著者
魚崎 浩平 SHEN Y.R. OCKO Benjami DAVIS Jason DOBSON P. HILL H.A.O. 佐藤 縁 水谷 文雄 叶 深 近藤 敏啓 中林 誠一郎 YE Shen DAVIS Jason.
出版者
北海道大学
雑誌
国際学術研究
巻号頁・発行日
1995

まず研究開始時に2年間の研究を効率的に実施するために、国内側のメンバーの間で研究方針を十分検討し確認した。ついで、研究代表者がオックスフォード大学を訪問し、研究方針の確認を行った。以後、これらの打ち合わせで決定した内容に基づき、以下の通り研究を実施した。なお、2年目には新規メンバー(オックスフォード大Jason J.Davis、ブルックヘブン国立研究所Benjamin Ocko、カリフォルニア大Y.R.Shen)を加え研究をより効率的に実施した。初年度1.オックスフォード大における生物電気化学研究のレベルを十分に理解するために、北大において、オックスフォード大研究者による情報交換セミナーを実施した。2.本研究では自己組織化法のセンサーへの応用を念頭に置いており、そのために最適な構造をもったマイクロ電極の設計とその形成法の検討を行った(オックスフォード大)。さらに、このようにして形成したマイクロ電極の電子間力顕微鏡(Atomic Force Microscopy:AFM)による評価を行った。さらに、より高度な評価をめざして、新しい走査プローブ顕微鏡を考案、設計、製作を行い、性能確認を行った(北大)。3.また、本研究では生体機能を念頭においており、チトクロームcと電極との間の電子移動を促進するための界面構造の設計を目標に、種々の混合自己組織化膜表面での電気化学特性を調べた(生命研)。4.界面機能の動的評価を目的に、自己組織化分子層の電気化学反応に伴う構造変化をその場追跡可能な反射赤外分光システムを構築し、生体機能との関連でも重要なキノン/ヒドロキノン部位を持つ自己組織化単分子層に適用した。酸化還元に伴う構造変化を明確に検出できた(北大)。2年度1.新しい界面敏感な手法である和周波発生分光法(Sum Frequency Generation:SFG)および表面X線回折法(Surface X-Ray Diffraction:SXRD)の本研究への導入の可能性を各々Shen教授、Ocko教授の研究室への訪問と討論を通して検討し、その有用正を確認した(カリフォルニア大、ブルックヘブン研究所)。2.水晶振動子マイクロバランス法(Quarts Crystal Microbalance:QCM)および走査型トンネル顕微鏡(Scanning Tunneling Microscopy:STM)によるアルカンチオールの自己組織化過程の追跡を行った(北大)。3.STMによるプロモータ分子の自己組織化過程の追跡をオックスフォード大Jason J.Davis氏が北大の装置を用いて行い、世界で初めて当該分子層の分子配列をとらえた(北大、オックスフォード大)。4.昨年度に引き続き、生体機能を念頭において、チトクロームcと電極との間の電子移動を促進するための界面構造の設計を目標に、種々の混合自己組織化膜表面での電気化学特性を調べた。また、この時の界面構造を詳細に調べるために、アルカリ溶液中での還元脱離およびSTMによる表面構造観察を行った(北大、生命研)。5.以上の成果を国際学術誌をはじめ、国内外の学会で発表した。
著者
PEZZOTTI Giuseppe (2009) PEZZOTT G (2008) PORPORATI A.Alan PORPORATI A. Alan
出版者
京都工芸繊維大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2008

半導体材料における応力/歪みに関するサブミクロンスケールの定量的解析を海外の様々な研究グループと協力体制のもと研究を実施した。この研究では、応力/歪み印可に伴い、スペクトルバンドの波数変化が生じる現象に基づく、ピエゾ分光法を利用して応力/歪み解析を高空間分解で行った。異なるドーピングレベルを持つ既知の系列である、一連のIII-V族半導体(GaAs,AlGaAs等)の試料におけるカソードルミネッセンスによるバンドギャップ発光は、厳密に分析される必要に応え、発光バンドの形態論におけるキャリア濃度の寄与を研究した。発光スペクトルの特性(半値幅、ピーク位置、強度等)からキャリア濃度及び歪みのそれぞれの測定を行うことに成功した。AlGaAs及びInGaP結晶における応力とカソードルミネッセンス発光を繋ぐケース(歪みポテンシャル)を正確に測定し、発光における歪みの影響を及ぼす電子ディバイスを分析する道を開いた。一方、GaN物質に同じような測定する目的でまず吸収の影響を解明する必要があり、カソードルミネッセンス分光にGaNの独特な吸収現象を定める式を発表した。
著者
山田 功夫 深尾 良夫 深尾 良夫 浜田 信生 鷹野 澄 笠原 順三 須田 直樹 WALKER D.A. 浜田 信夫 山田 功夫
出版者
名古屋大学
雑誌
国際学術研究
巻号頁・発行日
1992

