著者
田中 大介
出版者
日本社会学会
雑誌
社会学評論 (ISSN:00215414)
巻号頁・発行日
vol.58, no.1, pp.40-56, 2007-06-30

本論文は,日露戦争前後の電車内における身体技法の歴史的生成を検討することによって,都市交通における公共性の諸様態を明らかにすることを目的としている.電車は明治後期に頻発した群集騒乱の現場になっていたが,同時期,法律から慣習のレベルまで,電車内の振る舞いに対する多様な規制や抑圧が形成された.これらの規制や抑圧は,身体の五感にいたる微細な部分におよんでいる.たとえば,聴覚,触覚,嗅覚などを刺激する所作が抑圧されるが,逆に視覚を「適切に」分散させ・誘導するような「通勤読書」や「車内広告」が普及している.つまり車内空間は「まなざしの体制」とでもよべる状況にあった.この「まなざしの体制」において設定された「適切/逸脱」の境界線を,乗客たちは微妙な視線のやりとりで密かに逸脱する異性間交流の実践を開発する.それは,電車内という身体の超近接状況で不可避に孕まれる猥雑さを抑圧し,男性/女性の関係を非対称化することで公的空間として維持しつつも,そうした抑圧や規制を逆に遊戯として楽しもうとする技法であった.
著者
次山 淳 松村 恵司 松村 恵司 次山 淳 池田 善文 梅崎 恵司 江草 宣友 小畑 弘己 神崎 勝 北野 隆亮 木村 理恵 小泉 武寛 小林 義孝 栄原 永遠男 芝田 悟 関口 かをり 高橋 照彦 田中 大介 永井 久美男 濱崎 真二 降幡 順子 古田 修久 松崎 俊郎 松村 恵司 宮崎 貴夫 森岡 秀人
出版者
独立行政法人国立文化財機構奈良文化財研究所
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2008

3カ年にわたる研究により、銅銭を基軸に据えた貨幣制度の導入が、中国式都城の建設と一体的に企画され、富本銭が発行された歴史的経緯が明らかになった。和同開珎の発行時には、銭貨の規格性を維持しつつ発行量の増大を図るために、鋳銭体制の整備と鋳銭技術の改良が図られていること、地金貨幣である無文銀銭を駆逐するために和同銀銭が発行されるなど、7世紀末から8世紀初頭にかけての貨幣関係記事が、名目貨幣である国内通貨の定着に向けた一連の貨幣政策として整合的に理解できるようになった。
著者
若林 幹夫 田中 大介 南後 由和
出版者
早稲田大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

本研究は、消費化・情報化時代の「都市の論理」と、それを成立させる社会的過程と構造を明らかにすることを目的としている。具体的には、1990年代以降、全国の都市部や郊外地域に普及した消費空間であるショッピングセンター、ショッピングモールを主要な対象として、現代都市社会における空間の生産・流通・消費のあり方と、それが生み出す社会と文化の様態を、情報化・消費化社会における新たな「都市の論理」として分析した。
著者
田中 大雅 政谷 巧樹 寺江 航汰 水上 英紀 村上 将嗣 吉田 駿也 青竹 峻太郎 舩橋 真俊 大谷 拓也 高西 淳夫
出版者
一般社団法人 日本ロボット学会
雑誌
日本ロボット学会誌 (ISSN:02891824)
巻号頁・発行日
vol.40, no.9, pp.845-848, 2022 (Released:2022-11-18)
参考文献数
7

Currently, as measures against environmental destruction, an agricultural method called synecocultureTM has been received attention. However, since multiple types of plants grow densely in this method, conventional machines and robots can't intervene. Therefore, work efficiency is low. To improve work efficiency, we developed a robot with a wheel and linear mechanism. The wheel mechanism can move on uneven terrain, and the linear mechanism with two orthogonal axes can adjust tool position during task. In the field experiment, the robot moved on the field, and succeeded in harvesting and weeding by operating the linear mechanism based on the camera image.
著者
髙島 良胤 田中 大樹 佐古 孝弘 古谷 正広
出版者
公益社団法人 自動車技術会
雑誌
自動車技術会論文集 (ISSN:02878321)
巻号頁・発行日
vol.45, no.2, pp.221-227, 2014 (Released:2018-01-25)
参考文献数
8
被引用文献数
3

