著者
田中 貴子
出版者
日本文学協会
雑誌
日本文学 (ISSN:03869903)
巻号頁・発行日
vol.54, no.11, pp.16-26, 2005-11-10 (Released:2017-08-01)

百物語は江戸時代に流行した怪談会であるが、近代小説にはこの「場」を題材としたものがいくつか見られる。奇しくも明治四十四年には森鴎外と泉鏡花が、大正十三年には泉鏡花と岡本綺堂が、それぞれ百物語をテーマとした小説を発表した。本稿では、近代においては百物語を共有する「恐怖の共同体」が失われていることを指摘し、そのうえで、百物語小説がどのような意図によって書かれたかを、鏡花作品を中心として述べた。
著者
田中 巧
出版者
一般社団法人 色材協会
雑誌
色材協会誌 (ISSN:0010180X)
巻号頁・発行日
vol.89, no.2, pp.47-53, 2016-02-20 (Released:2016-05-20)
参考文献数
14

化粧料用の表面処理技術はここ約30年で飛躍的に発展してきた。耐水性・耐油性の向上による化粧崩れの防止,感触の改良,皮膚への付着性の向上,などを目的として行われてきた。本報では,とくに水にかかわる無機顔料粉体の表面処理の及ぼす特徴について述べる。とくに,水分散性の向上を図るカチオンポリマー,また,pH応答性能を有するアニオンポリマーでの表面処理顔料の特性について,結果を報告する。さらに,ポリアクリル酸エステル球状粒子の加水分解による表面改質で表面にカルボキシル基グループを導入することで,もともと疎水性であったポリアクリル酸エステル球状粒子を親水化するとともに,この粒子を水に分散させるとこの表面に未処理無機酸化物顔料粒子がきれいに付着して水に分散できることを見いだした。また,ジェミニ型化合物の表面処理では,界面活性剤なしで液状エマルジョン化できることも見いだしたので報告する。
著者
田中 晶子
出版者
昭和大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2017-04-01

今年度は、健常者の研究結果を踏まえて、意識障害患者を対象に呼吸数・脳波に加え唾液を用いてオキシトシンとコルチゾールでストレスの定量的測定を行い、快刺激が高まるタッチング刺激の実施時間・速度・部位を特定することを目的としていた。そこで、昭和大学藤が丘病院EIユニット及び脳神経内科病棟で研究を実施する為に、倫理審査申請書を作成していた。しかし新型コロナウイルス感染症が収束せず、意識障害患者を対象として臨床研究が実施できる状況ではなかった。従って意識障害患者の脳波・呼吸数及び唾液を用いてオキシトシンとコルチゾールでストレスの定量的測定を行い、快刺激が高まる刺激の実施時間・速度・部位を特定するという目的を達成することはできなかった。そこで今年度は、意識障害患者を対象とした臨床研究を実施するにあたり、非接触で、簡便にタッチング効果を検証できる測定装置について検討を行った。田中は「さする」刺激を1分間実施した時に皮膚血流が増加した(田中,2017)という研究結果を明らかにしている。この結果を基に非接触で簡便な毛細血管スコープ装置を購入した。この装置は、指先の毛細血管及び血流を測定できる装置である。この装置を用いて、「触れる」「さする」刺激時におけるタッチングが末梢血管及び血流にどのような変化を及ぼすのかについて明らかにし、今後、意識障害患者を対象とした臨床研究に繋げていくという研究実施計画に変更した。
著者
田中 和子
出版者
The Human Geographical Society of Japan
雑誌
人文地理 (ISSN:00187216)
巻号頁・発行日
vol.48, no.4, pp.321-340, 1996-08-28 (Released:2009-04-28)
参考文献数
99
被引用文献数
1 2

