著者
中村 理恵子 大森 泰 須田 康一 和田 則仁 川久保 博文 竹内 裕也 山上 淳 天谷 雅行 北川 雄光
出版者
一般社団法人 日本消化器内視鏡学会
雑誌
日本消化器内視鏡学会雑誌 (ISSN:03871207)
巻号頁・発行日
vol.60, no.8, pp.1515-1526, 2018 (Released:2018-08-20)
参考文献数
24

自己免疫性水疱症は自己抗体により細胞間接着が障害され,皮膚や重層扁平上皮に水疱が形成される疾患の総称である.多くは皮膚に水疱やびらんを形成するが,目,鼻,口腔粘膜,口唇,咽喉頭,食道などの重層扁平上皮にも水疱やびらんを形成することがある.しかし,咽喉頭および食道粘膜における病変の発生頻度や特徴についてはよく知られていない.この研究においては,自己免疫性水疱症における上部消化管内視鏡検査の重要性を評価することを目的とし,内視鏡的な咽喉頭食道病変の発生頻度をprimary endpoint,内視鏡的・臨床的特徴を見出すことをsecondary endpointとして評価を行った.口腔または咽喉頭病変を50.4%,咽喉頭病変を30.8%に認めた.通常観察で食道粘膜面に異常を認めなかった症例の40.6%において機械的刺激による表皮剥離または血疱形成(Nikolsky現象)を呈した.全体の16.8%に通常観察で食道病変を認め,56.0%がNikolsky現象陽性を呈した.皮膚病変を認めない29.2%の症例において,77.7%に口腔または咽喉頭病変,36.1%に食道病変,58.3%にNikolsky現象を認めた.上部消化管内視鏡所見より自己免疫性水疱症を疑うことは可能であり,その内視鏡的特徴および所見を理解しておくことは重要である.
著者
中森 泰三 一澤 圭 Pham Hoang Nguyen-Due 寺嶋 芳江
出版者
日本土壌動物学会
雑誌
Edaphologia (ISSN:03891445)
巻号頁・発行日
vol.106, pp.11-18, 2020

秋田県において菌類の子実体から得られた<i>Ceratophysella mediolobata</i> Nakamori, sp. nov. を記載した.また,沖縄県から本邦初記録となる<i>Ceratophysella liguladorsi</i> (Lee, 1974) が菌類の子実体から得られた. これらの2 種および<i>Ceratophysella tergilobata</i> (Cassagnau, 1954) は腹部第5 節に突起をもつ点で類似するが,<i>C</i>. <i>tergilobata</i> は他の2 種と上顎外片に1 本の副片毛をもつ点で区別でき(他の2 種は2 本),<i>C</i>. <i>mediolobata</i> sp. nov. は<i>C</i>. <i>liguladorsi</i> と腹部第4 節背面の後列の第3 毛を欠く点で区別できる(<i>C</i>. <i>liguladorsi</i> は第3 毛をもつ).DNAバーコードによる同定を可能にするために,<i>C</i>. <i>mediolobata</i> sp. nov. および<i>C</i>. <i>liguladorsi</i> のミトコンドリアのチトクロームC オキシダーゼサブユニットI 遺伝子および16S リボソームRNA 遺伝子の一部分の塩基配列を決定した.
著者
森 泰生
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2012-04-01

活性酸素種ROSや親電子分子種は生命体にストレスを与えるが、細胞シグナル分子としても注目されている。私たちは、複数のTransient Receptor Potential (TRP) Ca2+透過カチオンチャネルがレドックス感受性を有し、細胞死、細胞化学遊走等の生体応答を惹起することを示した。本研究はレドックス感受性TRP群が果たす炎症における役割を明らかにした。特に、TRPM2は多様な炎症性細胞応答の鍵シグナル調節因子であることが分かった。O2をも感知するTRPA1の高酸化感受性も示した。レドックス感受性TRP群の生理学的意義の解明は、TRPの臨床医学上の治療標的としての重要性を示唆する。
著者
佐藤 真 森 泰丈 岡 雄一郎 猪口 徳一
出版者
大阪大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2015-04-01

実験を進めるに従い、予想外であったが「マイクログリアの活性化状態には3つ以上のフェーズが存在する」ことを支持する結果を得た。アルギニンメチル化酵素がこの活性状態の遷移に本質的な役割をになうことを、CRISPR/Casのシステムをマイクログリア由来の細胞株に適用することで検証した。同時にPTSDの病態の脳内回路を解明するため、島皮質から前帯状回に投射しPTSDの病態に重要であるとヒトでの所見より想定されるが、高等哺乳類の脳にのみ存在するため実験的アプローチが困難とされていたvon Economo細胞の類似細胞が発現マーカーの検討により、げっ歯類島皮質にわずかであるが存在することを観察した。
著者
中森 泰三 一澤 圭 田村 浩志
出版者
日本土壌動物学会
雑誌
Edaphologia (ISSN:03891445)
巻号頁・発行日
vol.95, pp.43-82, 2014-11-14 (Released:2017-07-20)

