著者
木戸 久美子 植村 裕子 松村 惠子
出版者
Japan Academy of Midwifery
雑誌
日本助産学会誌 (ISSN:09176357)
巻号頁・発行日
pp.JJAM-2021-0017, (Released:2022-01-26)
参考文献数
41
被引用文献数
1

目 的本研究の目的は,父親の産後うつに関連する質的研究のメタ分析を通して,2つの研究課題1)父親の産後うつは,専門家によってどのようにスクリーニングされてきたか,2)父親の産後うつに対する対処や支援とは,また対処や支援の受け入れを困難にしている障壁は何かについて明らかにすることである。方 法父親の産後うつに関連する論文をCINAHL, MEDLINE, Google Scholarを用いて検索した。検索キーワードは,「サポート」AND「父親の産後うつ」OR「父親のうつ」OR「父親のメンタルヘルス」AND「質的研究」であった。データベースとハンドサーチで検索された質的研究論文は32編で,そのうち5編の論文を分析対象とした。本研究では,メタエスノグラフィーを利用した。結 果Patient Health Questionnaire -9,Generalized Anxiety Disorder-7,The Patient Health Questionnaire -15等が,スクリーニングに用いられていた。分析した論文から8つのメタファー:「父親の産後うつのきっかけ」,「父親の産後うつへの認識」,「父親の産後うつの影響」,「対処法」,「情報資源の不足・不備」,「支援を求める障壁」,「支援を必要とする理由」,「父親の産後うつへの支援」が抽出された。父親の産後うつ病は,一連のきっかけとなる出来事に基づいて発症し,自覚症状も様々である。父親は,自分が産後うつ病であることに気づくと,それに対処しようとするが,支援情報は十分ではなかった。さらに,男性であることが,助けを求めることへの恥ずかしさにつながり,父親の産後うつへの対処の障害となっている。一方で,家族を守るという責任感が,うつと向き合い,社会的支援や専門家の助けを求める動機となっていた。結 論父親の産後うつのスクリーニングには,一般化されている不安尺度と抑うつ尺度が用いられていた。産後うつを自覚している父親への支援が不十分であることや男性性が障壁となり,父親の産後うつへの対処の妨げになっている。一方で,父親として自覚は,産後うつを克服しようとする行動の動機付けとなっていた。
著者
松村 将司
出版者
日本理学療法士協会(現 一般社団法人日本理学療法学会連合)
雑誌
理学療法学Supplement Vol.44 Suppl. No.2 (第52回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.0189, 2017 (Released:2017-04-24)

【はじめに,目的】良性発作性頭位めまい症(以下,BPPV)は,内耳の耳石器や半規管の障害で発症する疾患である。今回,めまい発症から10日間歩行不可能だったが,徒手的治療によって即時的にめまいが改善し,歩行可能となった症例を担当したので報告する。【方法】症例は60歳代男性である。現病歴は,10日前に運転していたところ突然めまいが出現し,運転困難となり当院に救急搬送され入院となった。その後,MRI,聴力検査など実施したが大きな問題はなく,投薬治療が実施された。しかし,移動は車椅子のみで歩行不可能であった。なお,理学療法の処方は入院10日後であり,診断名はBPPVであった。既往歴は,約1カ月前に追突事故にあっていたが,現在は症状はなかった。主訴は,目の前が回り起き上がれない,右を向くとめまいがする,であった。動作を観察すると,起き上がり時には頸椎を動かさないように,非常にゆっくりと真っ直ぐ起き上がっていた。理学療法を始めるにあたり,BPPVに対する耳石置換法が未実施だったため,担当医と相談の上,実施の許可を得た。本症例は,既往歴に追突事故があったため,最初に頸椎のSecurity testを実施したが,問題は認められなかった。次に,右を向くとめまいがするとの訴えがあったため,水平半規管型BPPVを疑い,Supine roll testを実施した。しかし,若干の気持ち悪さが誘発されるのみであった。そのため,後半規管型BPPVに対するDix-Hallpike testを実施したところ,左のテスト時に著明な回旋性眼振を数秒認め,同時にめまいが誘発された。これより左後半規管型BPPVの可能性が示唆された。【結果】治療として後半規管に対する耳石置換法であるEpley法を左に対して実施した。1セット実施した結果,眼振は消失し,めまいも軽減された。そのため,引き続き3セット実施したところ,めまいはさらに軽減し,起き上がりがスムーズに行えるようになり,直後に軽介助から近位監視レベルでの歩行が可能となった。2日目の再評価では,右を向いた際のめまいが残存していた。Supine roll testでめまいが誘発されたため,水平半規管に対するLempert roll法を実施した結果,めまいは軽減した。3日目には症状改善し独歩可能となっていたため,日常生活での注意事項などを指導し,翌日退院となった。【結論】本症例の場合,水平半規管様のめまいの訴えであったが,実際には後半規管に対するテストで陽性となった。これに対しEpley法で即時的に眼振,めまいが改善し歩行可能となったが,翌日には再び水平半規管様の訴えがあった。BPPVでは耳石置換法による治療後,他の半規管に耳石が入り込むことがあり,また,水平・後半規管に耳石が存在する混合型もある。本症例も両者のどちらかであった可能性があると考える。理学療法士が前庭の理学療法を理解をしていることで,今回のように事前に医師と相談でき,適切な理学療法実施につながると考える。
著者
堀井 幸江 松村 篤 クルス アンドレ フレイリ 石井 孝昭
出版者
農業生産技術管理学会
雑誌
農業生産技術管理学会誌 (ISSN:13410156)
巻号頁・発行日
vol.14, no.1, pp.25-30, 2007-05-15 (Released:2019-04-15)
参考文献数
21