小型火花ガスエンジンにおいて,燃料供給機構を備えていない副室が燃焼および機関性能に及ぼす影響を調査した.希薄条件下において燃焼が緩慢になり熱効率低下の一要因になっている為,副室を用いて燃焼期間を短縮し熱効率を改善した.副室諸元が燃焼および機関性能に及ぼす影響について考察を加えた.
著者
田中 大貴 森 恵莉 関根 瑠美 鄭 雅誠 鴻 信義 小島 博己
出版者
耳鼻咽喉科展望会
雑誌
耳鼻咽喉科展望 (ISSN:03869687)
巻号頁・発行日
vol.63, no.3, pp.119-122, 2020-06-15 (Released:2021-06-15)
参考文献数
13

塩化亜鉛液を浸した綿棒で上咽頭を擦過する上咽頭擦過療法 (Epipharyngeal Abrasive Therapy: EAT) は, 組織の収斂・抗炎症作用を利用した上咽頭炎など初期の感冒症状に対して一部の施設にて行われている。 上咽頭擦過療法で稀に嗅覚障害を来すことがあるとされるが, 詳細な報告はない。 国外ではグルコン酸亜鉛液が初期の感冒に効果があるとされ市販されており, このグルコン酸亜鉛液による点鼻治療で嗅覚障害を来したという報告が散見する。 また硫化亜鉛や酸化亜鉛も動物実験で嗅覚障害を起こしたという報告がある。 今回, 塩化亜鉛液が原因と考えられる嗅覚障害の例を経験し, 塩化亜鉛も他の亜鉛化合物と同様に嗅覚障害を呈する可能性が考慮されたため, 文献的考察を加えて報告する。
著者
清田 和也 武井 秀文 熊谷 渉 田中 大 浜谷 学
出版者
一般社団法人 日本臨床救急医学会
雑誌
日本臨床救急医学会雑誌 (ISSN:13450581)
巻号頁・発行日
vol.21, no.6, pp.729-734, 2018-12-31 (Released:2018-12-31)
参考文献数
10

目的:救急搬送状況の改善のため,迅速かつ適切な救急搬送体制の確立に向けた施策を実施した。方法:①救急現場におけるタブレット端末を利用した医療機関検索,②搬送困難事案受入医療機関の確保,③MC医師による搬送先コーディネート,など。結果:重症以上傷病者搬送事案では,医療機関への照会回数4回以上の割合が平成23年の10.6%から,平成28年は4.1%と有意に減少した。また,平成29年に,搬送困難事案受入医療機関に要請が可能となる基準に達した事案のうち6号基準を適用して要請を行った件数は23.7%で,要請したうちの80.2%が受け入れられ,重症以上傷病者搬送事案では,現場滞在時間30分以上の割合が平成24年の16.7%から,平成28年は13.3%と有意に減少した。考察:新たな救急医療情報システムでは,救急現場において医療機関の受入状況がリアルタイムで確認でき,医療機関選定の有効なツールとなった。結語:今後,データの分析を進め,救急活動の質の向上とさらなる救急搬送受入体制の改善に役立てていく。
著者
廣瀬 恒平 田中 大雄 千葉 剛 嶋崎 達也 鷲谷 浩輔 千坂 大二朗
出版者
The Japan Journal of Coaching Studies
雑誌
コーチング学研究 (ISSN:21851646)
巻号頁・発行日
vol.32, no.2, pp.189-202, 2019-03-20 (Released:2019-09-02)
参考文献数
16

