著者
立木 茂雄 林 春男 重川 希志依 田村 圭子 木村 玲欧 山崎 栄一 上野谷 加代子 柴内 康文 牧 紀男 田中 聡 吉富 望 高島 正典 井ノ口 宗成
出版者
同志社大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2008

人と環境の相互作用の視点から災害脆弱性をとらえ、地理情報システ ム(GIS)の活用により、平時における災害時要援護者の個別支援計画の策定や、災害時におけ るり災情報と支援策の重ね合わせによる支援方策の最適化等に資する標準業務モデル群を開発 した。開発成果は東日本大震災被災地および被災地外の自治体で実装した。併せて、東日本大震 災の高齢者・障害者被害率と施設収容率との間に負の相関関係があることを見いだした。
著者
山崎 栄一 立木 茂雄 林 春男 田村 圭子 原田 賢治
出版者
地域安全学会
雑誌
地域安全学会論文集 (ISSN:13452088)
巻号頁・発行日
no.9, pp.157-166, 2007-11
被引用文献数
1

To establish the evacuation support system for vulnerable people to disasters, some efforts about collecting and sharing personal information are attempted. However, these efforts don't always produce good results. By the analysis of collection and sharing personal information process on vulnerable people to disasters, people in communities feel the necessities of collection and sharing. At the some time, they have serious concerns about protection of personal information. In this paper, the discussion on the evacuation support for vulnerable people to disasters is reconstructed from the point of local community. And this paper proposes the practical ways about collecting and sharing personal information of vulnerable people to disasters.
著者
河田 惠昭 林 春男 柄谷 友香 寶 馨 中川 一 越村 俊一 佐藤 寛 渡辺 正幸 角田 宇子
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2002

フィリッピンのイロコス・ノルテ州を流れるラオアグ川を対象として,発展途上国の開発と防災戦略の事例研究を実施した.この州とラオアグ市にとってはコンクリート製の連続堤防はいくつかの点で歓迎すべき構造物である.それは,台風のたびに発生していた洪水や浸水から開放されること,第二に旧河道や氾濫原において氾濫を」前提としない開発が可能になること,第三に頻繁な維持管理を必要としない構造物は,行政の維持管理能力の低さを補うことができることである.しかし,異常な想定外の外力が働いた場合,氾濫を前提としない開発や生活が被災し,未曾有になる恐れがある.援助側の技術者は,非構造物対策,すなわち,1)構造物を長期にわたって維持管理するための対策,2)住民の防災意識を高めるための対策,3)気象情報の収集と伝達,危険地域の把握,避難勧告など被害抑止のための対策,4)救援活動など被害軽減のための対策が含まれることを知らなければならない.すべての対策において,援助が何らかの役割を果たすためには,まず行政や住民の災害への対応の現状と過去を知る必要がある.調査期間中,台風が来襲し,堤防が決壊し被害が発生した.その原因としては,堤防建設技術の未熟さが指摘でき,防災構造物建設のための必要な知識や技術の取得と移転,実際の建設時における遵守など,構造物を根付かせるための対策も援助側は考えなければならないことがわかった.援助側の技術者は,非構造物対策を考慮に入れた上で,どのような構造物が地域に根付くかを計画する必要がある.そのためには社会を研究している専門家の参加を得て,地域の履歴を知ることは開発援助ではとくに重要である.それは,1)記憶の蓄積と共有化,2)被災者像,3)防災意識の向上の過程,4)防災対策の有無,5)被災者の生活・生計を誰が助けたのか,6)復旧における住民の労働力提供の有無を調べることは価値がある.
著者
河田 惠昭 田中 聡 林 春男 亀田 弘行
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
1996

