著者
金森 憲太朗 高木 拓也 小林 健 有村 博紀
出版者
一般社団法人 人工知能学会
雑誌
人工知能学会全国大会論文集 第34回全国大会(2020)
巻号頁・発行日
pp.3Rin444, 2020 (Released:2020-06-19)

反事実的説明法(CE: Counterfactual Explanation)は,機械学習モデルの予測結果から説明を抽出する事後的手法の一つで,予測結果を所望のクラスに反転させるような特徴量の摂動方法を,説明としてユーザに提示する.ユーザはその摂動を,自らが望む予測結果を得るための"改善アクション"として直接解釈することができる.しかし,既存の改善アクション抽出法では,特徴量間の相関関係や外れ値リスクなど,元のデータが従う分布が持つ特性が十分に考慮されていないため,ユーザにとって実現可能な改善アクションが得られるとは限らず,改善アクションの実用性や信頼性に問題がある.そこで本研究では,実現可能な改善アクションを抽出するために,特徴量間の相関と外れ値検出スコアに基づく改善アクションの新たな評価関数を導入し,混合整数計画法に基づく解法を提案する.FICOデータセットを含む実データ実験により既存の改善アクション抽出法と比較を行い,提案手法の有効性について確認する.
著者
小森 憲治郎 谷向 知 数井 裕光 上野 修一
出版者
日本基礎心理学会
雑誌
基礎心理学研究 (ISSN:02877651)
巻号頁・発行日
vol.33, no.1, pp.55-63, 2014-09-30 (Released:2014-11-26)
参考文献数
39

Semantic dementia (SD) is a neurodegenerative disorder featured selective loss of semantic memory associated with a focal atrophy of the anterior temporal lobes. The aim of this study was to describe the clinical features of SD and to propose a coping method as a care for the patients with SD. Difficulties in naming and recognition of words with surface dyslexia on kanji-word reading [gogi-aphasia] are the most prominent symptoms in the patient with the left-dominant temporal lobe atrophy, while misidentification of familiar persons [prosopagnosia] and/or misunderstanding of visual objects [associative agnosia] is the characteristic of the patient with the right-dominant temporal lobe atrophy. Either symptom, however, rather appeared common in almost every SD patient from longitudinal perspectives of progressive amodal semantic impairment. Then the persistent stereotypies at an early stage of the disease turned into prominent and huge destructive behavior and psychological symptoms of dementia (BPSD). Quality associated way of care for patients with SD, early exposure to daily cognitive skill training utilizing preserved abilities and stepwise application to the care-services is essential.
著者
寺内 美奈 藤森 憲男 神田 和幸 長嶋 祐二
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. ET, 教育工学 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.94, no.102, pp.69-74, 1994-06-18
被引用文献数
3

近年,聴覚障害者の情報伝達手段の一つである手話への関心が高まり,手話の習得を志す人々が年々増加している.一般的に手話を学習する方法として,手話講習会や手話サークルへの参加,TV講座や手話の本の利用などがある.我々は手話を学習するための補助手段として,パーソナルコンピュータによる手話学習システムの構築を目指している.本報告では,手話学習システムを構築するにあたり,従来の手話の学習方法について調査し,本システムにおける学習日標を明確化する.また,手話を学習する上で重要である手話調動を習得するための一機能として,以前我々が報告した液晶シャッターを用いる3D手話アニメーションを採用することについて検討する.さらに,その立体視によるアニメーションでの学習効果を確認するため,初期実験として,3Dアニメーションによる表示された手話語彙について,聴覚障害者を含む20名の被験者により評価実験を行ったので,その結果についても報告する.
著者
小森 憲治郎 池田 学 中川 賀嗣 田辺 敬貴
出版者
一般社団法人 日本高次脳機能障害学会
雑誌
高次脳機能研究 (旧 失語症研究) (ISSN:13484818)
巻号頁・発行日
vol.23, no.2, pp.107-118, 2003 (Released:2006-04-21)
参考文献数
21
被引用文献数
6 3

