著者
松尾 彰久 清水 一 山崎 郁雄 山下 由美 久野 真矢
出版者
広島大学保健学出版会
雑誌
広島大学保健学ジャーナル (ISSN:13477323)
巻号頁・発行日
vol.3, no.2, pp.10-19, 2004-03

「新聞の記事の中で出現する障害者とインターネットのかかわりは,作業療法における作業の概念でとらえるとどのような特性があるのか」という研究疑問を設定し,障害者のインターネット利用状況に関する枠組み作りを試みた.今回の研究では,全国紙の新聞1紙を対象とし,データとして検出した記事の類似した内容をまとめ,KJ法の考え方を用いて,共通した概念を抽出する方法で行った.この手順は,KJ法を基に開発されたコンピュータープログラムであるISOP-KJ法を補助的に使用した.その分析の結果,6つの大きなカテゴリーを抽出した.インターネットの活用は,作業療法でいう,作業療法として追及していく「作業」を強力に実現していく手段であり,目的にもなり得るという仮説を形成できた.インターネットを利用しての「自己維持活動」,「仕事」,「遊び」,「社会参加」は,「コンピュータによって形成される身体的な接触のない状態で情報伝達が生じる環境」の結果生じる作業といえるので,「バーチャル作業(virtual occupation)」と定義できると考えた. ""The internet can be very helpful if it is fully made use of by the disabled person."This statementmay be true, but the questions arise in what ways, in what fields and to what extent it can be useful.Inorder to obtain answers to those questions, we undertook research through a technique similar to the KJ-method, by collecting related articles from a certain nationally-circulated newspaper as data. Finally, thisdata verified that the internet makes it possible for the disabled to take part in social activities more easilyand willingly and to improve their activities in daily life, both their productive activities and their leisureactivities. We believe that we can define the activities produced by utilizing the internet as a virtualoccupation.
著者
清水 一彦
出版者
日本教育行政学会
雑誌
日本教育行政学会年報 (ISSN:09198393)
巻号頁・発行日
vol.16, pp.239-254, 1990-10-05 (Released:2018-01-09)

This paper aims to clarify the structural characteristics and problems of the credit system in Japanese universities by analyzing its transitional process. First of all, the author tried to settle the definition of the credit system and to set up the following 5 areas for studies : "one credit", "total credits", "distribution of credits", "optional registration", and "evaluation". Then, focusing on these five points, the author analyzed the transitional process of the credit system, especially during the period from the enactment of "the Standard of the University Establishment" in 1956 up to the present time. As a result, the study has yielded two findings as follows: 1. As for the standard of the credit system, there appeared to be two big tendencies. One is bringing to completeness the meaning of the credit system during the time from the enactment of the present standard to the period of university strife in the late 60's. The other is the trend of the flexibility of the system after that time until now. As to the former, the regulations enforced at the beginning were not properly applied due to traditional teaching methods, the lack of readiness of libraries and other facilities. Therefore, there was an attempt to include the significance of the credit system in the standard and to initiate the method of credit calculation and the addition of the number of credits. As to the latter, the problem of general education came to the surface amid the university strife and, in relation to this, each university was largely entrusted with autonomous judgment. Further, more flexible steps were taken to promote independent self-reform in each university and its faculties. However, in the process there were increasing conditional clauses and a more complicated standard was created. 2. According to the framework set for this analysis, the special characteristics of the credit system and its concrete problems are found as follows: "one credit": This expression was somewhat changed. However, the fundamental principle was maintained. The credit calculation method of teaching methods with more conditional clauses remained. "total credits": No particular problems existed. However, the upper limitation of increased credits was set up. "distribution of credits": With the introduction of fundamental education subjects, problems surfaced about the credits of general education subjects, while there was a tendency to put emphasis on professional education subjects. "optional registration": Flexible steps were taken, which was the biggest change. There was also a plan for subdividing the number of credits for each subject, and it had little regard for the opportunity of students in choosing subjects and their annual registration. "evaluation": Although many problems were pointed out, there was no change in the regulations and it still had little view of the educational effects. Finally, considering the actual situations and variety of the universities nowadays, the author would like to point out that the direction of the standard revision is not yet satisfactory. It is time that there should be an establishment of a new credit system which is particularly applicable to Japanese universities.
著者
清水 一 山﨑 文惠 柏俣 玲於奈 矢野 照雄 高橋 康輔 田島 麻衣 伊藤 耕 佐藤 毅
出版者
埼玉医科大学 医学会
雑誌
埼玉医科大学雑誌 (ISSN:03855074)
巻号頁・発行日
vol.49, no.1, pp.9-15, 2022-08-31 (Released:2022-09-10)
参考文献数
33

