著者
宮村 実晴 角田 泰造 藤墳 規明 本田 良行
出版者
THE PHYSIOLOGICAL SOCIETY OF JAPAN
雑誌
The Japanese Journal of Physiology (ISSN:0021521X)
巻号頁・発行日
vol.31, no.3, pp.423-426, 1981 (Released:2011-06-07)
参考文献数
8
被引用文献数
1

Ventilatory response to CO2 in the Ama (Kachido) was determined by the CO2 rebreathing method in the beginning (March) and during (September) harvest season.It was found that mean slopes of the ventilatory response curve in March and September were 0.76 and 0.73 liters/(min⋅m2⋅mmHg), respectively, this difference being insignificant.
著者
升田 吉雄 吉田 明夫 林 文明 佐々木 健 本田 良行
出版者
THE PHYSIOLOGICAL SOCIETY OF JAPAN
雑誌
The Japanese Journal of Physiology (ISSN:0021521X)
巻号頁・発行日
vol.32, no.3, pp.327-336, 1982 (Released:2011-06-07)
参考文献数
25
被引用文献数
14 19

The steady-state ventilatory responses to hypercapnia and hypoxia in 7 assisted breath-hold divers (Funado) were compared with those in 7 normal sedentary controls.Ventilatory response to hypercapnia was measured from the slope of the hyperoxic VN-PETCO2 line, where VN was normalized minute ventilation using the allometric coefficient and PETCO2 end-tidal PCO2. The slope of this line in the Funado (1.48±0.54 liters·min-1·Torr-1) was significantly less than in the control (2.70±1.08 liters·min-1·Torr-1)(p<0.025). On the other hand, hypoxic sensitivity estimated by hyperbolic and exponential mathematical equations was not found to be significantly different between the two groups, although estimated increments in ventilation using the hyperbolic equation exhibited significantly lower response in the Funado than in the control only when PETO2 decreased lower than 50 Torr (p<0.05).These findings in the Funado were different from our previous observations obtained in unassisted breath-hold divers (Kachido), in whom no obvious attenuations in CO2sensitivity were seen. This difference was assumed to be derived from more hypercapnic and hypoxic conditions produced in the Funado than in the Kachido during diving activities.
著者
升田 吉雄 吉田 明夫 林 文明 佐々木 健 本田 良行
出版者
THE PHYSIOLOGICAL SOCIETY OF JAPAN
雑誌
The Japanese Journal of Physiology (ISSN:0021521X)
巻号頁・発行日
vol.31, no.2, pp.187-197, 1981 (Released:2011-06-07)
参考文献数
21
被引用文献数
22 26

The ventilatory responses to hypoxia and hypercapnia of 5 Amas (Kachido) were compared with those of 5 controls of similar ages, physical characteristics and lung volumes. The responses to hypoxia and hypercapnia were analyzed by the equations originally proposed [a] by Lloyd et al. and [b] by Kronenberg et al. as follows:[a] VN=(PCO2-B')·D·(1+A/PO2-C) +VB'.[b] VN=(PCO2-B')·D·(1+R0·exp (-k·PO2)) +VB'.The CO2-response slope in hyperoxia, D, of the Ama (1.820±0.441 liters·min-1·Torr-1) was slightly higher than that of the control (1.148±0.586 liters·min-1·Torr-1), but the difference was not significant. However, the slope of CO2-response in hypoxia at PETO2=44 Torr, S44, was almost the same in the two groups (Ama, 1.822±0.689 liters·min-1·Torr-1; control, 1.742±0.902 liters·min-1·Torr-1). The ratio of S44 to D was significantly lower (p<0.05) in the Ama (1.039±0.377) than in the control (1.529±0.249). Comparing the hypoxic response in terms of the ventilation ratio (VR), the elevation of ventilation with augmentation of hypoxia in the Ama was exceeded by that in the control.Thus, it was suggested that the difference in the ventilatory response to hypoxia between the Ama (Kachido) and the control may have been derived from the respiratory adaptation of the Ama (Kachido) acquired by their daily diving activities.
著者
本田 良行 林 文明 吉田 明夫 升田 吉雄 佐々木 健
出版者
THE PHYSIOLOGICAL SOCIETY OF JAPAN
雑誌
The Japanese Journal of Physiology (ISSN:0021521X)
巻号頁・発行日
vol.31, no.2, pp.181-186, 1981 (Released:2011-06-07)
参考文献数
15
被引用文献数
3 5

