著者
楠 俊雄 穂積 香織 小倉 達也 小林 巧 重田 文弥
出版者
日本皮膚科学会西部支部
雑誌
西日本皮膚科 (ISSN:03869784)
巻号頁・発行日
vol.71, no.1, pp.70-78, 2009-02-01 (Released:2009-04-21)
参考文献数
11
被引用文献数
2 2

イトラコナゾール(イトリゾール®カプセル50)は,ベルギー ヤンセン社で合成されたトリアゾール系抗真菌剤である。本邦では2004年2月に爪白癬に対し,本剤400mg/日を1週間服薬した後,3週間休薬するサイクルを3回繰り返す「パルス療法」が承認され,この承認に伴い,爪白癬の治療を受けた患者2000例を対象とした市販後調査を実施し,パルス療法の有効性及び安全性について検討を行った。有効性については,有効性解析対象症例1051例における全般改善度は84.3%であった。また,感染部位,初発・再発,肥厚度,混濁比等,爪白癬の状態や重症度によらず,いずれも80%以上の有効率を示すことが確認された。一方,爪白癬治療の継続状況を検討したところ,治療完結率評価対象症例2394例において,3サイクル分のイトラコナゾール処方が完結した患者の割合は93.0%であった。安全性については,安全性解析対象症例2532例中288例(11.4%)に副作用が認められたが,主な副作用は,既知で軽微な臨床検査値異常であった。以上より,イトリゾール®カプセル50パルス療法は,爪白癬に対して優れた有効性ならびに良好な安全性を有することが確認された。
著者
西 正孝 山西 敏彦 林 巧
出版者
一般社団法人 日本原子力学会
雑誌
日本原子力学会誌 (ISSN:00047120)
巻号頁・発行日
vol.46, no.2, pp.115-120, 2004 (Released:2019-01-31)
参考文献数
36

核融合炉開発は進展し, 国際熱核融合実験炉ITERの工学設計が完成して建設活動を始めるべく準備が進められている。現在, 開発を進めている核融合炉は重水素とトリチウムを燃料とするが, トリチウムは放射性気体であり, また, 天然には稀少であるため, 核融合炉内で消費量に見合う量の生産を行う。このため, トリチウムの有効利用とその取り扱いに係る安全を確保するトリチウム・システムの開発は核融合炉の実現に必要不可欠である。本稿では, 核融合炉のトリチウム・システムについて, ITERのトリチウム・システムの設計とその技術基盤を中心に紹介するとともに, 今後の課題について述べる。
著者
森 伸一郎 小林 巧
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集A1(構造・地震工学) (ISSN:21854653)
巻号頁・発行日
vol.76, no.4, pp.I_633-I_646, 2020 (Released:2020-09-08)
参考文献数
38

2018年6月18日に発生した大阪府北部の地震(Mj6.1)で推定震度が大きかった地域の墓地(地点数:44墓地,墓石総基数:4,249基)を対象に詳細な墓石挙動調査を実施し,墓石被害率分布と推定震度分布を比較した.地震直後に公開された気象庁や防災科学技術研究所の推定震度分布では高槻市と茨木市の広い範囲で震度6弱が推定されていたが,墓石被害は茨木市内に集中し,高槻市南部では墓石落下がなく,その他ずれや回転といった被害もほとんどなかった.また,地形区分と比較した結果,軟弱地盤である後背湿地で墓石落下がなく,安威川より西側の千里丘陵裾部の扇状地で墓石被害が集中していた.
著者
伊藤 崇倫 小林 巧 神成 透 堀内 秀人 松井 直人 角瀬 邦晃 野陳 佳織 大川 麻衣子
出版者
理学療法科学学会
雑誌
理学療法科学 (ISSN:13411667)
巻号頁・発行日
vol.34, no.6, pp.749-752, 2019 (Released:2019-12-21)
参考文献数
16

〔目的〕片脚立位動作課題を用いて,人工膝関節全置換術(total knee arthroplasty:TKA)後患者の膝関節周囲筋の同時収縮とバランス機能との関連について検討した.〔対象と方法〕TKA後4週が経過した9名と健常高齢者10名とした.片脚立位動作を姿勢移行時と保持時に区分し,各区間における膝関節周囲筋のco-contraction index(CI)を測定した.〔結果〕TKA群と健常群のCIの比較について,有意な差を認めた.CIとバランス機能の関連について,TKA群では移行時のCIとfunctional reach testに有意な負の相関が認められた.〔結語〕TKA患者において,姿勢変化を伴う重心移動には膝の同時収縮が影響する可能性が示唆された.
著者
堀林 巧
出版者
The Japanese Association for Russian and East European Studies
雑誌
ロシア・東欧研究 (ISSN:13486497)
巻号頁・発行日
vol.2010, no.39, pp.1-12, 2010 (Released:2012-06-20)
参考文献数
24