Friedrich Ratzel wrote several papers (1878, 1879, 1895b, and 1895c) and book reviews (1881, 1887, 1894, 1895a, and 1897) relating to Japan, and during 1889-1902 at Reipzig University, he gave four lectures on the world outside Europe, including Japan (Fig. 1.). His notes (manuscripts and materials) for those lectures, which are listed in Tab. 1. A and B, have been preserved in the Archives of Geography, Institute of Regional Studies (Geographische Zentralbibliothek/Archiv für Geographie, Institüt für Länderkunde), Leipzig.The examination of his writings revealed Ratzel's discourse on Japan, which has never been investigated by geographers, in connection with his extensive geographical work. This paper makes it clear that:A) Ratzel was interested in Japan and maintained study and a material collection throughout his academic career (Tab. 2).B) At the watershed of 1895 when Japan won the Sino-Japanese War, his negative evaluation of Japan turned to a positive one. Parallel with this change, his research-focus in Japan itself was transferred, that is, his ethnographical and anthropological study shifted to the political geography of Japan as an island empire.C) In his writings before 1895, he pointed out that 1) the physical and mental features of the residents of the Japanese Islands were inferior to those of Europeans, 2)the strange social class system, which, essentially, the Meiji Restoration did not alter at all, and 3) the mysterious pluralistic jurisdiction among East Asian countries, which could easily cause a political dispute. Ratzel's sense of values with reference to European culture and his contempt for an uncivilized race in East Asia were obvious.D) With Japan's defeat of China, Ratzel realized the characteristics of a land of islands and a marine nation, which were common to England. After revisions and rearrangement (Tab. 3.), his discussion of the political geography of islands (1895c) was publishedas the chapter of ‘Islands (Inseln)’ in “Politische Geographie” (1897). Ratzel expected that Japan would follow the achievements of England in the near future. The most important reason why he changed his evaluation was that Japanese could master Western culture, technology, and social and political systems within a short term.E) According to Ratzel, because the Japanese were a marine nation with high learning-ability and followed Europe, they succeeded in the reexpansion of marine transport over the ocean, and exceeded thier neighbors China and Korea-China used to be accompanied by Japan and Korea respectively, in culture as well as politics.F) Ratzel's continuing study of Japan could be a synthetic chorography, which describes and explains a peculiar combination between a land of islands in the Pacific Ocean and a marine nation with high learning-ability. The possiblity that he preparedthe publication of “Japan” can not be denied.
著者
坪内 伸司 山本 章雄 松浦 義昌 田中 良晴 高根 雅啓 清水 教永
出版者
大阪府立大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2013-04-01

本研究では、健康な成人男女を対象としバイオフォトンの日内変動や人間の健康状態をどの程度反映するか検討した。対象者個々の日内でのエネルギーフィールド指標は、全平均値で日内変動が認められた。また、負荷作業前後のエネルギーフィールド指標は、全平均値で有意な差(p<0.05)が認められた。POMSは、作業後に疲労、抑鬱、怒りの増加が認められた。バイオフォトンは、作業によるストレスを度反映し、新視点から健康状態の評価が期待される。
著者
大川 唯 田中 敏幸
出版者
特定非営利活動法人 パーソナルコンピュータ利用技術学会
雑誌
パーソナルコンピュータ利用技術学会論文誌 (ISSN:18817998)
巻号頁・発行日
vol.11, no.2, pp.1-7, 2017 (Released:2019-11-03)
参考文献数
9