我々はPATS(ポンペイ農業商業学校)や現地邦人の方々の協力を得て,平成5年3月ミクロネシア連邦ポンペイに地震観測点を開設することができた.平成4年9月の現地調査以後,手紙とファクスのみでのやりとりのため,現地での準備の進行に不安があったが,現地邦人の方々のご協力もあって,我々は計画を予定どうり進めることができた.その後,地震観測の開設は順調に進んだが,我々の最初の計画とは異なり,電話が使えない(最初の現地調査の際,電話の会社を訪ね相談したとき,「現在ポンペイ全体の電話線の敷設計画が進んでおり,間もなくPATSにもとどく.平成5年3月であれば間違いなくPATSで電話を使うことができる」とのことであったが,工事が伸びた).このため最初に予定した,電話回線を使った,観測システムの管理やデータ収集はできなくなった.近い内に電話回線を利用することもできるようになるであろうことから,観測システムの予定した機能はそのままにし,現地集録の機能をつけ加えた.そして,システム管理については,我々が予定より回数を多く現地を訪問することでカバーすることにして観測はスターとした.実際に観測初期には色々な問題が生じることは予想されるので,その方が効率的でもあった.現地での記録は130MバイトのMOディスクに集録することにした.MOディスクの交換は非常に簡単なので,2週間に1度交換し,郵送してもらうことにした.この記録の交換はPATSの先生にお願いすることができた.実際に電話回線がこの学校まで伸び,利用できるようになったのは平成6年1月のことであった.よって,これ以後は最初の予定通り,国際電話を使った地震観測システムが稼働した.観測を進める中で,いくつかの問題が生じた.(1)この国ではまだ停電が多いので無停電装置(通電時にバッテリ-に充電しておき,短い時間であればこれでバックアップする)を準備したが,バックアップ時ははもちろん,充電時にもノイズが出ているようで,我々のシステムを設置した付近のラジオにノイズが入るので止めざるを得なかった.(2)地震観測では精度の良い時刻を必要とする.我々はOMEGA航法システムの電波を使った時計を用意したが,観測システム内のコンピューター等のノイズで受信状態が悪く,時々十分な精度を保つことができなかった.結局,GPS衛星航法システムを使った時計を開発し,これを使った.このような改良を加えることによって,PATSでは良好な観測ができるようになった.この観測点は大変興味深い場所にある.北側のマリアナ諸島に起こる地震は,地球上で最古のプレート(太平洋プレートの西の端で1億6千万年前)だけを伝播してきて観測される.一方,ソロモン諸島など南から来る地震波はオントンジャワ海台と言われる,海底の溶岩台地からなる厚い地殻地帯を通ってくる.両方とも地震波はほとんどその地域だけを通ってくるので,地殻構造を求めるにも,複雑な手続きはいらない.これまでにも,これらの地域での地殻構造に関する研究は断片的にはあるが,上部マントルに至るまでの総合的な研究はまだ無い.マリアナ地域で起こった地震で,PATSで観測された地震の長周期表面波(レーリー波)の群速度を求めると,非常に速く,Michell and Yu(1980)が求めた1億年以上のプレートでの表面波の速度よりさらに速い.このレーリー波の群速度の分散曲線から地下構造を求めてみると,ここには100kmを越える厚さのプレートが存在することが分かった.一方,オントンジャワ海台を通るレーリー波の群速度は,異常に遅く,特に短周期側で顕著である.この分散曲線から地下構造を求めると,海洋にも関わらず30kmもの厚い地殻が存在することになる.これは,前に述べたように,広大な海底の溶岩台地の広がりを示唆する.同様のことは地震のP波初動の到着時間の標準走時からの差にも現れている.すなわち,マリアナ海盆を伝播したP波初動は標準走時より3〜4秒速く,オントンジャワ海台をとおる波は2〜3秒遅い.この観測では沢山の地震が記録されており,解析はまだ十分に進んでいない.ここに示した結果は,ごく一部の解析結果であり,さらに詳しい解析を進める予定である.
著者
小林 憲正 奈良岡 浩 三田 肇 橋本 博文 金子 竹男 高野 淑識 VLADIMIR A. Tsarev
出版者
横浜国立大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2005

模擬星間物質に重粒子線などを照射して合成した「模擬星間有機物」と、炭素質コンドライト中の有機物を分析し、両者と生命起源の関連について考察した。模擬星間環境実験では分子量数千の複雑態アミノ酸前駆体が生成する。これが星間や隕石母天体中での放射線・紫外線・熱などでの変性により隕石有機物となったことが示唆された。原始地球へは宇宙塵の形で有機物が供給された可能性が高く、その分析が必要である。宇宙ステーション上で宇宙塵を捕集する条件を検討中である。
著者
細谷 良夫 ELIOT M STARY G 成 崇徳 蒲地 典子 王 鐘翰 陳 捷先 石橋 崇雄 楠木 賢道 PAN A.T 加藤 直人 中見 立夫 松浦 茂 岸本 美緒 江夏 由樹 松浦 章 香坂 昌紀 河内 良弘 松村 潤 神田 信夫 STARY Gioban ELOT Mark TATIANA A.Pang WANG Zhong-han CHEN Jiw-xian CHENG Chong-de 王 禹浪 関 嘉禄
出版者
東北学院大学
雑誌
国際学術研究
巻号頁・発行日
1994

