著者
吉澤 卓哉
出版者
日本保険学会
雑誌
保険学雑誌 (ISSN:03872939)
巻号頁・発行日
vol.627, pp.1-30, 2014-12

大成火災破綻(2001年)の原因は,ある再保険プールを介した海外再保険取引にあると言われている。この海外再保険取引は永年に亘るものであるが,大成火災が原告となった米国税務訴訟の判決(1995年)で当時の当該海外再保険取引の実態を窺うことができる。他方,破綻時の取引実態は,大成火災役員や当該再保険プールのマネジング・エージェントの関係者に対する損害賠償請求訴訟や仲裁の資料から窺うことができる。本稿は,両取引実態を分析したうえで比較することによって,米国税務訴訟判決時点において,既に大成火災破綻へと繋がる取引実態となっていたこと,したがって当該時点で破綻への途から外れることができた可能性があることを明らかにするものである。
著者
西本 美紗 田中 友規 高橋 競 Suthutvoravut Unyaporn 藤崎 万裕 吉澤 裕世 飯島 勝矢
出版者
一般社団法人 日本老年医学会
雑誌
日本老年医学会雑誌 (ISSN:03009173)
巻号頁・発行日
vol.57, no.3, pp.273-281, 2020-07-25 (Released:2020-09-04)
参考文献数
22
被引用文献数
8

目的:近年,老化に伴う口腔機能の低下(オーラルフレイル)が低栄養や心身の機能低下に繋がることが注目されている.本研究は,オーラルフレイルが栄養摂取のみならず主観的な食事の満足感にも関連するという仮説の下,オーラルフレイルと食事の満足感の関連を明らかにすることを目的とした.方法:対象は千葉県柏市在住高齢者におけるコホート研究2016年度追跡調査参加者のうち,認知機能障害が無く主要変数に欠損値の無い者とした.食事の満足感は食事のおいしさ,食事の楽しさ,食事量,口腔関連指標は残存歯数とオーラルフレイルを評価した.調整変数は年齢,性別,BMI,居住形態,抑うつ傾向,義歯の使用状況,慢性疾患既往歴とし,ロジスティック回帰分析を用いオッズ比を算出した.結果:対象者940名(平均年齢76.3±5.1歳;男性53%)のうち,食事の味を「とてもおいしい,おいしい」と回答した者は71%,食事を「楽しい」と回答した者は96%,食事量を「多い,やや多い」と回答した者は23%,「ふつう」と回答した者は63%であった.平均残存歯数は20.8±8.5本であり,残存歯数20本以上/未満の間で食事の満足感に有意差は認められなかった.一方,オーラルフレイル該当者8.4%は,非該当者に比べて食事を「とてもおいしい,おいしい」と回答した者(OR 0.49,95%CI 0.29~0.83),食事量を「多い,やや多い」「ふつう」と回答した者(OR 0.36,95%CI 0.15~0.84;OR 0.44,95%CI 0.22~0.85)が有意に少なかった.結論:オーラルフレイルは食事の満足感に関連することが明らかになった.また,その関連性は残存歯の多少のみでは認められず,高齢者の充実した食事を支えるためには口腔機能全般の維持・向上が必要であることが示唆された.
著者
本堂 毅 平田 光司 関根 勉 米村 滋人 尾内 隆之 笠 潤平 辻内 琢也 吉澤 剛 渡辺 千原 小林 傳司 鈴木 舞 纐纈 一起 水野 紀子 中島 貴子 中原 太郎
出版者
東北大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2013-04-01

科学技術の専門的知識には,程度の差はあれ,様々な不確実性が避けられない.また,社会の中で科学技術の知識を用いる際にどのような科学的知識が必要かは価値判断と不可欠であるため科学自体では定まらない.このような「科学的知識の不定性」を直視し,不定性の様々な性質を踏まえた上で,より的確な判断を私たちが主体的に下すための条件を考察し,科学的知識に伴う不定性の性質・類型を明らかにするとともに,その成果を書籍にまとめた(2017年度に出版予定).
著者
飯塚 和也 相蘇 春菜 大久保 達弘 逢澤 峰昭 平田 慶 石栗 太 横田 信三 吉澤 伸夫
出版者
日本森林学会
雑誌
日本森林学会大会発表データベース
巻号頁・発行日
vol.124, 2013

