著者
田中 輝明 小山 司
出版者
一般社団法人 日本心身医学会
雑誌
心身医学 (ISSN:03850307)
巻号頁・発行日
vol.49, no.9, pp.979-985, 2009
参考文献数
20
被引用文献数
2

単極性うつ病と双極性うつ病では治療アプローチが異なるため,「うつ病」診療においては早期診断が重要な鍵となる.抑うつ症状のみで鑑別することは困難であるが,双極性うつ病では非定型症状や躁成分の混入が診断の手掛かりとなることもある.双極性障害の診断には(軽)躁病エピソードの存在が必須であるが,患者の認識は乏しく,周囲からも注意深く(軽)躁症状の有無を聴取する必要がある.双極性障害のスクリーニングには自記式質問紙票も有用である.また,パーソナリティ障害や薬物依存などの併存も多く,複雑な病像を呈するため注意を要する.双極スペクトラムの観点から,双極性障害の家族歴や抗うつ薬による躁転などbipolarityについても確認することが望ましい.双極性障害の薬物治療としては,エピソードにかかわらず気分安定薬が第一選択であり,有効性や副作用(躁転や急速交代化)の面から,抗うつ薬の使用には慎重さが求められる.
著者
金子 雄一郎 田中 瑛
出版者
一般社団法人 交通工学研究会
雑誌
交通工学論文集
巻号頁・発行日
vol.1, no.2, pp.A_47-A_53, 2015

<tt>本研究は東京圏の高齢者を対象にアンケート調査を実施し、外出状況や公共交通の利用実態などを把握したものである。主な結果として、外出頻度が高い移動目的は買い物と仕事であり、通院は加齢とともに高くなること、外出先は居住地域内が大半で、交通手段は徒歩と自動車が目的に関わらず広く利用されていることが分かった。また、公共交通の利用頻度は鉄道の方がバスより高いこと、頻度自体には、居住地域や就業状況、自動車保有の有無、健康状態、シルバーパスの保有状況等の個人属性が影響を与えていることが分かった。さらに、対象地域では、将来的にも自動車の運転を継続する意思を持つ人の割合が高いことが明らかになった。最後にこれらを踏まえた交通施策の必要性について述べた。</tt>
著者
鈴木 克洋 露口 一成 松本 久子 新実 彰男 田中 栄作 村山 尚子 網谷 良一 久世 文幸
出版者
JAPANESE SOCIETY FOR TUBERCULOSIS
雑誌
結核 (ISSN:00229776)
巻号頁・発行日
vol.72, no.4, pp.187-192, 1997-04-15 (Released:2011-05-24)
参考文献数
10

Fifty six clinical isolates of Mycobacterium tuberculosis were tested for drug susceptibility in Mycobacteria Growth Indicator Tube (MGIT) containing 0.1μg/ml of INH, 1.0μg/ml of RFP, 3.5μg/ml of EB and 0.8μg/ml of SM. These results were compared with those obtained by testing the same M.tuberculosis isolates by the absolute concentration method using 1% Ogawa egg slant containing 0.1μg/ml of INH, 10μg/ml of REP, 2.5μg/ml of EB and 20μg/ml of SM. Fifty six isolates consisted of 18 pansensitive strains, 27 multidrug resistant strains and 11 single drug resistant strains. The results for individual drugs showed excellent agreement between the MGIT and the Ogawa methods, and overall agreement rate of the two methods were 96.4%. The results were just the same for all drugs in 48 out of 56 strains studied. The drug resistance could be observed much earlier by the MGIT method (mean 5.9 days) than by the Ogawa method (more than 21 days). In conclusion, the MGIT system could be a promising new drug susceptibility test which might become available in Japan replacing the Ogawa method.
著者
李 強 田中 良晴 朝田 良子 三羽 信比古
出版者
大阪物療大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2014-04-01

水素水(HW)を用い、損傷を与えたヒト培養細胞の移動能などを検証し、主に次の成果が得られた。1)スクラッチした皮膚線維芽細胞にHWと白金ナノコロイド(Pt-nc)を投与すると、HW群は48時間後糸状仮足を示し始め、また、HW+Pt-ncはBax/Bcl-2比を調節する可能性が示唆された。2)低濃度の固形シリカ吸蔵水素(H2-silica)がスクラッチした正常食道上皮細胞(HEEpiC)には微絨毛形成や移動能の活性化がみられ、アポトーシスの誘導効果も確認された。3)H2-silicaが食道扁平上皮癌細胞の移動を阻害し、高濃度のH2-silicaがHEEpiCに毒性効果をもたらすことが確認された。
著者
窪田 悠貴 田中 文英
出版者
一般社団法人 人工知能学会
雑誌
人工知能学会全国大会論文集 第34回全国大会(2020)
巻号頁・発行日
pp.4Rin166, 2020 (Released:2020-06-19)