まず、時間帯ごとの総数死者数および負傷者数の時間変化については、NHKの生活活動調査結果による在宅率などを用い、かつ阪神・淡路大震災のデータを適用して、6つの原因によるものを推定した。その結果、各原因別に時間帯ごとのピークが見出せたほか、被害者総数としては、午前8時前後に最大のピークがあるほか、昼食時や夕方のラッシュアワー時にも大きくなることが見出され、また、兵庫県南部地震が起こった午前5時46分は決して幸運な時間帯でないことが明らかとなった。ついで、被害極限の方法については、間接被害に大きく分けて経済被害と人的被害があり、後者は人命の社会的価値の喪失として位置付けられることを示し、総被害学の評価方法を提案することができた。まず、経済被害としては、阪神・淡路大震災による兵庫県の電力使用料とGRPとの関係から、およそ2兆円と推定され、現象的には復興がすでに終わっていることを示した。また、人的被害の定量化では、平均寿命とGRPとの相関と交通事故による死者、重傷者、軽傷者への保険金支払いなどのコストの比較を用いて、阪神・淡路大震災を解析したところ、およそ2兆円になり、かつこの瞬間的な影響が18年間継続し、その間の総被害額がおよそ10兆円に達することを見出した。したがって、人的被害を軽減することが総被害額を大きく減らすことにつながるという論理が証明され、被害極限には自主防災組織による人命救助の役割が大きいことを見出した。これらのデータをGISに載せ解析することを可能としたが、これまでの町丁目単位ではなく各家屋単位での計算が可能なように次世代GISを開発することを試み、その構築に成功した。これによって、被害者数などを推定しようとすれば、現状の地震動による地盤のゆれの特性(加速度や速度)の評価がまだまだ改良の余地があることを見出した。
著者
林 春男 河田 恵昭 BRUCE Baird 重川 希志依 田中 聡 永松 伸吾
出版者
京都大学
雑誌
特別研究促進費
巻号頁・発行日
2005

平成17年12月10日〜18日、平成18年3.月18日〜27日の2回に渡って、1)米国の危機管理体制、2)被害の全体像、3)災害対応、4)復旧・復興に関する現地調査を行い以下のような知見を得た。調査対象機関は以下の通りである。(1)連邦:連邦危機管理庁・米国下院議会、(2)ルイジアナ州:連邦・州合同現地対策本部、州危機管理局、ルイジアナ復興局、(3)ミシシッピ州:連邦・州合同現地対策本部、州危機管理局、州復興担当事務所、(4)ニューオリンズ市:災害対策本部、都市計画局、(5)レイクビューコミュニティー、(6)在ニューオリンズ日本総領事館。(1)3つの災害:ハリケーン・カトリーナ災害として一括りで語られている災害は1)ハリケーン・カトリーナ、2)ニューオリンズの堤防決壊、3)ハリケーン・リタという3つの事案の複合災害として捉える必要があり、2)の事案は想定外であり、その事が今回の災害対応に関する大きな批判に繋がっている事が明らかになった。(2)危機対応システム:2001年の同時多発テロ以降の危機管理システムの見直しによりDHSの外局とされたFEMAの災害対応の失敗が大きな問題となっているが、その一方で新たに導入されたNRP(国家危機対応計画)、NIMS(国家危機対応システム)が上手く機能した。(3)応急対応期の活動:NRPに規定されるESF(危機支援機能)に基づき自治体の災害対応支援が行われた。被災者に直接支援を行うIndividual Assistance並びに被災自治体に対する支援を行うPublic Assistance共、現地に設置されたJoint Field Officeにおいて連邦政府直轄で業務が行われた。(4)復旧・復興期の活動:ルイジアナ州は復興事業を行う新たな機関Louisiana Recovery Authorityを設置し、復興計画の策定を行っており、住宅再建支援に最大15万ドルが支出される事がほぼ決定された。
著者
木村 玲欧 林 春男 立木 茂雄 浦田 康幸
出版者
地域安全学会
雑誌
地域安全学会論文集 (ISSN:13452088)
巻号頁・発行日
no.1, pp.93-102, 1999-11
被引用文献数
11

Based on a random sampling survey on the "Individual Recovery Processes from the 1995 Hanshin-Awaji earthquake disaster", people in the impacted area can be divided into 4 groups depending on the severity of housing damage and their life stages. An 80% of the severely damaged victims were forced to relocate their home. For then, the need for information regarding housing damage peaked at the first one week after the earthquake, and nearly half of the victims made up their minds with regards to where they live within one month after the earthquake.
著者
河田 惠昭 田中 聡 林 春男
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
1997

