著者
今井 正司 今井 千鶴子 嶋田 洋徳
出版者
一般社団法人 日本認知・行動療法学会
雑誌
行動療法研究 (ISSN:09106529)
巻号頁・発行日
vol.34, no.1, pp.1-15, 2008-09-30 (Released:2019-04-06)

行動分析的な観点に基づくアセスメントと支援は、児童の行動を環境に適応させる効果的な方法であることが確認されている。しかしながら、従来型の行動アセスメントにおいては、多面的な問題行動を体系化する方法が確立されていないという問題点がある。そこで本研究では、システム構造分析を用いたアセスメント(システム行動分析)を適用し、多面的な問題行動を"反応階層"や"連鎖構造"からとらえることを試みた。その結果、問題行動の多面性を数量的に把握することが可能となり、効率的な支援を行うためのポイントが示された。最後に、従来型の行動アセスメントの知見を参照しながら、本研究で得られた知見の重要性について考察された。
著者
野中 俊介 尾棹 万純 嶋田 洋徳
出版者
日本カウンセリング学会
雑誌
カウンセリング研究 (ISSN:09148337)
巻号頁・発行日
vol.52, no.2, pp.87-98, 2019-10-31 (Released:2022-02-19)
参考文献数
49

ひきこもり支援の初期段階においては,家族を介して間接的に支援せざるを得ないことが多い。 しかしながら,家族を対象とした心理的支援のどのような要因がひきこもり状態の改善に影響を及ぼすのかは明らかにされているとはいいがたい。本論考の目的は,ひきこもり者の家族を対象とした心理的支援を系統的に展望し,どのようなアプローチがひきこもり状態の改善に影響を及ぼすのかを予備的に検討することであった。文献収集においては,心理的支援の前後でひきこもり状態の改善を検討しており,日本語または英語でピアレビュージャーナルに公刊されていること,ひきこもり者の家族を対象としていること,という条件を満たす心理的支援の10本の研究を分析対象とした。χ2分析の結果,家族を対象とした心理的支援手続きのうち,「対応レパートリーの拡充」または「家族内相互作用の変容」を含む場合は含まない場合よりも,ひきこもり改善を示す者が多いことが明らかにされた。今後は,対応レパートリーや家族内相互作用に焦点を当てたアセスメントおよび介入研究を実施して知見を蓄積し,改善プロセスを明らかにする必要がある。
著者
五十嵐 友里 嶋田 洋徳
出版者
一般社団法人 日本認知・行動療法学会
雑誌
行動療法研究 (ISSN:09106529)
巻号頁・発行日
vol.34, no.2, pp.149-161, 2008-05-31 (Released:2019-04-06)

本研究の目的は、社会不安におけるpost-eventprocessing(PEP)と解釈の関連を検討することであった。社会不安傾向高・低群にスクリーニングされた計12名の大学生は、スピーチが課される実験に参加した。実験参加者はスピーチの後と実験3日後に、聞き手の意図的に操作された行動に対する解釈について回答した。加えて、実験3日後にPost-EventProcessingQuestionnaire(PEPQ)へ回答した。群、測定時期を独立変数、ネガティブな解釈の生起率を従属変数とし、抑うつ傾向得点を統制した共分散分析を行った結果、高群におけるネガティブな解釈の生起率は時間とともに増加していた。PEPQについて群を独立変数としたt検定を行ったところ、高群において得点が有意に高かった。したがって、PEPが3日後の解釈に影響を与えていたことが示された。
著者
佐藤 寛 嶋田 洋徳
出版者
一般社団法人 日本認知・行動療法学会
雑誌
行動療法研究 (ISSN:09106529)
巻号頁・発行日
vol.32, no.1, pp.31-44, 2006-03-31 (Released:2019-04-06)
被引用文献数
1