「実績の概要」1994〜96年の3年間にわたり、清朝史研究の基礎的な作業として、多岐にわたる清朝史料の体系的把握を目的に、満州語史料を中心とする各種史料の所在状況の調査及び版本と档案の関係を課題とする共同研究を実施した。研究活動は国外の研究分担者の協力を得て中国、台湾、香港、アメリカ、ロシアで実施したが、はじめに調査研究の対象となった主要な(1)史料所蔵機関と(2)史料名称を以下に列挙する。(1)史料所蔵機関(中国)第一歴史档案館、遼寧省档案館、吉林省档案館、吉林市档案館、黒龍江省档案館、北京図書館、科学院図書館、吉林大学図書館、中央民族学院図書館、遼寧省図書館、大連市図書館、中国社会科学院歴史研究所、中国社会科学経済研究所、中国社会科学院清史研究室、中国社会科学院近代史研究所、遼寧省博物館、黒龍江省博物館、黒龍江省民族博物館、新賓満族自治県博物館、伊通満族博物館、海拉尓民族博物館、阿里河鄂倫春族博物館、莫力達瓦文物管理所図書館、承徳市囲場県文物管理所、赫哲族民族博物館、赫哲族民族館(中華民国・台湾)台湾中央図書館、故宮博物院文献處、中央研究院近代史研究所、中央研究院歴史言語研究所(香港)香港大学図書館、香港理工学院図書館(アメリカ)カリホルニヤ大学(バ-クレイ)図書館、議会図書館、ハ-ヴァト大学燕京漢和図書館、プリンストン大学ゲスト図書館、ニューヨーク市立図書館(ロシア)ロシア科学アカデミー極東研究所中国学図書館(モスクワ)、ロシア科学アカデミー東洋学研究所(サンクトペテルブルグ)、サンクトペテルブルグ大学、サルトコフシチュドリン名称公衆図書館(2)主要な史料と史料系譜の名称無圏点「満文老档」、有圏点「満文老档」、満文「清実録」(太祖・太宗朝)、内国史院档、崇徳3年档、逃人档、〓批奏摺、戸科史書、礼科史書、内閣大庫漢文黄冊、戸部銀庫大進黄冊、戸部銀庫大出黄冊、江南銭糧冊、徽州文書、理藩院題本、黒龍江将軍衙門档案、三姓档、黒図档、尚務府档、朝鮮国来書簿、尚可喜事実冊档案、南満州鉄道北満経済調査所所蔵史料、哈爾濱学院所蔵史料、駐哈爾濱外務局特派員公署所蔵史料、満漢文清朝初期関係の石碑拓本、嫩江流域達斡尓族所蔵の満文史料、大楊樹付近の満族関係史料、烏蘇里江流域赫哲族所蔵の満族史料、琿春付近の満族関係史料、鴨緑江流域所在の満族関係史料「共同研究会の開催」上記各史料所蔵機関で、各種の資料をめぐり中国では王鍾翰、成崇徳、台湾で陳捷先、アメリカでエリオット、ロシアでタチアナ・パン各教授と個別課題で共同調査と研究を実施した。また文書史料のみならず、中国東北地域で、清朝初期史をめぐる石碑史料、宗譜や牌単などの祖先祭祀史料、鄂倫春族などを含む満族をめぐる口承伝承資料の採集などの現地調査と研究を関嘉禄、王禹浪研究員と共に行った。3年間にわたる共同研究のまとめとして、1996年12月に成崇徳教授を招聘、満族史研究会の招聘などで来日中の陳捷先、スターリ、パン、エリオット教授をまじえ、満漢文史料をめぐるシンポジュウムと満文版本目録作成のためのワークショップを5日間にわたり実施し、これまでの総括と今後の共同研究の方法を討議した。「成果」共同研究の実施の結果、各所蔵機関の資料状況が明らかになったことに併せて、個別資料の研究、すなわち実録の基礎となったであろう国内史院档の系譜や実録写本の検討、礼科史書と理藩院題本の関係、清朝から満州国に及ぶ東北土地文書の史料系譜、銭糧冊や黄冊などの清朝の経済政策を解明する基礎史料の整理などの官本と档冊の研究が行われた。同時に従来所在不明とされていた朝鮮国来書簿あるいは既に倒壊したと伝えられていた尚可喜神道碑の発見、あるいは逹斡尓族の満州語使用とその档冊や写本を見出した。これらの多くの成果は分担者それぞれの研究成果として公表されると共に「満族史研究通信」の誌上に史料状況を中心とする調査報告が公開されている。また満族史研究通信は国外に対する共同研究の成果の還元として、各国に送付され高い評価を得ている。
著者
塚谷 恒雄 テイラー J.A. ニックス H.A. アルマベコビッチ U.R スルタンガジン U.S. 江崎 光男 今井 賢一 福嶌 義宏 石田 紀郎 溝端 佐登史 TAYLOR J.a. ALMABEKOVICH U.r. スルタンガジン U.M.
出版者
京都大学
雑誌
国際学術研究
巻号頁・発行日
1993

