これらの結果から, 温度覚は実は輻射熱によって起こされるものであろうと推定した. この観点から考えると, 温度覚に関するいくつかの問題が, 容易に説明できることがわかった.
著者
井上 孝祐 上原 進 小紫 公也 荒川 義博
出版者
一般社団法人 日本航空宇宙学会
雑誌
日本航空宇宙学会論文集 (ISSN:13446460)
巻号頁・発行日
vol.54, no.627, pp.168-174, 2006 (Released:2006-05-19)
参考文献数
20
被引用文献数
1 4

An experimental study on the energy conversion process of a continuous wave (CW) laser thruster is presented. The effect of the flow parameters on two dominant loss mechanisms of a CW laser thruster was investigated by using a CW CO2 laser with output power of 700W. The laser transmission and radiation from the laser sustained-plasma (LSP) were measured for several flow velocities and pressures, which were independently controlled. CCD camera was employed in order to observe the shape and position of the LSPs. We found that the energy conversion process is optimized when the LSP is in the vicinity of the focal point of the condensing laser beam.
著者
萩原 進
出版者
法政大学経済学部学会
雑誌
経済志林 (ISSN:00229741)
巻号頁・発行日
vol.76, no.3, pp.175-194,図版2p, 2009-03

One of Ichiyo Higuchi's early short novels, Umoregi, portrays the tragic life of a Satsuma potter. The protagonist, Raizo Irie, dreams of becoming a great Satsuma potter, but is too poor to build a pottery atelier. He is a dreamer, who will never earn profits from pottery, so his sister Ocho supports him by working as a maid. One day, Raizo is lucky to meet a wealthy sponsor who was a fellow potter during their apprenticeship. Ocho falls in love with this sponsor. Raizo finally succeeds in creating an excellent Satsuma piece. However, he discovers that the true intent of the sponsor is to make Ocho into a prostitute to get money, and he smashes the Satsuma pottery into pieces. This article analyzes this novel by casting light on Satsuma pottery in the Meiji period.
著者
原 進 鈴木 健太 山田 陽滋
出版者
一般社団法人 日本機械学会
雑誌
日本機械学会論文集 (ISSN:21879761)
巻号頁・発行日
vol.83, no.855, pp.17-00208, 2017 (Released:2017-11-25)
参考文献数
17

Recently, proceeding of the aging society has encouraged research and development of power assist systems. The authors' research group studies on the assist system control using an assist cart as a rollator. The merit of the proposed system is the aging people walk by themselves using the cart as the assisting tool and it helps anti-aging. Most serious problems of the proposed system are the avoidance of fallings and collisions without losing operability. To solve the problem, this paper proposes the remote control system taking operators' safety and operability into account. The remote control has a possibility of the establishment of the cost-effective multiple target control systems by reducing the requirement for each control target system. However, because of the limitation of communication data capabilities, the controller cannot grasp the state of the controlled object completely. To grasp the state and keep the safety, the authors apply an evaluator in the remote control system. It detects the effect of the uncertainty and keeps the controlled object safe. In addition, as an interface for the users to avoid the collisions, this paper applies the stiffness control. Introducing the virtual spring into the control system, the proposed system prevents the controlled object to collide the obstacle, without losing operability. Based on an application example for the one-dimensional assist rollator collision avoidance, this paper reveals the practicality of the proposed system by conducting experiments and the simulations. The result shows the proposed way is one of the effective ways for applying a remote control system to the assist system problem.
著者
石原 進
出版者
静岡大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2010

下水路等の監視のため,多数の無線通信可能なセンサを水路に流し,水路の形状把握や故障発見を行うことを目指したIn-Pipeline Flowing Wireless Sensor Network(PFWSN)のためのセンサノード動作スケジューリング手法,データ回収方法を設計し,シミュレーション評価により改良HEED方式による代表ノード選出と起動・休眠スケジューリング並びにRandom Dropに基づく転送バッファ管理方式が有効であることを確かめた.
著者
菅原 進一 山内 幸雄 水野 雅之 佐野 友紀
出版者
東京理科大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2010

本研究では,綿布団の燻焼に伴う一酸化炭素の生成量,木材を可燃物とする換気支配型燃焼に伴う一酸化炭素の生成量に関するモデルを実験から求め,二層ゾーンモデルの入力とすることで空間の二酸化炭素濃度を予測できることを確認した。また,統計分析から死者発生火災に関する特徴を抽出すると共に対策を整理し,その典型例を取り上げた住宅火災における人命安全評価手法のケーススタディを通して,住警器の連動警報の効果等を分析した。