近年,歯科インプラントによる治療は一般的になりつつあり,インプラント周囲に生じる悪性腫瘍症例がいくつか報告されている. インプラント周囲の発がん危険因子には,口腔癌の既往とそれに関連する放射線療法の既往,白板症や扁平苔癬などの粘膜疾患,飲酒および喫煙が含まれるが,病因はいまだ不明である. 今回われわれは,インプラント埋入手術から 10 年後に右上大臼歯のインプラント周囲の歯肉に発生したインプラント周囲扁平上皮癌のまれな症例を経験した.. 症例は 74 歳の男性.右上大臼歯歯肉に潰瘍性病変を呈していた. 口腔内検査により,右上第二大臼歯の口蓋側歯肉に 5×2.5 mm の潰瘍性病変が認められた. エックス線検査では 2 本のインプラントが右上大臼歯に埋入されており,垂直的な骨吸収像も見られた. 生検での病理組織検査では扁平上皮癌の診断結果であったため,全身麻酔下で上顎部分切除術を行った. 手術から 18 ヶ月が経過し再発や転移はなく経過良好である.本症例に加えて,PubMed および Medline データベースを使用し渉猟した 61 症例をまとめ,文献的考察を行い報告する.
著者
川崎 英二 丸山 太郎 今川 彰久 粟田 卓也 池上 博司 内潟 安子 大澤 春彦 川畑 由美子 小林 哲郎 島田 朗 清水 一紀 高橋 和眞 永田 正男 牧野 英一 花房 俊昭
出版者
一般社団法人 日本糖尿病学会
雑誌
糖尿病 (ISSN:0021437X)
巻号頁・発行日
vol.56, no.8, pp.584-589, 2013 (Released:2013-09-07)
参考文献数
13
被引用文献数
14

1型糖尿病は膵β細胞の破壊性病変によりインスリンの欠乏が生じて発症する糖尿病であり,発症・進行の様式によって,劇症,急性,緩徐進行性に分類される.今回,本委員会において急性発症1型糖尿病の診断基準を策定した.劇症1型糖尿病の診断基準を満たさず,口渇,多飲,多尿,体重減少などの糖尿病(高血糖)症状の出現後,おおむね3か月以内にケトーシスあるいはケトアシドーシスに陥り,糖尿病の診断早期より継続してインスリン治療を必要とする患者のうち,経過中に膵島関連自己抗体の陽性が確認されたものを「急性発症1型糖尿病(自己免疫性)」と診断し,同患者のうち膵島関連自己抗体が証明できないが内因性インスリン分泌が欠乏(空腹時CPR<0.6 ng/ml)しているものを単に「急性発症1型糖尿病」とする.しかし,内因性インスリン分泌欠乏が証明されない場合,あるいは膵島関連自己抗体が不明の場合には診断保留として期間をおいて再評価することが重要である.
著者
濱本 博美 清水 一紀 佐々木 元章
出版者
一般社団法人 日本糖尿病学会
雑誌
糖尿病 (ISSN:0021437X)
巻号頁・発行日
vol.59, no.6, pp.429-434, 2016-06-30 (Released:2016-06-30)
参考文献数
16