Relative contributions of chemical and non-chemical respiratory stimulations to breath-holding time (BHT) were examined in assisted (Funado) and unassisted (Kachido) breath-hold divers (Ama). In the Funado the magnitude of the chemical contribution was reduced, though statistically not significant. On the other hand, in the Kachido no difference in chemical contribution was seen from the control. This was considered to be due to the fact that ventilatory response to CO2 was reduced in the Funado, but not in the Kachido. Despite the decreased contribution of CO2 drive to BHT, absolute BHT in the Funado was not prolonged. This may be related to sensitization of the respiratory centers to non-chemical stimulation. Such adaptation would be effective for preventing the danger of losing consciousness in the Funado who face extreme hypoxia on returning to the surface from a dive.
著者
合田 明生 佐々木 嘉光 本田 憲胤 大城 昌平
出版者
東海北陸理学療法学術大会
雑誌
東海北陸理学療法学術大会誌
巻号頁・発行日
vol.28, 2012

<b>【目的】 </b>近年、運動が認知機能を改善、または低下を予防する効果が報告されている。運動による認知機能への効果を媒介する因子として、脳由来神経栄養因子(Brain-derived Neurotrophic Factor;BDNF)が注目されている。BDNFは、中枢神経系の神経活動によって神経細胞から刺激依存性に分泌される。そこで本研究では、BDNFと交感神経活動の関係に着目し、運動ストレスによる交感神経活動が、神経活動亢進を介して中枢神経系におけるBDNF分泌を増加させる要因であると仮説を立てた。よって本研究の目的は、健常成人男性を対象に、運動の前後でBDNFを測定し、運動が交感神経活動を亢進させることで、中枢神経系の神経活動を引き起こし、末梢血流中のBDNFを増加させるという仮説を検証することである。その結果から、運動によるBDNF分泌メカニズムの解明の一助とすることを最終目標とする。<br><b>【方法】 </b>健常成人男性10名を対象に、30分間の中強度有酸素運動(最高酸素摂取量の60%)を実施した。運動の前後で採血を実施し、末梢血液中のBDNF、ノルアドレナリン(Noradorenaline:NA)を測定した。運動中の交感神経活動指標としてNAを用いた。また運動中の中枢神経活動指標として、前頭前野領域の脳血流量を用いた。以上の結果から、運動前後のBDNF変化量、交感神経活動の変化(NA)、大脳皮質神経活動の変化(脳血流量)の関連性を検討した。各指標の正規性の検定にはShapiro-wilk検定を用いた。血液検体の運動前後の比較には、対応のあるT検定を用いた。各指標の相関の分析には、Pearsonの相関係数を用いた。いずれも危険率5%未満を有意水準とした。<br><b>【結果】 </b>中強度の有酸素運動介入によって、10人中5名では運動後に血清BDNFが増加したが、運動後のBDNFの値はバラつきが大きく、運動前後のBDNF量に有意な差は認められなかった(p=.19)。またBDNF変化量と交感神経指標の変化の間(BDNF-NA r=.38, p=.27)、中枢神経活動指標と交感神経指標の変化の間(脳血流量-NA r=-.25, p=.49)、BDNF変化量と中枢神経活動指標の変化の間(BDNF-脳血流量 r=-.16, p=.66)には有意な相関は認められなかった。<br><b>【考察】 </b>本研究では、健常成人男性を対象に、30分間の中強度運動の前後でBDNFを測定し、運動が交感神経活動を亢進させることで、中枢神経系の神経活動を引き起こし、末梢血液中のBDNFを増加させるという仮説の検証を行った。その結果、中強度の運動介入によって、10人中5名は運動後の血清BDNF増加を示したが、運動前後のBDNF量に有意な差は認められなかった。この要因として、刺激依存性のBDNF分泌を障害するSNP保有が考えられた。また、BDNF変化量と交感神経指標の変化の間、交感神経指標と中枢神経活動指標の変化の間、BDNF変化量と中枢神経活動指標の変化の間には、有意な相関は認められなかった。この要因として、交感神経活動が急性BDNF増加に直接的には関与しないことが考えられる。<br><b>【まとめ】 </b>健常成人男性における30分間の中強度有酸素運動は、末梢循環血流中のBDNFを有意に増加させず、運動によるBDNF変化には、交感神経活動や中枢神経活動は関連しないことが示唆された。
著者
本田正美
雑誌
第75回全国大会講演論文集
巻号頁・発行日
vol.2013, no.1, pp.487-488, 2013-03-06

