著者
不破 達 児玉 亨 本多 芳子 田中 豊人 久保 喜一 大橋 則雄 中江 大 小縣 昭夫
出版者
特定非営利活動法人 化学生物総合管理学会
雑誌
化学生物総合管理 (ISSN:13499041)
巻号頁・発行日
vol.5, no.1, pp.62-72, 2009 (Released:2009-09-16)
参考文献数
12
被引用文献数
1

脳内局所微量透析法(マイクロダイアリシス法)と高速液体クロマトグラフィーとの組み合わせによって、メチレンジオキシ・ピロバレロン(MDPV)投与によるマウス線条体内神経細胞外のドーパミン (DA) とセロトニン (5-HT) 量の経時的変化を調べた。それに加えて、行動量の測定実験と連続投与による中枢神経損傷の有無について、免疫組織化学による実験をおこなった。マイクロダイアリシスによる生体試料回収は10分間隔で行い、MDPV経口投与から2時間半後までおこなった。線条体内神経細胞外のDA量がMDPV投与から30分の間に210%、30分から60分の間に208%増加した。5-HT量の変化は観察されなかった。MDPVのDA作動性神経作用は類似薬物MDMA、METHと比較して緩やかで、短時間であった。なお、DA量と行動量の変化からマウス線条体内の神経細胞外DA量が200%以上増加すると行動量増加を引き起こすと考えられた。MDPVの神経毒性は今回の実験からは観察されなかった。
著者
田中 薫里 上田 エジウソン 寺内 文雄
出版者
Japanese Society for the Science of Design
雑誌
日本デザイン学会研究発表大会概要集
巻号頁・発行日
pp.284, 2014 (Released:2014-07-04)

本研究は,アトピー性皮膚炎患者では皮膚防御機能が著しく低い点に着目し,衣服の刺激によるかゆみの問題を,繊維の種類や織構造によって解決することを目的とした。まずアトピー患者を対象として,その症状について聞き取り調査を行った。これにより首や肘,膝の裏などといった汗のたまりやすい部位に症状が出やすく,同時にそれらの部位が人目につきやすいために気になっていることが確認できた。そこで7種類の異なる繊維を用い,これらをそれぞれ経糸と緯糸とした布サンプル計49種類を作成した。そしてこれらに5種類の既製品を加えた計54サンプルを対象として,被験者実験を実施した。これにより,竹レーヨンや絹などといったやわらかい糸を用いたサンプルの触り心地の評価が高いことが確認できた。さらに繊維の組み合わせや織り構造も,皮膚への刺激の程度を大きな影響を及ぼしていることが明らかになった。そこで,これらの糸を組み合わせた布によって,症状が出やすい首や肘などの部位に着用するくるみ布を制作した.また糸を天然染料によって染めることによって治療の印象を低減させることを意図した。これらをアトピー患者に着用してもらい意見を収集したところ,触り心地の良さだけでなく,色や柄の美しさについても高い評価を得ることができた。
著者
田中 美郷 芦野 聡子 小山 由美 針谷 しげ子 熊川 孝三 浅野 公子
出版者
Japan Audiological Society
雑誌
AUDIOLOGY JAPAN (ISSN:03038106)
巻号頁・発行日
vol.49, no.2, pp.178-183, 2006-04-28 (Released:2010-08-05)
参考文献数
15
被引用文献数
1

わが国でも子どもの人工内耳例が増加しているが, その評価はことばの知覚面の改善が中心で, 学校教育上最も重視されるべき言語の問題が等閑に付されてきた。人工内耳は難聴を治す方法ではないだけに, 言語を育てるためにはそのための方法論が必要である。我々は親子のコミュニケーションと情緒の安定を重視し, 人工内耳候補児には術前から補聴器活用に加えて手話や指文字などを導入して, 先ず言語発達を促し, 術後も手話や指文字を禁じることなく活用しながらトップダウン方式で聴覚活用に導く方式をとっている。2002年4月以降24名の重度難聴幼児に人工内耳を装着させ, その後の経過を含めて, この作業を行っていく上でのコーディネーターを中心としたチーム作り, 並びに人工内耳の適応基準について, 我々独自の方法論を述べた。
著者
田中 良広 澤田 真弓
出版者
独立行政法人国立特別支援教育総合研究所
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