福島原発事故により広範囲わたり飛散・拡散した人工放射性核種の中で重要な放射性セシウム(Cs)は,同族のアルカル金属であるカリウム(K)と化学的性質が類似しているため,植物体において,Kの輸送系により吸収されていると考えられている。Kの同位体である天然放射性核種であるK40の一部は,γ崩壊をする。そこで,樹体中に取込まれた放射性セシウムの挙動を調査するに当たり,K40に着目して,放射性核種ごとにCs134,Cs137とK40の比放射能(Bq/kgDW)の測定を行なった。材料は宇都宮大学演習林(空間線量率0.2~0.3μSv/h)のスギ,ナラ類,コシアブラである。供試材料の比放射能は,U8容器を用い,Ge検出器(SEIKO EG&G)で測定した。測定時間は,木材で6000S,葉で2000Sまたは4000Sとした。若齢木において,コシアブラの葉はナラ類のそれと比べ,非常に高い比放射性を示した。また,コシアブラの核種ごとの比放射能の季節変動では,晩秋は夏に比べ,Csは1.8倍の増加を示したが,K40では1.5倍の増加であった。
著者
新井 利明 関口 知己 佐藤 雅英 木村 信二 大島 訓 吉澤 康文
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.46, no.10, pp.2492-2504, 2005-10-15
被引用文献数
3

オペレーティングシステム(OS)はこれまでに多くのものが開発されているが,ユーザの要求が多様であり,すべての要求を満足するOS開発は不可能に近い.そこで,1台のマシン上に汎用OSと特定の目的を持つ専用OSを共存させ各々機能補完する仮想計算機機能のナノカーネルを提案し,実現した.豊富なソフトウェア資産を活用できる汎用OSと特殊機能を有する専用OSを1台のマシン上に共存させ,互いに機能補完させることができる.ナノカーネルは,上記の目的を達成するために,(1)複数OS共存オーバヘッドを削減するための資源分割機能,(2)OS間の機能補完を可能とするOS間連携機能,(3)OSの信頼性を向上させる障害監視,回復機能と擬似不揮発メモリ機能などで構成する.これらの限定した機能を実現することで,ナノカーネルは複数OSの共存を可能とし,補完環境をオーバヘッド2%以内で達成できることを確認した.また,汎用OSとリアルタイムOSの共存環境を構築し,汎用OS環境では不可能であったマイクロ秒単位の応答性を確保できることを確認し,ナノカーネルの持つOS間機能補完を実証した.さらに,専用の高信頼OSからの汎用OS障害情報の収集や汎用OSの再起動処理を実現し,システムの信頼性向上にも有効であることを確認した.Although various kinds of Operating Systems (OSs) have been developed so far, a user hardly finds the OS satisfying all the users' needs completely. We proposed and developed a kind of virtual machine called Nanokernel, which effectively enables a general purpose OS and a special purpose OS co-exist in one machine and complement each other. By complementing general purpose OS with rich software and special purpose OS with special function, Nanokernel realizes the environment which meets variety of users' needs effectively. We restrict Nanokernel functions to resource partitioning for lower overhead, communication between OSs for function complement between them, and failure detection and fast recovery for reliability, to achieve the purpose effectively. By restricting Nanokernel functions above, Nanokernel achieves the multi-OS co-existing environment less than 2% overhead. The Nanokernel environment with a general purpose OS and a realtime OS showed that Nanokernel relieves the lack of realtime property of the general purpose OS and establishes micro-second order response time. Moreover, even when the general purpose OS crashes, the realtime OS can survive, get the information for the failure from the general purpose OS and execute the general purpose OS restart process, so that Nanokernel is useful for enhancing system reliability.
著者
小林 由佳 吉澤 重克 金子 誠二 清水 敏克
出版者
一般社団法人 日本環境感染学会
雑誌
日本環境感染学会誌 (ISSN:1882532X)
巻号頁・発行日
vol.31, no.3, pp.158-164, 2016 (Released:2016-08-18)
参考文献数
10
被引用文献数
2 2