近年,社会の高齢化に伴い脳卒中患者数が増加する傾向にある。多くの脳卒中患者は,脳機能に後遺症が 出るため,リハビリテーションが必要となる。認知障害等の高次機能障害におけるリハビリテーションは,重要な問題の一つとなっており,その検査法として三宅式記銘力検査が知られている。この検査は,有関係語対と無関係語対を読み上げて被験者に記憶させ,記憶した語対の一方を提示して,対をなす語を答えさせる検査法である。つまり,聴覚から脳に刺激を与えて検者の認知能力を調べる方法となっている。この検査法は,検者による検査手順のばらつきが大きく,主観的な検査方法となっている。本研究では,三宅式記銘力検査における検査結果のばらつきを低減し,パーソナル検査を可能にするために,実験そのものをAndroid タブレットのアプリケーション(Android アプリ)によって行う方法について提案する。従来法と異なり提案手法は視覚情報による脳刺激となっているため,提案法と従来法における脳への刺激の違いをfNIRS による脳血流の計測結果から検討する。実験の結果として,従来法とAndroid アプリ法における検査時の脳血流の差異が少なく,従来行われている三宅式記銘力検査をAndroid アプリによって行うことができることを示している。
著者
佐々木 伸一 高島 知佐子 芹澤 知広 伊藤 泰信 八巻 惠子 田中 孝枝 平山 弓月 柳田 博明 河上 幸子
出版者
京都外国語大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2013-04-01

本研究は、人類学を学び研究をすることによってどのようなビジネススキルが獲得されるかという問題提起であった。結論として、それはフィールドワークを行い、エスノグラフィを作成するために培われたスキルであることが判明した。まず、「見る」「聞く」力とその記憶の保持、次に俯瞰的な情報の収集力と聞き出す力、さらに情報への偏見を持たずに受容する力とその価値や意味をくみ取る能力である。この3点は当たり前のように思われるが、実際には多くのトレーニングが必要で、また対話型のコンサルティングで不可欠なスキルであることからすれば、ビジネススキルの一端をなすと言えよう。
著者
田中 千晶 岡田 真平 高倉 実 橋本 圭司 目澤 秀俊 安藤 大輔 田中 茂穂 Okely Anthony D
出版者
一般社団法人日本体力医学会
雑誌
体力科学 (ISSN:0039906X)
巻号頁・発行日
vol.69, no.4, pp.327-333, 2020
被引用文献数
4

<p>This study examined the relationship between meeting the World Health Organization's (WHO) 24-Hour Movement Guidelines for the Early Years and motor skills and cognitive function in preschool children. Participants were 4-year-old boys and girls in urban and rural areas (n=69). Physical activity was measured using a triaxial accelerometer (ActiGraph GT3X). Screen time and sleep duration were assessed via self-report by guardians. Meeting the 24-h movement guidelines was defined as: 10 to 13 h/night and nap of sleep, ≤1 h/day of sedentary screen time, and at least 180 min/day more than 1.5 METs. Motor skills were evaluated by the Ages & Stages Questionnaires, Third Edition (ASQ-3). Executive functions (shifting, visual-spatial working memory and inhibition) were evaluated by the Early Years Toolbox (Japanese translation). The prevalence of children meeting all three recommendations was 7.2% and 7.2% met none of the three recommendations. Children meeting physical activity recommendation had a better inhibition score compared to children meeting none of the recommendation (p=0.005). While, children not meeting the sleep recommendation had a better inhibition score compared to children meeting of the recommendation (p=0.042). In conclusion, meeting the physical activity or sleep recommendations were positively or negatively associated with the inhibition score. On the other hand, meeting none of the sedentary behaviour and the 3 recommendations was not associated with motor skills or cognitive function.</p>
著者
福島 秀晃 三浦 雄一郎 布谷 美樹 田中 伸幸 山本 栄里 鈴木 俊明
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement Vol.32 Suppl. No.2 (第40回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.A0635, 2005 (Released:2005-04-27)