本研究では、読字実験により弱視者の最小可読文字サイズが清音文字に比べ濁音・半濁音文字の方が3ポイント程度大きいことを明らかにした。この実験結果に基づき、濁点・半濁点部分を2倍程度(面積比4倍程度)大きくした弱視用フォントを試作した。試作した弱視用フォントの有用性を検証するための単語読みの比較実験では、初期実験の正答率を大きく上回った。このことにより、試作した弱視用フォントの有用性が確かめられた。
著者
田中 啓文
出版者
早川書房
雑誌
SFマガジン
巻号頁・発行日
vol.42, no.4, pp.34-51, 2001-04
著者
田中 虔一
出版者
公益社団法人 日本表面科学会
雑誌
表面科学 (ISSN:03885321)
巻号頁・発行日
vol.37, no.11, pp.560-566, 2016-11-10 (Released:2016-11-19)
参考文献数
19

The role of promoting materials for the preferential oxidation (PROX) reaction of CO in H2 on Pt-catalysts was elucidated by using the Pt-catalyst supported on a CNT with Ni-MgO at its terminal end and the CNT-p with no Ni-MgO. The role of Ni-MgO is not the synergy effect on the Pt but set up a new catalytic oxidation reaction cycle of CO in the presence of H2O. The dynamic In-situ IR spectroscopy suggested the rate determining slow step of HCOO + OH → CO2 + H2O, where H2O molecule plays like a molecular catalyst in cooperation of Pt and promoting materials. The contribution of H2O is expressed by n(CO + 1/2O2) + H2O → n CO2 + H2O, where n is CO2 molecules by one H2O molecule staying on the surface. According to this new concept, the selectivity is given by n/(n+1), which takes 50%∼100% depending on the staying time of H2O on the catalyst. The mysterious high selectivity reported on the Pt-nano rods in SiO2-nano-tube and the curious selectivity on Au/CeO2 depending on the crystal shape of CeO2 are well rationalized by this new mechanism.
著者
田中 栄爾 田中 千尋 柴田 昌三
出版者
日本菌学会
雑誌
日本菌学会会報 (ISSN:00290289)
巻号頁・発行日
vol.50, no.1, pp.jjom.H20-06, 2009-05-01 (Released:2018-03-30)
参考文献数
6

日本国内のタケ・ササ類に発生する「てんぐ巣」症状 について,Aciculosporium take,Heteroepichloë sasae,Ustilago shiraiana の菌類による病徴の特徴を解説した. さらに開花現象や老齢化などの自然現象によって起きる 「てんぐ巣様症状」との違いを解説した.
著者
田中 和彦 Kazuhiko Tanaka
雑誌
日本福祉大学社会福祉論集 = Journal of social welfare, Nihon Fukushi University
巻号頁・発行日
vol.130, pp.31-43, 2014-03-31

アセスメントはソーシャルワークの要とされ,質の高いアセスメントができてこそ価値に基づくソーシャルワーク実践が展開できるといえる.若手PSWに対するソーシャルワーク実践力の向上を目的とした研修の方向性を探るために,アセスメントプロセスに着目し,若手PSWのアセスメントの特徴について,面接事例を用いた内容分析をおこなった.その結果,若手PSWのアセスメントプロセスにおける困難性として①PSWの枠組みでクライエントのスキルの査定を中心としていること,②変換ミス(クライエントの言葉についてクライエントの真意をくみ取れないまま,PSWの言葉で言い換えている),③話題の回避(クライエントが話したいと思われることについて避けている),④病理・欠損モデル(クライエントの問題点を抽出しようとする視点が強い),⑤直線的理解(状態の原因探しに視点が偏重である)という特徴がみられた.さらに上記5点は相互に影響しあい,アセスメントの本来の目的であるクライエントの全人的理解を困難にしていることがわかった.研修の方向性として,エキスパートのアセスメントスキルの抽出を踏まえ,体験の積み重ねだけにとどまらないアセスメントスキル獲得のための研修の必要性と,そのためのソーシャルワークの「職人技」の言語化の必要性が示唆された.
著者
熊谷 秋三 田中 茂穂 岸本 裕歩 内藤 義彦
出版者
日本運動疫学会
雑誌
運動疫学研究 (ISSN:13475827)
巻号頁・発行日
vol.17, no.2, pp.90-103, 2015-09-30 (Released:2020-04-10)
参考文献数
71
被引用文献数
1