日本産ミズトビムシ科およびムラサキトビムシ科の種を同定するための形質を示した.ミズトビムシ科は1属1種からなる.ムラサキトビムシ科の9属42種については図解検索表を示した.識別の指標となる主な形質は,小眼の数触角後器および副爪の有無,跳躍器端節の形,毛序である.各種の形態学的特徴をまとめた.
著者
中森 泰三
出版者
日本菌学会
雑誌
日本菌学会大会講演要旨集 日本菌学会第53回大会
巻号頁・発行日
pp.3, 2009 (Released:2009-10-30)

菌類の子実体は菌類の繁殖器官であると同時に,多くの動物の餌ともなる.子実体のいくつかの形質(形態や毒成分など)は菌食動物に対する防御として進化してきたと考えられているが,実際の菌食動物に対する防御効果はほとんど調べられていなかった.本研究では,子実体食トビムシCeratophysella denisanaの食性を明らかにした上で,子実体のいくつかの形質に防御機能があることを明らかにした. まず,野外調査・実験により,C. denisanaは特定の子実体菌種を選択的に利用しており,餌選択を決める要因が子実体にあることを明らかにした.これは,子実体の形質がトビムシの餌選択に影響し,場合によっては防御として機能しうることを示唆する結果である.また,C. denisanaの子実体上での摂食部位,および,胞子の摂食耐性の調査により,C. denisanaは糞によって胞子を分散する可能性が低く,捕食者的性格が強いことが示唆された. 次に,C. denisanaにほとんど摂食されないヘラタケ(Spathularia flavida)およびツバキキンカクチャワンタケ(Ciborinia camelliae)の子実体は,傷を受けるとC. denisanaに対し忌避作用を示すことを明らかにし,この忌避作用が,これらの菌種が摂食されない一要因であり,被食防御として機能していると推察された.同様に,C. denisanaに利用されない菌種に着目することで,スギエダタケ(Strobilurus ohshimae)とニオイコベニタケ(Russula bella)のシスチジアにはC. denisanaに対して致死作用があり,被食防御効果があることを明らかにした.シスチジアは多くの菌種に見られるが,その生態的機能はこれまでほとんど知られていなかった.本研究はシスチジアの生態的機能を明らかにしたものとしてインパクトは大きいと思われる.
著者
横山 顕 大森 泰
出版者
一般財団法人 日本消化器病学会
雑誌
日本消化器病學會雜誌 = The Japanese journal of gastro-enterology (ISSN:04466586)
巻号頁・発行日
vol.110, no.10, pp.1745-1752, 2013-10-05
参考文献数
36

飲酒,喫煙,野菜果物不足,やせ,頭頸部癌既往,アルコール脱水素酵素1B(ADH1B)低活性型とアルデヒド脱水素酵素2(ALDH2)ヘテロ欠損型は,食道癌の危険因子である.多発ヨード不染帯,メラノーシス,MCV増大もリスクを高める.ALDH2欠損でアセトアルデヒドが蓄積し,ADH1B低活性でエタノールへ長時間曝露される.両遺伝子型+飲酒+喫煙で357倍のリスクとなる.ビールコップ1杯で赤くなるか,現在と過去の体質をたずねる簡易フラッシング質問紙法は,精度90%でALDH2欠損を判別し,飲酒・喫煙・食習慣と組み合わせた食道癌リスク検診問診票の高スコア群の癌の頻度は高い.予防の新戦略となる遺伝子解析の普及が望まれる.<br>
著者
気賀澤 悠 中村 理恵子 大森 泰 高橋 常浩 和田 則仁 川久保 博文 才川 義朗 竹内 裕也 北川 雄光
出版者
一般社団法人 日本消化器内視鏡学会 関東支部
雑誌
Progress of Digestive Endoscopy (ISSN:13489844)
巻号頁・発行日
vol.87, no.1, pp.86-87, 2015-12-12 (Released:2016-01-06)
参考文献数
4

論文撤回のお知らせ 論文タイトル: 術後の癒着・狭窄予防にステロイド局注が著効した下咽頭表在癌の1 例 著者: 気賀澤悠・中村理恵子・大森泰・高橋常浩・和田則仁・川久保博文・才川義朗・竹内裕也・北川雄光 掲載誌: 「Progress of Digestive Endoscopy」第87 巻1 号,pp. 86-87 撤回理由: 編集作業上の事故により同一論文を2 回掲載してしまったため、2 回目掲載の本論文を撤回いたします。 本件は二重投稿には当たらず、出版社が引き起こした多重出版であることをここに明記いたします (撤回通知掲載:第90 巻1 号)。 「Progress of Digestive Endoscopy」編集委員会 委員長 髙橋 信一
著者
森 泰規
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
日本地理学会発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.2016, 2016

