著者
千葉 修 小林 文明 金田 昌樹
出版者
高知大学大学院黒潮圏海洋科学研究科
雑誌
黒潮圏科学 = Kuroshio Science (ISSN:1882823X)
巻号頁・発行日
vol.5, no.2, pp.169-174, 2012-03-25

To survey the weather at the time of the 2011 off the Pacific coast of Tohoku Earthquake occurred on 11 March,2011, meteorological data were used for analysis.In particular, we examined the influence that the massive tsunami that came in the Sendai plains gave the atmosphere, based on AMEDAS data of the East Japan in addition to the weather data at 10-second intervalsof the Sendai district meteorological observatory. As a result, the southeastern wind blown in the coast of inland (Natori, Watari) from Sendai Bay is more likely to bewind with the tsunamis.
著者
小林 文明 藤田 博之 野村 卓史 田村 幸雄 松井 正宏 山田 正 土屋 修一
出版者
社団法人日本気象学会
雑誌
天気 (ISSN:05460921)
巻号頁・発行日
vol.54, no.1, pp.53-64, 2007-01-31
参考文献数
27
被引用文献数
4

2002年10月6日から7日にかけて発達した低気圧の北東進に伴い,各地で突風災害が相次いだ.横須賀市内では10月7日04時頃突風災害が発生した.現地調査の結果,被害は100か所を越える住家で確認され,被害域はほぼ直線的で長さ2.5km,最大幅は約150m(平均で30〜50m)であった.被害スケールはF1から局所的にF2であった.被害域は連続しておらず,かつ蛇行していた.また,最も被害の大きかった公郷小学校付近で被害幅が広がっており,竜巻の複雑な挙動が示唆された.最大風速に関しては,被害が最も甚大であった場所の東端に位置する道路標識から少なくとも風速は34〜38ms^<-1>と見積もられ,被害スケール(F1)を裏付けた.今回の突風は以下の理由から竜巻であったと推測された.地上被害の特徴から,1)被害域の幅が狭く直線的である.2)回転性(低気圧性)の風による痕跡が確認された.3)吸い上げ渦とおもわれる痕跡が2か所確認された.4)吸い上げ渦の痕跡近傍では,実際に体育館の屋根や空調室外機が少なくとも高さ10mは吹き上げられた.上空の積乱雲の特徴は,5)強エコー域の南西端に被害域が対応していた.6)ドップラー速度パターンには直径7kmの渦が上空に確認された.7)このメソサイクロンの影響をうける地上観測点では,1hPaの気圧降下が確認された.横須賀市の竜巻被害は,発達した低気圧の暖域で形成された積乱雲群が広範囲にわたりもたらした竜巻(ダウンバースト)の中のひとつに位置づけられる.
著者
小林 文明 千葉 修 松村 哲
出版者
社団法人日本気象学会
雑誌
天気 (ISSN:05460921)
巻号頁・発行日
vol.44, no.1, pp.19-34, 1997-01-31
参考文献数
22
被引用文献数
12

1994年10月4日17時すぎ,土佐湾海上で5本の竜巻が連続して発生した.数多くの画像データと竜巻近傍の自記紙やレーダーエコーデータにより,これらの竜巻の形態と構造を解析した.5本の竜巻の発生から消滅までは1時間の連続した現象であった.漏斗雲が地上まで達した4本の竜巻のライフタイムは約20分,竜巻の強さはFスケールでF0と推定された.竜巻渦はすべて時計回り(高気圧性)の回転であり,漏斗雲の形状,直径の顕著な時間変化を示さないまま3〜6km/hの移動速度で北上した.土佐湾竜巻の発生メカニズムは,直接的にはメソγスケール(数km)のシアーライン上の初期の渦が積乱雲発生時の上昇気流とカップリングして生じたと考えられたさらに,メソβスケール(土佐湾のスケール)の地形,性の収束が積雲を発生させた点で重要であった.土佐湾竜巻はスケールの異なる2つの条件下で発生した,海上竜巻であると結論づけられた.
著者
田村 幸雄 松井 正宏 吉田 昭仁 小林 文明
出版者
東京工芸大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2012-04-01