プレート境界型巨大地震として南海地震を取り上げ,これによる地震・津波災害の被害軽減策を危機管理の立場から考究した.まず,南海地震津波が広域に西日本太平洋沿岸を襲い,臨海大都市で大きな被害を起こす恐れがあることから,最終年度に大阪市を取り上げ,そこでの氾濫シミュレーションを実施し,氾濫水の特徴を見いだした.すなわち,大阪市北区梅田地区を対象に,M8.4の南海地震を想定し,地震動によって堤防が沈下し,その部分から津波が市街地に流入したという条件の下でシミュレーションを行った.その結果,氾濫水の市街地氾濫は面的に広がるために浸水深の距離的減少が大きいために,津波の場合が破堤点と地下空間の距離が短く,地下空間への浸水量は洪水の氾濫の場合よりも大きくなることがわかった.そこで,津波や高潮氾濫の被害軽減を図る危機管理上の項目を,2000年東海豪雨災害を参照して整理した.その結果,高潮氾濫の場合には路上浸水が始まり,床下浸水,床上浸水,地下空間浸水というような時系列によって被害が段階的に進行し,それぞれに対して防災対策が存在することを明らかにした.一方,津波氾濫を想定した場合,まず地震が起こることが先行するから,二次災害対策として津波防災が存在することがわかった.したがって,地震とのセットで防災対策を立てる必要があり,しかも高潮に比べて時間的余裕があまりないので,選択的に対策を進めざるを得ないことを指摘した.さらに,津波,高潮災害の危機管理上,最大の問題は超過外力に対してどのような考え方を採用するかということである.そこで,受容リスクと受忍リスを新しく定義して対処する方法を提案した.これらを参照して,浸水ハザードマップを防災地理情報システム上で展開する場合に情報を集約するプログラムを開発し,その有用性を明らかにした.
著者
佐藤 篤司 和泉 薫 力石 國男 高橋 徹 林 春男 沼野 夏生
出版者
独立行政法人防災科学技術研究所
雑誌
特別研究促進費
巻号頁・発行日
2005

日本各地に甚大な被害をもたらした平成18年豪雪について、本研究では、大気大循環場と降雪特性、積雪特性の広域分布と雪崩災害、生活及び建築関連雪害、予測技術と軽減方策の四つの研究課題を設定し調査研究を実施した。大気大循環の調査からは、寒気の南下は38豪雪に次ぐ規模であり、特に12月は冬季モンスーン指標が過去50年で最大となったこと、それには熱帯域の影響も示唆されることなどの特徴が明らかになった。その結果、1月初旬に既に最深積雪に近い積雪を各地で記録した。この時点の広域での積雪分布を調査したところ、新潟県上中越から長野、群馬両県境にかけての山間部を始め、東北、中部、中国地方でも特に山間地域に多量の積雪が集中していたことがわかった。山間地での降積雪は必然的に雪崩を誘発し、数多くの乾雪表層雪崩の発生をみた。本研究では死者の出た秋田県乳頭温泉での雪崩を始め、多くの現地調査を行いその発生要因を調査した。また、広域の一斉断面観測により、早い時期からの積雪増加が高密度で硬い雪質をもたらしたことが観測され、それが生活関連雪害にも反映したことが推測された。生活関連雪害では、死者(交通事故を除く)の圧倒的多数(3/4)は雪処理中の事故によるものであった。その比率は56豪雪時(1/2)と比べて増加していること、多くは高齢者で全体の2/3をしめ、70歳代が群を抜き、高齢者が雪処理に従事せざるを得ない状況などが読み取れた。また、56豪雪と比べて家屋の倒壊による死者が多く、老朽家屋に高齢者が住んでいて被害に遭遇するという構造がうかがえた。さらに本研究では、積雪変質モデルを使った雪崩危険度予測を行い、実際の雪崩発生と比較検討するとともに雪崩の危険性によって長期間閉鎖された国道405号線に適用する試みや冬季のリスクマネジメントに関する調査等を実施し、雪氷災害の被害軽減に有効な手法についての研究も行った。
著者
高島 正典 林 春男
出版者
地域安全学会
雑誌
地域安全学会論文集 (ISSN:13452088)
巻号頁・発行日
no.2, pp.69-78, 2000-11
参考文献数
10
被引用文献数
1