バヒアグラスを用いて,アーバスキュラー菌根菌,Gigaspora margarita胞子を短期間で簡便に生産する手法を確立するため,バヒアグラスの水ストレス状態や胞子生産の指標となる菌根菌生長促進物質量との関係,生産された胞子の発芽や発芽菌糸の感染力について調査した.その結果,短期間に多数のG. margarita胞子を生産するためには,ゼオライト土壌に栽植したバヒアグラスの葉の水ポテンシャルを-1.2MPa前後の水ストレス状態に陥らす方法が有効であることが明らかとなった.特に,37μmのナイロンメッシュ・シリンダーを用いた方法は,シリンダー外へ生長した外生菌糸から形成された胞子を採集でき,根や土壌などの夾雑物が極めて少ないきれいな胞子を容易に得ることができた.接種1か月後にはポット(直径24cm)当たり約26,000個,3か月後には約52,000個,5か月後には約50,000個の胞子を生産できた.新しく生産された胞子の発芽率は良好であり,感染力も充分であった.多数の胞子を生産した水ストレス処理区ではバヒアグラス根内のトリプトファンダイマー含量が高かった.このため、根内のトリプトファンダイマー含量は胞子形成の指標になることが示唆された.これらの結果は,今回開発した簡便な胞子生産技術が大型の胞子を形成する菌根菌にとっても極めて有効であり,菌根菌の活用場面を拡げる上で大いに貢献することを示唆している.
著者
松村 智史
出版者
一般社団法人 日本社会福祉学会
雑誌
社会福祉学 (ISSN:09110232)
巻号頁・発行日
vol.60, no.2, pp.1-13, 2019-08-31 (Released:2020-01-29)
参考文献数
21
被引用文献数
6

本稿は,生活困窮世帯の子どもの学習・生活支援事業の成立に関して,厚生労働省設置の検討会,社会保障審議会の部会の議論を分析した.まず,学習支援での学びは,単なる学力のみならず,将来の自立に資する生活力など,非認知能力を含む多元的能力と理解されるようになった.さらに,こうした能力を身につけるうえで,親の養育や家庭環境の改善の必要性が注目され,学習支援と世帯支援の一体化,学習支援から世帯支援につなげるという展開が形成されつつある.また,かかる展開をより実効的に行うために,支援の入り口としての子ども食堂など地域の取り組みや,継続的な進学・就学支援に欠かせない学校等,多様な機関との連携強化,情報共有が期待されている.今般成立した事業は,学習支援の変遷のなかで,学習支援と生活支援が結実した,総合的支援事業の意義を帯び,位置づけられるといえることが明らかになった.
著者
松村 貴晴 岡本 俊治 黒田 伸郎 浜口 昌巳
出版者
日本ベントス学会
雑誌
日本ベントス学会誌 (ISSN:1345112X)
巻号頁・発行日
vol.56, pp.1-8, 2001-07-15 (Released:2009-08-07)
参考文献数
39
被引用文献数
15 11

The clam Ruditapes philippinarum (Adams) is one of Japan's most important fisheries resources; recently, however, the anuual catch of this clam has declined to less than one quarter of its previous maximum. In order to implement more effective management of this resource, studies on early life stages, particularly the recruitment process that regulates subsequent population dynamics, are essential. To date, the recruitment dynamics of R. Philippinarum have been poorly understood due to a lack of basic information resulting from difficulties in identifying the larvae. To remedy this lack, we studied the recruitment process of R. philippinarum from April, 1998, to March, 1999, in Mikawa Bay, central Japan, using a new monoclonal antibody method. Our study revealed that R. philippinarum produces larvae from April to November in Mikawa Bay, in two discrete periods. An early spawning period occurred from April to July, with the peak abundance of larvae moving from the north-west to the eastern part of the bay. A later spawning period was observed in a relatively limited season from August to November. The distribution of larvae was basically controlled by the current system of the bay, although the larvae tended to become dispersed as they matured. The new monoclonal antibody identification method, applied for the first time in a study of a natural population, was found to be useful for studying R. philippinarum. It also proved to be an effective procedure for rapidly processing a large number of samples.