This paper examines the systemic change from communism to capitalism and the transformation of the welfare system in the Visegrad countries, the Baltic states and Slovenia. The CEE countries aimed to create capitalism through liberalization, macro-stabilization and privatization of the state-owned firms after the breakdown of communism. The first attempts at privatizing the large state-owned firms in Poland, Hungary and the Czech Republic resulted in different types of state and private “hybrid ownership” structures in which some state paternalism remained. The state paternalism remained in Slovakia, too. The Baltic states adopted the most radical liberalization and macro-stabilization policy in the region to create a form of capitalism, which was furthest removed from the past-communism symbolized by the former Soviet Union since they considered independence from Russia as the most important challenge of the systemic change. While Slovenia created a German type of corporatist industrial relation in the first half of the 1990s on the basis of the past legacy, i.e., self-management socialism, it implemented privatization gradually. Due to both internal and external reasons such as the CEE countries’ low level of domestic capital accumulation and their accession into the EU, the inflow of FDI from old EU member states into the CEE increased at a faster pace since the late 1990s. As a result, “dependent capitalism” emerged in the eight CEE countries. The Visegrad countries enjoyed a higher pace of economic growth through multinational-led export increases by the late 2000s. In the Baltic states, a “housing and consumption boom” originated from the excess-loans from foreign bank affiliates to households. However, the CEE economies (except Poland) were severely damaged by the spread of the financial crisis and recessions in the core EU member states after the late 2008. From this event, one should keep in mind the negative aspects of the excess-dependence on foreign capital in the CEE economies. The communist welfare system consisted of full employment, universal social insurance, a firm-based system of service, fringe benefits and subsidized prices for basic necessities such as food and housing. The “transition recession” in the beginning of the 1990s led to massive unemployment and the end of full employment in the CEE. By introducing unemployment benefits and social assistance system in order to cope with the increase of the poor and unemployed in the beginning of the 1990s, the welfare system of the CEE moved closer to those of Continental European type. From the mid-1990s, the social policies of many CEE countries shifted to what the World Bank had recommended. For example, many countries in the CEE implemented pension reform, including partial privatization, although Slovenia and the Czech Republic did not. The fact that poverty rate in Slovenia and the Czech Republic is much lower than those in Poland and Baltic states reflects different social policy stances. It also reveals historical path-dependency since Slovenia and the Czech Republic created the most developed capitalism in the CEE as measured by per capita GDP on the basis of historical legacy. Before the breakdown of communism, both Slovenia and the Czech Republic belonged to the advanced region in the Eastern Europe.
著者
西 正孝 山西 敏彦 林 巧
出版者
一般社団法人 日本原子力学会
雑誌
日本原子力学会誌 = Journal of the Atomic Energy Society of Japan (ISSN:00047120)
巻号頁・発行日
vol.46, no.2, pp.115-120, 2004-02-28
参考文献数
36

<p> 核融合炉開発は進展し, 国際熱核融合実験炉ITERの工学設計が完成して建設活動を始めるべく準備が進められている。現在, 開発を進めている核融合炉は重水素とトリチウムを燃料とするが, トリチウムは放射性気体であり, また, 天然には稀少であるため, 核融合炉内で消費量に見合う量の生産を行う。このため, トリチウムの有効利用とその取り扱いに係る安全を確保するトリチウム・システムの開発は核融合炉の実現に必要不可欠である。本稿では, 核融合炉のトリチウム・システムについて, ITERのトリチウム・システムの設計とその技術基盤を中心に紹介するとともに, 今後の課題について述べる。</p>
著者
小柳津 誠 磯部 兼嗣 林 巧 山西 敏彦
出版者
一般社団法人 日本原子力学会
雑誌
日本原子力学会 年会・大会予稿集 2010年秋の大会
巻号頁・発行日
pp.942, 2010 (Released:2010-10-18)