日本の原子力発電施設やLNGタンクなどは全て海岸線に沿って建設されており,米国中部の竜巻常襲地域の竜巻発生確率などと較べても,これら我が国の高危険度施設の竜巻遭遇確率は遥に高い。本研究では,従来から設計では採り上げられていなかった竜巻等のシビア・ローカルストームの,原子力発電施設,大規模液化天然ガス貯蔵施設,使用済核燃料再処理施設,有害産業廃棄物処理施設など,被害が発生した際に周辺地域,住民に甚大な悪影響を与える重要施設に対する影響と対策,設計・施工に対するガイドラインを検討した。
著者
小林 文明 鈴木 菊男 菅原 広史 前田 直樹 中藤 誠二
出版者
一般社団法人 日本風工学会
雑誌
日本風工学会論文集 (ISSN:13493507)
巻号頁・発行日
vol.32, no.1, pp.21-28, 2007 (Released:2007-08-24)
参考文献数
17

The detailed structure of a gustfront was revealed with Doppler radar, Doppler sodar, weather station and video cameras at Yokosuka observation site, Japan. The gustfront was accompanied with a downburst from bow echo of developing thunderstorm. Two gusts occurred at the passage of gustfront. First gust was observed about 2 km behind the gustfront. Second gust occurred about 5 km behind of the first gust and maximum wind speed of the second gust was larger than that of the first gust. The vertical circulation of the gustfront had about 5 km in horizontal scale and 500 m in vertical and made "arc cloud" , which had 200m of cloud base and 500m of cloud top in height. Strong wind cores (> 25 m/s) existed between 30 m and 500 m in height at the front of the circulation. Two gust winds, which were observed at the surface, were well corresponded with the strong wind core near the surface and updraft region of the circulations. Vertical distribution of the wind speed changed remarkably for 5 minutes in the vertical circulations.
著者
曹 曙陽 小林 文明 吉田 昭仁 松井 正宏 菊池 浩利 佐々 浩司 田村 幸雄
出版者
一般社団法人 日本風工学会
雑誌
日本風工学会年次研究発表会・梗概集
巻号頁・発行日
vol.2007, pp.33-33, 2007

平成18年11月7日午後1時過ぎ、国内最大級(藤田スケールF3)の強い竜巻が北海道佐呂間町若佐地区で発生し、死者9名、重傷者6名、軽傷者25名の人的被害及び全壊住家7棟、半壊住家7棟、一部損壊住家25棟、全半壊非住家40棟の被害をもたらした。当該竜巻被害の実態を正確に把握することを目的として、我々は被害発生翌日から、航空機からの上空視察と地上での被害状況調査を実施し、建物被害状況データベースを作成した。ここでは、建築物などの被害状況についてまとめた。
著者
升田 吉雄 吉田 明夫 林 文明 佐々木 健 本田 良行
出版者
THE PHYSIOLOGICAL SOCIETY OF JAPAN
雑誌
The Japanese Journal of Physiology (ISSN:0021521X)
巻号頁・発行日
vol.32, no.3, pp.327-336, 1982 (Released:2011-06-07)
参考文献数
25
被引用文献数
14 19

The steady-state ventilatory responses to hypercapnia and hypoxia in 7 assisted breath-hold divers (Funado) were compared with those in 7 normal sedentary controls.Ventilatory response to hypercapnia was measured from the slope of the hyperoxic VN-PETCO2 line, where VN was normalized minute ventilation using the allometric coefficient and PETCO2 end-tidal PCO2. The slope of this line in the Funado (1.48±0.54 liters·min-1·Torr-1) was significantly less than in the control (2.70±1.08 liters·min-1·Torr-1)(p<0.025). On the other hand, hypoxic sensitivity estimated by hyperbolic and exponential mathematical equations was not found to be significantly different between the two groups, although estimated increments in ventilation using the hyperbolic equation exhibited significantly lower response in the Funado than in the control only when PETO2 decreased lower than 50 Torr (p<0.05).These findings in the Funado were different from our previous observations obtained in unassisted breath-hold divers (Kachido), in whom no obvious attenuations in CO2sensitivity were seen. This difference was assumed to be derived from more hypercapnic and hypoxic conditions produced in the Funado than in the Kachido during diving activities.
著者
升田 吉雄 吉田 明夫 林 文明 佐々木 健 本田 良行
出版者
THE PHYSIOLOGICAL SOCIETY OF JAPAN
雑誌
The Japanese Journal of Physiology (ISSN:0021521X)
巻号頁・発行日
vol.31, no.2, pp.187-197, 1981 (Released:2011-06-07)
参考文献数
21
被引用文献数
22 26