自由生活下における単位時間の身体活動の強度を最も正確に推定できる方法は,加速度センサーを用いた活動量計である。加速度センサーを内蔵する活動量計は,加速度と身体活動強度との間に相関がみられることを利用して,活動強度を推定する。従来は,上下方向だけ(一軸)の加速度センサーであったが,最近は二~三軸の加速度センサーが主流である。歩行を含む日常生活でみられる活動の多くは,±2G(重力加速度;1 G=9.8 m/s2)以内であるが,歩行以外の日常生活の場合は,多くが数十mG かそれ以下,座位行動の場合は20 mG 程度以下であることから,座位行動を含む低強度の活動強度を評価するにあたっては,低強度での分解能が要求される。歩・走行とそれ以外の活動では,加速度と活動強度との関係式が異なるが,それらを判別するために,加速度の大きさを反映するカウントの変動係数,垂直と水平成分の比率,および重力加速度から姿勢の変化をとらえる方法などが提案されている。特に強度が弱い活動において,三軸加速度センサー内蔵活動量計(Active style Pro)の推定誤差が小さい。なお,自転車漕ぎ,坂道の昇り降り,重い物を持っての自立姿勢などにおいては,加速度の大きさは,必ずしもエネルギー消費量と対応しないため,機種やアルゴリズムを確認したうえで使用する必要がある。我々は,Active style Proを用いて久山町住民を対象に身体活動を調査した。活動強度3メッツ以上の活動量は男女ともに加齢に伴い有意に減少し,その身体活動パターンには性差が存在することを明らかになった。すなわち,男性では歩・走行活動が多い一方で座位時間も長く,女性では歩・走行以外の活動によって活動量を維持する傾向にあることが観察された。更に,三軸加速度センサー内蔵活動量計を用いた疫学研究の意義および可能性について要約した。最後に,現在継続中もしくは実施予定の三軸加速度センサー内蔵活動量計を用いた縦断研究(前向きコホート研究含む)を紹介した。これらの継続中の疫学研究は,三軸加速度センサー内蔵活動量計による客観的調査に基づいた軽強度,中高強度の身体活動および座位行動に関連したガイドライン開発に必要である有効な情報をもたらすであろう。
著者
田中 亘
出版者
東京大学社会科学研究所
雑誌
社會科學研究 (ISSN:03873307)
巻号頁・発行日
vol.62, no.2, pp.3-31, 2011

本稿は, 契約違反の際に適用される法のルールについて, 強制履行を認めるルール(強制履行ルール)と, 履行利益の賠償しか認めないルール(履行利益の賠償ルール)との比較を中心に検討する. とりわけ, 裁判所による損害の算定が容易でない一方, 契約の当事者間の再交渉が容易であるときは, 強制履行ルールが利点を持ちうることを明らかにする. また, 当事者がリスク回避的なときは, 契約違反がどういう原因で行われるか(損失を避けるために契約違反をするのか, 利益を得るために契約違反をするのか)も, ルールの評価にとって重要であることを指摘する. 以上の検討を踏まえ, 本稿は, 契約違反に関する日本法の分析・評価も行う. 日本法は, 強制履行を原則として認める法体系であるが, 本稿は, これが一定の状況下では合理性を持ちうることを明らかにするとともに, 強制履行ルールの欠点であると通常考えられている問題についても, 日本法は一定の対処を行っていることを指摘する.
著者
田中 五郎 西脇 威夫 島田 静雄
出版者
Japan Society of Civil Engineers
雑誌
土木学会論文集 (ISSN:00471798)
巻号頁・発行日
vol.1958, no.59, pp.d1-d16, 1958-12-25 (Released:2010-08-24)
参考文献数
3

吊橋用に製造されたスパイラル・ロープの引張り試験を行い, 伸び, トルクおよび両端を回転自由にした場合のより戻り角度を測定して, それの弾性的性質を実験的に調べた。更にスパイラル・ロープの弾性的変形に対して理論式を導き, 実験値と計算値を比較検討し, プリテンション加工の一指針を与えた。
著者
和田 基 工藤 博典 天江 新太郎 石田 和之 上野 豪久 佐々木 英之 風間 理郎 西 功太郎 福沢 太一 田中 拡 山木 聡史 大久保 龍二 福澤 正洋 仁尾 正記
出版者
日本静脈経腸栄養学会
雑誌
静脈経腸栄養 (ISSN:13444980)
巻号頁・発行日
vol.27, no.5, pp.1217-1222, 2012 (Released:2012-10-31)
参考文献数
20
被引用文献数
2