トリチウム水中における材料の腐食挙動は天然水中の腐食挙動とは異なる可能性がある。そのため本研究は、電気化学的手法を用いて、トリチウムによる金属材料の腐食挙動への影響の解明を目的とした。SUS304ステンレス鋼を試料として用い、トリチウム濃度と溶存酸素濃度をパラメータとして実験を行った結果、溶存酸素の存在による不動態化がトリチウムの存在により阻害されていることが明らかとなった。
著者
荒牧 憲隆 清松 潤一 岡林 巧 藤井 治雄
出版者
公益社団法人 地盤工学会
雑誌
地盤工学ジャーナル (ISSN:18806341)
巻号頁・発行日
vol.9, no.3, pp.359-373, 2014 (Released:2014-09-30)
参考文献数
31
被引用文献数
1 3

我が国には,火山灰質粗粒土が広く分布し,特殊土として取り扱われ利用されることが多い。これらの土粒子には,粒子内空隙を有することが知られており,現在の地盤材料の試験方法では対応が困難となることも見受けられる。そのため,物理的諸性質の測定値には,ばらつきが多くなることが予想される。本研究では,粒子内空隙を有する種々の火山灰質粗粒土を対象に,土粒子の密度試験ならびに粒度試験を行い,測定値のばらつきに及ぼす試料の準備や実験方法での影響因子について検討することを目的としている。その結果,火山灰質粗粒土の物理的性質の評価においては,人的,機械的なばらつきに加え,材料そのものの特性により,著しく影響を受けることが認められた。このような材料での計測,品質評価においては,試料の均質性や準備状況に充分配慮を行う必要があることが示唆された。
著者
堀林 巧
出版者
大阪市立大学経済学会
雑誌
経済学雑誌 (ISSN:04516281)
巻号頁・発行日
vol.80, no.1, pp.79-93, 1979-05-01

金沢大学人間社会研究域経済学経営学系
著者
堀内 秀人 小林 巧 神成 透 松井 直人 角瀬 邦晃 伊藤 崇倫 野陳 佳織
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement
巻号頁・発行日
vol.2016, 2017

<p>【はじめに,目的】人工膝関節全置換術(TKA)は,重度の変形性膝関節症(膝OA)患者に対し疼痛除去と機能改善を目的として施行される。Josephらは,内側膝OA患者が健常者に比べ歩行中における外側広筋(VL)と大腿二頭筋(BF)の高い同時収縮を報告している。また,Thomasらは,TKA後1ヶ月の患者の歩行において,健常者と比較し膝関節周囲筋の高い同時収縮を報告している。昇段動作は歩行よりも膝関節に大きなストレスのかかる動作であり,昇段動作の筋活動動態の知見を得ることは重要と考えられるが,TKA患者における昇段動作の同時収縮については不明である。本研究の目的は,昇段動作時におけるTKA後患者の膝関節周囲筋の同時収縮について検討することである。</p><p></p><p></p><p>【方法】対象は全例女性で,TKA後4週が経過した8名(TKA群:年齢69.5±6.7歳)と健常高齢者8名(高齢群:年齢66.5±4.7歳),健常若年者10名(若年群:22.9±1.6歳)とし,上肢の支持なしで一足一段での階段昇降が可能な者とした。試行動作は,開始肢位を段差20cmの階段の一段目にTKA群は術側,高齢群および若年群は非利き足を上げた肢位とし,音刺激開始後,手すりを使わず出来るだけ早く一段目に両足を揃える動作とした。音刺激は筋電計と同期されているメトロノーム機能を利用した。筋活動の測定には筋電計(Noraxon社製)を使用し,導出筋は,支持側のVL,BFとした。筋活動量の測定は,生波形を全波整流後,50msでスムージング処理を行い,移動平均幅100msでのVLおよびBFの平均筋活動量を測定し,各筋の最大随意収縮(MVC)で除し,%MVCを算出した。同時収縮は,Kellisらの方法に準じ,co-contraction index[CI:CI=VL peak時におけるBFの筋活動量/(VLの筋活動量+BFの筋活動量)]にて算出した。統計学的分析は,TKA群,高齢群,若年群の%MVCおよびCIの比較に一元配置分散分析および多重比較としてBonferroni法を用いた。有意水準は5%とした。</p><p></p><p></p><p>【結果】TKA群,高齢群,若年群の%MVCの比較について,VL,BFともに3群間に有意差は認められなかった。CIの比較について,TKA群(0.31±0.15)は,高齢群(0.18±0.04)および若年群(0.18±0.07)と比較し,有意に高値を示した(p<0.05)。高齢群と若年群には有意差は認められなかった。</p><p></p><p></p><p>【結論】本研究結果から,昇段動作において,TKA患者の術側は健常高齢者および健常若年者と比較しCIが有意に高値を示した。Hallらは,昇段動作においてACL再建患者が健常者に比べVLとBFの同時収縮が高く膝関節の安定性を高めていることを示唆した。TKA患者においても,昇段動作における膝関節の不安定性の代償として,膝周囲筋の同時収縮を高めることで関節の安定性を図っている可能性が示唆された。今後は,昇段動作の動作解析と合わせた筋活動の検討が必要と考える。</p>
著者
三浦 拓也 山中 正紀 森井 康博 寒川 美奈 齊藤 展士 小林 巧 井野 拓実 遠山 晴一
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement Vol.42 Suppl. No.2 (第50回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.0512, 2015 (Released:2015-04-30)