現在,消毒剤として広く使用されている次亜塩素酸ナトリウムに比して,人体への影響が少なく,有機物存在下でも殺菌効果が期待できる亜塩素酸水について,Escherichia coli (E. coli)の殺菌効果とネコカリチウイルス(feline calicivirus: FCV)の不活化効果およびその濃度と効果との関係を検証した.  亜塩素酸水は有機物としてのウシ血清アルブミン(bovine serum albumin: BSA)存在下でも,殺菌・不活化効果があり,この時の遊離塩素濃度と殺菌・不活化効果に高い相関性が認められた.  さらに,亜塩素酸水と次亜塩素酸ナトリウムを,有機物としてのBSAと接触させ,接触前後の遊離塩素濃度の推移並びに溶液に対するE. coliの殺菌効果およびFCVの不活化効果を検討した.  亜塩素酸水のBSA接触後の遊離塩素濃度は,30分以上の接触時間でほぼ一定となり,残存遊離塩素は40~70%であった.高濃度の次亜塩素酸ナトリウム溶液でもBSAと30分間接触後の遊離塩素は激減した.  亜塩素酸水はBSA接触後,E. coliおよびFCVに対する有効な殺菌効果およびウイルス不活化効果が確認されたが,次亜塩素酸ナトリウムではそれらが認められなかった.  亜塩素酸水は次亜塩素酸ナトリウムと比較して有機物との共存下における遊離塩素濃度が高く,有機物存在下でも消毒効果が期待できる薬剤であると考えられた.
著者
吉澤 貞人
出版者
金城学院大学
雑誌
金城学院大学論集. 国文学編 (ISSN:04538862)
巻号頁・発行日
vol.33, pp.95-132, 1991-03-20
著者
草間 朋子 中川 健朗 吉澤 康雄
出版者
日本保健物理学会
雑誌
保健物理 (ISSN:03676110)
巻号頁・発行日
vol.20, no.4, pp.399-406, 1985 (Released:2010-02-25)
参考文献数
24
被引用文献数
1

The concept of population dose is of importance and of interest at the point of radiation protection of puplic. We devided it into two categories, source-related population dose and individual-related population dose, and estimated each population dose of Japan. We surveyed all sources that caused exposure to Japanese population. A number of sources, both naturally-occuring and man-made, contributed to population exposure. According to source-related dose assessment, average annual effective dose equivalent was about 3.3mSv, and about half of which, i. e. 1.6mSv, was given from medical exposure. And from the results of individual-related dose assessment we proposed the allocation of the annual dose limit of public for each controllable source, that is, 2.5mSv/yr to nuclear faculties, 1.0mSv/yr to miscellaneous sources, 1.5mSv/yr to probablistic exposure.
著者
吉澤 和範
出版者
北海道大学大学院理学研究院自然史科学部門(地球物理学)
雑誌
北海道大学地球物理学研究報告 (ISSN:04393503)
巻号頁・発行日
vol.71, pp.39-48, 2008-03-15

Seismic waves generated by a nuclear test carried out by North Korea on October 9, 2006 were observed throughout the Japanese islands. Clear arrivals of Pn waves, which traveled below the Moho discontinuity underneath the Japan Sea, were recorded by the Japanese broad-band seismic network, F-net, deployed by National Research Institute for Earth Science and Disaster Prevention (NIED). We analyzed the waveforms of the nuclear event observed at F-net stations as well as some global seismic stations in East Asia. Apparent path-average velocity of Pn waves and their maximum amplitudes are estimated from vertical component seismograms of the F-net stations. We found conspicuous regional variations of apparent path-average velocity and maximum amplitude. For example, fast apparent velocity and larger amplitude are observed in the paths across the Japan basin in the northern Japan Sea, whereas slow velocity as well as relatively smaller amplitudes are found in the path to stations in Kyushu. Such regional variability of Pn waves is likely to make it difficult to estimate source parameters for this small-scale explosive event in the Korean Peninsula, only using the Japanese seismic network. These results suggest the necessity of a precise three-dimensional seismic model of the Japan Sea to utilize Japanese seismic network data for analysis of regional seismic waves that propagate along a variety of paths in the Japan Sea.
著者
吉澤 和徳 吉冨 博之 上村 佳孝
出版者
北海道大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2015-04-01