腸管不全合併肝障害(intestinal failure associated liver disease ; 以下、IFALDと略)は腸管不全(intestinal failure ; 以下、IFと略)の致死的かつ重大な合併症であるが、IF、IFALDの発生数、発症率、死亡率などの実態は知られておらず、今後の詳細な調査、検討が期待される。IFALDが進行し、不可逆的肝不全を来たした場合には肝臓-小腸移植、多臓器移植によってしか救命できないが、国内では依然として小児の脳死ドナーからの臓器提供の困難な状態が続いており、特に小児IF症例におけるIFALDの治療と予防はIF治療における最重要課題である。長期の静脈栄養(parenteral nutrition、以下、PNと略)症例では非アルコール性脂肪肝炎(nonalcoholic steatohepatitis、以下、NASHと略)来たすことが示され、IFALDの発症には肝臓での脂質代謝異常が関与すると考えられている。IF症例では長期PNに伴う過栄養/低栄養、必須脂肪酸の欠乏など肝臓での脂質代謝異常を来たす要因に加え、腸管細菌叢の異常などを原因とする敗血症、肝臓の循環不全により肝細胞障害を来たし、NASH/IFALDを発症し、重症化すると考えられる。新生児・乳児期のIFでは、胆汁輸送機構の未熟性や腸内細菌叢の異常をより来たしやすいことなどから胆汁うっ滞を主体とするIFALDが問題となり、幼児、学童以降ではNASHを主体とするものが多い。IFALD治療の骨子は、1) 残存する腸管を最大限に利用し、PNへの依存度を軽減すること、2) 個々のIF症例の病態を的確に評価し、適切なPN、経腸栄養(enteral nutrition ; 以下、ENと略)を実施すること、3) 短腸症候群や腸管内容のうっ滞に伴う腸内細菌叢の異常と合併するbacterial translocation(以下、BTと略)、敗血症を最大限に予防すること、である。最近、IFALDに対する魚油由来ω3系静脈注射用脂肪製剤(商品名 : Omegaven®、以下、omegavenと略)の有効性が報告されている。omegavenは(1)胆汁流出の改善、(2)脂肪化の減少、(3)免疫抗炎症作用、といった機序により胆汁うっ滞、肝炎、線維化を軽減すると考えられている。本稿では、当院におけるIF、IFALDの治療経験とomegavenの使用経験、IFALDの病因やIFALDに対するomegavenの効果に関するこれまでの報告を紹介し、IFALDに対する治療の今後の展望について考察する。
著者
橋口 俊太 川本 裕子 城村 裕司 岡田 雅仁 田中 章景
出版者
一般社団法人 日本脳卒中学会
雑誌
脳卒中 (ISSN:09120726)
巻号頁・発行日
vol.38, no.4, pp.272-275, 2016 (Released:2016-07-25)
参考文献数
10
被引用文献数
1 1

症例は41 歳男性.亜急性に進行した頭痛と行動異常が認められ緊急入院となった.入院時は,意識清明だが高揚感があり,軽度認知機能障害と項部硬直を認めた.脳MRI で硬膜が肥厚しており,上矢状静脈洞にdelta sign も認めていたため,MRV を追加したところ上矢状静脈洞と右横静脈洞が描出不良であった.肥厚性硬膜炎に脳静脈洞血栓症を合併した病態と考え,ヘパリンを併用しながら大量ステロイド療法を施行した.臨床症状が改善したため,ステロイド剤と抗凝固薬の内服に切り替え,自宅退院となった.肥厚性硬膜炎の原因として明らかなものは認められず,特発性と診断した.脳静脈洞血栓症については,凝固亢進状態を来しうる先天性もしくは後天性の素因も認めず,硬膜肥厚により二次的な静脈洞の閉塞と還流障害が生じたものと考えた.両者の合併は稀であるが,脳静脈洞血栓症の原因として肥厚性硬膜炎も鑑別に挙げておく必要がある.
著者
田中 美郷
出版者
The Japan Society of Logopedics and Phoniatrics
雑誌
音声言語医学 (ISSN:00302813)
巻号頁・発行日
vol.48, no.3, pp.187-200, 2007-07-20 (Released:2010-06-22)
参考文献数
50
被引用文献数
2

聴覚障害児の教育の目標は言語教育と人間形成にあるといえるが, 言語教育に関しては21世紀に入る頃から大きく変革を迫られている.その背景には新生児聴覚スクリーニング, 人工内耳の普及, 従来の言語教育法に対する反省, 手話言語学の進歩, バイリンガル・バイカルチュラル教育の主張などといった歴史的に未経験な新しい局面の出現がある.本論文ではこれらの動向を概観し, 筆者の40年あまりの臨床経験と合わせて, 今後の実践的研究に何が求められているかを展望する.