【はじめに】我々は、肩関節疾患患者の肩甲上腕リズムの乱れに関して、肩関節屈曲に伴い肩甲骨には力学的に前傾方向へのモーメントが加わり、これを制動できない場合は、肩甲骨の安定した円滑な上方回旋に支障が生ずるのではないかと考えている。そこで、第44回近畿理学療法学術集会にて、屈曲30°位において僧帽筋下部線維は上部・中部線維と比較して有意に筋活動が増大したことから、この前傾モーメントを制動するには解剖学的に僧帽筋下部線維が有効であると報告した。このことから、上肢の運動に伴い肩甲骨には力学的なモーメントが生じ、また運動方向の違いによって肩甲骨にかかるモーメントも異なることが示唆された。今回、肩関節外転運動に着目し、肩関節屈曲運動と比較して肩甲骨に生じるモーメントが異なると仮定し、肩関節初期屈曲・外転角度における僧帽筋の肩甲骨安定化機能を筋電図学的に比較・検証したので報告する。【対象と方法】対象は健常男性7名(平均年齢28.7±4.2歳)、両上肢(14肢)とした。運動課題は端座位姿勢での上肢下垂位、屈曲30°位および外転30°位をそれぞれ5秒間保持し、それを3回施行した。測定筋は僧帽筋上部・中部・下部線維とし筋電計myosystem1200(Noraxon社製)を用いて測定した。分析方法は下垂位の筋積分値を基準に屈曲30°位と外転30°位の筋積分値相対値を算出し、各線維ごとに対応のあるt検定を行った。なお、対象者には本研究の目的・方法を説明し、了解を得た。【結果と考察】僧帽筋上部・中部線維の筋積分値相対値は、屈曲位と比較して外転位において有意に増大した(p<0.01)。一方、下部線維の筋積分値相対値は屈曲位と比較して外転位において減少傾向となった。肩甲上腕リズムでは屈曲60°、外転30°までは肩甲骨の運動なしに肩甲上腕関節固有の運動でなされるsetting phaseの時期である。本研究における運動課題もsetting phaseの時期であり、この時期での僧帽筋の活動は肩甲骨と体幹を固定するための活動であると考える。山本らは正常な肩甲骨の動きは胸鎖関節を支点として三次元的に制動方向が導かれることとなるが、その動的な制御は肩甲骨と胸郭を連結している筋群のバランスと肩鎖関節の安定性により決定されるとしている。僧帽筋上部・中部線維については解剖学的に鎖骨外側1/3・肩峰・肩甲棘上縁に付着しており上肢の外転運動に伴う肩甲骨の下方回旋モーメントへの制御に機能したと考える。一方、下部線維については解剖学的に肩甲棘内側下部(肩甲棘三角)に付着しており上肢の屈曲運動に伴う肩甲骨の前傾モーメントへの制御により機能したと考える。以上より、上肢の運動方向が異なれば肩甲骨に生じる力学的なモーメントも異なり、そのモーメントに応じて選択的に僧帽筋の各線維がより活動し肩甲骨を制御することが示唆された。
著者
田中 悟
出版者
神戸大学大学院国際協力研究科
雑誌
国際協力論集 (ISSN:09198636)
巻号頁・発行日
vol.14, no.2, pp.145-171[含 英語文要旨], 2006-11
著者
堤 ちはる 永弘 悦子 田中 初美 中島 史絵 吉中 哲子
出版者
The Japan Society of Home Economics
雑誌
日本家政学会誌 (ISSN:09135227)
巻号頁・発行日
vol.49, no.1, pp.5-14, 1998-01-15 (Released:2010-03-10)
参考文献数
26

キウイフルーツ果汁中のコラゲナーゼ活性の存在を新たに明らかにし, さらにその精製を行い, その生化学的性質について検討し, 以下のような結果を得た.(1) 粗抽出液の活性は果肉部にあり, 至適pHは5.0, 至適温度は60℃であった.このことから, 加熱調理の初期の段階で本酵素は強く作用するものと思われた.(2) 粗抽出液を-20℃で1カ月冷凍保存しても安定であり, 調製直後のものの約89%の活性が保持されていた.(3) 粗抽出液のコラゲナーゼ活性は新鮮重量あたり, いちじく, パパイヤ, 生姜, マンゴーより高く, パイナップルより低かった.(4) ゲルろ過クロマトグラフィーの溶出位置から, 本酵素の分子量は約52kDaと推定された.精製酵素のSDS-PAGEでは約60kDaの位置にコラゲナーゼ活性を有する単一バンドが検出された.(5) 精製酵素のコラゲナーゼ活性は, 100mM のEDTAの添加によって著明な減少は認められなかった.(6) 精製酵素のコラゲナーゼ活性は, HgCl2により阻害され, システインによりその阻害は回復した.このことからSH酵素であることが考えられた.(7) 精製酵素はプロテアーゼ活性を示さなかった.(8) キウイフルーツ1個あたり最低量138μgのコラゲナーゼが含まれていた.
著者
成政 貴弘 田中 佑一 福島 遼太郎 西牟田 亮 西原 翔太 杉本 瑞歩 生駒 成亨
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement Vol.44 Suppl. No.2 (第52回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.0614, 2017 (Released:2017-04-24)