1中緯度乾燥地域の地球規模汚染モデルの作成は,共同研究者であるカザフスタン共和国科学アカデミー宇宙研究所のスタッフによってまとめられた.これは旧ソ連で開発された組込原則による拮抗モデルを非平衡環境システムに応用したもので,アルマ-ティにおいてまずロシア語版で出版された.またバルハシ湖周辺を対照とした水文気象観測データを用いGISの構築にも基礎的結果を得た.バルハシ湖とアラル海の水質分析結果の公開はおそらく世界で初めてであろう.これは国際砂漠学会で発表され,以降各国学界から注目されている.またバルハシ湖については本分析結果を1960年代初頭のデータと比較し,乾燥地閉鎖湖の除塩機構に関し地球化学的変化の一端を示すことができた.2環境汚染による健康被害の疫学的調査は,カザフスタン側共同研究者の尽力によって,アラル海とシルダリア川沿岸の乾燥地域,アルマ-ティの工業地域およびセミパラチンスクの各実験地域について,おそらく世界最初に詳細な健康影響データが公表された.国際的な共感を呼んでいるアラルの悲劇はこの地方全体の文明,社会経済指標および住民の健康状態に重大な影響を与え,免疫ホメオスターシスの脱抑制,免疫病理反応を進行させている.B型ウイルス性肝炎の住民感染率は32.7%,HBs抗原の慢性キャリア率は19.1%にも達している.冷戦の遺産セミパラチンスク核実験場の周辺住民は,40年の長きにわたって合計50ラドから200ラドの放射線被爆を蒙った.放射線に起因する免疫変化は,腫瘍疾患,血液疾患,先天性異常,心・血管系疾患,感染症,その他の病理を含む一般罹患率の上昇を導いた.疾患分布と被爆線量との間には有意な相関関係が見いだされ,腫瘍疾患の増加には罹患率と死亡率上昇の位相性が認められた.この結果は日本文でKIERディスカッションペ-パ-にまとめられた.3セミパラチンスク核実験場の放射能評価は,カザフスタン側共同研究者の尽力によって国立核センターの協力のもとで進められた.まず昨年度採取したシャガン川人工ダム(1965年1月15日の半地下核実験による)周辺土壌の分析から^<237>Np/^<239,240>Pu比を割り出し,この実験が水素爆発ではなく通常のプルトニウム原爆によることを推測した.この結果を実験担当者等に確認したところ,当該核実験の詳細データの提供を受けた.加えて1949年8月29日から1962年12月1日の間にセミパラチンスク核実験場で行った地上実験(30回)空中実験(88回)の基礎情報の提供を受けた.これは前年度の実験影像の提供と同様,世界で初めて公表されたものであり,日本に対するカザフスタンの信頼が高いことを示している.この結果は英文でKIERディスカッションペ-パ-にまとめられ,国際原子力機関(IAEA)にも送られた.また再生計画に資するため,実験場内部と周辺居住地で土壌,植物,血液の資料採取を行った.ただし膨大な分析時間がかかるため,残念ながら本国際学術研究の期間内に完結することはできなかった.各担当者は早急に成果を取りまとめる努力をしている.4再生アセスメントの設計に関し,率直に言って,新独立国家群の経済再建は困難の極みにある.国民や組織,機関の願望や期待,あるいは欲求を達成できる社会経済システムが未熟であるためである.研究分担者らは学会発表や学術討論など機会あるごとに資源節約型の経済システム構築が中央アジア諸国の命運を決定し,それが環境保全につながることを強調してきた.これを一層推進するためには,科学的情報の受信発信の体制を整備することが急務であると共同研究者間で意見が一致し,本年度は科学アカデミーで蓄積された環境経済関連の成果の整備に取りかかり,合計3,000点の文献目録データベースを完成させた.この結果は英文でKIERディスカッションペ-パ-にまとめられた.この作業で,アラル海とバルハシ湖に関する旧ソ連科学アカデミー湖沼学研究所が地球化学,古生物学,鉱物学などの学際研究を蓄積していることが判明し,その結果は日本文でKIERディスカッションペ-パ-にまとめられた.
著者
榎本 昭二 PODYMA KATARZYNA A. 柳下 正樹
出版者
東京医科歯科大学
雑誌
萌芽的研究
巻号頁・発行日
1999