側頭葉の限局性萎縮により生じる意味痴呆と呼ばれる病態では,言語・相貌・物品など広範な対象についての意味理解が選択的に障害される。意味痴呆における葉性萎縮のパターンには,通常左右差が認められるが,萎縮の優位側に特異的な認知機能障害については,いまだ十分な合意的見解が得られていない。そこでまずわれわれは,左優位の萎縮例と右優位例の神経心理学的比較検討から,左右側頭葉の役割分化に関する手がかりを得ようと試みた。その結果,典型的な語義失語像を呈した左優位例では,呼称,語産生と,理解に関する項目で右優位例を下回り,知能検査についても言語性検査の成績低下が著明であった。一方右優位例では,総じて語義失語の程度はやや軽度で,代わって熟知相貌の認知障害,物品の認知ならびに使用障害を呈したが,言語の諸機能はまんがの理解を除き左優位例に比べ成績低下が軽度であった。また知能検査では言語性,動作性ともに低下し,何らかの視覚性知能の障害も併存している可能性が示唆された。さらに諺と物品という,それぞれ言語性・視覚性と異なる表象の保存状態を調べる補完課題を用いた比較では,どの意味痴呆患者も何らかの補完課題の障害を認めたが,諺の補完課題での成績低下が著明で物品の補完は比較的保たれる左優位例に対し,おもに物品の補完課題に著しい困難を呈し,諺では補完が比較的保たれる右優位例,という二重乖離が認められた。これらの結果は,左側頭葉前方部が言語性の,また右側頭葉前方部は視覚性の表象を司る神経基盤として重要であることを示唆している。
著者
森 憲一
出版者
文教大学湘南総合研究所
雑誌
湘南フォーラム : 文教大学湘南総合研究所紀要 = Shonan Forum : journal of the Shonan Reserch Institute, Bunkyo University (ISSN:18834752)
巻号頁・発行日
no.24, pp.31-39, 2020-03

We are surrounded by storylike information that is composed of "lines" connecting facts. However, those "lines" are not necessarily fact. Facts that are told as a storyline, rather than fragmentary one, enable audience to understand overall concept easily. It even helps them to use their imagination beyond the facts, which might make the information more valuable to them. However, in the process of forming a story, some certain facts may be omitted. It's also possible facts may get connected in incorrect orders, which leads the relation of cause and effect to be reversed. Given audience trusts Japanese TV media to provide information in a fair and public manner, it is critical to ponder on how they should convey information. This thesis, in this sense, aims to clarify difference between TV media and other media such as Social Networking Service. Furthermore, it examines objectivity of the information that TV media broadcast.
著者
小森 憲治郎 豊田 泰孝 清水 秀明 森 崇明
出版者
一般社団法人 日本高次脳機能障害学会
雑誌
高次脳機能研究 (旧 失語症研究) (ISSN:13484818)
巻号頁・発行日
vol.38, no.3, pp.311-318, 2018-09-30 (Released:2019-10-02)
参考文献数
14
被引用文献数
1

意味性認知症 (semantic dementia: SD) の 54 歳男性の 10 年に及ぶ外来通院時の観察について報告した。初診時, 進行する言語理解障害により業務に支障をきたすようになったという病識を伴い単独で受診した。退職後は農業と言語訓練の自習課題に対する固執性が強まり, 実りの悪い野菜を大量に作る, コピー用紙備蓄のため会社のコピー機を独占するなど行動化が顕著となった。発話は次第に抑揚が乏しくなり, 通院時に行う月間報告などの決まりごと以外の自発話は著しく減少した。5 年目に視空間認知機能はよく保たれていたが, 日常物品を正しく認識し, 適切に使用することが困難となった。7 年目にはどの質問に対しても「分からない」という反応に終始するようになり, 心理検査が実施できなくなった。発話面ではプロソディー障害, 発語失行など非流暢性失語の要素が現れ, 語間代から「と, と, と, と」という同語反復の出現を経て 11 年目には無言状態となった。自習課題を通した読み書きの習慣と特有の報告スタイルは, 口頭言語能力の低下を越えて, 外来通院の期間中概ね維持・継続された。これらの習慣は通所介護サービス利用時や在宅での活動維持の一助となった可能性がある。SD の特性を理解したケアが求められる。
著者
坪井 祥一 淺川 義堂 田中 利典 森 憲司 岩砂 三平
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement Vol.39 Suppl. No.2 (第47回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.Bb1420, 2012 (Released:2012-08-10)