我々は妊娠成立と同時期に急性発症1型糖尿病を発症した2症例を経験した.症例1は10代女性,口渇,多飲が出現した数週後に妊娠が判明し,産科を受診.体重減少が著明で血液検査にてHbA1c 12.5 %,随時PG 790 mg/dL,抗GAD抗体陽性,ケトアシドーシスを呈し,急性発症1型糖尿病と診断した.症例2は30代女性,高血糖症状を訴えて内科を受診.HbA1c 10.1 %,随時PG 599 mg/dL,抗GAD抗体陽性,ケトアシドーシスを呈し,急性発症1型糖尿病と診断した.その3か月後に腹部膨満を契機に妊娠が判明.いずれの症例も,逆算すると妊娠成立と1型糖尿病の発症が同時期であり,またHLA DR9を有していた.妊娠に合併する1型糖尿病の多くは劇症1型で妊娠後期に集中するため,稀なケースと考えられる.妊娠悪阻とケトアシドーシスの症状は類似しているため,妊娠と1型糖尿病の診断には注意を要する.
著者
伊加 真士 清水 一好 川出 健嗣 金澤 伴幸 西谷 恭子 森松 博史
出版者
日本臨床麻酔学会
雑誌
日本臨床麻酔学会誌 (ISSN:02854945)
巻号頁・発行日
vol.36, no.1, pp.1-6, 2016-01-15 (Released:2016-02-12)
参考文献数
9
被引用文献数
2 3

スガマデクスは安全・迅速にロクロニウムを拮抗できる薬剤として広く使用されている.今回われわれは筋弛緩モニターを使用し,投与基準どおりにスガマデクスを使用したにもかかわらず,術後に再クラーレ化が疑われた症例を経験した.症例は78歳の男性で,胃癌に対し腹腔鏡下幽門側胃切除術が施行された.術中およびスガマデクス投与前にTOFウォッチを使用し,TOFカウント2を確認後,スガマデクスを3.6mg/kg投与し抜管した.その約70分後に著明な酸素化の悪化と四肢の体動低下を認め,ネオスチグミン投与により酸素化・体動の改善を得た.投与基準どおりのスガマデクス使用でも再クラーレ化の可能性は否定できないため,抜管後の厳重な呼吸の観察が重要である.
著者
清水 一
出版者
大阪経大学会
雑誌
大阪経大論集 (ISSN:04747909)
巻号頁・発行日
vol.64, no.1, pp.57-70, 2013-05-15 (Released:2018-02-26)
被引用文献数
4

社会科学系学部(約400学部)の偏差値と退学率・就職率をマッチングさせたデータを分析した結果、退学率や就職率は偏差値によってかなりの部分が説明されることが分かった。大学生にとって卒業できるか(退学率が低いか)、就職できるかは、大学生活の満足度を決める主要な要因であるが、偏差値はそれらの指標をかなりの程度代理する。そのため情報の入手しやすさを考慮すると、偏差値による大学選びにはかなりの合理性があると考えられる。だだし、低偏差値の学部では偏差値水準と就職率等の実績が逆転傾向にあるため、低偏差値の学部を選ぶ際には偏差値によらない大学・学部選びにも一定の合理性がある可能性が否定できない。
著者
中村 一文 赤木 達 岩野 貴之 江尻 健太郎 杜 徳尚 伊藤 浩 清水 一好 岩崎 達雄
出版者
一般社団法人 日本心臓血管麻酔学会
雑誌
Cardiovascular Anesthesia (ISSN:13429132)
巻号頁・発行日
vol.25, no.1, pp.7-12, 2021-08-01 (Released:2021-10-15)
参考文献数
26

肺動脈性肺高血圧症は血管収縮,血管リモデリングなどにより肺動脈内腔の狭窄・閉塞を来たし,肺動脈圧の上昇と右心不全を引き起こす疾患である。本稿では肺循環の生理と肺動脈性肺高血圧症の病態生理をふまえて治療法を述べてみたい。まず肺循環の生理には三つの特徴がある。1) 体循環系に比べて低圧系・低抵抗系かつコンプライアンスが大きい。2) 低酸素性肺血管攣縮がある。3) 三つの生理活性物質(プロスタサイクリン・一酸化窒素・エンドセリン)により調節されていることである。これらは早期発見・治療の重要性,酸素投与,三系統の特異的肺血管拡張薬についての理解にそれぞれ結びつく。次に肺動脈性肺高血圧症の病態生理として肺血管の収縮とリモデリングがある。これらは三系統の薬剤の初期からの多剤併用療法の必要性につながる。
著者
清水 一彦
出版者
日本出版学会
雑誌
出版研究 (ISSN:03853659)
巻号頁・発行日
vol.45, pp.117-138, 2015