The purpose of this study was to clarify effective tactics of attack on the sport of rugby sevens using notational analysis of game performance on the menʼs rugby sevens at Olympic games 2016. The main results of this study were as follows; 1) The rate of attack to the open-side and reverse-direction are higher. 2) To breakthrough the defence-line is more difficult than the gain-line. 3) In the number of passes before contact, the rate of breakthrough the defence-line unused pass were the lowest and the rate of unused pass in the Top6 teams was lower than the bottom6 teams and therefore the attack option using pass is effective. 4) In the attack options, the rate of breakthrough the defence-line under the overlap situation is the highest and therefore the attack option to carry the ball at vacant space is effective. 5) In the starting points in attack, the rate of breakthrough the defence-line in attack from turn-over and therefore turn-over is one of the effective starting points.
著者
小枝 達也 関 あゆみ 田中 大介 内山 仁志
出版者
一般社団法人 日本小児神経学会
雑誌
脳と発達 (ISSN:00290831)
巻号頁・発行日
vol.46, no.4, pp.270-274, 2014 (Released:2014-12-25)
参考文献数
17
被引用文献数
6

【目的】Response to intervention (RTI) の導入による特異的読字障害の早期発見と早期介入の可能性を検証する. 【方法】小学校1年生 (77名 ; 男児36名) を対象として, RTIを導入して特異的読字障害の早期発見と介入を行い, 3年生での予後を調査する. 【結果】1年生時に4名の音読困難のある児童が発見された. その4名に音読指導 (解読指導と語彙指導) を実施した結果, 3名は音読困難が軽快したが, 1名は特異的読字障害であると診断された. 3年生時には1年生時に発見された1名が特異的読字障害であり, 新たに診断に該当する児童はいなかった. 【結論】1年生時にRTIを導入することで, 特異的読字障害の早期発見と早期介入が可能になると考えられる.
著者
田中 大輝 林下 淳一 上山 あゆみ Daiki TANAKA J.−R. HAYASHISHITA Ayumi UEYAMA
出版者
鳴門教育大学
雑誌
鳴門教育大学研究紀要 = Research bulletin of Naruto University of Education (ISSN:18807194)
巻号頁・発行日
vol.32, pp.333-347, 2017-03-10

This paper firstly reviews Japanese language reference books published in recent years from the perspective of whether they are sufficient for learners to use Japanese verbs effectively. In Japanese a verb changes its meaning depending on what types of nouns serve as its arguments and what particle those arguments take. It thus follows that a viable reference book must introduce each meaning associated with a given verb together with the information of the types of arguments it takes and the particles accompanying those arguments. The example sentences for a given verb having a given meaning must also illustrate its arguments and their accompanying particles clearly. We demonstrate that while recent Japanese language reference books are useful in a number of ways, none of them meet these criteria sufficiently ; hence, we still await a reference book that enable learners to use Japanese verbs effectively. The second part of the paper introduces our ongoing project, which aims to produce a Japanese verbs reference book meeting these criteria. Our proposed reference book targets Japanese language learners who understand English, and incorporate English explanations creatively to achieve the goal.
著者
鈴木 俊幸 齋藤 真麻理 小林 一彦 田中 大士 中嶋 隆 入口 敦志 海野 圭介 栁瀬 千穂 岩橋 清美 荒木 仁朗 粂 汐里 滝澤 みか 小林 健二
出版者
人間文化研究機構国文学研究資料館
雑誌
国文研ニューズ = NIJL News (ISSN:18831931)
巻号頁・発行日
no.54, pp.1-16, 2019-01-23

●メッセージ継承と蓄積●研究ノートホノルル美術館蔵『塵滴問答』について●エッセイ一期一会●トピックス第11回日本古典文学学術賞受賞者発表第11回日本古典文学学術賞選考講評中世日本の写本文化をめぐる研究集会肥前島原松平文庫における合同古典籍研修会日本古典籍セミナーUniversity of California, Berkeley 2018公開研究会「古典籍画像に対する文字認識と内容解析への取り組み」大学共同利用機関シンポジウム2018「福島県浜通りの歴史と文化の継承―『大字誌ふるさと請戸』という方法―」平成30年度古典の日講演会第42回国際日本文学研究集会総合研究大学院大学日本文学研究専攻の近況●表紙絵資料紹介『かみよ物語絵巻貼付屏風』六曲一隻
著者
田中 大貴 馬場 雪乃 鹿島 久嗣 齋藤 朋也 大久保 雄太
出版者
人工知能学会
雑誌
2018年度人工知能学会全国大会(第32回)
巻号頁・発行日
2018-04-12

