著者
Ichinose Yoshio Cesar Monges A. Centurion Maria G. Medina Dorita Alborno Rose M. Bestard Juan J. Makoto Sakamoto Ricardo Moreno A.
出版者
日本熱帯医学会
雑誌
日本熱帯医学会雑誌 (ISSN:03042146)
巻号頁・発行日
vol.19, no.1, pp.39-47, 1991-03-15

1990年5月から7月までの3カ月間,パラグアイ・アスンシオン市の医療施設において,5歳以下の下痢症例患者を対象に,下痢便の細菌学的検査を行った。53症例から34名(64.1%) に下痢原因菌を検出したが,その結果は病原性大腸菌の19株(35.8%)を筆頭に,サルモネラ8株(15.1%),毒素原性大腸菌3株(5.7%),赤痢菌とカンピロパクターがそれぞれ2株(3.8%)が検出され,このうち混合感染が3例あった。診断用抗血清による凝集試験で,病原性大腸菌では11種に型別され,O18型が最も頻度が高かった。血清学的抗原構造で毒素原性大腸菌に属するものからは,易熱性毒素(LT)は検出できなかったが,乳のみマウスによる耐熱性毒素(ST)の検査で,毒素原性大腸菌から1株が陽性を示し,病原性大腸菌も2株が陽性を示した。河川水や飲料水の細菌学的検査において,病原性大腸菌,組織侵入性大腸菌,サルモネラ,ビプリオ属などの病原菌の他に,腸内細菌科の細菌も検出された。特にパラグアイ川からは,下痢便で最優先であったものと同型の, O18型病原性大腸菌が検出されたことは,この地域住民に水系感染の危険性があることが推察された。またディスク法によって,抗生物質7種類に対する薬剤感受性試験を行ったが,同一菌種間においても,その感受性パターンは多様性を示した。パラグアイにおける細菌性下痢症の調査は,従来,サルモネラや赤痢菌などの古典的下痢症については行われてきた。しかしカンピロパクターについては,1989年において,初めて4症例の報告がなされた状況であり,腸管病原性大腸菌やピプリオ属の調査については,まったくなされていない。パラグアイでの下痢症の疫学的・病因的調査は不十分な状況であるので,この調査を機会に,今後も継続して行っていく必要性を強調したい。An etiological study of bacterial diarrhea in infants under five years of age in Paraguay from May to July of 1990 was done. Enteropathogenic E. coli (EPEC) strains of known serogroups were isolated from 35.8% of the patients with diarrhea, Salmonella spp. were isolated from 15.1%, enterotoxigenic E. coli (ETEC) strains were isolated from 5.7%, and Shigella and Campylobacter spp. were isolated from 3.8% respectivery. No enteroinvasive E. coli (EIEC) or Vibrio spp. was isolated. Out of 53 diarrheal patients, 34 cases (64.1%) had bacterial diarrheal diseases. The infants under one year of age with diarrhea were predominant among inpatient and outpatient children under five years of age and the total number of male diarrheal cases was greater than that of female cases. Enteropathogenic organisms were isolated from nine out of 12 water samples taken from the Paraguay River. The major serotype (O18) of the EPEC isolated from the water samples of the Paraguay River corresponded to the major serotype isolated from patients with diarrhea.
著者
相見 則郎 高山 廣光 北島 満里子 内田 直喜 須田 真也 大矢 菜穂子 坂井 進一郎 POLZ Leo STOCKIGT Joachim MENDONZA Luis A.
出版者
天然有機化合物討論会
雑誌
天然有機化合物討論会講演要旨集
巻号頁・発行日
no.33, pp.480-487, 1991-09-07