【はじめに、目的】 大脳基底核は脳出血の好発部位でもありながら,大脳皮質や脳幹と強い機能的連結を持ち運動プログラムの生成や随意運動の実行,姿勢制御プログラムおよび自動歩行運動の制御を担う(高草木2009,花川2009)など,理学療法において最も重要な脳器官の一つであると考えられる.大脳基底核は直接路や間接路,ハイパー直接路からなる回路構造を持ちその内部で大脳皮質および脳幹から得た情報を元に,抑制増強と脱抑制を相互に用いながら(南部2009),運動の開始・切り替え・終了といった随意制御を担っているとされている.また,特に補足運動野との機能的連結によって記憶誘導性運動を,一方で同じ高次運動野でも運動前野は視覚誘導性運動を担っている(乾2001)とされている.この双方の比較的相反する機能を応用し,パラレルニューラルネットワーク(彦坂2003)が運動学習理論として提唱されている.今回左被殻出血を呈した患者様に対して上記メカニズムを応用した理学療法を実施し,得られた結果,その一考察を報告する.【方法】 症例は60歳代女性,右利き,病前ADLは自立,特筆すべき既往歴はなし.MRI所見として,主に左被殻後部・放線冠を中心とした損傷と内包後脚方向への血腫による圧迫を認めた.尾状核,被殻前部の直接的損傷は免れていた.当院入院当初(第37病日後)重度右片麻痺SIAS-motor0-0-2-1-0,表在・深部感覚重度鈍麻,筋緊張は弛緩性であった.神経心理学的所見としては伝導失語,軽度の失行,軽度の注意障害を認めた.機能的制限として,座位保持は自立であるが,起立・移乗は軽介助,立位保持は後方へ倒れやすく中等度介助,歩行は右下肢の振り出しが自己にてわずかにできる程度,右膝関節の膝折れ著名であり中等度介助を要した.本症例に対し,大脳基底核を中心としたメカニズムを応用し理学療法を実施した.視覚情報を用い随意運動を制御するため,姿勢矯正鏡の前で1日40分程度の動的立位,バランスex.(起立動作,スクワット,左右への重心移動,踵上げ,ステップ動作,リーチ動作を各20回程度),および20分程度の歩行,階段昇降ex.等を実施した.その際,本症例の能動的視覚性注意が保たれ,十分な視覚情報が随意運動・姿勢制御に寄与するよう,指差し指示やセラピストの視線等を有効に用い,姿勢矯正鏡に写る症例自身の身体関節運動を注視させ,視覚的注意対象を限定させた.また必ずジェスチャーにてセラピストがやって見せ,動作理解が行えた事を確認しながら行なった.その後,課題動作が概ね監視あるいは自己にて可能なレベルまで改善されたことを確認し,同様の動作を閉眼位にて行なった.【倫理的配慮、説明と同意】 本症例に対し,研究に関する趣旨を説明し,同意を得た.【結果】 第78病日後,SIAS-motor1-0-3-2-1,表在・深部感覚重度鈍麻,筋緊張は弛緩性であった.神経心理学所見として特筆すべき変化は認めなかった.動作能力としては起立動作,立位保持は自立,歩行はT字杖および短下肢装具着用下において二動作前型歩行を獲得し,病棟歩行が自立となった.【考察】 今回,左被殻出血を呈した重症片麻痺症例に対し,大脳基底核を中心とする脳機能メカニズムを応用した理学療法を試みた.今回損傷された被殻を中心とする大脳基底核は,補足運動野との機能的連結により,運動の開始・切り替え・終了を随意的に制御し,内発的かつ記憶誘導性の運動制御を担っていると考えられる.一方で同じ高次運動野でも運動前野は頭頂連合野,小脳との機能的連結により,外部情報を起因とする視覚誘導性運動を担っているとされている.またパラレルニューラルネットワークの概念図より,新しい運動を学習する運動学習初期段階では,後方線条体を中心とした体性感覚情報と比較し,より前方線条体を中心とした視覚情報を元に運動学習が行なわれるとしている.これらのことから被殻後部を損傷した本症例に対し,体性感覚情報を用いた随意運動制御と比較して,視覚矯正鏡等を用いた視覚情報による随意運動制御を行なった方が,小脳-頭頂連合野-運動前野系経路による視覚誘導性運動をより賦活することになったと考えられ,理学療法介入初期において,より運動学習が行なわれやすかった可能性が示唆された.また本症例にとって,視覚情報による運動制御がある程度成立した後に,閉眼位課題を導入することで,視覚情報と体性感覚情報の異種感覚統合がより行なわれやすくなり,更なる運動学習が進んだ可能性があることが示唆された.【理学療法学研究としての意義】 本症例において大脳基底核を中心とした脳機能メカニズムの理学療法応用は有用である可能性が示唆された.
著者
小森 憲治郎 豊田 泰孝 森 崇明 谷向 知
出版者
一般社団法人 日本高次脳機能障害学会
雑誌
高次脳機能研究 (旧 失語症研究) (ISSN:13484818)
巻号頁・発行日
vol.36, no.3, pp.350-360, 2016-09-30 (Released:2017-10-05)
参考文献数
33