In this paper, the validity of the method,to estimate damaged area using DMSP/OLS (Defense Meteorological Satellite Program/ Optical Linescan System)night-time imagery developed by our research group(Hayashi et al, 2000). OLS mounted on the DMSP satellites captures city lights distribution reflecting extent of human activity. The area shows significant decrease of light intensity after the earthquake compared with before the event is estimated as impacted area in the DMSP method. We compared the actual damage with estimated damaged area of Marmara earthquake in Turkey (1999) and of Hanshin-Awaji earthquake (1995) based on the DMSP method. As a result, it is clarified the DMSP method can detect various kinds of damages rather than only severe housing damages.
著者
林 春男 福永 弘樹
出版者
地域安全学会
雑誌
地域安全学会論文報告集
巻号頁・発行日
no.2, pp.1-10, 1992-05

平成3年9月27日夕刻広島地方を襲った台風9119号による停電を中心としたライフライン災害を事例として、ライフライン間の相互連関と、それが社会生活に及ぼす影響について、台風災害に関する新聞記事から抽出した136件の現象についてISMの手法を用いて現象間の因果関係を構造化した。その結果、今回の災害が、停電、強風、高潮、交通機関の混乱の4種類の比較的独立した現象群に分かれることが明らかになった。とくに、停電による波及効果は広い範囲に及んでおり、ハイテク社会の脆弱性をあらわにし、停電による断水の発生というライフラインシステム相互の被害の連関を生み、生鮮食料品の物流システムにおける冷蔵庫の重要性を明らかにした。強風による高潮も広範な波及効果を持っており、水産物被害や塩害だけでなく、浸水による交通機関の混乱や家屋被害を引き起こした。強風、停電、高潮のいずれの場合にもその結果として、交通機関の混乱と学校での臨時措置の必要性という2つの問題が発生していた。このため、この2つは都市域での大規模災害に共通する問題点として、十分な対応策を考慮すべきであるといえる。ライフライン間の相互連関の事例として今回の災害を見ると、ライフライン間の機能障害波及が見られ、そのなかでも電力途絶による断水がもっとも深刻な問題になっていた。とくに傾斜地の高所部や屋上揚水タンクを持つビルでは深刻な問題だった。高層化がすすむ大都市における地震防災を考える上でも貴重な事例であるといえる。
著者
林 春男 山下 裕介 田中 重好 能島 暢呂 亀田 弘行 河田 恵昭
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
1995

災害復旧に従事する防災機関のロジスティクス・マネージメントにおいて,災害対応を緊急対策,応急対策,復旧・復興対策という相互に独立し,異なる目標を持つ3種類の対策の組み合わせとして考えることが可能である.しかも,この3種類の対策はすべて災害発生直後から同時に,別々の担当グループによって実施される必要性が明らかになった.その間でのニーズと資源の相互調整過程にロジスティクス・マネージメントの本質があると考え,それを可能にする情報システムの構築を行った.1)防災CALSの構想 災害対策をおこなう関連部局間での状況認識の共有と資源調整を可能にするための情報処理標準の必要性を明らかにし,そのプロトタイプを検討した.2)被害状況の把握,対応状況の整理,資源動員計画の立案,周知広報による情報共有の確立を統一的に推進するシステムの構築を目的として,カリフォルニア州が開発した“OASIS" (OPERATIONAL AREA SATELLITE INFORMATION SYSTEM)と,わが国の災害情報処理報告形式とを比較検討し,わが国における合理的な災害情報処理様式の検討を行った.3)合理的な意思決定を支援するためには,災害対応の各局面における制約条件,過去の教訓棟を的確に参照しうるシステムが必要となるという認識のもとに,SGML (Standard General Markup Language)による災害情報管理システムのプロトタイプを構築した.各種防災計画の改訂や検索に強力な武器になることが明らかになった.4)阪神淡路大震災で初めて注目され,今後の利用法の検討が考えられるべきボランティア問題に関して,実態調査を重ねその問題点を明らかにした.
著者
福永 弘樹 林 春男
出版者
地域安全学会
雑誌
地域安全学会論文報告集
巻号頁・発行日
no.2, pp.11-20, 1992-05