The technology of plant cell suspension cultures to generate useful secondary metabolites was emploied for two medicinal plants originally producing the indole alkaloids. I. Biotransformation of Ajmaline in Plant Cell Cultures of Rauwolfia Serpentina Benth. From the methanol extracts of the plant cell suspension cultures of R. serpentina, which have been cultivated in the alkaloid-production medium after feeding of ajmaline (1), three new indole alkaloids, raumacline (2), N_b-methylraumacline (3), and 19(S)-hydroxy-N_b-methylraumacline (4), were isolated. These structures first elucidated by spectroscopic analysis were unambiguously determined by the chemical synthesis from ajmaline (1). These new compounds are the first examples of the macroline-type indole alkaloids having the trans relationship between C15 and C16 positions. II. Isolation of Novel Indole Alkaloids from Cell Cultures of Aspidosperma Quebracho Blanco Schlecht. From the cell suspension cultures of A. quebracho blanco, two novel monoterpenoid indole alkaloids, aspidochibine (19) and 3-oxo-14,15-dehydrorhazinilam (21), were isolated, though the production amounts of them were very low at this stage. The structure elucidation and the stereochemical analysis were made by mainly 2D NMR technique. Aspidochibine (19), which has a characteristic ten-membered lactone, is a completely new structural class of the quebrachamine series.
著者
川鍋 祐夫 Neal-Smith Cedric A.
出版者
日本草地学会
雑誌
日本草地学会誌 (ISSN:04475933)
巻号頁・発行日
vol.25, no.3, pp.216-221, 1979-10-31
被引用文献数
2

東アフリカの1,170mから2,270mまで異なる標高の地域に起源をもつローズグラスの四品種と,南アフリカに原産した市販種とを,15/10から36/31℃まで五段階の昼/夜温で三週間処理して生育量を調査し,RGR,NAR,LWRを求め,品種間比較を行った。各品種はほぼ同じような温度生育関係を示し次のように結論された。生育の最低温度は15/10℃とみられ,これより27/22℃ぐらいまで温度が高まれば高まるほど旺盛な生育をする。生育適温は27/22℃またはこれより高い所にあり,36/31℃では乾物生産量は最大であったが,ほふく茎の発生などには高過ぎる温度である。高標高地起源のNzoiaおよびMassaba,ならびにPioneerは,低標高地起源のSerereおよびMpwapwaより15/10℃の低温における生育が優れ,NAR,出葉数などが大であり低温適応性を有するものと認められた。この結果から原産地の気象条件と品種の温度反応との間には,密接な関係があると指摘された。
著者
湖東 朗 大沼 洋康 角張 嘉孝 Suhail A.ITANI HAFFAR Imad
出版者
日本緑化工学会
雑誌
日本緑化工学会誌 (ISSN:09167439)
巻号頁・発行日
vol.15, no.4, pp.12-19, 1990-07-20

アラブ首長国連邦(UAE)は極乾燥地に属し, 年平均雨量は100mm以下でしかも年変動がかなり大きい。したがって, UAEの農業は井戸水などによる灌がいに依存しているが, 無計画な農業開発は貴重な水資源の枯渇を招くおそれもあり, 潅がい水の有効利用のためには圃場に於ける水収支の研究が非常に重要である。本研究は(1)灌がい頻度がアルファルファの蒸散速度や葉温の日変化及び季節変化に及ぼす影響, (2)これらの因子がアルファルファの生長に及ぼす影響, 及び(3)気象因子がアルファルファの蒸散速度に及ぼす影響などを検討するために行った。ポロメータを用いてアルファルファの蒸散速度及び葉温の日変化及び季節変化を1988年4月, 8月, 11月及び1989年1月に測定した。毎日灌水する高頻度潅がい(F)区及び2日に1日灌水する対照(N)区の2つの区を設定した。灌水頻度が蒸散速度及び葉温に及ぼす影響は11月や1月の比較的寒い時期よりも, 4月や8月の暑い時期の方が大きかった。F区とN区の差は, N区の灌がいをしない日に大きく, 4月と8月におけるN区の蒸散速度はF区のそれよりも小さかった。葉温はN区よりもF区の方が低く, 両区の最大葉温差は4月及び8月にそれぞれ4℃及び6℃であった。アルファルファの草丈及び乾物収量は, 両区における蒸散速度や葉温の違いを反映してF区のほうがN区よりともに10%ずつ高かった。灌がいしない日におけるN区の推定蒸散量(TRn)はF区のそれ(TRf)よりも少なく, TRnとTRfの比は4月, 8月, 11月及び1月についてそれぞれ77%, 72%, 70%及び92%であった。F区の測定データを用いて蒸散速度と光量子量(QU), 飽差(VPD), 相対湿度(RH), 葉温(LT), ポロメータチェンバー温度(CT)との相関を調べた結果, QUとの相関が最も高いことがわかった。また, 光強度を変えて蒸散速度を測定した別の実験でも両因子間に高い相関関係がみられた。さらに, 重回帰分析により上記因子による蒸散速度の予測モデルを検討した。各月のデータについては, かなり高い相関が認められたが, それぞれの回帰係数については季節により違いがみられた。
著者
Batanova Tatiana A. 太田 陽子 鬼頭 克也 松本 安喜 林 良博 高島 康弘
出版者
社団法人日本獣医学会
雑誌
The journal of veterinary medical science (ISSN:09167250)
巻号頁・発行日
vol.68, no.1, pp.87-90, 2006-01-25
被引用文献数
1