本稿では、児童の抑うつに対する認知行動療法(CBT)に関する研究の動向を整理し、考察することを目的とした。本稿において、一定の割合の児童が抑うつの問題を示しており対応策の整備が急務であることと、抑うつを示す児童に対してはCBTの効果が実証されており、有効な治療法として期待できることが述べられた。また、解決されるべき課題として、(1)わが国の児童の抑うつに関する疫学的データが十分ではないこと、(2)臨床対象者に対するCBTの有効性を検討した研究は2編しか公刊されておらず、臨床対象者への効果についてはまだ明確ではないこと、(3)良好なデザインを用いた事例報告例がきわめて少ないこと、(4)プログラムの内容は成人向けのものをそのまま援用しており、理論的背景や介入としての効果を発達的観点から検証していく必要があること、(5)治療効果に作用する要因を特定し、その機能を明らかにする必要があること、といった点が議論された。
著者
今井 千鶴子 今井 正司 嶋田 洋徳
出版者
一般社団法人 日本女性心身医学会
雑誌
女性心身医学 (ISSN:13452894)
巻号頁・発行日
vol.12, no.1-2, pp.309-316, 2007-04-30 (Released:2017-01-26)

本研究の目的は,心身ともに健康な女子大学生を対象に,不安感受性(anxiety sensitivity)が痛み経験(痛みの閾値,痛みの耐性の程度,痛みの主観的評価,痛みへの恐怖感,痛みへの認知的対処方略)に及ぼす影響について実験的に検討することであった.実験参加者31名は,日本語版不安感受性尺度によって,不安感受性低群(n=12)ならびに不安感受性高群(n=19)に分けられ, 3℃の冷水に手を浸す課題(コールドプレッサーテスト)に取り組むことが要求された.コールドプレッサーテスト中に閾値,耐性の程度の測定を行うとともに,コールドプレッサーテスト終了後には,ペインスケール(痛みの主観的評価),多面的痛み尺度(痛みへの恐怖感),日本語版coping strategy questionnaire (痛みへの認知的対処方略)を実施した.その結果,不安感受性高群は不安感受性低群に比べて,痛みの主観的評価が高いことや,自分自身を励ますといった肯定的な自己教示の対処方略を多く用いていることが示された.以上の結果から,不安感受性は痛みの主観的評価や痛みへの認知的対処方略に影響を与える重要な変数であることが示唆された.
著者
飯島 有哉 上村 碧 桂川 泰典 嶋田 洋徳
出版者
一般社団法人 日本健康心理学会
雑誌
Journal of Health Psychology Research (ISSN:21898790)
巻号頁・発行日
vol.33, no.2, pp.103-114, 2021-03-15 (Released:2021-03-13)
参考文献数
33
被引用文献数
1

This study (1) developed the Japanese version of the Inventory of Statements About Self-injury (ISAS), a tool for assessing the functions of nonsuicidal self-injury (NSSI), and (2) classified NSSI in adolescents based on its functions. We administered a questionnaire to a community sample and gathered 592 responses, including those of 267 undergraduates who had experienced NSSI. The results of factor analysis indicated that the Japanese version of the ISAS was different from the original and was composed of three factors: “Distress coping functions,” “Interpersonal influence functions,” and “Identity maintenance functions.” Cluster analysis of the Japanese version of the ISAS scores indicated four clusters: “Habitual cluster,” “Distress coping cluster,” “Overlapped identity maintenance cluster,” and “Overlapped interpersonal influence cluster.” Each cluster’s clinical features indicated that the more the functions overlapped, the more severe were risks of suicide, anxiety, and depression. These results indicated that the significance of NSSI functions’ assessment was related to their overlap. These results suggested the usefulness of the functional approach to treatment.
著者
金 外淑 嶋田 洋徳 坂野 雄二
出版者
一般社団法人 日本心身医学会
雑誌
心身医学 (ISSN:03850307)
巻号頁・発行日
vol.38, no.5, pp.317-323, 1998-06-01 (Released:2017-08-01)
参考文献数
12
被引用文献数
2

慢性疾患患者におけるソーシャルサポートを測定する尺度を作成し, 患者の外的要因であるソーシャルサポート, および内的要因である健康行動に対するセルフ・エフィカシーが心理的ストレス反応に及ぼす影響を検討した.慢性疾患患者から収集された項目に基づいて行われた因子分析の結果, 「日常生活における情動的サポート」と「疾患に対する行動的サポート」の2因子からなるソーシャルサポート尺度が作成された.また, ストレス反応を基準変数, サポートとセルフ・エフィカシーを説明変数としたパス解析を行った結果, ソーシャルサポートは直接ストレス反応を軽減するのではなく, セルフ・エフィカシーを介してストレス反応を軽減していることが示された.
著者
野村 和孝 安部 尚子 嶋田 洋徳
出版者
日本犯罪心理学会
雑誌
犯罪心理学研究 (ISSN:00177547)
巻号頁・発行日
vol.52, no.1, pp.1-15, 2014