本年度においては、昨年発表されたヘパラネース遺伝子のシークエンスをもとに、培養口腔癌細胞株および、患者から得られた口腔癌組織内におけるヘパラネースの発現について検索を行い、その転移能との相関についても調べた。さらに、研究計画どおり、培養扁平上皮癌細胞株におけるヘパラナーゼの活性とMMP2、9、MT-MMPの発現との相関も調べた。用いた培養細胞それぞれのヘパラネースmRNAの発現量は、活性レベルとほぼ相関していることがわかった。ヘパラナーゼの酵素活性を、定量PCR法を用いて、簡便に測定できることが示唆された。術前からリンパ節転移が存在した症例、原発が制御されても術後9ヶ月以内にリンパ節転移を確認した症例のなかでヘパラナーゼ陽性例数を見ると、前者には57.1%で陽性、また、後者では、100%陽性であった。また、発現レベルとともに転移率の上昇が見られた。以上より、ヘパラネースが、口腔癌において、リンパ節転移能と関連する重要なマーカーの1つになる可能性が期待できる。さらに、培養扁平上皮癌細胞株における、MMP2,MMP9,MT1-MMP,TIMP2の発現を定量し、そのヘパラネース活性とマトリジェルにおける浸潤能の相関についてしらべたところ、それぞれの細胞の浸潤能に対し、独立したMMPの発現レベルとヘパラネース活性を有しており、とくに大きな相関は見出されなかった。現在、昨年クローニングしたラットヘパラネースの抗体の精製を完了させ、また、in situハイブリダイゼーション法による、組織内のヘパラネース発現パターンを検索しており、マウス実験転移モデルと組み合わせて、がん転移機構における、ヘパラネースの機能の分析を続けていく予定である。
著者
若月 利之 石田 英子 増田 美砂 林 幸博 広瀬 昌平 TRAORE S.K.B ALLURI K. OTOO E. OLANIYAN G.O IGBOANUGO A. FAGBAMI A. 小池 浩一郎 宮川 修一 鹿野 一厚 中条 広義 福井 捷朗
出版者
島根大学
雑誌
国際学術研究
巻号頁・発行日
1996

ナイジェリア中部ニジェール洲、ビダ市付近のエミクパタ川集水域のヌペ人の村落から農民の参加意欲と土と水条件より5ケ村のベンチマーク村落を選んだ。アジア的な水田稲作とヌペの伝統的低地稲作システムを融合させながら展開するための実証試験をニジェール洲農業開発公社の普及研究員と国立作物研究所の研究員の協力を得ながら、農民参加により実施した。又、多目的樹種を中心にした育苗畑の整備と管理法及び成熟苗を利用したアップランドにおけるアグロフォレストリーの実証試験も実施した。東北タイより収集した品種特性の異なるタマリンドの種より育苗した。次年度には移植する予定。ガーナのクマシ付近のドインヤマ川小低地集水域でも、同様の水田農業とアグロフォレストリーを農民参加により実施することにより、劣化集水域を再生するための実証試験を実施するに当たって必要な土と水と気象条件、在来の農林業システム、村落の社会経済的条件等、各種の基礎的調査を実施した。一部では水田造成と稲作、村落育苗畑等の小規模実証試験を行った。ニジェールのドッソ付近のマタンカリ村付近のサヘル帯の小低地集水域でも同様の基礎調査を実施した。タイとインドネシアでは西アフリカに応用可能な農林業システムの文献資科や、上述のように樹木のタネ等を収集した。アジアと西アフリカの研究者と意見交換し、農林業システム融合の条件を検討した。又、タイで採取した樹木種子はナイジェリアの苗畑で発芽生育させ、生育は順調なので移植を準備中である。フィリピンでは世界の稲作システムに関する既存の資料を収集した。
著者
Ishii Mamoru Sugiura Masahisa Iyemori Toshihiko Slavin James A.
出版者
国立極地研究所
雑誌
Proceedings of the NIPR Symposium on Upper Atmosphere Physics (ISSN:09145613)
巻号頁・発行日
vol.6, pp.90-102, 1993-02

There is generally high correlation between the orthogonal magnetic and electric field perturbations on the ionospheric field-aligned current region based on observations by polar orbiting satellites. The ratio between the magnetic and electric field perturbations, &lrtri;B_z/μ_oE_x, has a scale-length dependence : the ratio &lrtri;B_z/μ_oE_x decreases with decreasing scale length. B. FORGET et al.(J. Geophys. Res., 96,1843,1991) explained this scale-length dependence using a static model. In this paper, we compare the ratio &lrtri;B_z/μ_oE_x observed by the DE-2 satellite for various spatial scales with the effective Pedersen conductivity Σ_<p, eff> calculated by the method of FORGET et al. The results show that in many cases this model can adequately explain the observed scale-length dependence. However, cases exist in which the difference, &lrtri;B_z/μ_oE_x-Σ_<p, eff>, decreases at about 0.25-1.0s in temporal scales (2-8km in spatial scales). This behavior is explained as being due to Alfven waves.
著者
佐野 輝男 千田 峰生 種田 晃人 R.A. Owens
出版者
弘前大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2006