マウス免疫グロブリンG1(IgG1)のFc領域をもつキメラ蛋白を作成し, その免疫学的性状を調べた.この分子は抗体分子の持つ性質のうち, マクロファージによる抗体依存性細胞障害の誘導能, lipopolysaccaride刺激された脾臓細胞によるインターロイキン10産生の増強能を保持していた.
著者
Reddy A. S. Pranesh M. R.
出版者
公益社団法人地盤工学会
雑誌
土質工学会論文報告集 (ISSN:03851621)
巻号頁・発行日
vol.17, no.3, 1977-09-15

舗装設計は従来Winklerモデル(弾性支承板)によることが多かったが, これでは板の端で沈下に不連続性が起こる。この矛盾は連続弾性体支持, あるいは弾性スプリング相互の作用を考慮し, スプリング群上に仮想膜を考え, 一つが下がれば引張りのため隣接スプリングも下がるとするFilononko-Borodishモデル(FBモデル)を用い回避できる。また弾性体の代りに厚さHの弾性体層において水平面内のxy軸に関し, σ_x=σ_y=τ<xy>=0,かつ層の上下面で水平変位がないとするReissnerモデル(Rモデル)が簡便である。FBモデルでは膜の特性を知るため平板載荷試験における地表面変位を測って推定し, Rモデルでは土のセン断剛性値が関与する。FBモデルもRモデルもWinklerモデルと弾性体支承の中間のモデルと考えられるが, 両者に関し基礎微分方程式を導き, 解き与え, かつPickett, Rayの方法にならってモーメントと沈下の影響内図表を与えている。
著者
Limcumpao Joselito A. 掘本 泰介 高橋 英司 見上 彪
出版者
社団法人日本獣医学会
雑誌
日本獣医学雑誌 (ISSN:00215295)
巻号頁・発行日
vol.52, no.2, pp.351-359, 1990-04-15
被引用文献数
1

ネコヘルペスウイルス1型(FHV-1)糖蛋白質(gp)の感染細胞内における局在部位と輸送を調べるために, 単クローン性抗体による間接蛍光抗体法(IFA)を経時的に行った. 抗gp143/108抗体による蛍光はウイルス感染4時間後に細胞膜と核膜部位において初めて認められ, 8時間目以後は核周囲および細胞質内にも明瞭な蛍光が見られた. gp113に対しても同様の部位において反応が見られたが, 8時間目までは蛍光が認められなかった. 一方, 抗gp60抗体による蛍光は感染12時間後に核の近傍および周囲に初めて認められ, 16時間後には核内に, また20時間後には細胞質内にも蛍光が認められた. さらに, これら3種類の糖蛋白質は感染細胞膜表面にも発現されていることが, 未固定感染細胞を用いたIFAにより明らかになった. 次に, ELISA additivity試験により各糖蛋白質上のエピトープマッピングを行ったところ, gp113は2ドメインにより構成されており, そのうち一つは, 部分的に重複する3エピトープを持つウイルス中和反応に関与するドメインであると考えられた. 一方, gp143/108には重複領域を持つ5エピトープで構成される一つの抗原領域が存在し, そのうち1エピトープはこの糖蛋白質を認識する全ての単クローン性抗体と反応するものと考えられた.