- 著者
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徳永 幹雄
橋本 公雄
磯貝 浩久
高柳 茂美
- 出版者
- 九州大学
- 雑誌
- 健康科学 (ISSN:03877175)
- 巻号頁・発行日
- vol.14, pp.9-17, 1992-02-08
- 被引用文献数
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運動やスポーツを行うことによって生ずる心理的効果として爽快感の体験とその観定要因を分析するために3つの実験を行った。実験1は炎天下に行われた大学におけるテニスの授業, 実験2は継続的授業の初期(2回目)と後期(12回目)の大学のサッカーの授業, 実験3は習慣的に実施されている高齢者のテニスの練習を対象とした。それぞれの主な結果は, 次のとおりである。1. 炎天下のテニスの授業では80.4%の多数の学生が「爽快」と答えた。爽快感の規定要因では気分のすっきり度, 運動欲求の強さ, 暑さに対する評価の3要因が最も関係していた。その他, 身体的状態, 心理的状態, 個人的特性, 環境的条件が輻輳して関与していることが推測された。2. サッカーの授業の進行と共に「爽快」と答えた学生は増加し, 後期では84.7%の多数となった。爽快感の評価の変化をみると上昇型は56.5%, 無変化型は25.9%, 下降型は17.7%であった。とくに上昇型では体力, 技術, 性格の自己評価の高まり, 熱中度, 達成感, 運動欲求といった心理的状態の変化, 発汗, 苦しさ, 疲労度の減少といった身体面の適応,向上が関係していることが明らかにされた。3. 高齢者のテニス前後の爽快感,感情得点,乳酸, ACTH, ベータ・エンドルフィンの平均値にはいずれも有意な変化は認められなかった。しかし,テニス後の相互関係をみると, 爽快感や感情得点と乳酸値にはマイナスの相関がみられ, ACTHやベータ・エンドルフィンの分泌にはプラスの相関がみられるという興味ある傾向が認められた。ただ, 高齢者の運動の爽快感をホルモン分泌からのみ考察するのは困難ではないかと思われた。