<p>『読書世論調査』によれば,2005年ごろまでは若者は読書離れしていなかった.しかし,知識人,出版業界人,ジャーナリズムのアクター3者のバイアスが相互作用してつくられた「若者の読書離れ」という認識は,オーディエンスが"ここちよい"ものとして受容することで1980年代までには"常識"となった.本稿では当時の社会的な背景をふまえたうえで,なぜ「若者の読書離れ」という常識が構成されそして受容されたのかを論じる.</p>
著者
清水 一憲 伊東 栄典 廣川 佐千男
出版者
情報処理学会
雑誌
情報処理学会研究報告 (ISSN:09196072)
巻号頁・発行日
pp.B-3-2, 2013-06-07

膨大な数の小説が投稿されている利用者投稿型オンライン小説サイトから,求める小説を見つける には高品質な検索・推薦システムが必要である。サイトが提供する人気に基づくランキングでは,埋もれ た名作や,新規投稿小説を探しにくい。我々は読者のお気に入り登録情報を持いて,将来人気になる小説 を予測する手法を提案している。本発表では提案手法を複数データで評価した結果を述べる。
著者
清水 一憲 伊東 栄典
出版者
情報処理学会
雑誌
情報処理学会火の国情報シンポジウム2011
巻号頁・発行日
pp.B-4-4, 2011-03

ファッション販売,飲食店情報提供,動画サービスでは画像が重要な要素である. 本研究では画像を利用した検索・推薦を考える.服画像を情報検索・推薦に利用 現在,画像内部の特長を用いた情報検索・推薦は少ない.本稿では,リコメンデー ションコンテンストの服画像に対し,服画像内部の特長を用いる手法を検討し た.服では色・形・模様が重要である.そこで,Canny 法による画像のエッジ抽 出を用いた服画像のシンプル度と,服画像のカラーヒストグラムによる色合い分 布の利用を提案する.提案手法を服画像に適用し,被験者の選択結果と比較した ところ,シンプル度を用いた服画像の判別では人の好み,感覚に適している手法 であることがわかった.色類似度より,色類似度が大きくシンプル度差が大きい 画像間では,シンプルを重視する人がシンプル画像をよく選択していることもわ かった.
著者
清水 一彦
出版者
江戸川大学
雑誌
江戸川大学紀要 = Bulletin of Edogawa University
巻号頁・発行日
no.26, pp.159-172, 2016-03

出版とは情報を編集して公開する行為である。出版行為の結果としての出版物には,書籍,雑誌,ムック,コミックス,新聞,そして印刷メディアからの拡張である電子書籍,電子雑誌などがある。江戸川大学マス・コミュニケーション学科出版研究ゼミナールでは,新聞記事制作も出版行為の一部として千葉日報社主催のチバ・ユニバーシティ・プレス(CUP)に参加している。本稿ではCUP の教育効果を個別的に論考する。具体的な教育的効果としては,①体感的にジャーナリズム的な思考を獲得できること,②新聞に書くことでうまれる責任と社会的影響を実感できること,③メンタル面でのストレスが連帯感と技術習得をうながすこと,そして④取材量の確保ができることの4 点があげられる。
著者
鶴田 華子 清水 一行 村上 武 鎌田 康寛 渡邉 英雄
出版者
公益社団法人 日本金属学会
雑誌
日本金属学会誌 (ISSN:00214876)
巻号頁・発行日
vol.85, no.6, pp.239-246, 2021-06-01 (Released:2021-05-25)
参考文献数
17
被引用文献数
1

The plan-view and cross-sectional microstructures of SUS304 steel irradiated by gallium focused-ion beam were investigated using electron backscatter diffraction and energy dispersive X-ray spectroscopy. Structural phase transformation and gallium implantation were confirmed in the region of irradiated austenite grains. The amount of bcc phase and gallium concentration increased with increasing irradiation dose, which suggests that gallium implantation plays an important role as a ferrite stabilizer and also the source of stress effect. Crystallographic orientation relationships between bcc phase and austenite matrix were analyzed by considering the angular deviation between closed-packed planes and closed-packed directions. Differences in transformation behaviors between (001) and (111) austenite grains were discussed from the view-points of fcc-bcc interface structures.