The ventilatory responses to hypoxia and hypercapnia of 5 Amas (Kachido) were compared with those of 5 controls of similar ages, physical characteristics and lung volumes. The responses to hypoxia and hypercapnia were analyzed by the equations originally proposed [a] by Lloyd et al. and [b] by Kronenberg et al. as follows:[a] VN=(PCO2-B')·D·(1+A/PO2-C) +VB'.[b] VN=(PCO2-B')·D·(1+R0·exp (-k·PO2)) +VB'.The CO2-response slope in hyperoxia, D, of the Ama (1.820±0.441 liters·min-1·Torr-1) was slightly higher than that of the control (1.148±0.586 liters·min-1·Torr-1), but the difference was not significant. However, the slope of CO2-response in hypoxia at PETO2=44 Torr, S44, was almost the same in the two groups (Ama, 1.822±0.689 liters·min-1·Torr-1; control, 1.742±0.902 liters·min-1·Torr-1). The ratio of S44 to D was significantly lower (p<0.05) in the Ama (1.039±0.377) than in the control (1.529±0.249). Comparing the hypoxic response in terms of the ventilation ratio (VR), the elevation of ventilation with augmentation of hypoxia in the Ama was exceeded by that in the control.Thus, it was suggested that the difference in the ventilatory response to hypoxia between the Ama (Kachido) and the control may have been derived from the respiratory adaptation of the Ama (Kachido) acquired by their daily diving activities.
著者
本田 良行 林 文明 吉田 明夫 升田 吉雄 佐々木 健
出版者
THE PHYSIOLOGICAL SOCIETY OF JAPAN
雑誌
The Japanese Journal of Physiology (ISSN:0021521X)
巻号頁・発行日
vol.31, no.2, pp.181-186, 1981 (Released:2011-06-07)
参考文献数
15
被引用文献数
3 5

Relative contributions of chemical and non-chemical respiratory stimulations to breath-holding time (BHT) were examined in assisted (Funado) and unassisted (Kachido) breath-hold divers (Ama). In the Funado the magnitude of the chemical contribution was reduced, though statistically not significant. On the other hand, in the Kachido no difference in chemical contribution was seen from the control. This was considered to be due to the fact that ventilatory response to CO2 was reduced in the Funado, but not in the Kachido. Despite the decreased contribution of CO2 drive to BHT, absolute BHT in the Funado was not prolonged. This may be related to sensitization of the respiratory centers to non-chemical stimulation. Such adaptation would be effective for preventing the danger of losing consciousness in the Funado who face extreme hypoxia on returning to the surface from a dive.
著者
小林 文明
出版者
一般社団法人 日本風工学会
雑誌
日本風工学会年次研究発表会・梗概集 平成18年度日本風工学会年次研究発表会
巻号頁・発行日
pp.93-98, 2006 (Released:2006-09-23)

「強風災害の低減に向けて何ができるか?」というパネルディスカッションのテーマに対する議論の材料となるべく、以下の3点に関して話題提供を行う。1)気象災害が頻発した2004年の具体的事例から強風被害における問題点を挙げる。2)気候変動と気象災害について近年の災害がどのような位置付けになるのかコメントする。3)気象擾乱研究会の活動を紹介する。
著者
小林 文明 松井 正宏 吉田 昭仁 岡田 玲
出版者
一般社団法人 日本風工学会
雑誌
風工学シンポジウム論文集 第24回 風工学シンポジウム論文集
巻号頁・発行日
pp.115-120, 2016 (Released:2017-03-18)