企業<u>風土</u>というように<br>筆者は、基本的に経営課題について考える際、企業というものは人が創り出すものであるということを大前提に、ウェーバー(Max Weber, 1864-1920, 独・社会学者/経済学者)の<象徴的相互作用論>[1]、すなわち構造を主語とせず、人の理念に基づく行為(したがって人々の相互行為)が社会を創出するという考え方をとる。端的に言えば「ピューリタンの理念と行為が資本主義の形成につながった」ことを類推して想定するものである。 ところが、企業についての諸問題を考える際、<企業風土>といったきわめて地理学に近い捉え方にさしあたることが多い。特にウェーバー的アプローチを取る際、<企業理念>にとって起こる問題は、地理学に於いてと同様の課題と感じられることがある。そこで当の地理学(乃至、地理学的枠組み)に近接すると思われることを挙げてみる。 &nbsp;<br> <br>『風の辞典』, <b><i>Le sauvage et l&rsquo;artifice.</i></b> <br>関口武(1985)(『風の事典』 原書房)によれば、同書刊行時点で日本には風の名前が2145個ある。普通の日本人はそのような呼び名を知らないが、<u>個々の生活実感と結びついたものは<不可視であっても概念として具象化する></u>のだ。 このことは、地理学者のオギュスタン・ベルク(Augustin Berque、1942- , 仏・地理学者)がたびたび指摘した、「『風景 paysage』に当たる語彙が、絵画の対象と成りえるような美しい景観と触れ合っていた地域の言語にさえ、必ずしも自生的には存在しないこと」[2]とは貴重な対照をなす。こちらは<u>当たり前のように目の前にあっても、むしろ<浸透しすぎていることによって意識されない></u>ということだ。 優れた企業理念は以上に述べたような事態に陥ることがよくある。第一に、すなわち現場組織にはいくつもの貴重な実感が見出されているのに組織全体では体系化・一般化されにくいこと。第二に、当たり前のように意識されている貴重な習慣が組織内部では貴重なものとは評価されていないこと、である。これらは長い時間をかけてよい意味でも悪い意味でも<企業風土>を形成し、必ず課題として噴出する。逆にそれぞれを課題と思って対処していけば効果が得られるともいえる。 これらはいずれも地理学による示唆である。 <br><br>システムの外部にも影響する、地理学の価値<br>筆者は、地理学という学問体系の外から、実務上の類推をもとに本稿での主旨を問いかける。だからそのシステム内部にいる専門家にとっては、当然に違和感を覚える題材なのかもしれない。しかしそのシステム外にある筆者にとっても地理学の価値は影響を及ぼすということであって、筆者はもう少し、その真価を学び、現業に生かそうと考えるが、同時にシステム内の秩序や安定性に意義を唱えるつもりはない。この点は明確にご理解いただきたい。 <br> <br> [1] Symbolic Interactionism. この整理は定説といってよいが、ここではアンソニー・ギデンズによる『社会学』(第六版)の記述体裁にならう。Giddens, A. (2009), <i>Sociology (6th edition)</i>, Polity Press, London, UK.<br> [2] Augustin Berque. (1986). <b><i>Le sauvage et l&rsquo;artifice. Les Japonais devant la nature.</i></b>Paris, Gallimard. P154他
著者
齋藤 真由美 土屋 直樹 中嶋 宏 江森 泰子 大坪 豊 金澤 亜依 金岡 秀信
出版者
日本知能情報ファジィ学会
雑誌
日本知能情報ファジィ学会 ファジィ システム シンポジウム 講演論文集 第30回ファジィシステムシンポジウム
巻号頁・発行日
pp.67-70, 2014 (Released:2015-04-01)

基礎体温は排卵日や妊孕性を推定でき、かつ家庭での測定が簡便なことから、長きに亘り女性の妊娠を支援する生体指標として活用されてきた。近年では、ICTの進化により、簡便に測定し、その記録をネットワークに蓄積できる環境が普及したことで、その活用方法が広がりつつある。我々も月経開始日と基礎体温の記録に基づき、個々の女性の日常生活における健康管理を支援するアプリケーションを開発した。本稿ではこのアプリケーションが提供する、月経開始日および排卵日を予測する技術を示す。この予測技術は、複数の過去の月経周期日数、各々の基礎体温変動から推定された排卵日の実績を用い、次回の月経開始日、排卵日を予測するものである。加えて、本稿はこのアプリケーションで蓄積された膨大な月経周期と基礎体温の記録を用い、月経周期日数と年齢やBMIなどとの関係を示す。今後、このように蓄積されたデータから得る知見を活用することで、予測性能を向上させるだけではなく、女性の健康管理を支援するライフスタイルの提案といった新たな機能の実現が期待される。
著者
花田 裕美 森 泰
出版者
和歌山県農林水産総合技術センター
雑誌
和歌山県農林水産総合技術センター研究報告 (ISSN:13455028)
巻号頁・発行日
no.4, pp.43-50, 2003-03