2000年のIT戦略本部の設置以来、日本政府は電子政府政策を推進してきた。IT戦略本部が中心となって、2001年に「e-Japan戦略」が策定されて以降、2010年の「新たな情報通信技術戦略」や2012年の「電子行政オープンデータ戦略」に至るまで、電子政府に関わる戦略が策定されてきた。本研究では、それらの戦略に基づき推進されてきた日本の電子政府政策を紐解き、電子政府政策がインフラの整備からインフラを利活用したサービスの開発、そして、サービス提供基盤の開放へと各段階を辿ってきたことを示す。この作業を通じて、ICTの普及に代表される情報社会の進展に対して、政府が如何なる対応を図ってきたのか、その説明を与えたい。
著者
本田 泰寛 小林 一郎 星野 裕司
出版者
Japan Society of Civil Engineers
雑誌
土木史研究論文集 (ISSN:13495712)
巻号頁・発行日
vol.26, pp.1-8, 2007-06-15 (Released:2010-06-04)
参考文献数
12

This study suggests creating ‘ Extinct Structure History’ as a field of bridge history. For the purpose of establishing its methodology, in this paper, a case study on the bridge construction of the Hennebique Company is carried out. For the reason a structure becomes no longer useful, there are a variety of changes of conditions, that is, designing processes, construction processes, etc. However, in the process of realization, we can see some creativity based on a resolution to complete the extinct structures. The Extinct Structure History aims to clarify the originality of the structure and the creativity of eneineer.
著者
橋本 みどり 高橋 守 長谷川 喜弘 本田 泰人
出版者
特定非営利活動法人 日本呼吸器内視鏡学会
雑誌
気管支学 (ISSN:02872137)
巻号頁・発行日
vol.35, no.1, pp.66-70, 2013-01-25 (Released:2016-10-29)
参考文献数
14

背景.気管支鏡検査中の急性肺水腫は重篤な合併症の一つである.症例. 40歳女性.抗菌薬にて肺炎が軽快しないため当科に転院.気管支鏡検査を施行したが,気管支内腔を観察し終えた頃から,多量の血性泡沫状痰の喀出と著明な低酸素血症を認めた.胸部単純X線写真で肺水腫と診断し,呼気終末陽圧換気(positive endexpiratory pressure ventilation : PEEP)を伴う人工呼吸管理を開始,ステロイドパルス療法,利尿剤投与にて翌日には抜管した.入院時のマイコプラズマ抗体価は80倍で, 2週間後に640倍に上昇しており,マイコプラズマ肺炎と診断した.結論.急性肺水腫は,頻度は多くないが致死的な気管支鏡検査時の合併症であり,気管支鏡検査施行時には緊急時を想定した十分な準備が必要である.
著者
本田 知之
出版者
日本ウイルス学会
雑誌
ウイルス (ISSN:00426857)
巻号頁・発行日
vol.65, no.1, pp.145-154, 2015
被引用文献数
2