【はじめに,目的】体幹に属する筋群はその解剖学的特性からグローバル筋群とローカル筋群の2つに大別される。近年,この体幹ローカル筋群に属する腹横筋や腰部多裂筋の機能に注目が集まり,様々な研究が世界的に行われている。腹横筋の主たる機能として,上下肢運動時における他の体幹筋群からの独立的,かつ先行的な活動や腹腔内圧の上昇,仙腸関節の安定化などが報告されている。また,腰部多裂筋に関しては腹横筋と協調して,また両側性に活動することで腰椎へ安定性を提供しているとの報告がある。これら体幹ローカル筋群は主に深層に位置しているため,その評価には従来,ワイヤー筋電計やMRIといった侵襲性が高く,また高コストな手法が用いられてきたが,近年はその利便性や非侵襲性から超音波画像診断装置による筋厚や筋断面積の評価が広く行われている。腹横筋と腰部多裂筋は協調的に活動するとの報告は散見されるが,両筋の筋厚の関連性について言及した研究は少ない。本研究の目的は腹横筋と腰部多裂筋を超音波画像診断装置にて計測し,その関連性を調査することとした。【方法】対象は,本学に在籍する健常男性10名(21.0±0.9歳,173.9±6.6 cm,64.3±9.5 kg)とした。筋厚および筋断面積の計測には超音波画像診断装置(esaote MyLab25,7.5-12 MHz,B-mode,リニアプローブ)を使用した。画像上における腹横筋筋厚の計測部位は腹横筋筋腱移行部から側方に約2 cmの位置で,その方向は画像に対し垂直方向とした。腰部多裂筋の筋断面積計測におけるプローブの位置は第5腰椎棘突起から側方2 cmの位置で,画像上における筋断面積は内側縁を棘突起,外側縁を脊柱起立筋,前縁を椎弓,後縁を皮下組織との境界として計測した。動作課題は異なる重量(0,5,10,15%Body Weight:BW)を直立姿勢にて挙上させる動作とし,各重量条件をランダム化しそれぞれ3回ずつ計測,その平均値を解析に使用した。統計解析にはSPSS(Ver. 12.0)を使用し,Pearsonの相関係数にて腹横筋筋厚と腰部多裂筋筋断面積の関連性を検討した。統計学的有意水準はα=0.05とした。【結果】統計学的解析から,0%BW(r=0.78,p<0.05),5%BW(r=0.72,p<0.05)条件において腹横筋の筋厚と腰部多裂筋の筋断面積との間に有意な正の相関が認められた。10%BW,および15%BW条件においては有意な相関関係は認められなかった。【考察】本研究は,機能的課題時における腹横筋と腰部多裂筋の形態学的関連性を検討した初めての研究であり,体幹に安定性を提供するとされている両筋がどのような関連性をもって機能しているのか,その一端を示した有用な所見である。本結果より,低重量条件においては腹横筋筋厚と腰部多裂筋筋断面積との間に有意な正の相関が認められたが,重量の増加に伴い相関関係は認められなかった。先行研究によると腹横筋や腰部多裂筋は機能的活動中に低レベルで持続的な活動が必要であるとされており,かつ両筋は低レベルな筋活動で充分に安定化機能を果たすと報告されている。また,両筋は他の体幹筋群と比較して筋サイズも小さいため,高負荷になるにつれて筋厚や筋断面積の値はプラトーに達していた可能性があり,さらに,高重量条件では重量の増加に伴う体幹への高負荷に抗するため,体幹グローバル筋群である腹斜筋群や脊柱起立筋群などの活動性が優位となっていたために筋厚や筋断面積の関連性が検知されなかったかもしれない。本所見は上記の点を反映したものであると推察される。腹横筋や腰部多裂筋は活動環境に応じて協調的に働くことで体幹に対して適切な安定性を提供しているとされてきたが,様々な活動レベルを考慮したデザインにおいてその関連性を検討した研究は無く,明確なエビデンスは存在していない。本研究はその一端を示すものであり,今後は筋活動との関係性や他の体幹筋群との関係性,さらには腹横筋や腰部多裂筋の機能障害があるとされている慢性腰痛症例においてより詳細な検討が必要であると思われる。【理学療法学研究としての意義】体幹ローカル筋群である腹横筋と腰部多裂筋に関して,低負荷条件において有意な正の相関関係が認められた。本所見は,体幹へ安定性を提供するとされている両筋の形態学的関連性を示唆した初めての研究であり,リハビリテーションにおける体幹機能の評価やその解釈に対して有用な知見となるだろう。
著者
三浦 拓也 山中 正紀 森井 康博 寒川 美奈 齊藤 展士 小林 巧 井野 拓実 遠山 晴一
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement
巻号頁・発行日
vol.2014, 2015