冬咲きのピンク品種'ダイアナ'と冬咲きの白色品種'アーリー・ホワイト'の交配育種により育成した新品種'ブライダル・ピンク'は、今までの冬咲き品種には無い白色の花弁の周縁部がピンクに発色する覆輪の花色をもつ冬咲き品種である。その特性は両親である'ダイアナ'、'アーリー・ホワイト'と同程度の草勢であり、開花特性も同程度である。本品種は、種子冷蔵期間15日を行った場合、着花輪数5.0輪、花柄長50.0cmと良質の切り花の収穫が可能であり、有望な冬咲きの覆輪品種である。
著者
幕内 博康 町村 貴郎 宋 吉男 水谷 郷一 島田 英雄 徳田 裕 杉原 隆 佐々木 哲二 田島 知郎 三富 利夫 大森 泰 三吉 博
出版者
一般社団法人日本消化器外科学会
雑誌
日本消化器外科学会雑誌 (ISSN:03869768)
巻号頁・発行日
vol.24, no.10, pp.2599-2603, 1991-10-01
被引用文献数
30

近年,診断技術とくに色素内視鏡の進歩により,食道表在癌はもとより食道粘膜癌も増加してきた.粘膜癌で粘膜筋板に達しないものでは脈管侵襲やリンパ節転移をきたすことも極めてまれである.そこで内視鏡的粘膜切除術の適応を,(1)粘膜筋板に達しない粘膜癌,(2)長径2cm以下,(3)食道全長に多発していないもの,とした.われわれは18例23病巣に内視鏡的粘膜切除術を施行しており,このうち表在癌は15例19症巣であった.手技は,(1)ヨード染色により病巣の範囲を確認し,(2)病巣周囲にマーキングを行い,(3)インジゴカルミン・エピネフリン加生食水を粘膜下に注入し,(4)内視鏡的粘膜切除術を施行して組織を回収し,(5)再度ヨード染色で切除範囲を確認するものである.皮下気腫をきたした1例以外合併症はなく,穿孔例や緊急手術の適応となったものはない.本法の発展普及と食道癌の予後改善を期待する.
著者
永山 國昭 森 泰生 岡村 康司 宇理須 恒雄 青野 重利 高橋 卓也 渡辺 芳人
出版者
大学共同利用機関法人自然科学研究機構(共通施設)
雑誌
学術創成研究費
巻号頁・発行日
2001

[複素顕微鏡]炭素膜を用いる位相板には物質透過に伴う電子線損失がある。この問題を解決し像の感度を上げるため無損失位相板の開発を試みた。Aharnov-Bohm効果を用いると、ベクトルポテンシャルが電子線の位相を変えるため電子線損失がない。ループ型微小磁石と棒型微小磁石の2つの位相板につきテストし、棒磁石型の場合無損失位相板が成功した。[チャネル蛋白質]形質膜における、一酸化窒素(NO)センサーカチオンチャネルとして働くTRPC5による、NO感知の分子機構を明らかにした。TRPC5のチャネル腔を形成するpore領域近傍のシステイン残基を、NOはニトロシル化し、その結果生じるコンフォメーション変化により、空間的に近接する内部ゲートが開くことが示された。[電位センサー蛋白質]イノシトールリン脂質のうちPIP2によって活性が変化することが知られているKチャネルを電位センサー分子(VSP)とともにアフリカツメガエル卵母細胞へ強制発現させ計測し、酵素活性が膜電位依存的に制御されることを見出した。更に電位センサードメインをもちボア領域を欠く別の膜タンパクがチャネル活性をもつことを示した。ヒト電位依存性NaチャネルNav1.6分子の機能の多様性を明らかにするためアンキリンGとNav1.6を共発現させ不活性化に及ぼす影響を検討した。[蛋白質機能素子作製]シリコン基板に微細貫通孔を形成する技術を開発し、ここに脂質二重膜/イオンチャンネル(グラミシジン)を再構成して単一イオンチャンネル電流を計測することに成功した。微細孔構造を工夫することで、シリコン基板として世界最小の雑音電流(貫通孔径50μmで〜1pA rms、テフロン基板と同程度)を得ることが出来た。