ボルナ病ウイルス(Borna disease virus: BDV)は,強い神経指向性を持ち,中枢神経系へ持続感染するマイナス鎖RNAウイルスである.自然感染した動物では,致死性脳炎から軽微な神経症状まで,様々な神経症状を呈する.BDV感染による病原性発現の分子メカニズムについては,未だ不明な点が多い.細胞非傷害性であるBDVの病原性は,必ずしもウイルス量に相関せず,感染細胞の質的変化・機能異常によるものと考えられる.これは多くの細胞傷害性ウイルスの病原性がウイルス量と相関するのと大きく異なる.本稿では,BDV感染による病原性発現機構について,私たちが見出した2つの現象を紹介する.グリア細胞は,BDV Pタンパク質発現により,周辺のIGFシグナルの異常を引き起こし,BDV感染病態を誘導する.一部の感染細胞では,BDV mRNAの逆転写と宿主ゲノムへのインテグレーションが起こる.この挿入配列は,BDVタンパク質のバランス変化,BDVを認識するpiRNA産生,周辺遺伝子の発現変化などを引き起こしうる.BDV感染動物では,これらが複雑に絡み合い,様々な症状を呈しているものと考えられる.
著者
本田 光子
出版者
美術史學會
雑誌
美術史 (ISSN:0021907X)
巻号頁・発行日
vol.59, no.1, pp.98-112, 2009-10
著者
豊島 めぐみ 梶村 順子 渡辺 敦光 本田 浩章 増田 雄司 神谷 研二
出版者
Journal of Radiation Research 編集委員会
雑誌
日本放射線影響学会大会講演要旨集
巻号頁・発行日
vol.2007, pp.150, 2007

Rev1はDNAポリメラーゼYファミリーに属する損傷乗り越えDNA合成酵素である。Rev1は損傷乗り越え修復において中心的な役割をしていると考えられているが、発がんへの関与は、未だ解明されていない。これまで、われわれの研究室ではRev1の生化学的解明を行ってきた。今回我々は、Rev1トランスジェニックマウスを作成し、発がんにおける役割について解析を行った。<BR>6週齢のC57BL/6の野生型、Rev1トランスジェニックマウスに、N-methyl-N-nitrosourea (MNU)50mg/ kgを二度にわたり、腹腔内投与した。その後、終生観察し、発がん頻度、生存率について、野生型と比較した。<BR>Rev1トランスジェニックマウス雌においては100日以内から胸腺リンパ腫がみられ始めた。トランスジェニックマウス雌では、野生型と比較して早期に、かつ高頻度で胸腺リンパ腫の発生がみられた。一方雄では、小腸腫瘍の頻度が有意に増加していた。<BR>これらの知見は、Rev1は発がんに関与していることを示唆するものである。現在、更なる機構解明を行っている。
著者
笹谷 めぐみ 徐 衍賓 本田 浩章 濱崎 幹也 楠 洋一郎 渡邊 敦光 増田 雄司 神谷 研二
出版者
Journal of Radiation Research 編集委員会
雑誌
日本放射線影響学会大会講演要旨集
巻号頁・発行日
vol.2011, pp.44, 2011

放射線の重大な生物影響の1つに発がんがある。広島長崎の原爆被ばく者の疫学研究から、放射線が発がんリスクを増加させることが明らかにされているが、100mSv以下の低線量域においては有意な増加は得られていない。放射線発がんの分子機構の解明は、発がんのリスク評価につながると考えられているが、放射線照射後の細胞内で誘発された損傷がどのように発がんに結びつくかは明らかではない。我々は、放射線発がんの分子機構を解明するために、実験動物モデルを用いてより単純化した系での解析を行うことを試みた。実験動物モデルとして、修復機構の1つである損傷乗り越えDNA合成に着目し、その中で中心的な役割を担うRev1を過剰発現するマウスを作成し、発がん実験を行った。また、ヒト家族性大腸ポリポーシスのモデルマウスであるAPC<SUP>Min/+</SUP>マウスを用いて掛け合わせを行った。研究の先行している化学発がん実験結果や、放射線分割照射により誘発された胸腺リンパ腫を用いた解析から、がん抑制遺伝子であるikaros領域の欠失および、それに伴うikarosスプライシングバリアントの出現が放射線分割照射における特徴的な損傷として検出された。損傷乗り越えDNA合成機構の異常は、このikarosスプライシングバリアントの出現頻度に寄与していると示唆される結果を得ている。また、損傷乗り越え合成機構の異常は、APC<SUP>Min/+</SUP>マウスモデル系における自然発生腸管腺腫を有意に増加させる結果が得られ、損傷乗り越えDNA合成機構がゲノムの安定性を維持するために機能していることが明らかになった。今回はこれらの結果について報告したい。
著者
土佐 光司 本田 秀行 磯野 美香
出版者
環境技術学会
雑誌
環境技術 (ISSN:03889459)
巻号頁・発行日
vol.39, no.8, pp.464-470, 2010-08-20 (Released:2011-10-11)
参考文献数
23