ノンコーディングRNA病原体"ウイロイド"の自己複製能と病原性をRNAサイレンシングの観点から解析した。ウイロイド感染植物に誘導されるウイロイドを標的とするRNAサイレンシングにより、ウイロイド分子は少なくとも5箇所のホットスポットが標的となり分解され、多様なウイロイド特異的small RNAが宿主細胞内に蓄積することを明らかにした。ウイロイドは想像以上に複雑な機構でRNAサイレンシングの標的になっていると考えられるRNA配列の類似性を基に2次構造を予測する新しいプログラムを開発し、RNAの自己複製と分子構造の関連性を解析するための基盤を構築した。
著者
小山 孝一郎 雨宮 宏 Piel A. Thiemann H.
出版者
宇宙航空研究開発機構
雑誌
宇宙科学研究所報告. 特集 (ISSN:02859920)
巻号頁・発行日
vol.26, pp.3-23, 1990-03

高度100km&acd;120km付近において電子温度を中性ガス温度より高くする熱電子の加熱機構を探るため1988年1月25日, 1月26日日本標準時間午前11時にK-9M-81号機及びS-310-18号機がそれぞれ発射された。太陽電波束は1月25日, 26日はそれぞれ94.9,93.5で太陽黒点数は33及び44であった。K-9M-81号機において得られた電子温度は高度100kmではほぼ中性ガス温度を示し, S-310-18号機においては高電子温度層が見られ, 層中の最大電子温度は700Kであった。両者の違いはSq電流系の目玉からの距離によるものと考えられる。
著者
水崎 隆雄 VASILYEV S.A LUKASHEVICH アイ.アイ 佐々木 豊 大見 哲巨 LUKASHEVICH アイアイ
出版者
京都大学
雑誌
国際学術研究
巻号頁・発行日
1996

量子効果の極めて大きい偏極原子状水素(H)は絶対零度まで気体であり、充分低温まで冷却出来ればボ-ス凝縮を起こすことが期待されるなど、この新しい量子系の基礎物性は低温物理の最も重要な問題の一つである。京都大学では、液体H面上に吸着された2次元Hの性質を調べ、2次元巨視的凝縮相(Kosteritz-Thouless転移)の達成の可能性を検討し、2次元視的凝縮相出現に今一歩の所にある。一方、Kurchatov研究所のLukashevichのグループは早くからHの研究に着手に、mm-ESRを研究手段として研究成果をあげてきた。ここ数年間はKurchatov研究所とフィンランドのTurku大学との共同研究による局所的磁場を用いた2次元Hの研究が続けられており、既に2次元巨視的凝縮相が実現している可能性を指摘している。京大とKurchatov研究所の研究は相補的であり、2次元HのシグナルをESRで直接観測することにより今まで間接的な測定から類推されてきた2次元Hの研究を飛躍的に進歩させることが本協同研究の目的である。(1)京大側が2次元偏極原子状水素の基礎物性の研究を行ない、K-T転移の最適化条件を調べた。特に、2次元Hは液体^4Hの表面励起と強く結合して吸着されているが、表面励起とバルクのヘリウムの励起との結合が弱く、それが2次元Hの冷却の限界を決めていることが判明した。(2)Kurchatov側では120〜140GHzのESR装置を用意した。特に、2次元H観測に適したファブリベロ-型キャビティーを開発し、低温でのテストを近く行なう予定である。(3)各グループが各段階での研究に相互に参加し、装置の設計や議論を集中的に行なった。平成9年2月〜3月にかけてKurchatov側の研究者が2人来日して、京大の超低温装置にESR装置を設置し、127GHzでHのシグナルを観測することに成功した。ESRによる2次元Hの直接観測の共同研究をH9年度も継続して、K-T転移の探索を行う。
著者
猪上 淳 A. CURRY
出版者
独立行政法人海洋研究開発機構
雑誌
若手研究(A)
巻号頁・発行日
2006

急速に変化する北極圏を機動的かつ安価に観測するためのシステムとして自律型無人小型飛行機(UAV)を導入した。観測・データ解析の結果、(1)衛星観測による夏季海氷密接度は海氷の表面融解の影響を受けて7%過小評価していること、(2)陸面の植生分布等の差異によって表面温度の変動が3度〜7度も幅がありその影響が大気境界層内にも及ぶこと、(3)海面水温の空間分布の変化に伴い大気境界層が変質することなど、大気・海氷・海洋・陸域の各分野においてUAVが有効な観測システムであることが示された。
著者
野村 亨 WOLLNIK H. MEUSER S. ALLARDYCE B. SUNDEL S. 稲村 卓 RAVN H. 中原 弘道 松木 征史 HANSEN G. D'AURIA J.M. 永井 泰樹 篠塚 勉 藤岡 学 和田 道治 池田 伸夫 久保野 茂 川上 宏金 福田 共和 柴田 徳思 片山 一郎 NITSCHKE J.M BARNES C.A. KLUGE W.K. BUCHMANN L. BARMES C.A. MEUSEV S. D´AURIA J.M. SUNDELL C.
出版者
東京大学
雑誌
国際学術研究
巻号頁・発行日
1990