1991年9月27日の午後4時過ぎ長崎県に上陸した台風9119号は強風による多大な被害を全国にもたらし、広島市内では最長5日間の停電被害を受けた。このような長期停電はわが国の政令都市においては初めての体験であり、都市型災害の特徴であるライフライン災害の典型的な事例である。本研究は広島市民を対象とした意識調査を通して、都市化社会におけるライフラインの機能障害の影響とそれに対する住民の対応の実態を明らかにすることを目的にしている。本報告では、広島市民の不安を中心に、その規定因と災害対応の特徴について速報する。今回の台風9119号災害時の住民の不安は2種類の不安に分類することができた。1つは個人的な生活に関する不安で、もう1つは社会サービスの提供に関する不安であった。どちらの不安が住民にとって高かったかといえば、個人的な生活に関する不安であった。このことは住民が社会サービスの提供に信頼を抱いているからだと考えることができる。その理由は、広島市の中心部での停電が短く「文明の島」として機能していたためではないかと推測される。この地域は電線の地中化により塩害停電の影響を受けなかったため、各種の社会サービスの提供に支障がなかった。このような地域が居住地域内に存在することで、住民は「文明の島」に行けばサービスが受けられるため、それが社会サービスの不安が低かった原因と考えられる。またこれらの不安を規定する要因には、被災体験と被害がみられたが、個人的な生活に関する不安は性別・年齢・居住形態といった他の規定要因も存在することが確かめられた。そしてこのような個人的な生活に関する不安が高い人は、災害に対する備えといった対応行動が遅く、また隣近所通しのローカルなコミュニケーションを中心に情報を伝達していることが特徴的にみられた。
著者
林 春男 田中 重好 卜蔵 建治 浅野 照雄 中山 隆弘 亀田 弘行
出版者
広島大学
雑誌
重点領域研究
巻号頁・発行日
1992

広島地区(2124名)及び弘前地区(928名)で共通のフォーマットを用いた住民への意識調査を行い以下のような結論を得た。(1)今回の調査では人口109万人の広島市、17万人の弘前市、さらに純農村である青森県平賀町を調査対象とした。人口規模では大きな差異がみられる広島・弘前両市の住民の間には、今回の台風を契機とするライフライン災害に対する対応には差異がみられなかった。しかし、平賀町と市部との差異は顕著なものであり、少なくとも人口100規模までの都市では都市型災害の様相及び防災対策に共通性が存在しうる。(2)被災住民のがまんには3日間という物理的上限が存在すること。(3)復旧に関する情報の提供のまずさが被災住民にとって最も不満であった。住民が求める情報と提供される情報との間には大きなギャップが存在し、情報伝達手段もマスメディア主体となるために、一方的な情報提示に過ぎなかった。こうした事実をもとに被災地域内での情報フロー・システム構築の必要性が議論された。広島地区では中国電力をはじめとする各種行政機関及び指定公共機関を対象に台風9119号に対する危機対応についてヒヤリングを中心にして検討した。その結果、広島市の中央部が配電線の地中化事業が講師が完成していたために、他の地域とは違い停電期間がきわめて短く、広島市における「文明の島」として機能したことが明らかになった。こうした文明の島の存在によって、停電期間中であっても広島市民は「個人的生活」に関する不安は高かったものの、「社会的サービスの提供」に関する不安は低く、それが停電期間中に大きな社会的混乱がみられなかったことに貢献していることが議論された。
著者
浦川 豪 吉富 望 林 春男 池見 洋明 三谷 泰浩 江崎 哲郎
出版者
地域安全学会
雑誌
地域安全学会梗概集
巻号頁・発行日
no.16, pp.61-64, 2005-05
被引用文献数
1