標本収集:国内でのフィールド調査により,より幅広い範囲のチャタテムシの形態解析用サンプルが得られた.ヒョウモンチョウ,マルハナノミのサンプリングも継続して行い,追加サンプルが得られた.遺伝子解析:前年度解析したミトコンドリアゲノム情報に基づき,トリカヘチャタテの分子系統解析に必要な追加プライマーの設計を終え,データもほぼそろった.現在外群のデータを追加している状態である.予備解析ではトリカヘチャタテ内の系統関係の解像度も高く,また近縁な Afrotrogla, Sensitibilla, Spekeletor 属との系統関係に関しても良好な解析結果が得られている.トリカヘチャタテの親子判別,集団構造解析に必要なマイクロサテライトプライマーも完成し,それらを報告した論文が受理され,現在印刷中である.形態解析:SPring8での追加の形態解析を行い,十分なデータを集めた.特に,トリカヘチャタテの精子貯蔵構造に興味深い発見があり,それらの解析をほぼ終え,論文の執筆を開始している段階にある.雌ペニスに関連した構造の解析も進めており,現在は比較に必要な雌ペニスを持たない通常のチャタテムシの交尾器の状態の解析を進めている.加えて,共焦点レーザー顕微鏡を用いた解析も進めており,これらの構造のタンパク質構成などについても解析を進めている.サブプロジェクト:プロジェクトを通して得られたトリカヘチャタテなどのサンプルを用いて,交尾器以外の形態の観察も行った.特に,前後翅を連結する構造の解析を行い,その結果を論文として出版した.この構造から,トリカヘチャタテの飛翔能力が弱いであろう事も傍証された.受賞:本プロジェクトでイグ・ノーベル賞生物学賞を受賞した.
著者
吉澤 俊介
出版者
公益社団法人 日本表面真空学会
雑誌
表面と真空 (ISSN:24335835)
巻号頁・発行日
vol.66, no.1, pp.46-51, 2023-01-10 (Released:2023-01-10)
参考文献数
16

Frequent earthquakes in Japan can be problematic for vibration-sensitive measurements. For example, in scanning tunneling microscope (STM) experiments, seismic vibrations cause noises in the data and sometimes lead to a tip crash against the sample surface. The risk of tip crash rises during spectroscopic imaging measurements using STM, where the feedback control is disabled for most of the long measurement time. Here, we have developed a system to prevent tip crashes by retracting the tip in response to the earthquake early warning of the Japan Meteorological Agency. The technique utilizes a built-in function of a commercial STM controller, and an earthquake monitoring service offered by the National Research Institute for Earth Science and Disaster Prevention. We present data to demonstrate how the system works at an earthquake. Our work provides hints for conducting vibration-sensitive measurements in earthquake-prone countries.
著者
吉澤 裕世 田中 友規 高橋 競 藤崎 万裕 飯島 勝矢
出版者
日本公衆衛生学会
雑誌
日本公衆衛生雑誌 (ISSN:05461766)
巻号頁・発行日
vol.66, no.6, pp.306-316, 2019-06-15 (Released:2019-06-21)
参考文献数
47
被引用文献数
4

目的 本研究は,自立高齢者の様々な活動とフレイル予防対策の知見を得るために,悉皆調査データを用いて,週1回以上実施している活動とフレイルとの関連について検討した。方法 要介護認定を受けていない地域在住高齢者73,341人全数を対象とした,厚生労働省の基本チェックリスト項目および,対象者が週1回以上実施している様々な活動(身体活動,文化活動,地域・ボランティア活動)に関する悉皆調査データを用いた。フレイルとの関係について,各活動単独およびその重複別に評価した。さらに,活動の実施状況別のプレフレイルおよびフレイルとの関連について,非フレイルを参照カテゴリとし,性別・年齢を調整した多項ロジスティック回帰分析を行った。結果 当該地域在住における介護認定を受けていない65歳以上の高齢者の67%に相当する49,238人のデータが解析された。性別の内訳は,男性24,632人,女性24,606人であった。身体活動,文化活動,地域活動の習慣を有する高齢者は各65.9%, 78.8%, 14.9%であり,プレフレイルは22.7%,フレイルは12.8%にみられた。いずれの活動もフレイルと有意な関連性が認められた。3種の活動すべてを実施している群を対照とした場合,フレイルに対する調整オッズ比[95%CI]は,身体活動未実施の場合2.19[1.71, 2.80],文化活動未実施では1.48[0.91, 2.43],地域活動未実施では2.09[1.80, 2.44]であった。また,1種類の活動のみを実施している場合の調整オッズ比は5.40~6.42でいずれも有意にフレイルと関連していた。さらに3種の活動のいずれも未実施の場合の調整オッズ比は16.41[14.02, 19.21]で活動の種類の減少に伴ってフレイルの段階的な増加がみられた。結論 高齢者を対象とした横断研究により,日常における身体活動,文化活動,地域活動を実施していないこととフレイルであることが関連していること,また実施していない活動が増えるほどフレイルのリスクが高くなる傾向が示された。フレイル予防において,身体活動の実施の重要性を支持するとともに,身体活動が困難な高齢者であっても,文化活動や地域活動などの分野の異なる活動の重複実施がフレイル予防につながる可能性が示唆された。
著者
吉澤 剛
出版者
研究・イノベーション学会
雑誌
研究 技術 計画 (ISSN:09147020)
巻号頁・発行日
vol.33, no.1, pp.26-38, 2018-03-31 (Released:2019-08-30)
参考文献数
54