本研究の目的は,原子核反応で生成するさまざまな短寿命の不安定核種を,その場で分離・選別し,さらに加速して二次ビ-ムとして実験に供する技術の開発とそれによる先駆的研究の実施であった。上記の実験技術は,現在世界的に注目されている先端的技術で,原子核物理学と関連基礎科学分野に全く新しい研究手法を導入するものと期待されている。本研究では,以下の研究課題を設定し,東大核研を軸にして,欧米の主な関係大学・研究所と共同開発・研究を実施した。その成果は,国際会議等に発表するとともに,論文として雑誌に報告されている。A.大効率・高分解能オンライン同位体分離器(ISOL)の開発・・・不安定核のその場分離・選別(ア)大効率ISOLイオン源の開発CERN(スイス)とTRIUMF(カナダ)等と共同開発を実施。表面電離型,FEBIAD型,ECR型イオン源を試作し,さまざまな不安定核原子のイオン化効率を測定。その結果を踏まえてイオン源の改良を行った。アルカリ金属元素については40%以上の大効率イオン化に成功した。また,ビ-ムバンチングについても成功した。(イ)超高質量分解能ISOLの光学計算M/ΔM【greater than or similar】20,000のISOLイオン光学系の設計を,東大核研・東北大・ギ-セン大学(独)の共同研究として実施。機械精度や放射線ハンドリングの観点から,そのフィ-ジビリティを検討。その成果は,東大核研の不安定核ビ-ムファシB.不安定核ビ-ムの加速技術の開発(ア)世界の現状の調査・検討不安定核ビ-ムの加速は,唯一例としてベルギ-の新ル-バン大学でサイクロトロンによって試験的に実施されている。そこでの現状を調査の上,CERN(スイス),GANIL(仏),TRIUMF(カナダ)等の加速計画を吟味し,種々の加速器の長所・短所を明らかにした。この結果は次の(イ)に反映されている。(イ)分割同軸型RFQリニアックの開発電荷質量比の極めて小さい,入射エネルギ-の非常に低い重イオンリニアックの設計・開発を東大核研で行った。そのさい,GSI(独)とTRIUMF(カナダ)の研究者に詳細な検討・批判をあおいだ。試作した分割同軸型RFQリニアックは順調に稼動し,世界的な注目を集めている。C.不安定核ビ-ムによる核物理・天体核物理学の研究(ア)レ-ザ-による不安定核の精密核分光GaAs,AlGaInPなどの固体結晶中に, ^<75>Br, ^<114m>In等の不安定核を打ちこみ,レ-ザ-による光ポンピングにより,娘核( ^<75>Seや ^<114>In)のスピン偏極を実現した。固体中の不安定核のスピン偏極は世界的に稀な成功例である。さらに,RADOP法により,娘核の核磁気能率を精密に測定した。これは,CERN(スイス)との共同研究である。(イ)不安定核の天体核反応率の測定東大核研・理研・GANIL(仏)との共同研究として宇宙における重元素合成機構において,不安定核の天体熱核反応に役割の研究を実施。 ^<13>Nの熱核反応率の測定に成功した。上述の研究成果の多くは,平成3年度に開催された国際会議(原子核・原子核衝突に関する第4回会議,於金沢;第2回放射性核ビ-ム国際会議,於新ル-バン大学[ベルギ-];第12回EMIS会議,於仙台等)の招待講演として発表されている。また,国際誌等に論文として報告した。本研究成果は国際的な反響をよび,東大核研の研究プロジェクトにその結果が活用されたばかりでなく,CERN(スイス),TRIUMF(カナダ),LANL(米)等の研究所から共同研究が期待されている。
著者
堀井 憲爾 和田 淳 SUNOTO M.A. SOEKART J. SIRAIT K.T. 河崎 善一郎 仲野 みのる 角 紳一 依田 正之 中村 光一 山部 長兵衛 鬼頭 幸生 SUNOTO M. E. SOEKARTO J. SIRAIT K. T. 堀井 憲爾
出版者
豊田工業高等専門学校
雑誌
国際学術研究
巻号頁・発行日
1990

