- 著者
-
神原 賢治
藤井 信孝
中島 秀喜
- 出版者
- 一般社団法人 日本感染症学会
- 雑誌
- 感染症学雑誌 (ISSN:03875911)
- 巻号頁・発行日
- vol.74, no.3, pp.237-244, 2000-03-20 (Released:2011-02-07)
- 参考文献数
- 20
- 被引用文献数
-
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合成ペプチドT22は, カブトガニの血液細胞に存在する抗菌ペプチドであるpolyphelnusin IIをリード化合物として合成した, 18アミノ酸残基からなる塩基性ペプチドである. このT22は, T-tropic HIV-1感染のコレセプターであるCXCR4に作用して, HIVの標的細胞内への侵入を阻害する事が知られている. 我々は, T22の陽電荷を減少させた14アミノ酸残基から成る低分子類似体を合成し, その中でT134と命名したペプチドがさらに強い抗HIV活性を示し, 細胞毒性が減少することをみいだした. さらに, T134はPBMCへのCXCR4抗体の結合を阻止したが, CCR5抗体の結合にはなんら効果をおよぼさなかった. また, T134の抗HIV作用機序としては, これがMT-4細胞へのSDF-1の結合を阻害した事から, CXCR4と相互作用する事によって感染を阻止することが予想された. 他の研究グループから, バイサイクラムAMD3100やD-Arg9つから成るペプチドALX40~4Cなどの物質が, T22やT134と同様にCXCR4に作用してT-tropic HIV-1の侵入を阻害することが報告されている. さらに, カポジ肉腫関連ヘルペスウイルス (HHV-8/KSHV) にコードされているケモカイン様物質, vMIP IIは, T-tropic HIV-1のみならずM-tropic HIV-1の感染も阻止し得る. 本研究では, AMD3100に対して耐性となったHIV-1を用いて, 野生型HIV-1株との抗HIV活性を比較する事により, T134, ALX40-4C, vMIP IIは, AMD3100耐性HIV-1株に対して交差耐性が見られず, CXCR4へ相互作用する部位がそれぞれ異なっている可能性を示した.