The post-truth society facilitates diminished scientific authority and superficial political belief. The flag of ‘science for policy' as an imaginary counterpart again falls under a mud wrestling between incumbent leaders. Going beyond conventional citizen science and public engagement, a prospective participatory approach is positive engagement in dark science. Dark science is reflective and reflexive scientific activity with a sense of anxiety, fear, sympathy or sadness against disruptive impacts as a corollary of scientific development, by reference to structural science-society issues and planetary boundaries in the Anthropocene. Flying away from human-centric interests and thoughts on the ground, it aims to understand, talk and collaborate each other with objects arousing a sense of weirdness or wonder. Positive engagement is to nudge the less-engaged to voluntarily and positively engage in science and its policy. Dark science and positive engagement is reciprocal to make sense of our life and the world to come.
著者
谷村 嘉彦 富田 純平 吉富 寛 吉澤 道夫 箱崎 亮三 高橋 荘平
出版者
日本保健物理学会
雑誌
保健物理 (ISSN:03676110)
巻号頁・発行日
vol.51, no.3, pp.141-146, 2016 (Released:2016-11-18)
参考文献数
10
被引用文献数
3

Photon spectra were measured inside and outside a house in Minami-Soma city by using a NaI(Tl) scintillation spectrometer. The photons were categorized into three groups according to their energy. The groups were (1) scattered photons, which include low energy photons, (2) direct photons from 134Cs and 137Cs sources and (3) the other photons. Then the ratios of the ambient dose equivalents H*(10) of the scattered photons to those of the direct photons from the 134Cs and 137Cs sources have been evaluated from the measured photon spectra. The ratios are high inside the house compared with those out of the house. It was found that the scattered photons contribute to the H*(10) by more than 50% inside the house. The ambient dose equivalent average energies of the scattered photons are around 0.25 MeV both inside and outside the house. These data is worthwhile to design the optimum shielding for the protection against the public radiation exposure.
著者
小山 順二 都筑 基博 蓬田 清 吉澤 和範
出版者
北海道大学大学院理学研究院
雑誌
北海道大学地球物理学研究報告 (ISSN:04393503)
巻号頁・発行日
vol.76, pp.129-146, 2013-03-19

2011 年3 月11 日マグニチュード9.0 の超巨大地震が東北地方太平洋沿岸をおそった.この地震は過去千年以上にわたる日本付近で発生したどの地震よりも大きな津波を励起し,地震動災害ばかりではなく歴史に残る甚大な津波災害を発生させた.従来,このような超巨大地震が日本付近で発生することは,地震学的に想定されてこなかった.我々は,この超巨大地震の発生を考えるうえで,今まで見過ごされてきた超巨大地震の発生場には二つの異なった特徴があることに気が付いた.それはAlong-dip Double Segmentation(ADDS)とAlong-strike Single Segmentation(ASSS)という異なった地震活動である.我々はこの考えに基づき,世界中で発生した超巨大地震を調べなおし,超巨大地震の発生場を,地震活動の特徴(ADDS/ASSS),地震メカニズム,破壊様式,沈み込み帯の形状,上盤プレートの性質や背弧海盆の活動といった性質から,明らかにする.
著者
板口 典弘 森 真由子 内山 由美子 吉澤 浩志 小池 康晴 福澤 一吉
出版者
一般社団法人 日本高次脳機能障害学会
雑誌
高次脳機能研究 (旧 失語症研究) (ISSN:13484818)
巻号頁・発行日
vol.39, no.4, pp.436-443, 2019-12-31 (Released:2021-01-04)
参考文献数
16

本研究は, 日常的に利用できるタブレットから取得できる情報を用いて, 書字運動および書字障害を定量的に評価する手法を提案することを目的とした。頭頂葉を含む病変を有する症例 5 名 (以下, 患者群) と高齢健常者 5 名 (以下, 統制群) が参加した。提案手法によって, (1) 書字障害を呈する症例のみにおいて, 字画間にかかる時間が長かったこと, (2) 症状にかかわらず, 患者群の速度極小点の数が統制群の範囲を越えて大きかったこと, (3) 複数症例で, 字画間の時間と距離の関係が統制群と異なっていたこと, (4) 統制群の字画間の時間と距離の相関係数は, 比較的安定であったことが明らかとなった。この知見に基づき, タブレットによる書字運動評価の有用性について議論した。