本研究では、人が痛みを説明する方法として物体の変形に着目した。この研究の目的は痛みを他者へ伝えることを補助し、他者が痛みを理解しやすくすることである。本論文では、現在使用されている痛みの評価方法と物体の変形と情報伝達に着目した先行研究の調査を行った。また装置開発において、初めに予備実験を行い痛みの性質と物体の変形の性質の対応づけを行った。実験から得られた結果より開発するデバイスの設計指針を立て、変形による痛み表現装置の開発を行った。
著者
本屋敷 涼 仲座 栄三 宮里 信寿 福森 匡泰 田中 聡 Carolyn SCHAAB
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集B2(海岸工学) (ISSN:18842399)
巻号頁・発行日
vol.76, no.1, pp.20-37, 2020

<p> 階段式護岸のステップ高は通常0.2~0.3m程度に設定されている.しかしながら,こうした緩勾配階段式護岸の勾配は人の歩行を考えて1/2~1/3程度に取られるため,占有面積が大きくなることや波の遡上高が高くなるなどの問題点を抱えている.階段式護岸設置の主な理由は,人の海岸利用や景観への配慮など親水性向上にある.したがって,実務設計者は,波の遡上高や反射率など防災上必要となる数値的な把握のみでなく,実際に護岸上で繰り広げられる砕波現象,流れや渦の発生など,水理学的特性の把握も求められる.本研究は,CADMAS-SURFを用いた数値計算によって,代表例としてステップの高さが0.2mと1.4mの場合の波の遡上高及び反射率の特性を対象に,波の砕波形態,ステップ上での流れや渦の発生など水理学的な特性との関連を明らかにしている.</p>
著者
田中舘 悠登 羽原 俊祐
出版者
一般社団法人 セメント協会
雑誌
セメント・コンクリート論文集 (ISSN:09163182)
巻号頁・発行日
vol.73, no.1, pp.244-250, 2020-03-31 (Released:2020-03-31)
参考文献数
12

凍結防止剤溶液の凍結と融解過程がスケーリングに及ぼす影響を明らかにするため、種々の凍結防止剤溶液の凝固点以下-30~-5℃において、様々な温度範囲で降温と昇温を繰り返し行った。凍結防止剤の種類によってスケーリングが起こる温度域が異なる結果となった。全ての凍結防止剤溶液において、スケーリングが起こる温度域は凝固点と共晶点の間であり、純氷と高濃度の凍結防止剤溶液が混在する状態である。一方、凍結防止剤の結晶と純氷の2成分の固体状態である共晶点以下では、スケーリングは起こらなかった。温度変化に伴い凍結防止剤溶液の一部分において凍結と融解が起こることにより、スケーリングが起こると考えられる。
著者
葉室 和親 荒牧 重雄 藤岡 換太郎 石井 輝秋 田中 武男 宇都 浩三
出版者
東京大学地震研究所
雑誌
東京大學地震研究所彙報 = Bulletin of the Earthquake Research Institute, University of Tokyo (ISSN:00408972)
巻号頁・発行日
vol.58, no.2, pp.527-557, 1983-10-22

1979年12月の淡青丸KT-79-18航海の際,東伊豆沖海底火山群,大島南方の大室出シ堆,新島東方の新島ウラノ瀬などの海底火山の岩石をドレッジにより採集した.東伊豆沖海底火山群は,岩石の鉱物・化学的特徴により北半部,中部,南部に細分することができる.北半部の岩石はすべて高アルカリソレアイト系列の玄武岩・安山岩溶岩であり,伊豆半島中部東部に分布する東伊豆単成火山群がそのまま海底に延長して孤立した海底火山として分布しているものと考えて差支えない.中部では,低アルカリ(低Na2O)ソレアイト系列の玄武岩が5点のドレッジから発見された.そのうち伊豆大島に近い2点は,伊豆大島火山の玄武岩類に似た鉱物・化学組成をもち,新鮮である.西側の3点の岩石はいずれも風化変質作用を受けており,小角礫の集合として産する.これらは伊豆大島火山や東伊豆単成火山群よりも古い海底火山に属するものと判断される.南部のドレッジ2点からは東伊豆単成火山群南西部のグループの岩石に似た玄武岩が得られた。大室出シは,ガラス質多孔質の新鮮な流紋岩溶岩流から成る平坦な頂部をもつ海底火山と考えられる.山体の中央部に深さ100m,長さ1.5km,幅0.5kmの凹陥地(大室海穴)があるが,その壁からは流紋岩溶岩が採集された.新島ウラノ瀬の南東麓からは,流紋岩溶岩と変質した玄武岩礫,石英閃緑岩礫などが採集された.後者はこの地域を構成する基盤岩類と考えられる.