インドネシアは、11月から4月に至る雨期には、ほゞ連日の雷雨に見舞われ、年間雷雨日数は、多いところでは150日にも達する世界的な雷多発地帯の一つである。雷の特性は、わが国の夏形雷に近いと思われるが、高緯度のわが国の雷との比較研究は意義がある。一方、インドネシアの電力施設は、現在、急速な開発途上にあり、送配電システムの雷防護対策は、極めて重要な技術として,その基礎となる雷の研究が重視されている。雷の研究は、自然雷の観測と共に,人工的に雷を制御し、誘発させて、雷放電特性を詳細に解明するロケット誘雷実験が欠かせない。ロケット誘雷実験は、わが国において、本研究組織のメンバ-により十数年の実施経験がある完成された技術である。このメンバ-とインドネシア側の大学、研究所のメンバ-の共同によるロケット誘雷実験が、昭和64年度より開始されて、平成2年4月6日には、インドネシアではじめての誘雷に成功した。本年度のロケット誘雷実験は、昨年度に引続き,ジャカルタの南ボゴ-ル地区のプンチャ峠近くの国営グヌンマス茶園内で、平成3年12月19日から平成4年2月19日までの2ケ月間実施された。同地点は、標高が1400mあり、ジャカルタ平原を見下ろす絶好の実験地である。この茶園内の小山の頂上に9基の発射台を立て,地上電界の測定・監視により、雷雲の接近時に、直径0.2mmの接地されたスチ-ルワイヤ付きロケットを真上に向って発射した。ロケットは英国製の船舶用救命索発射用ロケットを利用し、約500mの高度に上昇する。上昇途中でロケットから上向きのリ-ダ放電が進展し、その直後にロケットに落雷が起り、ワイヤに沿って雷電流が流れ、ワイヤは爆発燃焼してア-ク放電となる。実験期間中に30回近くロケット発射の機会があったが、ロケット不良が多く、うち15回の正常飛行により6回の誘雷に成功した。電流値は、現在詳細解析中であるが、最大12KAに達し、電流の極性はわが国の夏雷と同じく、負が5回と多く,正が1回であった。地上電界は、針端コロナ電流で最大3μAに達し、10kV/mを越える強電界を示した。今回の実験での特記すべき結果は、わが国の実験でもこれまで観測されなかった,避雷針への誘雷に成功し、流し写真の撮影にも成功したことである。12月25日,17:30の最大ー12kAに達する雷放電の第1線が、ワイヤに沿って発射台へ放電した後、約0.5秒後の第2撃が,発射台より約4m離れた10mの高さの避雷針へ放電した。その後,0.06秒後の第3撃もやはり避雷針へ放電しており、避雷針の保護効果は、多重雷の後続電撃に対して極めて有効な場合があることが確認された。15回の発射のうち1回は、ロケットが上昇途中でワイヤが地上から切れ、雷雲と大地との間の空間にワイヤが張られるという珍しい状況となり、いわゆる雷雲内放電誘発の実験となったが、残念ながら誘電には成功しなかった。今後,この方式の実験を再挑戦する必要を認めた。また,1回は空間電界計を塔載したロケットを打上げたが、電界計の不調のため観測に失敗した。この他,インドネシア電力公社の援助により、実験場内に300mの試験用配電線を架設し、誘雷放電時にこの配電線に誘導されるサ-ジ電圧の観測の準備を進め、特に分圧測定システムの技術について指導を行った。今年度は、実験の開始時と中間段階で、日本側から計5名が実験に参加し、技術指導と共同観測を行ったが、ロケットの操作、デ-タの観測記録は,すべてインドネシア側の責任で実施され、この実験に関する技術移転はほゞ完了したと考えてよい。しかし、英国製ロケットの不良が多く、次回からはわが国のロケットを輸出する必要があり、また一部の高度測定技術(電流波形記録,電磁界変化記録など)については、来年度以降も引続き技術指導と援助が必要であり、これに沿った施策推進が望まれる。なお、次年度以降も、乏しい資金ではあるが、インドネシア側で実験を継続する意向があり、日本側もできる限りこれに協力する覚悟である。
著者
長谷部 信行 BEREZHNOI Alexey A.
出版者
早稲田大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2002

本研究は、主に3つに分類される。1)月表面から放出されるガンマ線の評価2)月表面における揮発性元素の存在可能性3)流星群衝突と月震による月からの電波放出1)月表面におけるガンマ線及び中性子の発生と輸送機構を実験的及び数値計算的にシミュレートし、元素濃度の評価方法の基礎過程を構築した。それに基づけば、ガンマ線分光計のエネルギー分解能が5keV以下の場合、水素、及び硫黄(1wt%以上存在した場合)の検出が可能であるという結論を得た。また、Lunar Prospectorによる観測結果を再検証しApolloやLunaミッションと比較した結果、月西部の海において、深刻なSi存在量の過小評価とAl, Mgの過大評価を発見した。2)月面揮発性元素の彗星起源説について評価を行った。その結果、炭素に富む彗星では現在までに推測されている揮発性元素の存在量を説明することはできず、酸素に富む彗星であれば、十分に存在量を説明することができるとの結論に至った。また二酸化酸素及び二酸化硫黄が安定に存在できる極域内の面積を算出し、それら元素の注入率に制約を与えた。3)1999年から2001年までのしし座流星群到来時の電波観測データの解析を複数の波長を用いて行った。1999年のデータからは月からの信号を見出すことはできなかったが、2000年、2001年においては流星群によると思われる信号を発見した。また、数分にもおよぶ振動の存在を確認した。