Fukuoka west offshore earthquake occurred on March 20th, 2005. We built the GIS portal site using post-event consequence of the restoration and revival support GIS project of the Chuetsu Earthquake. This project also aims sharing information and grasping situation summary in Fukuoka city area affected by earthquake by cooperation of external resources. We could launch the GIS portal site of Fukuoka west offshore earthquake within two week after the shock. This project illustrated the way using GIS navigated by efforts of the Chuetsu Earthquake.
著者
植田 達郎 林 春男
出版者
地域安全学会
雑誌
地域安全学会論文報告集
巻号頁・発行日
no.8, pp.242-247, 1998-10
被引用文献数
1

As a lessons learned from Hanshin-Awaji Earthquake Disaster., many organizations revised their emergency response plans intensively. Since emergency responders tends to have limited time availability at the time of disaster, the response mannuals should allow them to access the information they need as soon and easily as possible. In this paper, we propose a hyper-text system using HTML which allow us to make use of dynamic change of contents as well as various colors, and which also overcome the problems due to the lack of random accessibility document. In addition, a text filter has been developed to automatically handle a large quantity of text document into HTML files.
著者
平野 昌 林 春男
出版者
地域安全学会
雑誌
地域安全学会論文報告集
巻号頁・発行日
no.6, pp.35-42, 1996-11

三重県は、幸いにして阪神・淡路大震災の直撃は免れたものの、被災地域近隣の自治体として、決して他人事ではない大きな課題を提起されたと受けとめている。そのため、本県では地域防災計画の抜本的見直しをはじめとして、直下型地震を対象とした被害想定調査の実施、防災情報システムの開発や再整備、また、これまでとは趣向を変えた様ざまな防災訓練の実施や阪神・淡路大震災の揺れを再現できる地震シミュレータカーの新規導入等、「防災」をキーワードに多様な行政施策を実施あるいは着手し、三重県における新たな防災体制を構築しようとしている。本稿では、これまで三重県が実施してきた防災行政施策のうち、1996年1月に県内の全世帯(約62万世帯)に配布した地震防災に関する啓発冊子「三重県地震防災読本」の制作について、内容の紹介を中心に、その後の展開も含めて論じてみたい。地震防災に関する啓発冊子といっても、これまでも沢山の種類の冊子が自治体や関係機関から発行されてきたが、本県の制作した「三重県地震防災読本」(以下「読本」と略す。)は、地震災害が起こってからの住民の行動パターンや行動指針について重点的に取り扱っているという点で、他にはない独自性のあるものだと考える。この読本の制作にあたっては、京都大学防災研究所の林春男教授に全面的な指導をいただいた。林教授の熱心な指導がなければ、約2か月という短期間での完成はなかった。また、印刷された62万冊の読本を迅速に県内全域の各家庭に配布するという膨大な作業の労を執っていただいた69市町村の関係者の存在なくしては、この事業の成果は得られなかった。合わせてここに感謝の意を表したい。三重県地震防災読本はA5版42ページの「オリジナル版」を制作した後、「点字版」をはじめ、「ビデオ版」、「インターネット版」、「FAX情報版」と、この1年間に意外なスピードで自己増殖を始めている。また、他の自治体や危機管理に熱心な企業からの問い合わせが今でも続いており、既にこの読本の基本コンセプトを採用して、独自の地震防災啓発冊子を制作された自治体もある。今後も、住民プリペアドネス(事前準備)の向上という新しい視座に立った「三重県地震防災読本」の新たな展開を考えていくとともに、これをきっかけとして、「防災」という最も基礎的な社会機能に、住民本位で親しみやすいという意味で「ポップ」な要素を導入して、マンネリズムや形骸化に対抗していくという様ざまな試みを企てたいと目論んでいる。