- 著者
-
本田 浩子
斉藤 恵美子
- 出版者
- 日本公衆衛生学会
- 雑誌
- 日本公衆衛生雑誌 (ISSN:05461766)
- 巻号頁・発行日
- vol.63, no.5, pp.252-259, 2016 (Released:2016-06-18)
- 参考文献数
- 20
目的 発達障害は症状や障害の範囲が広く,外見から障害があることがわかりにくいことも多い。また,乳幼児期から青年期・成人期に進むと発達障害の特性に二次障害による生活障害が加わることも多く,家族の負担が増加することが予測される。そこで,本研究では成人の発達障害者の親を対象として親の負担感に関連する要因を明らかにし,家族への支援について検討することを目的とした。方法 首都圏で活動している発達障害者の親の会,精神保健福祉センター,発達障害者支援センターを利用している発達障害者(18歳以上)の親125人を調査対象とした。調査期間は2011年10~11月として,無記名自記式質問紙による郵送調査を行った。調査項目は,対象者の基本属性,負担感として日本語版 Zarit 介護負担尺度短縮版(以下,J-ZBI_8),子どもの状況(性別・年齢・診断名・診断年齢・日常生活の状況・二次障害の有無等),家族内外のサポート状況として情緒的サポート(配偶者,配偶者以外の同居家族等),相談者の有無等とした。結果 有効回答64票を分析対象とした。女性54人(84.4%),50歳以上89.1%,家族人数の平均3.5人(標準偏差1.1,以下 SD),子どもの平均年齢28.9歳(SD 6.6)であった。子どもの診断は,自閉症32人(50.0%),アスペルガー症候群16人(25.0%),広汎性発達障害(自閉症・アスペルガー症候群以外)13人(20.3%)であり,J-ZBI_8 の平均値は12.8(SD 7.2)であった。負担感を目的変数とし,2 変量の単回帰分析で統計的に有意差のあった家族人数,二次障害の有無,日常生活の状況,情緒的サポート(配偶者)を説明変数,対象者の年齢および診断名を調整変数とした重回帰分析を行った。その結果,二次障害がありの方が(P=0.001),また,日常生活の状況として援助が必要であるほど(P=0.041),負担感が高かった。考察 本研究は,自閉症を中心とした限定した発達障害者の親を対象としており解釈に限界はあるが,親の負担感は,統合失調症や高次脳機能障害などの精神障害者等を介護している家族の負担感とほぼ同様の結果であった。子どもに二次障害があり,また,日常生活の状況として援助が必要であるほど,親の負担感と関連があった。今回の結果から,親の負担感を軽減するために,二次障害への支援と日常生活の状況に応じた援助が重要であることが示唆された。