【はじめに,目的】体幹に属する筋群はその解剖学的特性からグローバル筋群とローカル筋群の2つに大別される。近年,この体幹ローカル筋群に属する腹横筋や腰部多裂筋の機能に注目が集まり,様々な研究が世界的に行われている。腹横筋の主たる機能として,上下肢運動時における他の体幹筋群からの独立的,かつ先行的な活動や腹腔内圧の上昇,仙腸関節の安定化などが報告されている。また,腰部多裂筋に関しては腹横筋と協調して,また両側性に活動することで腰椎へ安定性を提供しているとの報告がある。これら体幹ローカル筋群は主に深層に位置しているため,その評価には従来,ワイヤー筋電計やMRIといった侵襲性が高く,また高コストな手法が用いられてきたが,近年はその利便性や非侵襲性から超音波画像診断装置による筋厚や筋断面積の評価が広く行われている。腹横筋と腰部多裂筋は協調的に活動するとの報告は散見されるが,両筋の筋厚の関連性について言及した研究は少ない。本研究の目的は腹横筋と腰部多裂筋を超音波画像診断装置にて計測し,その関連性を調査することとした。【方法】対象は,本学に在籍する健常男性10名(21.0±0.9歳,173.9±6.6 cm,64.3±9.5 kg)とした。筋厚および筋断面積の計測には超音波画像診断装置(esaote MyLab25,7.5-12 MHz,B-mode,リニアプローブ)を使用した。画像上における腹横筋筋厚の計測部位は腹横筋筋腱移行部から側方に約2 cmの位置で,その方向は画像に対し垂直方向とした。腰部多裂筋の筋断面積計測におけるプローブの位置は第5腰椎棘突起から側方2 cmの位置で,画像上における筋断面積は内側縁を棘突起,外側縁を脊柱起立筋,前縁を椎弓,後縁を皮下組織との境界として計測した。動作課題は異なる重量(0,5,10,15%Body Weight:BW)を直立姿勢にて挙上させる動作とし,各重量条件をランダム化しそれぞれ3回ずつ計測,その平均値を解析に使用した。統計解析にはSPSS(Ver. 12.0)を使用し,Pearsonの相関係数にて腹横筋筋厚と腰部多裂筋筋断面積の関連性を検討した。統計学的有意水準はα=0.05とした。【結果】統計学的解析から,0%BW(r=0.78,p<0.05),5%BW(r=0.72,p<0.05)条件において腹横筋の筋厚と腰部多裂筋の筋断面積との間に有意な正の相関が認められた。10%BW,および15%BW条件においては有意な相関関係は認められなかった。【考察】本研究は,機能的課題時における腹横筋と腰部多裂筋の形態学的関連性を検討した初めての研究であり,体幹に安定性を提供するとされている両筋がどのような関連性をもって機能しているのか,その一端を示した有用な所見である。本結果より,低重量条件においては腹横筋筋厚と腰部多裂筋筋断面積との間に有意な正の相関が認められたが,重量の増加に伴い相関関係は認められなかった。先行研究によると腹横筋や腰部多裂筋は機能的活動中に低レベルで持続的な活動が必要であるとされており,かつ両筋は低レベルな筋活動で充分に安定化機能を果たすと報告されている。また,両筋は他の体幹筋群と比較して筋サイズも小さいため,高負荷になるにつれて筋厚や筋断面積の値はプラトーに達していた可能性があり,さらに,高重量条件では重量の増加に伴う体幹への高負荷に抗するため,体幹グローバル筋群である腹斜筋群や脊柱起立筋群などの活動性が優位となっていたために筋厚や筋断面積の関連性が検知されなかったかもしれない。本所見は上記の点を反映したものであると推察される。腹横筋や腰部多裂筋は活動環境に応じて協調的に働くことで体幹に対して適切な安定性を提供しているとされてきたが,様々な活動レベルを考慮したデザインにおいてその関連性を検討した研究は無く,明確なエビデンスは存在していない。本研究はその一端を示すものであり,今後は筋活動との関係性や他の体幹筋群との関係性,さらには腹横筋や腰部多裂筋の機能障害があるとされている慢性腰痛症例においてより詳細な検討が必要であると思われる。【理学療法学研究としての意義】体幹ローカル筋群である腹横筋と腰部多裂筋に関して,低負荷条件において有意な正の相関関係が認められた。本所見は,体幹へ安定性を提供するとされている両筋の形態学的関連性を示唆した初めての研究であり,リハビリテーションにおける体幹機能の評価やその解釈に対して有用な知見となるだろう。
著者
小林 巧 家永 直人 杉浦 裕太 斎藤 英雄 宮田 なつき 多田 充徳
出版者
公益社団法人 精密工学会
雑誌
精密工学会誌 (ISSN:09120289)
巻号頁・発行日
vol.84, no.12, pp.996-1002, 2018-12-05 (Released:2018-12-05)
参考文献数
15
被引用文献数
2