<p>本研究の目的は,集団認知行動療法 (CBGT) に基づく形式,および薬物依存からの回復者が主導するself-helpミーティング (SHM) に基づく形式の薬物依存離脱指導に参加することが,覚せい剤使用者の再使用リスクに及ぼす影響について検討することであった。累犯刑務所に服役しており,覚せい剤使用のため薬物依存離脱指導対象となった者をCBGT群 (<i>n</i>=19),SHM群 (<i>n</i>=10),およびwaiting list群 (<i>n</i>=23) に割り振り,刑事施設における薬物依存症者用評価尺度(山本ほか,2011; C-SRRS)を用いて検討を行った。その結果,CBGT群のみ,薬物依存離脱指導の実施前後において「薬害・犯罪性の否定」因子得点が有意に減少していることが確認された。また,薬物依存離脱指導の前後におけるC-SRRSの下位因子得点の変化量とデモグラフィック項目(年齢,IQ, 施設入所回数,暴力団組織への関与の有無)の関連性を検討した結果,CBGT群において,年齢が低い者,また入所回数が少ない者ほど,「薬害・犯罪性の否定」因子が改善していることが示された。一方で,SHM群においては,IQの低い者ほど「薬害・犯罪性の否定」因子が改善していることが示された。これらのことから,「薬害・犯罪性の否定」因子の強さの結果として,覚せい剤再使用に至る可能性の高い者には,CBGTに基づく形式を実施すること,そして年齢,IQ, 施設入所回数に基づくアセスメントに応じてSHMに基づく形式を併用することが肝要であると考えられる。</p>
著者
野村 和孝 山本 哲也 林 響子 津村 秀樹 嶋田 洋徳
出版者
一般社団法人 日本認知・行動療法学会
雑誌
行動療法研究 (ISSN:09106529)
巻号頁・発行日
vol.37, no.3, pp.143-155, 2011

本研究の目的は、性加害行為経験者を対象とした認知行動療法的治療プログラムを構成する心理社会的要因が、性加害行為抑止効果に及ぼす影響についてメタ分析を用いた検討を行うことであった。性加害行為抑止を目的とした認知行動療法的治療プログラムを心理社会的要因の構成に基づき分類したところ、セルフ・マネジメントの有無に基づく分類がなされた。セルフ・マネジメントの有無が性加害行為抑止に及ぼす影響についてメタ分析を行った結果、性的嗜好、歪んだ態度、社会感情的機能、リラプス・プリベンションから構成される治療プログラムの性加害行為抑止効果が確認された一方で、ストレスマネジメントなどのセルフ・マネジメントの向上を目的としたアプローチの手続き上の工夫の必要性が示唆された。
著者
大竹 恵子 島井 哲志 嶋田 洋徳
出版者
一般社団法人 日本健康心理学会
雑誌
健康心理学研究 (ISSN:09173323)
巻号頁・発行日
vol.11, no.2, pp.37-47, 1998-12-25 (Released:2015-03-04)
参考文献数
26
被引用文献数
4 3

The present study was to investigate the emotion and behavioral coping strategies in elementary school children, and the relationship between stress responses and social support. The survey about coping, and subjective symptoms and perceived social support were conducted with 712 (395 boys and 317 girls) upper level elementary school children. The results showed that: 1) Children frequently used emotional and behavioral coping strategies in stress situations. 2) Six coping strategies were found by factor analysis, i.e., problem solving, behavioral avoidance, distraction, seeking social support, cognitive avoidance, and emotional avoidance, 3) Children who frequently used behavioral avoidance showed the highest scores of stress responses, 4) Boys who chose emotional avoidance were easily tired and irritable. These results suggested that it is important for the health of school children to have emotional and behavioral coping strategies, and the approach / avoidance conceptualization of coping help to clarify the ways in which children cope. Finally, it is suggested that further research about the relationship with coping strategies and health in school children is necessary in order to develop stress management education.