意味記憶の選択的障害例である意味性認知症 (SD) の言語症状は, 語義失語である。SD に伴う語義失語では, 語の辞書的な意味の喪失を反映し, 語の想起と理解の障害像に特有の症状があり, また書字言語に関しては表層失読のパターンが認められる。これらの症状に共通する特徴は, 頻度や典型性から離れた対象に対する既知感の喪失である。SD 特有とされる語義失語であるが, 側頭葉前方部の萎縮を伴うアルツハイマー病 (AD) 例の亜型にも, SD と類似の言語症状や画像所見を認める場合があり, 注意が必要である。本研究で取り上げた2 例は, エピソード記憶障害に違いはあるものの, 年齢や教育年数など背景条件が類似し, 画像や神経心理学的検査プロフィールにおいても共通の特徴が認められた。しかし注意深い観察により, 次のような相違点を見出すことができた。まず, 呼称と理解成績の一貫性は, 症例2 では高いが, 症例1 では低かった。また理解できない対象への態度にも違いがあり, 症例2 では「わからない」反応が多いのに対し, 症例1 では命題的な場面で, 対象の個別の感覚的属性にとらわれ抽象的な判断能力が弱まる『抽象的態度の障害』を呈した。これは健忘失語の二方向性障害を示唆する所見である。これらの特徴から, 症例1 は側頭葉前方部の萎縮に伴い二方向性の健忘失語を呈したAD 例, 症例2 は高齢発症のSD 例と診断した。このようなSD と見誤り易い症候が出現する背景には, SD の神経病理として有力なTDP-43 の神経変性疾患における併存や, 比較的扁桃体周囲に限局する分布の特徴が関与している可能性を推測した。
著者
石田 文香 森 憲一
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement
巻号頁・発行日
vol.2015, 2016