本研究では、運転時の位置情報や速度・加速度等の運転データを用いたドライバー識別に取り組む。既存研究では十数人のドライバー識別を対象にしていたのに対し、本研究では、最大1万人という大規模なドライバー識別を扱う。実データを用いた実験により、提案法がベースラインよりも精度良くドライバーを識別できることを示した。特に、位置や時間に関する特徴量が大規模ドライバー識別に極めて有効であることを示し、また、速度や加速度情報もドライバーの識別に一定の寄与があることを示した。
著者
田中 大貴
出版者
日本社会心理学会
雑誌
社会心理学研究 (ISSN:09161503)
巻号頁・発行日
vol.29, no.1, pp.21-24, 2013-08-31 (Released:2017-02-24)

Whether people punish an unfair partner has been investigated using the ultimatum game, in which a proposer makes an offer of how to divide a fixed amount of money between him/herself and a responder, and the responder decides whether to accept or reject the proposer's offer. Previous studies have revealed that it is the proposer's unfair intention, rather than the unfair offer itself, that increases the rejection rate. However, all of the previous studies employed the strategy method, wherein the responders had to decide whether to reject various offers before examining the proposer's actual offer. The primary purpose of the present study was to examine whether the effect of unfair intention would be replicated when the responders made their decision upon receipt of the proposer's offer. Accordingly, in the present study, participants received an unfair offer (i.e., the proposer would take 90% of the resource) that was made intentionally or unintentionally, and then decided whether to accept it. The result showed that the unfair offer was rejected more frequently in the intention condition than the no-intention condition.
著者
田中 大海 城戸 翔大 長田 智和 谷口 祐治
雑誌
研究報告インターネットと運用技術(IOT) (ISSN:21888787)
巻号頁・発行日
vol.2017-IOT-36, no.38, pp.1-4, 2017-02-24

琉球大学工学部情報工学科では,システム管理チームと呼ばれる有志の学生が,教員の指導の下で教育情報システムの設計 ・ 構築を行い,運用している.現在運用しているシステムは平成 27 年 10 月に初期構築されたものである.本システムは運用開始から 1 年が経過し,システム管理チームはさまざまなトラブル対応や運用の改善を行ってきた.本発表では,本学科における学生による教育情報システムの運用管理に関する取り組みを報告する.
著者
本多 克宏 田中 大士 大塩 竣也 野津 亮
出版者
日本知能情報ファジィ学会
雑誌
日本知能情報ファジィ学会 ファジィ システム シンポジウム 講演論文集 第29回ファジィシステムシンポジウム
巻号頁・発行日
pp.14, 2013 (Released:2015-01-24)

共クラスタリングの有望な応用事例として,インターネット上での協調フィルタリングが注目されている.嗜好の類似したユーザ群に関連性の強いアイテムを割り当てる共クラスタリングにより,未購入・未評価のアイテムを推薦する.大規模なユーザ群への実応用を目指す上では,従来の共クラスタリングアルゴリズムでは計算コストの面で限界があった.本研究では,サンプリングアプローチに基づく大規模データへの適用可能性について,検証する.
著者
田中 大輔
出版者
公益社団法人 日本薬学会
雑誌
MEDCHEM NEWS (ISSN:24328618)
巻号頁・発行日
vol.30, no.4, pp.171-176, 2020-11-01 (Released:2021-05-01)
参考文献数
5

2012年英国で誕生したExscientiaは、人工知能(AI)創薬における世界のフロントランナーである。本年1月には大日本住友製薬との共同研究で生み出された化合物が臨床試験入りし、世界で最初のAIがデザインした治験薬として多くのメディアに採り上げられるなど、その実力と実績を「成果物」として世に知らしめた。その結果、ExscientiaはAIによるドラッグデザインをする企業であると理解されがちであるが、それは主要であるものの一部に過ぎない。Exscientiaではドラッグデザインに止まらず、これから注目される新規標的分子の提案にもAIを活用している。筆者らのAI創薬プラットフォームを紹介するとともに、世界のAI創薬の最前線に身を置く立場からこれからの創薬化学者のあり方についても私見を述べてみたい。