This paper presents a method to measure foot shape from a 3D point cloud as input captured from multiple directions using a smartphone depth camera. Such a 3D point cloud could potentially include noise or omit parts of the foot due to occlusion. To deal with this occlusion problem, we propose to use a dataset of 3D foot shapes collected by a precise 3D shape scanner of foot shapes. According to the dataset of 3D foot shapes, we can generate a deformable model by performing a principal component analysis (PCA) on the dataset. Then we minimize the error of the shape represented by the deformable model and the 3D point cloud acquired by the smartphone camera, to recover a complete 3D shape of the entire foot with high accuracy. We test this method by comparing the 3D shape produced by our proposed method to the 3D shape precisely measured by the 3D scanner. Our proposed method can scan the foot shape with an error of about 1.13mm.
著者
岡林 巧 齋藤 利一郎 内谷 保 大竹 孝明 南金山 裕弘 兵動 正幸 村田 秀一 山本 哲朗 中田 幸男 北村 良介 藤井 照久 日下部 伸
出版者
鹿児島工業高等専門学校
雑誌
鹿児島工業高等専門学校研究報告 (ISSN:03899314)
巻号頁・発行日
vol.33, pp.35-43, 1998-09
被引用文献数
1

1997年3月26日17時31分、鹿児島県北西部の薩摩地方を震源とする鹿児島県北西部地震(M6.5)が発生し、鹿児島県北西部は、主として斜面、道路、構造物に大きな被害を受けた。また、同年5月13日14時38分、鹿児島県薩摩地方を震源とする鹿児島県第2北西部地震(M6.3)が再度発生し、前地震による被害を拡大する形で鹿児島県北西部は、この2つの地震により本調査だけでも計466件にのぼる各種の被害を確認するなど甚大な地震災害となった。本研究は、内陸山間部で地震による液状化地盤災害を起こした薩摩郡入来町の造成住宅地の地盤特性を知ることを目的として、液状化地盤のスウエーデン式サウンデイング試験、非排水単調せん断試験および非排水繰返しせん断試験の3種類の試験を行い考究したものである。Northwest Kagoshima Prefecture Earthquake (M6.5), which occurred at 5:31 p.m. on March 26 in 1997, and a secondary one (M6.3), which occurred at 2:38 p.m. on May 13,caused a great ground disaster in some places close to the seismic center. This research is to investigate the ground characteristics in-situ by conducting Sweden sounding experiment at the residential quarter in Iriki -cho of Satsuma -gun, which found liquefaction ground disaster in mountains. As a result, the undrained cyclic and monotonic shear behaviour of Shirasu is found to be greatly dependent on the confining pressure and its density. The undrained cyclic shear stress :ratio to cause failure increases in loose specimen while it decreases in dense specimen with increasig confining pressure.