【はじめに,目的】慢性閉塞性肺疾患(以下COPD)の診断基準であり病態を表す気流制限は,生活の質(以下QOL)や予後を反映する評価とは必ずしも一致しない。今回,COPDの呼吸障害に対する理学療法(以下PT)の効果を検討する目的で,職業動作のパフォーマンスとQOLを追跡評価し治療を展開したので考察を加え報告する。【方法】カナダ作業遂行測定(以下COPM)により目標と治療戦略を立案し,修正MRC息切れスケール(以下mMRC),Updated BODE index,胸郭拡張差,6分間歩行距離,PCI,COPD assessment test(以下CAT),MOS36-Item Short-Form Health Survey(以下SF-36v2™)にて効果判定を行った。症例は50歳代前半男性。BMI22.4kg/m<sup>2</sup>。独居。職業ラーメン屋店員。喫煙歴約35年。6年前COPD重症度III期と診断。徐々に症状増悪しX年より在宅酸素療法(安静時O<sub>2</sub>1L,労作時O<sub>2</sub>2L)を開始。X+1年9月,重症度IV期に進行,当院PT目的にて入院し1ヶ月の治療を実施。身体機能面とQOLの改善が得られた。退院前にNPPV導入。週1回の外来PTを実施し職場復帰を果たした。その後の追跡にて,各評価測定値の悪化と外来通院継続困難が原因となり,X+2年8月NPPV再教育及びPT目的のため,約3週間の再入院となった。本発表は再入院時を初期評価,退院時を最終評価とした。外来通院期間は仕事や家事のため通院が不定期となり,来院時に運動負荷をかけないコンディショニングが中心とならざるを得ない状態であった。しかし入院期間中は,これらの治療に加えNPPVを併用したトレッドミル歩行の高負荷運動療法を実施できた。また自宅での家事動作や職場での姿勢・動作に特化した動作学習も実施できた。【結果】初期評価→最終評価で記載。COPM(遂行度/満足度)①呼吸困難を減らす(1→7/1→9)②自分より年上の方に負けないように歩く(1→7/1→5)③咳,痰を減らす(3→10/3→10),平均スコア1.7→8.0/1.7→8.0。mMRC Grade3→2.Updated BODE index12→8点。胸郭拡張差(腋窩-剣状突起-第10肋骨)2.0→2.0-3.0→4.0-4.0→5.0cm。6分間歩行距離205→327 m。PCI 0.41→0.29 beats/m。CAT30→22点。SF-36v2™下位尺度得点は身体機能25→50,身体日常役割機能25→37.5,体の痛み22→31,全体的健康感20→25,活力37.5→56.3,社会生活機能25→37.5,精神日常役割機能25→41.7,心の健康30→55と全ての項目において改善がみられた。退院後,週1回の外来PTを再開し,再職場復帰を果たした。【結論】本症例は,家事・仕事による時間・体力的制約により外来通院が困難となり,入院加療が必要となった。通院に体力を消費しない分,入院中では運動負荷をはじめ外来とは異なる治療を展開した。COPD患者の背景は多様であり,治療も画一的ではない。COPMにより個別性を重視した目標設定と治療展開を行い,ラーメン屋で行う動作特性を考えたパフォーマンスの改善を検討できた。不可逆性であり進行性であるCOPDの病態について残存機能に着目し,個別性を重視した治療展開がQOL維持・向上には必要であると考える。
著者
宮川 勇生 山尾 裕道 谷山 圭一 河野 恭悟 春山 康久 森 憲正
出版者
公益財団法人 日本感染症医薬品協会
雑誌
The Japanese Journal of Antibiotics (ISSN:03682781)
巻号頁・発行日
vol.40, no.5, pp.1089-1093, 1987

単純子宮全摘出術を受けた29症例を対象にCefuzonam (CZON) 1gをOne shot静脈内へ投与した場合の肘静脈, 子宮動脈血中濃度及び卵巣, 卵管, 子宮内膜, 筋層, 子宮頸部, 膣部の各組織内濃度について検討した。<BR>肘静脈及び子宮動脈の血中薬物初濃度は, それぞれ148-1μg/ml, 155.4μg/mlで, 高い血中濃度が得られ, 半減期はそれぞれ1.07時間, 1.02時間であつた。又, CZON投与後4時間10分までは, <I>Escherichia coli</I>をはじめとする多くの細菌に対するMICを上回る濃度であつた。更に, 各骨盤内臓器への薬剤の移行も良好で, 卵管及び子宮内膜の組織内濃度と肘静脈血中濃度の比率は, それぞれ0.74, 0.44で卵管への薬剤の移行が良好であつた。<BR>以上の成績及びCZONの強い抗菌力, 広範囲の抗菌スペクトラム, 更にその安全性から, 新しいCephem系抗生物質として婦人科領域の感染症に対して広い臨床応用が期待される