貯水槽材料が水質に及ぼす影響の評価を目的に,ベイヒバ,スギ,FRPおよびステンレス製模型水槽に水道水および模擬水道水を貯水し,水質変化を測定した.ステンレスおよび FRP貯水槽では,測定した全水質項目(pH,SS,色度,亜硝酸態窒素,硝酸態窒素,残留塩素,トリハロメタン,大腸菌,大腸菌群,一般細菌および従属栄養細菌)で貯水後も水道水質基準が満たされた.模型木製貯水槽における塩素消費速度は,単位貯水量当たりの木製貯水槽と水の接触面積と相関があった.本研究で得られた塩素消費速度を用いて実規模木製貯水槽における残留塩素消費について検討した結果,実規模木製水槽の残留塩素半減期は4日程度であり,通常の貯水では十分な残留塩素が確保できると推定された.したがって,実規模木製貯水槽では,適正な管理を行うことにより,水道水質基準を満たせると推察された.
著者
根本 理 本田 智明 高橋 誠 竹内 正人 杉山 喜則
出版者
岩手県立大学総合政策学会
雑誌
総合政策 (ISSN:13446347)
巻号頁・発行日
vol.9, no.1, pp.35-47, 2007-12

巣外育雛期初期(巣立ち後1ヶ月間)のイヌワシAquila chrysaetosの幼鳥の生存にとって重要な親鳥からの餌の受渡状況を解明するため、2000年と2002年に福島県の同じ営巣地から巣立った幼鳥各1羽を対象に目視調査による巣外育雛期初期の餌受渡状況調査結果とビデオ撮影による巣内育雛期後期(巣立ち前10日間)の餌搬入状況調査結果との比較を行った。その結果、餌受渡回数で評価した場合、幼鳥は巣内育雛期後期と同様に巣外育雛期初期もその生存に必要な餌を親鳥からの受渡に依存していることが明らかになった。餌受渡および同じ幼鳥を対象に分析した幼鳥の飛翔能力の発達状況のそれぞれの解析結果から総合的に考察すると、ハンティング能力が未発達な巣外育雛期初期の幼鳥の生存を確保するためには、親子関係が維持できるように、この時期に幼鳥の中心的利用エリア(営巣地から半径1.2kmの範囲)で工事などを行う場合には、巣内育雛期の親鳥に対する保護対策に準じた保護対策を講じることが必要であると考えられた。
著者
根本 理 本田 智明 高橋 誠 竹内 正人 杉山 喜則
雑誌
総合政策 = Journal of policy studies (ISSN:13446347)
巻号頁・発行日
vol.9, no.1, pp.35-47, 2007-12-01

巣外育雛期初期(巣立ち後1ヶ月間)のイヌワシAquila chrysaetosの幼鳥の生存にとって重要な親鳥からの餌の受渡状況を解明するため、2000年と2002年に福島県の同じ営巣地から巣立った幼鳥各1羽を対象に目視調査による巣外育雛期初期の餌受渡状況調査結果とビデオ撮影による巣内育雛期後期(巣立ち前10日間)の餌搬入状況調査結果との比較を行った。その結果、餌受渡回数で評価した場合、幼鳥は巣内育雛期後期と同様に巣外育雛期初期もその生存に必要な餌を親鳥からの受渡に依存していることが明らかになった。餌受渡および同じ幼鳥を対象に分析した幼鳥の飛翔能力の発達状況のそれぞれの解析結果から総合的に考察すると、ハンティング能力が未発達な巣外育雛期初期の幼鳥の生存を確保するためには、親子関係が維持できるように、この時期に幼鳥の中心的利用エリア(営巣地から半径1.2kmの範囲)で工事などを行う場合には、巣内育雛期の親鳥に対する保護対策に準じた保護対策を講じることが必要であると考えられた。