2015年2月13日15時すぎに神奈川県厚木市内で発生した突風被害は,極めて局所的に被害が集中し,推定風速は20 m/sと推定され,F0(JEF0)スケールに相当した。今回の渦は,メソスケールのシアーライン上で形成された積乱雲前面におけるガストフロントで発生し,上空の積雲(アーク)と連なり,親渦が存在するという構造を有していた。ガストフロントに伴い複数発生した渦の一つであり,渦の接線風速もそれほど大きくなく,明瞭な漏斗雲は形成されず,地上の飛散物によって渦は可視化された。ガストフロントにおける上昇流が寄与した“2次的な竜巻”すなわちガストネード(gustnado)と考えられた。
著者
小林 文明 松井 正宏 吉田 昭仁 岡田 玲
出版者
一般社団法人 日本風工学会
雑誌
風工学シンポジウム論文集
巻号頁・発行日
vol.24, pp.115-120, 2016

2015年2月13日15時すぎに神奈川県厚木市内で発生した突風被害は,極めて局所的に被害が集中し,推定風速は20 m/sと推定され,F0(JEF0)スケールに相当した。今回の渦は,メソスケールのシアーライン上で形成された積乱雲前面におけるガストフロントで発生し,上空の積雲(アーク)と連なり,親渦が存在するという構造を有していた。ガストフロントに伴い複数発生した渦の一つであり,渦の接線風速もそれほど大きくなく,明瞭な漏斗雲は形成されず,地上の飛散物によって渦は可視化された。ガストフロントにおける上昇流が寄与した"2次的な竜巻"すなわちガストネード(gustnado)と考えられた。
著者
真木 雅之 前坂 剛 岩波 越 三隅 良平 清水 慎吾 加藤 敦 鈴木 真一 木枝 香織 Lee Dong-In Kim Dong-Soon 山田 正 平野 廣和 加藤 拓磨 小林 文明 守屋 岳 鈴木 靖 益田 有俊 高堀 章
出版者
水文・水資源学会
雑誌
水文・水資源学会研究発表会要旨集
巻号頁・発行日
vol.21, pp.11, 2008

次世代の豪雨強風監視システムとして,防災科学技術研究所が複数の研究機関,大学と連携して進めているXバンドレーダネットワーク(X-NET)の概要について述べた.2007昨年度に準備を終了し,2008年と2009年の試験観測を通じて以下の項目に焦点を当てた研究をおこなう.•首都圏上空の雨と風の3次元分布(時間分解能6分,空間分解能は数100m~500m)の瞬時集約と配信.•上記の情報に基づく豪雨域,強風域の検出と監視.•外そう法による降水ナウキャスト,およびデータ同化した雲解像数値モデルによる降水短時間予測.•局地気象擾乱の構造,発生過程,発生機構の理解.•都市型災害の発生予測手法の高度化.•気象学,防災研究,気象教育,建築,都市,交通,電力,通信,情報,レジャー産業などの様々な分野における基礎的な気象データベース作成.
著者
遠峰 菊郎 小林 文明 道本 光一郎 緒方 秀明 和田 保徳 郷津 寿夫 酒井 勉
出版者
社団法人日本気象学会
雑誌
天気 (ISSN:05460921)
巻号頁・発行日
vol.41, no.1, pp.13-22, 1994-01-31
参考文献数
7
被引用文献数
2

3,4時間先の冬季雷予測の可能性を探るために,1992年1月22日から同月24日まで,レーウィンゾンデによる3時間間隔の観測を実施した。観測期間中に雷活動が活発であった時間帯は3回あった。これらの雷活動の中にはいわゆる気団雷も含まれるが,それぞれ熱的に不安定な小領域や小さい収束線が観測された.このことから,これらの小擾乱の存在を確認することができれば,冬季雷の予測はより精度が高まると考えられる.
著者
小林 文明 菊地 勝弘 上田 博
出版者
社団法人日本気象学会
雑誌
Journal of the Meteorological Society of Japan. Ser. II (ISSN:00261165)
巻号頁・発行日
vol.74, no.1, pp.125-140, 1996-02-25
参考文献数
11
被引用文献数
6