【はじめに,目的】スタティック・ストレッチング(以下,SS)の効果として関節可動域拡大が報告されている一方,近年はSS直後の筋力低下が指摘されており,運動療法やスポーツの直前など,場合によっては対象者に不良な効果となる報告も散見されている。多くの先行研究ではSSの時間や実施後の筋力やパフォーマンスに注目しており,柔軟性の違いとSS前後の関節可動域(以下,ROM)や筋力変化の関連性についての報告は未見である。両者の関係を明らかにすることで柔軟性の違いを参考にSSを実施する指標の1つとなると考え,本研究では筋の柔軟性の違いとSS前後のROM,膝関節屈曲等尺性筋力の関連性を明らかにすることとした。【方法】対象は健常人男性18名36脚(平均年齢:24.7±3.1歳)で,対象筋をハムストリングスとした。測定は対象者のSS前後でROM測定と筋力測定を行った。SS前の筋力測定から5分経過後にSSを実施し,SS直後にROM測定をしてSSから3分経過後に筋力測定をした。SSとROM測定は背臥位で骨盤と非検査側の大腿部をベルトで固定した。ROM測定はStraight Leg Raising(以下,SLR)角を2名で測定し,疼痛閾値直前にて1°刻みで1回測定した。SSは股関節最大屈曲位から膝関節伸展を他動運動で実施し,痛みの感じない最大伸張位にて2分間実施した。筋力測定は,BIODEX system4を用いて膝関節屈曲45°で3秒間の膝関節屈曲最大等尺性収縮を30秒のインターバルを挟み3回測定し,最も高いトルク値を最大トルクとした。統計学的処理は,正規性を確認した後,SS前のROMとその変化量の関係及び最大トルクの変化量をピアソンの相関係数にて分析し,統計学的有意水準を5%未満とした。【結果】SS前のROMが66.2±9.1(°),SS後のROMが74.3±10.9(°),ROMの変化量が-8.1±5.4(°)であり,SS前のROMとその変化量に有意な相関は認められなかった。しかし,SS前の最大トルクが89.0±14.7(Nm),SS後の最大トルクが84.2±13.4(Nm),最大トルクの変化量が4.8±7.5(Nm)であり,SS前のROMと最大トルクの変化量は有意な正の弱い相関(r=0.39,p<0.05)が認められた。【結論】SSによる筋力変化の生理学的な反応として,筋繊維の筋節が伸長される事が報告されている。また,足関節底屈位で1週間不動化させたラットの柔軟性低下と筋節の短縮が報告されており,柔軟性の低下している筋は筋節が短縮していると推察する。筋力と筋節の関係は同様の関節角度でも筋節が至適長のときに筋力は発揮しやすいと考えられており,柔軟性の低い対象者,高い対象者共に同様のSSによる筋節の伸張が生じたが,柔軟性の低い対象者はSS前の筋節が短縮しており,柔軟性の高い対象者より至適長から筋節の伸張が少なかったため筋力低下が少なかったと考える。本研究結果により,SSは対象者の柔軟性によって実施後の筋力変化が異なる可能性が示唆された。SSは対象者の柔軟性の違いによる筋力変化や目的,用途を考慮した上で実施することが必要と考える。