1988年9月22日13時すぎ石狩平野内で発達したsevere stormに伴って千歳市内で発生した竜巻を, 詳細な現地調査, 連続写真, ビデオテープやドップラーレーダー観測データから解析した. この千歳竜巻は20分間のライフタイム, 漏斗雲(funnel)の直径150mを有しF1スケールの被害をもたらした. ライフサイクルは漏斗の形状と被害特性の顕著な変化から, 発生期, 最盛期, 衰弱期および消滅期の4つに分けられた. この竜巻の発生には直径7kmのメソサイクロン(mesocyclone)が高度2〜3km程度で時間的に先行して存在していた. 雲底における漏斗雲の形状とメソサイクロンの北西象限で発生した直径1kmのマイソサイクロン(misocyclone)とはほぼ同時に観測され, 発生場所も一致していた. 地上の被害, 漏斗雲および親雲の時間変化の特徴もまた明らかにされた. すなわち地上の被害幅(200m)は高度400mまで舞い上がった "dust cloud(土挨)" のスケールと一致し, dust cloudおよび雲底の竜巻渦(1km)はそれぞれ地上と雲底における漏斗雲の直径のほほ10倍のスケールを有していた. 竜巻の発生時点では, 地上と雲底の竜巻渦の位置はほぼ一致していたが, 両者の移動速度の違いから時間とともに雲底下の漏斗雲および竜巻渦の挙動はかなり異なった様相を呈した.
著者
原 由紀男 中西 幹郎 小林 文明
出版者
日本流体力学会
雑誌
日本流体力学会年会講演論文集 (ISSN:13428004)
巻号頁・発行日
vol.2001, pp.47-48, 2001-07-31
参考文献数
1

In order to examine the generation mechanism of a cumulonimbus that caused a heavy rain in Tokyo urban area on 22 July 1999,three numerical experiments are performed with a mesoscale simulation model; Case 1 (control run) refers to a nearly realistic experiment, Case 2 an experiment without urban effects, and Case 3 an experiment without raindrop evaporating effects. Although Cases 2 and 3 show slightly different distributions of wind and cloud from what are simulated for Case 1,all the cases reproduce clouds that occurred over Tokyo urban area. This may suggest that the main source generating clouds over Tokyo urban area lies in other effects, e.g., the convergence of sea breezes from Tokyo Bay and Sagami Bay.
著者
千葉 修 小林 文明 久末 正明
出版者
社団法人日本気象学会
雑誌
天気 (ISSN:05460921)
巻号頁・発行日
vol.53, no.7, pp.551-563, 2006-07-31

2000年4月23日に青森県の八甲田山系猿倉岳で発見された樹木被害が同日に発生した突風が原因であると推測して気象学的観点から考察した.同日の朝に寒冷前線を伴った低気圧が青森県地方に最接近し,その後北東方向に通過した.猿倉岳から約24km北北西にある青森地方気象台(青森市)の気象データから突風発生に関係する2つのフェーンが確認された.つまり午前中の第一のフェーンは秋田県北部の降雨に南西風が吹いたための湿ったフェーンであり,猿倉岳東斜面が南西風卓越時に隣接する山々の鞍部の出口にあたる地形的な特徴を持つことから収束合流した気流が局所的に強化されたと考えられる.一方,午後の第二のフェーンは水蒸気量の少ない上層の乾燥空気が寒冷前線の後方で下降して広がり,そのために西寄りの風が加速して山越えの強風になった.この風向きは樹木の飛散した西から東の方向と一致していた.これらのことから猿倉岳樹木被害の主因はフェーンによって発生した強風であり,午前には地形の影響を受けた気流が,そして午後にはおろし風が継続的に作用し倒木被害を起こしたものと考えられる.